私のお父さん? 龍神オルステッドですよ? 作:口の端にほっぺが!
「ただいまー」
「失礼致します」
ついにはメリーも───メリーがメリママの腕をとり、水弾の軌道を変えて───水撃ち合戦に混ざり、3人で的の当て合いっこをすることおよそ1時間。
家の前から男性の声が聞こえ、それと同時にメイドのサリーが玄関へと向かう。
「あら。お帰りなさい、あなた」
「パパ!!」
「パパ、お帰りなさい」
遅れて、3人の親子が向かう。
どうやら、この家の主が帰ってきたようだ。
「ただいま、メリー、レイナ」
「おかえりなさい!!」
「お帰りなさい。パパ、友達もいるのだけれど...」
玄関ではメリーが抱き上げられ、レイナは頭を撫でられていた。
メリーはなんの恥じらいもなく嬉しそうだったが、レイナはどこか恥ずかしげだった。
そして、メリパパの視線が私を向く。
レイナとそっくりな柔和な目に、パパと同じくらいの高身長。
メリママも美人だったけど、こっちもこっちでレベルが高い。貴族のイメージさながらの穏やかさと高貴さを持ち合わせ、それでいて体もがっちりしている。
パパと比べるわけではないが、人付き合いも良さそうな、優しい顔をしていた。
「おお!お客さん!レイナやメリーと遊んでくれてありがとうね」
そう言って、娘2人とともに私の前でしゃがみこむ。
「ありがとうございます、ルミ。今日は、楽しかったね」
「ありがとうございます!!楽しかった!」
レイナもメリーも、楽しそうに笑う。
私も、ありがとうございました、と返す。
今日だけで、お互いにあだ名で呼び会えるほど、2人と距離が近くなった。
もうすぐ日が沈む。
そろそろ帰って、また別の日に遊ぶのだ。
街に来て2日目。いい関係を作れたと思う。
人助けなどの仕事をこなすパパのために、人脈を作る。そういった目的を考えないで、この無邪気な姉妹とは、これからも仲良くしたいなと思えた。
「よし、今日はもう遅い。ここら辺でお開きにして、家に帰ろうか」
「えー!!」
「しょうがないでしょ、メリー。また明日遊べばいいのよ」
「むー」
不満げなメリーに、微笑む家族。
ここ1,2年は人との接触が少なすぎた。
これを見れただけでも、この街に来た意味があったというもんだ。
「ルミちゃんは、送っていってあげよう。1年前にも領主様の娘さんがさらわれたこともあるからね。あまり遅くまで、遊んではいけないよ」
「ごめんなさーい」
「ご、ごめんなさい」
「気をつけますわ」
少し怒られてしまった。
まあ、この見た目だ。多少動けるとはいえ、夜道を歩けば格好の餌となる。
次からは、気をつけよう。
「じゃあ、行こうか」
「あたちもー」
「あたしも行くわ」
かくして、夕暮れの街を一緒に宿まで帰ることになった。
そして、問題は起きた。
まあ、予想はしていた。
小さな女の子が、宿で1人で暮らしているとあれば、普通の人はおかしく思うだろう。
というか、前世であれば絶対に保護されていた。
この世界でも、親は子供の友達が危険なことをしていれば、見逃せないわけだ。
「つまり、ルミちゃんは龍族で、まだ1歳半だって言うことでいいんだよね?」
「はい、そうなります」
私は、現在宿のテーブルに座り、ぴっしり背筋を伸ばしている。怒られてはいないはずなのに、怒られている気分だ。
斜め前に座るレイナも、少し困り顔が強ばっている。口の端がやや上がり、少々間抜けな顔になっていた。
私の隣に座るメリーは、私を励ますように背中を撫でてくれている。嬉しいことだ。
そして、私の正面。
メリパパが、難しい顔をして座っていた。脇には宿の主人も立ち、申し訳なさそうな顔をしている。
「龍族か...。英雄譚には聞いたことはあるけれど。小人族でも魔族でもなく、純粋に年が少ないわけだね」
「財務官様、この子はお金の計算も、文字も読めております。1人で暮らすのも可能かと...」
「危険か、可能かの問題じゃないさ。ただ、少しわからなくてね」
私を擁護してくれる主人に、穏やかにメリパパは返す。対する主人は汗がタラタラ垂れているけど。
髭のない顎を撫でるメリパパは、再度私に視線を向ける。
「それで、パパが一人いるんだっけ?」
「はい。近隣の村で起きている魔物の活性化を調べるために、私をここに泊まらせたんです」
そんなことは無い。呪いのせいで街に来れないなど誰も信じないからだ。
呪いというものを、普通の人はいまいち理解できないらしい。
たまに街に入ることがあっても、『小人族なんですよー』や、『うちのパパはビックリするほどシャイなんでー』なんかで誤魔化した。
一度目にしてしまえば、知識ある人だって私を心配し、すぐに離れるように言ってくるのが関の山。
そして、知識のある人は大抵冒険者。
こんな街中では龍族というのも知らず、呪いを理解できない人が占めている。
知らないことを知りたいと思って冒険に出るのは、こっちでも道理らしい。
唯一望みがあるとすれば、国のお偉いさんとかだろうか───。
待てよ?
うむうむ唸るメリパパの前で、私も唸る。
今、メリパパ財務官って言われなかったか?
まあ、貴族だったり街の重要な役職についてるのは想像できた。
それよりも、家の事だ。
確か、冒険者時代の剣があるとか言っていた。
仰々しく飾られてたもんだから、思わず感嘆だけして終わったが、良く考えればあれだけ立派な剣を使う冒険者だったってことだ。
どっちの方面でも、一般人よりも知識を持っている可能性がある。
冒険者と会う時は、だいたいパパと会ってから言い訳程度に呪いの話をする程度だったが、まだ嫌悪の呪いにかかっていない状態なら、望みはある。
───パパの呪いのことを、話してみようか。
「その」
「ん?なんだい?」
「『呪い』ってご存知ですか?」
「唐突だね。そりゃあ、呪子には若い頃に関わったりもしたし───」
そこまで言って、メリパパはハッとして顔をあげる。
「つまり、君のパパは呪子なんだっていう話をしたいのかい?」
「その通りです」
やっぱり知ってた!!いい流れ!
さて、ここからどう説明したものか。
少し軽めに『人に怖がられる呪い』とだけ言おうか。
『あらゆるものに恐怖され、親の仇のごとく嫌悪される』なんて言ってしまっては、大袈裟に取られて信用されないかもしれない。
少しステップをふむべく、今回は呪いがあるってことを理解してもらうだけでもいいかもしれない。
いや、やはりそのままを伝えるべきだ。
パパはこの街に入ることは無いし、この人は呪いがあるってことだけを知って終わるのだ。
多少の失敗があったとしても、リスクの少ない賭けだ。どうとでもなる。
「パパは、『この世の全ての者に悪魔のごとく恐怖され、親の仇のように嫌悪される』呪いを持ってるんです」
それを聞いて、メリパパは椅子に深く沈み、顎に手をやる。
「スペルド族のごとく恐怖、嫌悪される呪い。あの方の話では、スペルド族のも呪いという話だったか」
悪魔という言葉が、いつの間にか『スペルド族』という言葉に変換されていた。日本で言う鬼みたいな感じだろうか。
メリパパは静かに目をつぶり、何かを深く考えている。
宿の主人は私たちの顔を見回してキョドり、メリーたちも心配そうにメリパパの顔を伺う。
数十秒たったところで、メリパパは目を開いた。
「僕も昔、そういう呪いを持った子と縁があってね。その呪いの怖さも、よく知っている。君のパパが、街に入って来れない理由は、よく理解できる」
「それじゃあ」
「ただし」
「はい」
「やはり2歳にも満たない子供を、たった1人で宿に住まわせるのは危険だ。子供の教育について、龍族は文化が違うのかもしれない。けれどね」
そう言って、無意識なのかレイナの頭を撫でる。
彼女は嬉しそうに嫌がった。
「人間族の街では、子供は親と共に住む。面倒を見て、子供の安全を保証する。だから、ルミ。私たちの家で暮らしなさい」
「...ルミ、一緒にお家に来れるの?」
「パパは、その方がいいと思うんだ」
メリーは、嬉しそうに私の手を握る。
「ルミリス、うちにおいでなさい。パパとママが守ってくれるわ」
レイナも、なんだかかしこまって諭すように私に言う。口元はにやけ、頭に置かれた手を堪能しているように見えるけど。
しかし、そうか。
仲良くなった子のもとに一緒に住まわせてもらうという方法もあった。
いきなりそんなことを言ってしまえば図々しいけど、こうやって提案されると受け入れやすい。
ここは、メリパパの広い心に感謝して、一緒に住まわせてもらおう。
いずれ学校なんかに入った時に失敗しないように、この世界の生活における知識を学べる。
それに、元気な女の子2人と毎日過ごすのだ。
充実した2ヶ月になりそうだ。
「ぜひ、お願いします」
パパの呪いをわかってくれたこと。
思いがけぬ機会ができたこと。
2人の友達と、一緒に過ごせること。
これから予感する毎日に、思わず頬があがりながら、頭を下げた。
ターニングポイント2見ました!!
オルステッドかっこいい!!作画がすごい!!
これは青年期のルーデウス対オルステッドも期待ですね。
さて、前話からオリジナル脇キャラが出現しております。
今後の展開の都合上、ほかのssよりもオリキャラが多くなるかもしれません。数は抑えますが、何卒ご理解ください。
ではまた。
ユウれい様、ジャック・オー・ランタン様、誤字報告ありがとうございます!!