私のお父さん? 龍神オルステッドですよ? 作:口の端にほっぺが!
雪が降り積もる道を、男に抱えられて運ばれること1週間。
丁度冬の季節に入ったのか、ここ3、4日は降雪しっぱなしだった。
今日はしばらくぶりに空が晴れて、太陽をまみえることができたが、“ああ太陽”以上の感慨は湧きそうにない。
この三白眼の男は、雪だろうとなんだろうと平然と歩き続ける。なんなら弾かれるように雨粒も雪も彼を避けるので、視界不良以外の弊害が見つからなかった。
そんな彼の恩恵を受けてか、私自身濡れることなく、さらには寒さに凍えることもなく、“日本じゃ雪少なくなってきてたな”などと感慨深く思うほどには余裕があった。
それが何日か続いて、そんな感慨も消えた。
暇つぶしで雲の流れを眺めることも、遠くの赤々した山脈を見ることもできず、ただ目の前を睨む男を顎下から注視するだけ。
何も見えないとなると、男がつぶやくことも無くなり、習いたい言語に触れることも少なく。
超がつくほど暇でした。
男の戦いも、このジャングルから移動してめっきり減り、実際あの卑怯な男以外人を見ていない。
獣も冬眠の季節なのか、ジャングルで臭った獣臭すらしなかった。
ただひとつの救いは、少しずつ体に力が入ってきたことだろうか。
この世界では普通なのか、それともこの男の影響か、私が中身にいるからか、もう既にハイハイをできるようになった。
首も座り始め、足腰も、そろそろつかまり立ちできそうなくらいにはしっかりしてきた。
ほとんど抱えられて身動きしないのに、不思議だ。
早く体を動かしたいという気持ちが早って体に出てるんだろうか。
フラストレーションが溜まる。
そういえば、なんだか背中もむず痒くなってきた。
ここら辺の川はほとんど凍っていて、彼が体を拭いてくれないせいだろう。まあ凍っていなくても死ぬほど冷たいだろうから、必死に泣き叫ぶつもりではいるけど。
そんな心身むず痒い道中。
変わらない景色が過ぎる中、街道沿いに列になって並ぶ7つの石碑を見つけた。
誰かに雪を払ってもらったのか、その石の上には一切雪が積もっておらず、何が記されているのかはっきり見えた。
まあ、見えたとはいえどこかの家の紋章のようで、まったく見当がつかなかったけど。
いや、一つだけ心当たりがある。
というか、今見えている。
奥から2番目の石碑の紋章が記された腕輪が、彼の右腕についているのだ。
なんだろう、この人高貴な生まれなんだろうか。
確かに服の見た目や触り心地がいいと思ったけれど。
これは本当に貴族物語が始まるかもしれない。
まあこの間の武術見たせいで、お転婆令嬢やるのは決まったようなもんですけどね。
学校とかあるのかな、じゃあ尚更言葉を早く覚えたいな、などと妄想を膨らませていると、急に彼が足を止めた。
丁度石碑の前で足を止めたので、なにか説明でもしてくれるのかななんて見守っていると。
フスーー!!
金属製の笛を取り出して、めっちゃかすれた音で吹きました。
何!?一体何が起きたの!?
ていうか何してるの!?
まるでそれで終いだ、とでも言うように彼は遠くの空を見やる。
なんだろう。ペットのドラゴンとかでも呼んだのかな。犬笛みたいな感じで竜笛なんてのもあるのかもしれない。
まあ、この世界にドラゴンがいるのかすらまだ知らないけど。
しかし、よく見てみると彼の顔が、今まで見た事のない感じで僅かに歪んでいる。しかめっ面レベル10からレベル11になったくらいの違いではあるが、いつもと違う表情をしていた。
僅かな違いだ。そのうち顰め面ソムリエになれるかもしれない。
『光輝のアルマンフィ。参上』
「うあっ!?」
今まで何も無かった地面の上に、突然仮面の男が訪れた。真っ白な制服を前でとめ、狐のお面をかけた男性。
パリッとした印象が、仮面の不思議ちゃん感を消していた。
三白眼男は、それが当然かのごとく立ったままだ。
さっきの笛は、この人を呼ぶためだったらしい。
『...謁見か』
『ああ』
『そうか』
気のせいどころじゃなく、狐男の声が固い。
あんなに気安く呼んだことを怒っているのだろうか。
でも笛吹いたら来てくれる簡単仕様なのが悪いと思うし...。
互いに口数の少ない2人を見守っていると、不意に狐男の顔がこちらを向いた。
『その赤子は魔族か?』
仮面と平坦な声のせいで、どんなことを喋っているのか予想がつかない。
『...純粋な魔族では無いはずだ』
『わからぬ、ということか』
『...ああ』
なんだか、三白眼の彼が申し訳ない顔をしているように感じる。
ダメだ。どっちも感情の起伏が小さすぎて、どんなことを話しているのかわかりそうにない。はよ、はよ言葉を覚えねば。
すると狐男は、2本の筒を差し出してきた。
『素手でもて』
そう言って、そのうち1本を私に押し付ける。
『そのままで待たれよ。しばし』
それを見届けた狐男は、初めと同じように消えてしまった。
黄色のエフェクトと共に。
キ〇ル!?
何あれ!?すごいかっこいいんですが!?
あれは魔法ですか?それとも身体能力なんですか!?ピ〇ピカの実があるんですか!?
突っ立ったまま待つこと10数秒。
突然、真っ白な世界に引きずり込まれた。
驚いて周りを見渡しても、私を抱えていた男がいない。
「うあーー!」
軽くパニックになりかけた瞬間。視界が晴れた。
それと同時に、また彼に抱えてもらったのが感覚でわかった。
しばらくこの状態でいるからなのか、途端に安心感が私を包む。
落ち着いた頭で周りをゆっくり見回す。
「ええ...」
絶句した。
最初に目に入った女性の、その後ろ。
前世でも見たことがないほど巨大な城が、真っ青な空を突き抜くようにそびえ立っていたのだ。
『ようこそ』
狐男と同じように仮面をつけた女性が、言葉を発する。
しかし、あの男と違い警戒心よりも自慢のような、誇らしい思いを感じた。
『空中城塞ケィオスブレイカーへ』
オルステッドがペルギウスたちと会話しているシーンが少なすぎて難しい...。
ペルギウスはヒトガミのこと知らないようだし、オルステッドは基本的にノータッチなんだろうな。
七星は異世界に転移で戻りたいって願ったから、転移陣の権威であるペルギウスを頼ったんだろう。
ていうか、ペルギウスとオルステッドの実際の年齢っていくつなんだろう...。
転生体って、生まれたばかりじゃなくてもいけるのかな...?