私のお父さん? 龍神オルステッドですよ?   作:口の端にほっぺが!

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第14話 姉妹

「メリー、どこー?」

 

ガバッ!!

 

外から聞こえた女性の声に、少女は勢いよく振り返る。羽織った上着が本に引っかかって落ちかけたが、すんでのところでキャッチ。

 

オーナーの視線が痛い。

 

「お姉ちゃーん!」

 

「しーっ!しーっ!」

 

必死に合図をするも、トタトタと本屋の外へとかけ出す。

オーナーが怒るって!!

必死に頭を下げつつ、追って私も外に出た。

 

 

 

「メリー、外に出る時は、その前に行き先をママに言わなきゃダメでしょ?」

 

「ごめんなさい...」

 

昼の日差しに目を細めつつ外に出ると、メリーと呼ばれた女の子が、年上の女の子に怒られてシュンとしていた。

メリーを一回り大きくした感じの子だ。姉だろうか。

メリーが3、4歳くらいで、大きな方は10歳くらい。

どちらも金髪碧眼で、容姿も服装も整っている。

 

「そういえば...」

 

金髪碧眼って、貴族の象徴じゃなかったっけ?

ボレアス家には、10歳くらいのお嬢様がいたはず。すると、この子が領主様の娘なのでは───。

 

「あ。あなたは、メリーのお友達かな?」

 

「あ、えーっと」

 

「そうだよ?」

 

そうらしい。

 

「ご本読みたそうにしてたから、あたちの家で一緒に読もう、って誘ったの」

 

「本?」

 

「まじゅちゅきょーほん、っていうご本」

 

「あら、そうなの!」

 

ちょうど良かったわ、と大きな子は手を合わせる。

そうか。貴族の家なら、家に本が沢山あって当然だろう。

 

「はい。その本が読みたくて...」

 

「もう、そんなにかしこまらなくもいいわよ」

 

そう言って、私の手を取る。

真似してか、メリーも反対の手を取った。

 

「『魔術教本』ならあたしも好きだもの。それと、あたしのことは、レイナってお呼びになって」

 

「あ、あたちメリー」

 

それだけ言って、待ちきれないように駆け出した。

 

「さ、お家に行くわよ」

 

「行こーう」

 

子供らしく元気な2人に手を引かれ、私も走り出した。

 

 

 

 

 

「ニアミスだったかー」

 

目の前に、大きな屋敷がそびえ建つ。

城壁の外からも、その異様を伺うことが出来た、ボレアス家の屋敷だ。

 

そして、私はそれを阻むように建つ、ふた周りほど小さな家の前に立っている。

 

2人に手を引かれ、私たちは街の大通りをその根元まで走った。

あと数歩走れば、屋敷への階段を上る───。

 

その直前に、2人は直角ターン。

 

やたら足腰を鍛えてしまったせいで、2人を飛ばしかけて思わずヒヤリ。

 

2人は、そんなことを全く気にしない。

そのままの勢いで脇の小道を連れていかれ、そうしてこの家の前に着いた。

 

大通りに面した、玄関のない小さな家とは全く違う。

小さな門に、家がもう一戸入りそうなほど大きい庭。そして、ドアの上に掘られた家紋。

 

領主ではなくとも、格式ある家柄なのははっきりとわかった。

金髪碧眼は、やっぱり貴族らしい。

 

 

 

「お帰りなさいませ。レイナ様、メリス様」

 

庭の手入れをしていた女性が、私たちを見るやいなや寄ってきて綺麗に一礼した。

服装や態度を見る限り、この家のメイドなのかな。

 

彼女たちへの礼を終え、私に向き直る。

 

「そして、可愛らしいお客様。ようこそマーブル家へ」

 

そばかすの浮かぶ顔を綻ばせ、また優雅に一礼。

 

「あ、あ。こちらこそ。その、私はルミリスと申します」

 

あまりの丁寧さに、思わず気圧される。

 

「あたしたちの家のメイドをしてる、サリーよ」

 

その言葉にまた一礼。

ぎこちなさが無く、緩急丁寧な一礼。

前世では、これほどの礼をできる人などそうそういなかっただろう。

 

「ほら、家に入りましょう?サリー、お水の用意をお願いできるかしら」

 

「かしこまりました」

 

「ほら、行こう!!」

 

あっけに取られている私を、さらに2人は引っ張る。

そうして、私はマーブル家の門をくぐったのだ。

 

 

 

「これは...?」

 

涙模様の入った壺を指さす。

その模様は精緻で、メラ〇ラの実をメ〇メラさせていないような静けさが伺える。

自分でも何を言っているのか分からないが、要は一般人じゃ凄さが分からないような、ちょっとした工芸品だ。

 

「それはドワーフの壺、『青龍の涙』よ」

 

「へえ...。これは?」

 

壁に飾ってある、一本の剣と杖。白い柄に少し凸凹した剣。そして、さきっちょに緑色の小さな結晶がはめてある木製の杖。

どちらも、年季が感じられ、誰かの思い出の品の気配を感じる。

 

「剣は、お父様が冒険者の頃から使っている大事な剣。杖は、お母さんが子供の頃にお師匠様から貰った、治癒用杖よ」

 

「それならあれは...」

 

家に上がってしばらく。

 

サリーさんにお水を用意してもらい、居間のテーブルについてスタンバイ。

しかし、メリーが肝心の『魔術教本』を見つけられないらしく、私たちはしばらく待つことになった。

 

軽めの自己紹介も終わり、手持ち無沙汰になって無言に───なんてこともなく、私はレイナに目につく知らないもの全てを尋ねていた。

 

その始まりは、剣と杖の上に飾られた、大きな絵画。

『ロミオとジュリエット』の名シーンのように、お城のバルコニーで女性が手を伸ばし、男性が頭上へ手を伸ばす。

油絵で描かれたそれが、でかでかと飾ってあったのだ。

 

目についた瞬間、聞いていた。

 

「あれは...」

 

「え?あ、あれはね、『ロゼリア姫とダンテ王子』の絵ですわ」

 

そして、さらに色んなものが目についた。

 

「じゃあ、あれは?」

 

「あ。あれはメリーの宝箱ですわね。後で自慢すると思うわ」

 

「じゃあ」

 

と、自制が利かずあれこれ聞いてしまった。

なんせこの家、知らないものが多すぎる。

いや、異世界だから当たり前なのかもしれない。

 

しかし、最初に目がいった工芸品や美術品以外にも、日常品で「なんだこれ!」となるものも多くあった。

あぶらとり紙かと思えばちり紙だったり、水瓶だと思えばちょっとした工芸品だったり。

いや、ちょっと考えればわかるようなものか。少し見慣れないものが多すぎて混乱しているらしい。

 

ともあれ、色々聞けて助かった。

家に上がるときも靴を脱ぎかけたのも、ここだけでできる失敗かもしれない。

 

そして、レイナはそれらに熱心に付き合ってくれた。

打てば響くように答え、私の知りたいものを余すところなく教えてくれる。

ありがたい。

 

「ただいまー。メリーは帰ってきたのかしらー?」

 

食卓から厨房の方まで回ろうとしていると、玄関から別の女性の声が聞こえた。

 

「お母様。メリーは帰ってきたわ」

 

「そうなの。良かったわ」

 

慌てて居間に戻ると、レイナを大きくしたような女性が1人。

 

「お帰りなさいませ。奥様」

 

「ありがとう、サリー」

 

「それと、レイナ様、メリス様にお客様です」

 

「ええ、可愛らしいお客さんね。いらっしゃい」

 

上品に微笑む。

普通の微笑みとも違い、サリーと同じように洗練された美しさがあった。

ただ、この女性の場合は高貴さが大きなウェイトを占めている。

 

「る、ルミリスです。よろしくお願いします」

 

日本式の礼をひとつ。

 

「あら、いい子ね。ゆっくりしてらっしゃい」

 

「見つけたー!!」

 

と、その大声でメリママの顔が困ったようにほころぶ。

それと同時に、階段下にメリーが着地した。

 

「もうメリー?家の中で大声を出したり、はねたりしちゃいけないのよ?」

 

「ごめんなさい。あと、勝手に外出てごめんなさい」

 

直前の元気から一転、しゅんとした面持ちでメリーは頭を下げる。

レイナもサリーも、もちろんメリママも苦笑いをしていた。いつものことなのかもしれない。

 

下がった頭がぴょこんと戻り、ニコッとメリーが笑う。

 

「ご本、あったよ!」

 

そう言って、メリーは私に、本屋で見たのと同じ本を突き出した。

 

 

 

それから、メリーの音読のもと、私たち3人は一緒に『魔術教本』を読んだ。

途中自己紹介をしたり、洗濯物の取り入れを手伝ったりしながら、その詠唱を頭に叩き込む。

 

それから2時間ほど。

初めの方の解説や、難しいページを飛ばしつつ、ついに私たちは4種の魔術を全て読み終わったのだ。

 

「じゃ、行くわよ!」

 

そして、現在。

 

本を読み終わった私達は、レイナの実演を見ることになった。

どうもレイナは水魔術を中級まで使えるらしく、メリパパが休みの日は、一緒に的当てで練習をしているという。

メリーはまだ使えないようで、「それじゃ、私が魔術を見せてあげるわ」ってレイナが言った時には、ものすごく羨ましそうな顔をしていた。

 

「頑張れー!」

 

「頑張って、お姉ちゃん!」

 

部屋から自分の杖をとったレイナは、広い庭の端っこに立つ。向かいには、大きな丸い木の的。

いつもならメリパパ監視の下でやるらしいが、せっかくのお友達とのことで、水魔術の初級『水弾』を見せてくれるらしい。

 

距離は10メートル。大きさは直径30センチといったところ。

射撃とかアーチェリーを経験したことがないため分からないけど、あの的に当てるのは相当難しいんじゃないだろうか。

 

私たちは、メリママたち含めた4人で、レイナの傍から見守る。

 

「オホン」

 

レイナは咳をひとつ。

 

小さな水色の結晶をつけた杖を指揮者のように振りかざし、静かにつぶやく。集中し、目を閉じている。

街の中の、庭の端っこだというのに、レイナからは静謐さが辺りに広がるように溢れ出る。

 

そして、レイナは口を開いた。

 

「汝の求める所に大いなる水の加護あらん、清涼なるせせらぎの流れをいまここに『水弾』」

 

杖の先に、小さな水の玉ができる。

それは拳大の大きさのまま、杖の動きと共にレイナの胸の前で止まり───。

 

「えいっ!」

 

スパッ!!

 

寸分の互いもなく、木の的を撃ち抜いた。

 

「すごい...」

 

思わずつぶやく。

 

「すごい!!お姉ちゃん、すごいよ!!」

 

「やったわね、レイナ」

 

「流石でございます」

 

それを皮切りに、みんなも口々にレイナを褒める。

 

「んふふ。ありがとう」

 

大絶賛されたレイナは、恥ずかしそうだ。

頬をかき、顔の赤いまま私に杖を渡す。

 

「ルミリスも。水魔術やってみようよ」

 

迷わず受けとったけど、さすがに的に当てることなどできそうにない。

けれど、ありがたく、この機会を受け取って水魔術を覚えてしまおう。

 

お風呂への階段を、ひとつ上った。




そういえば、設定をひとつ忘れてました。

龍族(古代龍族)

龍の世界では、赤竜など個として最強の種族をペットにしたり、家畜にしていた。

また、古代龍族の混血であるラプラスも、発生からしばらくは洞窟にて1人で過ごしていた。

これらのことから、龍族は寿命は数万と長いながらも、幼年期や乳児期の期間はほかの種族より短く、ほかの種に圧倒されないよう、早々に動けるようになっていたのではと推測。代わりに青年期が長いものとみる。



古代龍族の混血であるルミリスもその影響を色濃く受け、体の発達が早く、幼少期は人の1.5~2.0倍の成長速度だとしています。


さて、今週の投稿終わりました。

来週は、1、2話投稿するか、12月の終わりに5話くらいまとめて出すかもしれません。

では、さらばだー!!

ジャック・オー・ランタン様、誤字報告ありがとうございます!!
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