私のお父さん? 龍神オルステッドですよ?   作:口の端にほっぺが!

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第9話 2冊の本

「ただいまー」

 

任務を完了したあとは、すぐにパパの残る洞窟宿へと戻る。

パパの話では、この近くにミリシオンという大きな街があるそうだが、以前のこともあるので、私は寄り道せずに帰る。お転婆少女でも、門限は守るのだ。

 

それに、この見た目の子供が1人で街へと出れば、問答無用で保護者探索が始まる。

 

お嬢ちゃん、お父さんやお母さんはどこかな?

家には帰れるの?

街の外に出たら危ないわよ?

私たちがご両親の下まで連れて行ってあげる。

 

四連撃で、私は母親たちをパパの下へ連れていかなければならなくなる。結果はご存知。阿鼻叫喚。

 

それがあってからは、あまり街に入らないようにしていた。

 

せいぜい、子供たちだけで遊んでいるところにさりげなく紛れ込む程度。

 

子供らしいことをしたいのに、パパが弊害すぎる。まあ、あまり悪くいうつもりはないけど、さすがにもう少し育ったら独り立ちする必要があるかもしれない。

友達は欲しいからね。

 

 

 

そんな可哀想なパパは、洞窟の奥で焚き火をしていた。

火のそばには、おそらく近場で穫ったらしい獣の肉が添えられている。

 

顔も怖いし、妙に怖がられるパパではあるが、とても優しい人なのだ。

 

それを知っているのは私だけで、妙に怖がることも無いのは私だけ。思う存分甘えて、私がほかの人たちの分まで埋めてあげよう。

それが、まず最初の恩返しだ。

 

「おかえり」

 

「ただいま、パパ」

 

とりあえず、抱きつく。

毛皮の服は少しザラザラしていて、しかもパパは体がゴツイ。少し痛かった。

それでも、困ったような顔をしつつも、パパは嫌がる素振りを見せない。

成功だ。

 

「...ルミリス、それはなんだ?」

 

パパは、私が飛びつく前に地面に置いた、2冊の本を気にしている。

 

「商人さん助けたら、お礼にくれた」

 

「───ああ、魔石は怖がらずに受け取ってくれたようだな」

 

「うん」

 

少し、驚いた顔をしていた。

なかなか見ない顔を見て、少し嬉しくなった。

 

 

 

食事が終わったあとは、パパの読み聞かせタイムが始まる。

何故か抱きつくよりもこそばゆく感じるが、これは重要な機会だ。

今以上に言葉を理解するためには、毎晩本を読んでもらい、沢山話すしかない。

 

新しく手に入った『聖ミリスの世直し』を読んでもらいつつ、ふと思い至る。

 

『山道に崩れた荷車と、怪我した馬、そして気を失った男がいる。そいつの懐に、この魔石を入れてこい』

 

今日のお使いの文言。

実際は荷台が転げ落ちる寸前で私が彼らを助けたので、そんなことには至っていない。

それにあの他に転げ落ちている馬車があるとも考えられない。

それだけ危険な場所なら、高価な本を運ぶあの商人が、そんなルートを選ぶわけが無いはずだ。

 

言うなれば、パパの言葉は、起こりうる可能性を表している。

パパは、未来の話をしているのだ。

なんなら、今までのお使いに関してもまるで未来を予知するかのようなものも多かった気がする。

 

何故未来を知っているのか。

疑問ではある。

しかし、未来予知なんて特殊能力は、どの漫画でも巨大な組織に狙われる運命にある。

パパも、隠しておきたいかもしれない。

今はまだ知らないふりをしておくのが懸命だろう。

 

 

 

それからいくつかの夜を越えた。

『聖ミリスの世直し』を読み終え、『火魔術上級読本』の説明も受け終えた。

 

『聖ミリスの世直し』は、端的に言えば『新約聖書』に近い気がする。

キリストはこういった行動をとり、その後にこう説明しました。それのこっちバージョンだ。

聖ミリス様はこうこうこんなことをしました、という短編集だ。

おそらく、人の街に出てみればミリス教という宗教があちこちで信仰されているのだろう。

転移魔法陣があれば、人の往来も宗教の広まりも、元の世界よりも早いはずだ。

 

そしてもう一冊、『火魔術上級読本』。

これは、おそらく魔術の教科書だ。なかなか難しい文字が多く、パパに読んでもらってそれとなく理解できた。

 

体を血液のごとく流れる魔力。

それを体に練り込むのではなく、外に出すのだろう。それも、何かを媒介にして自然現象にかたちを変えて。

 

その媒介というのが、呪文らしい。

 

そう考えたのだが、パパいわく“無詠唱でも、魔法は発動する”らしい。

媒介を用いず、手動で魔力のすがたをかえるのだろうか。イメージが湧かない。

パパにやって欲しいと頼んでみて、下級魔術『火球』というものを見たが、仕組みはわからなかった。

 

ともあれ、何事も実践から、と人は言う。私もそっちのタイプの人間だ。

 

パパに詠唱を教わり、とりあえず両手から小さな火が出た。

 

そして手のひらを火傷し、急激なめまいと共に気を失った。

 

感動的な初魔術は、散々だった。

 

しかし、魔力を使うということは、闘気を練り上げる感覚にも繋がるものがあるかもしれない。

 

くじけずやっていこうと思う。




一日で1500PV超えるのは、無職転生の盛り上がり具合を顕著に示しますね。

書きだめはあと2日分あります。
速筆重視で書いているので、本筋よりもサブストーリーが増えるかもしれません。ルミリスのおつかい編とか。

ルーデウスまだかー、という方もいるかもしれません。
書きだめの様子だと、転移災害は20話辺りで来ると思います。
あの少年の出番は、まだまだ先ということですね。

では、また明日。

ジャック・オー・ランタン様、誤字報告ありがとうございます!!
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