私のお父さん? 龍神オルステッドですよ?   作:口の端にほっぺが!

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第5話 ペルギウスへの謁見

『若い貴様のことだ。旅を急ぐ自身より、腰を据えた我が龍族の末裔を育てるべきとでも考えたのだろう』

 

『───ああ、その通りだ』

 

喜びの表情から一転。髭のおじさんは、何かを咎めるかのように彼を問いただす。

方やその彼も、申し訳ないような難しい顔をしていた。

 

なんだろう。なんの話なんだろうか。

言葉を知らず、自分の立場を知らない私には、この場の決定権など持ち合わせていない。

なすがまま、2人の意志の下に連れ回されるべきだ。

 

しかし、そうあるべきとはわかっていても。どんな話がかわされているか分からないとしても。

 

私を拾ってくれたはずの彼には、こんな顔はしてほしくないと、そう思った。

 

 

 

『それにその赤子も、貴様からは離れたくないようだ』

 

驚いたように、彼が私を覗き込む。

私も驚いた。

いつの間にか、彼の袖をぎゅっと握りしめていた。

なんだか無意識下の行動が、赤ちゃんっぽくなっている気がする。これが幼児退行というのだろうか。

彼氏の一人もいなかった私は、人の袖をつまむなど、父親をカウントしなければ未経験なのだ。

 

『...』

 

『なに、その子も生まれたてとはいえ、龍の血を引く。貴様が赤竜の山に登ろうと、天大陸にゆこうと体を壊すことは無いはずだ』

 

とはいえ、私の無意識の行動は正しかったらしく、髭おじさんの顔に笑顔が戻ってきた。顔を上げた彼の顔にも、心做しか決意のようなものが宿っていた。

 

『ああ。俺もこの子を育てることで、学ぶことがあるかもしれない』

 

そして、初めて頭を撫でられた。

今この瞬間に、彼が私を認めてくれたような、受け入れてくれたような、そんな心地よい感覚が広がる。

ゴツゴツしていたが、どこか優しい。

最初に感じたのと、同じのはずで違った感触だった。

 

話も佳境を過ぎたのか、髭のおじさんはゆっくり居住まいを正す。

 

『さて、貴様はまだこの子に名を授けていないのだろう?』

 

『...ああ、そうだったな』

 

髭のおじさんは、ゆっくり笑みを深める。

 

『我がその子に名をさずけよう。アルーチェの丘に来るが良い』

 

『ああ、すまない。お前に頼もう』

 

笑みを交わし、三白眼おじさんの方は頭を軽く下げ、私たちは王座の間を出た。

 

 

 

結局、最後まで何を話しているのかわかりはしなかった。

しなかったが、彼が何かを決意し、私の運命も変わっていくだろうことをひしひしと感じた。

 

今まで自由だった彼の右腕が、守るように私を包み込んでいた。

 

 

 

 

 

『突然、すまなかったな』

 

『いえ、主人は寛大な御方です。ですが、以後気をつけていただくことをおすすめします』

 

『ああ、そうしよう』

 

行きと同じように、1時間を経て庭園の端に戻ってきた。

 

庭園を登っている最中はわからなかったが、下っている間に、その外側がみれた。

まるで真っ白な海を見ているかのようだった。

あたりには雲が浮かび、もっと下の方を見れば真っ白なそうも見えた。

 

このお城は、空に浮いているのだ。

 

ヤバいって!ラピュタだよラピュタ!!

思わず、手足をじたばたして彼に怪訝そうに見られてしまった。

 

スタート地点に着いてみると、初めはわからなかったが、そこには大きな魔法陣が横たわっていた。

おそらく、これを使って瞬間移動的なことをしたのだろう。景色が急に変わったことにも、理由がつく。

 

『それと、これを』

 

別れの挨拶の途中、帰りも案内をしてくれた仮面の女性が、一冊の本を差し出してきた。

端の擦れた、皮が張られた茶色の本。

 

『次代龍神は、あなたからその恐ろしい強さを引き継ぐのでしょう。そうでなくてもこの世界で生きてゆくには、ペルギウス様の勇姿と大陸の言語を知っていなくてはなりません』

 

それを彼に、半ば押し付けるように差し出した。

彼も、若干驚いたような顔をしながら受け取った。

 

『あなたが、その子に読んであげることをおすすめします。毎晩、その子が眠る前に』

 

渡されたのは、絵本とかだろうか。

人当たりが良くなさそうだな、なんて思っていたが、案外子供には優しいらしい。

まあ、彼が嫌われているだけで、根は愛想よかったりするのかもしれないけど。

 

『ありがたく、いただこう』

 

それ以上の言葉は交わさなかった。

少し無理をして首を回し、魔法陣の溝が淡く光り始めるのが見えたところで、再び真っ白な世界に飛び出した。




なんか書き忘れてるかな、っていう意識がいつも私につきまといます。
ここの話は特にその意識が強いです。
おそらく加筆修正します。


みやとも様、ジャック・オー・ランタン様、誤字報告ありがとうございます!!
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