私のお父さん? 龍神オルステッドですよ?   作:口の端にほっぺが!

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第6話 天大陸へ

髭おじさんの城から離れ、私たちは再び森の中を歩き出した。

 

以前のジャングルとは違い、その辺りは人の集落に近いようだった。

2日にいっぺん程度の確率で、私たちは人とすれ違った。

 

巾着を背負い、腰に剣を帯びた、まさに武者修行中といった風情の青年。

急な取引に急いでいるのか、道無き道を突っ切る幸薄そうな商人。

一仕事終えたのか、ほっこりした顔で駄弁っている荒くれ者たち。

引越しの最中のような、貧しい親子。

 

すれ違った彼らのことごとくが、私たちを見て腰を抜かした。

 

というか、ただ歩いている彼を見て、強盗に包丁を突きつけられたかのような怖がり方をするのだ。

中には、まるで親の仇を見つけたかのように飛びかかってくる手合いもいた。

平然と進む馬を止めきれず、その場で落馬して気絶する人さえいた。

 

初めは、彼の恐ろしい顔を見た心胆か細き人が、怯えているだけだろうな、なんて面白そうに見ていた。しかし、どうにも様子が違う。

まるで小さき人間が巨人を恐れるがごとく、本能的に恐れているように見えた。

つまり、心胆凍えるようなしかめっ面が理由だ、という訳ではないということだ。

なにか、ジンクスだったり古い言い伝えでもあるのかもしれない。銀髪強面は世界の敵だ、とか。

 

とにかく、彼と一緒にいるとまともに人と会話ができない。

 

そう、会話。

私の言語習得への次なるステップは、会話の段階へと大きく進んだのだ。

 

彼は、私が眠る前に本を読んでくれた。

お城の去り際に渡された、あの一冊の本。

古びてながらも、丁寧に保管されていたらしいその本を、彼は毎晩読んでくれた。

 

内容は、『英雄ペルギウスの魔王退治』とかそんなだろうか。

ペルギウスという青年が、仲間とともに魔王を倒す、いたってありふれた王道ストーリーだった。

この世界の人の名前は、どうにも西欧の言語のものに近い。それを知ってからは、意味不明な文字の羅列から名前と思われる文字を聞き取り出すことに集中した。

 

ペルギウス、ウルペン、カールマンという3人の英雄。そして、魔王ラプラス。

この4人が、この物語の登場人物だろう。

 

そして、人物が分かれば自然と語順や文法、ストーリーがわかってくる。

この文はペルギウスが主語なんだな、ラプラスをどうこうしたんだな、という基本的な文構造は把握出来た。

 

しかし、如何せん知ってる単語が足りない。

 

彼が呼んでくれる本には、左ページに絵、右ページに文が描かれている。簡単に言えば絵本だ。炭で描かれた絵なので、白黒絵本と言うべきか。

その判別しづらい絵と、文章を比べ、物語の概要は掴めた。

だが、そうしたところで会話などできるはずがない。

そりゃそうだ。まだ『私は〇です』すら言えない。この世界の一般的なフレーズを知らないのだ。

なんなら、ここまで考えて私に名前がないことにも気がついた。

日本人が最初に習う、『I am ...』すら、この言語ではできないのだ。ふたつの理由で。

 

そこで、私は会話を望む。

 

私を抱えている彼と会話をすればいいじゃないか、と思われるかもしれない。

私も、初めはそれを考えた。

 

試しに、ペルギウスと思われる絵を指さしてみた。

 

彼の口から流れたのは、沢山の知らない単語に知らない話。

多分専門的な話をしているのだろう。ケィオスブレイカーだとかルイジェルドだとか、沢山の単語が出てきた。ちんぷんかんぷんだった。

簡潔に『彼はペルギウス。今も生きている』とか話して欲しかった。そうじゃない感がすごい。

彼はもしかしたら、話が下手なのかもしれない。

 

よって、私は街角のお姉さんや広場の子供たちがするような会話を求めている。

会話をするってよりかは聞くって方だが。

 

話がとっちらかったが、彼のせいで他人と話せそうにない。

もし私たちが街に入ったりしたらどうなるんだろう。阿鼻叫喚しか想像できないけれど。

日常的な会話を目指すには、一旦彼から離れる必要があるかもしれないかな。

 

 

 

それはさておき、人との邂逅が増えたということは、彼の戦闘も増えたということを意味する。

私が憧れる、あの手刀が見れるのだ。

 

しかし、彼の戦闘はパターンは決まっている。

 

1人、もしくは大勢がいっぺんにかかってくる。

剣を振りかぶる彼らが近づくところに、彼はこめかみを一殴り。

全員が一撃で地に沈む。

 

はっきりいって見応えはゼロだ。皆無だ。

こんな圧倒的な戦闘では、彼の技術を垣間見ることは難しい。

わかったことといえば、数十回人を殴っても、彼の拳は無傷だということ。

皮膚が頑丈なんだろうか。不思議だ。

 

それと、この世界の武器は刀が主流らしい。

西洋系の顔立ちのおっさんが、少し分厚めな刀を持っているのを見て、和洋折衷を感じたほどだ。

いや、剣に詳しいわけじゃないから、あれを刀というかは分からないが。

世界の端っこに、刺身や桜があったらいいな。

 

 

 

このあたりが、10数日かけて私が経験した、その成果だろうか。

体の成長も進んではいるが、今はジャンプして足腰を鍛えるくらいしかできそうにない。

 

しばらくの目標は、言語のさらなる習得、彼の手刀の解明、体の発達といったところか。

正直、3番目は時間に任せるしかない。

1つ目と2つ目は、彼以外との会話、彼に手刀を理解する、のふたつを直近の課題に据えればいいだろう。

なんにせよ、言語の発達が急務のまま、ということ。

 

この体は物覚えがいい気がする。

頑張ろう。

 

 

 

 

状況の変化というか、事態の急変はそれからすぐに来た。

一度遺跡の中にあるワープ魔法陣を使った少し後。目の前に現れた巨大な壁を、彼は何も気にすることなく駆け上がり始めたのだ。

 

もう一度。駆け上がり始めたのだ。

 

一歩一歩が、まるでソルのように爆発的で、小さな取っ掛りを踏みしめ、あっという間にかけ登る。

手刀の謎が解明したのかもしれない。

彼は人間じゃなかったみたい。

 

ものの数十分で、登りきった。

目の前には平原が広がる。

見渡す限り平坦な地形で、木の1本も生えていない。

 

それにかなり登ったはずだが、あまり酸素が薄い感じはしない。高度はおよそ数千メートル。もっと呼吸しづらく感じそうなもんだけど。

 

不思議な世界だ。




これを書いていると、たまにリ〇ロの世界観が飛び出してきてしまいます。おっとっとー

ユウれい様、鈍足通行人様、ジャック・オー・ランタン様、誤字報告ありがとうございます!!

ちなみにソルは「ワンピ〇ス」ネタですね。
2文字だと片方潰すとわけわかめになっちゃうので。致し方なく。
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