私のお父さん? 龍神オルステッドですよ? 作:口の端にほっぺが!
『若い貴様のことだ。旅を急ぐ自身より、腰を据えた我が龍族の末裔を育てるべきとでも考えたのだろう』
『───ああ、その通りだ』
喜びの表情から一転。髭のおじさんは、何かを咎めるかのように彼を問いただす。
方やその彼も、申し訳ないような難しい顔をしていた。
なんだろう。なんの話なんだろうか。
言葉を知らず、自分の立場を知らない私には、この場の決定権など持ち合わせていない。
なすがまま、2人の意志の下に連れ回されるべきだ。
しかし、そうあるべきとはわかっていても。どんな話がかわされているか分からないとしても。
私を拾ってくれたはずの彼には、こんな顔はしてほしくないと、そう思った。
『それにその赤子も、貴様からは離れたくないようだ』
驚いたように、彼が私を覗き込む。
私も驚いた。
いつの間にか、彼の袖をぎゅっと握りしめていた。
なんだか無意識下の行動が、赤ちゃんっぽくなっている気がする。これが幼児退行というのだろうか。
彼氏の一人もいなかった私は、人の袖をつまむなど、父親をカウントしなければ未経験なのだ。
『...』
『なに、その子も生まれたてとはいえ、龍の血を引く。貴様が赤竜の山に登ろうと、天大陸にゆこうと体を壊すことは無いはずだ』
とはいえ、私の無意識の行動は正しかったらしく、髭おじさんの顔に笑顔が戻ってきた。顔を上げた彼の顔にも、心做しか決意のようなものが宿っていた。
『ああ。俺もこの子を育てることで、学ぶことがあるかもしれない』
そして、初めて頭を撫でられた。
今この瞬間に、彼が私を認めてくれたような、受け入れてくれたような、そんな心地よい感覚が広がる。
ゴツゴツしていたが、どこか優しい。
最初に感じたのと、同じのはずで違った感触だった。
話も佳境を過ぎたのか、髭のおじさんはゆっくり居住まいを正す。
『さて、貴様はまだこの子に名を授けていないのだろう?』
『...ああ、そうだったな』
髭のおじさんは、ゆっくり笑みを深める。
『我がその子に名をさずけよう。アルーチェの丘に来るが良い』
『ああ、すまない。お前に頼もう』
笑みを交わし、三白眼おじさんの方は頭を軽く下げ、私たちは王座の間を出た。
結局、最後まで何を話しているのかわかりはしなかった。
しなかったが、彼が何かを決意し、私の運命も変わっていくだろうことをひしひしと感じた。
今まで自由だった彼の右腕が、守るように私を包み込んでいた。
『突然、すまなかったな』
『いえ、主人は寛大な御方です。ですが、以後気をつけていただくことをおすすめします』
『ああ、そうしよう』
行きと同じように、1時間を経て庭園の端に戻ってきた。
庭園を登っている最中はわからなかったが、下っている間に、その外側がみれた。
まるで真っ白な海を見ているかのようだった。
あたりには雲が浮かび、もっと下の方を見れば真っ白なそうも見えた。
このお城は、空に浮いているのだ。
ヤバいって!ラピュタだよラピュタ!!
思わず、手足をじたばたして彼に怪訝そうに見られてしまった。
スタート地点に着いてみると、初めはわからなかったが、そこには大きな魔法陣が横たわっていた。
おそらく、これを使って瞬間移動的なことをしたのだろう。景色が急に変わったことにも、理由がつく。
『それと、これを』
別れの挨拶の途中、帰りも案内をしてくれた仮面の女性が、一冊の本を差し出してきた。
端の擦れた、皮が張られた茶色の本。
『次代龍神は、あなたからその恐ろしい強さを引き継ぐのでしょう。そうでなくてもこの世界で生きてゆくには、ペルギウス様の勇姿と大陸の言語を知っていなくてはなりません』
それを彼に、半ば押し付けるように差し出した。
彼も、若干驚いたような顔をしながら受け取った。
『あなたが、その子に読んであげることをおすすめします。毎晩、その子が眠る前に』
渡されたのは、絵本とかだろうか。
人当たりが良くなさそうだな、なんて思っていたが、案外子供には優しいらしい。
まあ、彼が嫌われているだけで、根は愛想よかったりするのかもしれないけど。
『ありがたく、いただこう』
それ以上の言葉は交わさなかった。
少し無理をして首を回し、魔法陣の溝が淡く光り始めるのが見えたところで、再び真っ白な世界に飛び出した。
なんか書き忘れてるかな、っていう意識がいつも私につきまといます。
ここの話は特にその意識が強いです。
おそらく加筆修正します。
みやとも様、ジャック・オー・ランタン様、誤字報告ありがとうございます!!