私のお父さん? 龍神オルステッドですよ? 作:口の端にほっぺが!
『早かったな』
ハッ!!
聞き覚えのある声に驚いて、私は急速に覚醒する。
あれ。ていうことは、私眠ってたのか。
まだ昼寝がないときつい歳ではあるけど、起きていたい時に起きていられるようにはしていたはず。
...ああ、白い花畑の中が最後の記憶らしい。
花の匂いにうっとりして眠ってしまったようだ。乙女だね。
ともあれ、ここは花畑の中でも、平原のど真ん中でもない。
薄暗い洞窟の中だ。いや、洞窟とは少し違う。
遺跡と言った方が近いかもしれない。
そんな薄暗闇の中。ラピュタ強化版で見た髭のおじさんが威風堂々立っている。
彼は煌びやかな服を着ていないのに、まるで光っているようだ。これが神々しさとでも言うのだろう。
その傍らには仮面の女性が控える。
そして、その奥。お風呂一家庭分の大きさの泉が横たわっていた。
底に魔法陣がかかれ、その光が水に反射して天井を彩る。ナイトプールか、ここは。
『赤子を』
やがて私は、彼から仮面の彼女に手渡される。
彼女の抱え方は独特だった。背中の翼まで使い、丁寧に包み込む。これ以上ないほど優しい持ち方だ。
ゆっくりと、私は髭のおじさんの前に運ばれる。彼は泉のそばの椅子に座り、まじまじと私を見た。
『ふむ。銀髪に、金色の眼。稲妻のような目から、多大な好奇心と、それでいて理知も垣間見える。良い子だな』
まだ、何を言っているのか分からない。だが、これから何か神聖な儀式が行われる予感がした。
髭のおじさんが片手で泉の水をすくい上げ、握りつぶす。それを肩に押し当て、ゆっくりと私の頬に触れた。
一瞬冷たいように感じたそれは、心地よいくらいに温かかった。
『我、甲龍王ペルギウスの名において、龍の卵たる赤子に恵みを授けん』
『我が手によって洗礼し、我が名において命名せん』
『健やかに殻を破り、強く、賢く、そして優しく育つよう命名す、此れなる赤子の名は...〘ルミリス〙』
その言葉が紡がれたとき、私の中で何かが温かく熱をもった。恋や、単純な発熱とも違う。あるいは、それら全て。
なにか、命とも言えるほど大きなものが、私の中で息を吸う。
髭のおじさん───どうやらこの人がペルギウスらしい───から仮面の女性に渡され、そして彼の腕の中に戻る。
彼は、いつもの恐ろしい顔をわずかながら綻ばせた。
『〘ルミリス〙。いい名前だ』
ルミリス。そう呼ばれた。
こっちの世界で生まれて、ようやく名前が着いたようだ。
それもそうか。こんな仰々しいことをしないと名付けができないとなれば。
いや、物語にもなる歴史上の人物と彼が知己だったのだ。そのおかげということもあるかもしれない。
可愛い名前。前世の名前も気に入ってはいたが、この体は『ルミリス』の名を喜び喝采するように、熱を帯びる。
なんだろう。凄く嬉しい。
そうか、私はルミリスなんだ。
1話1話が短いのはここまでです。
ここからはおそらく3000字以上になるでしょう。