Hololive:Parallel   作:一応味醂

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▶5「バケモノ」

――――――チリリリリリン。

朝からやかましく鳴る時計を止めて、体をゆっくりと起こす。時間を見れば、まだ朝7時前だ。だが、この時間の起床はいつも通りのためそのまま朝のルーティンへと入る。

ベッドから出て顔を洗う。水を飲んで、カーテンを開けて10分程日向ぼっこをする。

 

「…平和だなぁ。」

 

ここへ来てからは忙しい出来事続きで疲れ切っていた。

そんなときのそらは、ここ一週間程何事もなく平和に暮らしていたことに逆に不安にさえなっていた。

 

「…マリンちゃん流石だなぁ。」

 

マリンが二度目の屋敷へ向かったあと帰ってきた際には、1人の少女を連れていた。

あの屋敷の少女で、潤羽るしあと言うそうだ。

仲良く話しながら帰ってくる姿を見た時には、凄さと尊敬さを感じた。

 

「…私も頑張らなきゃ。」

 

「おはよー。」

 

ふと、部屋のドアが開く音がした。

 

「あっ、おはようございます!」

 

現れたのはノエルだった。

ときのそらが借りている部屋は、ノエルが使っていた部屋の1つでもある。その事もあり、ノエルが自由に出入りすることはときのそらも承知していたことだ。

 

「…あれ?今日は何かあるんですか?」

 

ノエルはこの部屋に入るなり、武器やら道具を袋の中へと詰め込んでいる。

 

「そうそう。そらちゃんも準備してね。…なんか団長が話があるって。」

 

そう言いノエルは身支度を進めていく。

 

「今日はマリンとるしあも来るみたいだから。」

 

あの日から一週間近く、マリンがるしあを連れて帰ってきたその日以来会っていなかった。

どうやら2人は一緒に住んでいるらしく、マリンはお金を返すために王国内で働いていたみたいだった。

そんな2人と会えるとなれば急がなきゃならない。

 

「久しぶりに会えるなぁ。」

 

早く顔が見たいと思い、ときのそらは急いで身支度をして、ノエルと一緒に部屋を出ていった。

 

 

――――――――――――――――――

 

 

白銀聖騎士団聖騎士堂へとたどり着く2人。

 

「…!団長!」

 

ノエルは周りを見渡して、団長の姿を見つけると声をかけ近づいていく。ときのそらもその後をついていくように歩き出す。

 

「朝早くありがとう。準備は済ましたかい?」

 

「はい。…えっと、どこへ行くんですか?」

 

どうやらノエルも行先を聞いていないらしく、団長に問いかける。だが、渋い顔をしたまま答えようとしない。

 

「……?」

 

「…皆が集まったら説明する。」

 

――それから数分後、呼び出されたであろう団員15人とマリン、るしあが到着する。

 

「マリンちゃん、るしあちゃん久しぶり!」

 

「そらちゃん久しぶり!元気そうで何よりですね。」

 

「おはようそらちゃん。」

 

2人が帰ってきた日に、ときのそらはるしあと仲良くなっていた。

そんな久しぶりの再会に心が弾んでいる中、聖騎士団の団長がこの場に集まった全員に対して、声を張る。

 

「――皆、集まってくれてありがとう。察している人も中にはいると思うが、この後僕たちは調査に出向かなくてはならない。しかも早急にだ。」

 

団長は淡々と説明をする。その間にも馬車の準備などを進めていく。

 

「…それで、向かう場所は?」

 

ノエルがしな団長に目的地を聞く。すると、一度ときのそらを見てから口を開く。

 

「…「ミリアム街」で今までに見たことのないバケモノが出たと言われた。」

 

「ミリアム街」――ときのそらは初めて聞くが、他の皆の表情はますます曇り始める。

 

「あ、あの…。」

 

「だ、大丈夫だよ、そらちゃん。私たちが故郷は必ず守ってみせるからね。」

 

身に覚えのないミリアム街という名前を聞こうとした際、何故だか更に身に覚えのない故郷という設定がついている。

 

「えっと…ミリアム街って…。」

 

「隣街の名前だよ。」

 

ときのそらの疑問をマリンが拾って答えてくれる。

隣街の名前――ときのそらは出生を隣街ということになっている。そこでバケモノが発見されたと言う事だから、団長が悔やむ顔でときのそらを見てきたのだろう。

 

「ミリアム街って、「疫病の街」って言われてるとこ?」

 

「っ!るしあっ、そらちゃんの前ではあまり言わないで。」

 

るしあの発言にノエルが慌てて口を閉じさせる。

そして何か耳打ちのようなものを始めた。

 

「あっ…。ごめんねそらちゃんっ!」

 

「あっ、いや大丈夫だよっ。」

 

疫病の街――決していい言葉ではない。そう噂される街ということから何となくその街の情勢が窺える。

…そこから来たというときのそら。皆が最初に哀れんでいた意味がようやく分かった。

 

「国からの命でもある。悪いが皆も力を貸してくれ。」

 

団長の覚悟の声を聞き、全員が馬車へ乗り隣街「ミリアム街」へと出発したのだ。

 

 

――――――――――――――――――

 

 

隣街とは言うものの、プラチナ聖王国が広いため外へ出るために馬車の力が必要となる。

10分程で王国外へ出て、すでに舗装されていない道へと差し掛かる。

 

「着いたぞ。作戦通り、それぞれ分かれてくれ。」

 

団長が馬車を止め、全員に呼びかける。

着いた。そう言われるが周囲の光景を見て疑問を持つ人がいた。

 

「…ここが、ミリアム街?」

 

視界内に映る建物のほとんどは廃れており、本当に人が暮らしているのかすら怪しいレベルで汚れきっていた。

そんな街の中に入ると、一斉に聖騎士団が散らばっていく。

――ここへ来る前の団長の話によると、今この場にいるメンバーは20人いる。5人で1チームをつくり、4つに別れてバケモノの調査ということ。

 

「さ、行こっ、そらちゃん。」

 

「はいっ!」

 

ときのそらはノエルと同じチームとなった。これは予想出来たこと。

 

「マリンたちも気をつけてね。」

 

「おうおう何だかやけに心配してくるな。」

 

「るしあ頑張ってね。」

 

「こら、無視すんじゃねぇ!」

 

マリンとるしあは同じチームとなり、聖騎士団の団員3人と一緒に行動することになっている。

 

「団長も気をつけてください。」

 

「ありがとうノエル。」

 

団長が率いるチームは早々に街の中央へ向かって走り始めた。

残り2つのチームにも、団員の中での実力者で固められたチームとなっている。

並程度のバケモノなら問題はないはず。

 

「…皆、強いもんね。」

 

ときのそらは聖騎士団の身近で生活していた。そこで皆の実力はある程度知っている。

更に言えば、学校で読んだ本――歴史書に載っていた聖騎士団の団長は30年もの間、役目を果たし加齢と共に引退し次世代へと託している。この本に載っている団長とはまさしく今の団長のことだ。

 

「ノエル副団長に聞いたらまだ15年しか務めてないって言ってたし。」

 

ここが過去ということは、歴史書通りに物語は進む。

そこからも読み取れるくらい団長は強い存在だ。

だからこそ、聖騎士団の強さは本物だと確信している。

 

――――――――――――――――――

 

 

「見つからないね。」

 

探索すること30分が経過。

廃れている貧民街とは言っても街なだけあってそこそこ領地は広い。プラチナ聖王国程まではいかないが、その半分近くはあるのではないだろうか?

 

「そうだとしてもここまで居ないとは。」

 

「やっぱりガセなのかな。」

 

脅威になり得るバケモノは人サイズより大きいのがほとんどだ。

ここまで見つからないとなると、嘘を伝えられた可能性が浮上する。だが、それと同時に――

 

「…国王がわざわざ嘘をついてまで聖騎士団を国の外に出すなんて有り得ないよね。」

 

ノエルも同じ疑問を抱えていた。

国王のために動いている、酷い言い方であれば国王の持ち駒となる存在をわざわざ遠ざける意味がない。

 

「…んー。もう少し違う場所を――」

 

――ドゴォォン!!

 

探してみるか。ノエルがそう言おうとした時、ふいに大きな爆発音が聞こえた。

 

「…きゃっ!?」

 

驚いた拍子にときのそらは耳を塞ぎ、目を瞑ってしまう。

そして音が止み、目を開けた時には――

 

「…っ!!?」

 

――すでに、ノエルと姿を現したバケモノが対峙している最中だった。

 

「そらさん!こっちです!」

 

団員の1人がときのそらを呼び、戦いに巻き込まれないようにと少しでも遠くへと離れる。

 

「ここにいれば少しは安全です!」

 

そう言って団員たちはノエルの方へと駆けていく。

 

「…っ!?」

 

ノエルとバケモノが向かい合っている中、先に動いたのはバケモノの方だった。

姿形は二本の足で立ち、背中からは羽根が生えている。

禍々しいオーラを放ち、バケモノを中心に周囲にオーラの塊が広がったと思うと、そこから新たなバケモノが生まれ始めた。

目の前に立つ禍々しいオーラを放つバケモノを小さくしたかのような姿だ。

 

「…これ、バケモノの「特殊能力」?」

 

ノエルは今までに見たことの無いような行動から、そう答えを導き出す。

一定以上のランクのバケモノは「特殊能力」を持っている。

 

「だ…だとしたら、Sランクって事ですか!?」

 

団員の一人が、ノエルの発言からそう声を上げる。

「Sランク」――「特殊能力」を持つバケモノで、実力はかなり高い。ときのそらが聞いた話によれば、今までSランクのバケモノと戦ったことは無いと言っていた。

 

「くっ…。仕方ない、倒すしかないよっ!」

 

ノエルが先陣を切ってバケモノが生み出したバケモノ(分かりやすく子バケモノとする)に攻撃を仕掛ける。

 

「パワーストライク!!」

 

ノエルが使う技の一つ。ノエルの持つ武器「プラチナメイス」に自身の気力を集め、思い切り叩きつける技。

応用で地面を叩けばこの前のような衝撃波を放つことが出来る。

 

「グガァァ!!」

 

その力は圧倒的。子バケモノは一瞬にして粉々に粉砕した。だがそれでも残りの子バケモノは多い。

 

「くっ。皆、子バケモノの相手お願い!」

 

「はいっ!」

 

団員が子バケモノの相手をし、ノエルが親となるバケモノと戦う。

 

「…どうしよう。」

 

この中で唯一戦えないのがときのそら。ただ見守るしかないこの状況を苦しく思っている。

 

「…でも。」

 

それと同時に思い浮かぶは、「世界を見届ける」この役目のこと。干渉しない今の状況が正しい過去の姿なのでは無いのか。

 

――そんなことを思いながらも時間は刻一刻と過ぎていく。

子バケモノを次々と倒す団員。その実力はしっかりと高いのだが、それに負けじとバケモノが子バケモノを生み出していく。

早いとこノエルがバケモノを討たなければ、戦況は悪い方に傾いてしまうかもしれない。

 

「おりゃあ!」

 

「グゥゥ!!」

 

ノエルの攻撃は通っている。だが、それと同時にバケモノの攻撃もノエルには通用する。

 

「ぐっ!!」

 

「ノエル副団長!!」

 

重い一撃をくらったノエルはときのそらの近くまで吹っ飛ばされる。そんなノエルに駆け寄り心配をする。

 

「…大丈夫っ。あのバケモノ強いね。」

 

ノエルはこちらを見てくるバケモノに対しての感想を素直にこぼす。

そんなノエルの事など気にもしないと言わんばかりに、バケモノはこちらへ突進してくる。

 

「…っ!!」

 

そんなバケモノの振り下ろす腕による攻撃を、「プラチナメイス」で受け止める。

バケモノの大きさはざっと3m弱。ノエルの約2倍近い巨体の攻撃を受け止めるその姿に驚きを隠せないでいるときのそら。

 

「おりゃあ!!」

 

「…!ありがとう!」

 

団員の一人が横からバケモノに攻撃を仕掛ける。

体勢が崩れたその一瞬を突き、バケモノの腕を跳ね返す。

気づけば、バケモノはノエルとの戦いに集中していたのか、新たな子バケモノは生まれ来ず、他の団員もバケモノを囲うように位置どった。

 

「…また子バケモノを増やされても困るし…ここでやっつける!」

 

ノエルは集中し、気力を底上げする。

バケモノも再び禍々しいオーラを放ち始める。

 

「やらせるかっ!」

 

団員たちはそのバケモノへと四方八方から攻撃を仕掛ける。

バケモノの薙ぎ払いをかわし、その胴体へと斬り掛かる。

ノエルの攻撃のための時間稼ぎをしてくれている。

 

「…!よしっ、皆離れてっ!」

 

ノエルは高く宙へ飛び、「プラチナメイス」に気を集める。

その様子を見た団員たちは、すぐさまバケモノから距離をとる。バケモノは宙に浮くノエルに視線を向け、今にもオーラを撃ち放とうとしている。

だが、それよりも早くノエルの攻撃が降りかかる。

 

「――メテオドライブ!!」

 

「プラチナメイス」が光輝き、目下にいるバケモノに向かって振り下ろす。途端に、複数の光がバケモノ目掛けて落ちていく。――まさに隕石が降るかのように。

 

 

――――――――――――――――――

 

 

その出来事はあっという間に過ぎ去った。

気がつけば、ノエルの攻撃で土煙が舞い上がり、バケモノの姿が見えなくなっている。今のを受けてどのくらいのダメージを負ったのだろうか。

 

「…どうなんだろうね。」

 

ノエルがときのそらの付近に着地し、様子を伺っている。

土煙が収まり、バケモノの姿が顕になる――はずだった。

 

「…居ない?」

 

そこにはバケモノの姿は消えて無くなっていたのだ。

 

「今の攻撃で跡形もなく消し飛んだ…って訳でもないよね。」

 

不思議な出来事…だが、これは現実だ。そう悩んでいる中、ときのそらは視界の片隅に違和感を見つける。

 

「…ん?」

 

先程のバケモノのような、黒い影が南へと飛んでいっていた。

 

「どうかしたの?」

 

ノエルはそれに気づいていないのか、ときのそらに声をかける。

 

「い、いえ何でもないです。」

 

「…とりあえずそらちゃん一度馬車に戻って報告お願い。私たちはもう少し周囲を警戒しておくわ。」

 

馬車には1チーム待機チームがいて、そのチームが赤の狼煙を上げた時、全チームが馬車へと集合するという決まりをつけていた。

 

「分かりましたっ!」

 

ときのそらは急いで馬車の方――南へと向かって走っていったのだ。

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