私のお父さん? 龍神オルステッドですよ?   作:口の端にほっぺが!

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第4話 空中城塞ケィオスブレイカー

『ようこそケィオスブレイカーへ』

 

仮面の女性が誇らしげに胸を張る。

 

『主人がお待ちです』

 

言葉少なに、背中を向ける。

女性のくびれは後ろからは見えず、真っ黒なカーテンに覆われていた。

 

「あえ?」

 

羽じゃん。真っ黒な翼じゃん。

 

私の声に反応したのか、仮面の女性が振り返る。

それと同時に真っ黒な羽も向こうを向いた。

 

彼女の背中には、文字通り漆黒の翼がついていた。

 

『如何なされましたか?』

 

私の声色から疑問を読み取ったのか、女性が首を傾げる。

 

『おそらく、その翼が気になったのだろう』

 

『───左様ですか』

 

言葉は分からないが、多分彼が私の思ってることを言ってくれたような気がする。

というか、先程の誇らしさはどこへやら。彼への対応があからさまに素っ気ない。嫌われてるのだろうか。

 

仮面の女性は、一拍考え込む素振りを見せる。

そして、体をこちらに向けた。

 

『わたくしはペルギウス様の第一の僕、空虚のシルヴァリルと申します。この翼は、天人族のしるしです』

 

そうして、これ以上ないほどに綺麗なお辞儀をされた。

おそらく自己紹介でもされたのだろう。仮面の下に誇らしげな顔が浮かんでいるのが、手に取るようにわかった。

 

『では、行きましょうか』

 

再び彼女は背を向け、石畳を歩き出した。

なんだかチョロそうな雰囲気がしてきたよ?

 

 

 

 

 

それからおよそ1時間。

庭園と城内を通って王座の間に着くまで、カップラーメンどころか軽めの一食を作れるほどの時間がかかった。

真っ白な石畳。真っ青な空。

色とりどりの花畑。壮大な城門。精緻な彫刻。絢爛な壁画。

 

なんだか社会科見学をしているような気分だ。

 

ところどころ、彼が身につけている腕輪のものと似た紋章があるのを見つけた。

ここは彼の実家か何かだろうか。

これでもかと言うくらい怖い顔の人が

『おかえり、息子よ』とか言うのかもしれない。

 

でも、案内人いるし違うか。

話も少なかったし、古い知り合いを訪ねてるとかそんなだろう。

 

というか、ここまでの移動の仕方といいこの城といい、なにか神話めいた雰囲気を感じる。

ワープがこの世界では普通なんだ、とか彼はこの世界の有名な王族なんだ、とかなら納得できなくもないけど。

 

ともあれ、ここまでの道のりで不安に思っていたことはちゃんと解消されたらしい。

 

ここは、間違いなく異世界だ。

 

 

 

『これより先は、謁見の間にございます』

 

1時間を経て、私は両開きの扉の前にいる。

当たり前のように両脇に置かれたドラゴンの像。

ここに来るまでに見た、およそ客間や寝室だろう部屋のものとは一線を画す装飾。

 

なんて言ってるかは分からないが、ここが王座の間だろう。

 

『ここまで静寂を保てていましたが...。ペルギウス様は寛大なお方ですが、くれぐれも粗相のなきよう』

 

そう言って彼女は私を見た。

返事を求められてそうなので、とりあえず返事をひとつ。

 

「あう」

 

返事ひとつでも前世との乖離で違和感がすごい。

 

『問題ないだろう。この子は大人しい子だ』

 

『そのようですね』

 

反応のタイミングは合っていたようで、彼がなにか付け加えてくれた。

そして相変わらずの塩対応。

まあ確かに顔は怖いけどさ...。

 

前準備は終わりなのか、仮面の女性は扉に手をかける。

久しく感じたことの無い感覚に、喉が鳴った。

これは緊張だろうか。思えば、彼と行動を共にする間、そんな気持ちとは無縁だった気がする。

荘厳な扉が、ゆっくり、厳かに開かれる。

 

 

 

まっさきに見えたのは、巨大な空間の正面に鎮座する王座。

そして、そこに座る銀髪の男。

怖いというよりもいかめしい顔をした男からは、王者の雰囲気がビリビリ伝わってくるかのように錯覚した。

立派な髭をたくわえ、睨むようにこちらを眺めている。

 

そのまわりに並ぶ、11人。

王の側近、あるいは精鋭部隊であろう彼らは、全員が仮面をつけていた。

先程会った狐男も並んでいる。

私たちの前を進む女性も並ぶことで、左右同数になるのだろう。

 

ていうか、三白眼おじさんと髭おじさん、親戚なんじゃなかろうか。

髪色目の色顔立ち雰囲気。とても似通っている。

『おかえり、息子よ』もあながち間違いじゃないのかもしれない。

 

仮面の女性の言葉で、私たちは王座の前で止まる。

跪かなくていいのかな、でも家族だからいいのかな、などと逡巡しているうちに、髭のおじさんは口を開いた。

 

『よく来た。オルステッドよ』

 

『───ああ、久しいな』

 

和やかな雰囲気で会話が始まった。

オルステッド、という名前っぽい言葉も聞きとれた。どっちかの名前なのかもしれない。

ゆったりと会話が進む。

聞いている限り、旧交を温めているような雰囲気だ。家族と言うよりかは旧知の仲のような感じかもしれない。

 

一段落ついたのか、髭のおじさんが私を覗いた。

目が合うと威圧感をビシバシ感じる。

 

『して、オルステッドよ。その赤子の話が、貴様の今回の用件と見た』

 

『───ああ、その通りだ』

 

『旅の好きな貴様は、その途中一人の赤子をみつけ───見捨てられず、そして何か気になって我を尋ねたのだろう。違うか?』

 

『いや、全くその通りだ』

 

なんだか髭のおじさんは楽しそうだ。これだけ柔らかい雰囲気なら、私もこの人と話せるかもしれない。

本当に、言葉の習得は急務らしい。

 

髭のおじさんは、ゆっくりと髭を撫でる。

 

『我も驚いたぞ。───その赤子が、古代龍族の血を引いていることにな』

 

周りの仮面軍団が、驚いたようにぴくりとした。

 

『まさか、とは思っていたが、やはりそうなのか...』

 

『無論、人族や、あの忌々しい魔族の血も僅かながら混ざってはいる。だが、ラプラスの因子は欠片もない。鱗も尾もないが、間違いなく古代龍族の血筋だ』

 

普段からこのテンションなのか、それとも私を見て嬉しいのか、言葉の端々に興奮が感じとれる。

赤ちゃん好きなのか、私がなにか特別だったりするのか...。

転生したことを知られたのかもしれない。

 

『未熟だが、翼はある』

 

『それだけ血が濃いということだ』

 

2人の雰囲気は、まるで何かを発見した科学者のようだった。三白眼おじさんの申し訳なさそうな顔は気になるが、もしかしたら彼が誰かに産み落とさせた子供が私なのかもしれない。

まあ、だとしたら髭おじさんはもっと複雑な顔をするか。それに母親が分からない子供に私がなるのは嫌だしね。

 

『我と同じく、転生体の可能性もありそうだ』

 

『ああ。だが、それにしては存在がまだ希薄にすぎる』

 

『そのうちわかることだろう』

 

じろじろと見られながら会話が進む。

 

『そして、貴様が辛気臭い顔をしているのも、その用件のためであろう』

 

『───』

 

『俺の代わりに、その子を育てて欲しい、と。そう、言うのであろう』




ちょっとペルギウス饒舌すぎるかな?

ペルギウスはオルステッドの転生も知らないと見ました。



みやとも様、誤字報告ありがとうございます!!
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