転生したら蜥蜴人族の友人と邪仙の恋人ができた件   作:乃出一樹

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お待たせしました、第100話となります。

ついに100話です。ここまで投稿を続けてこられたのも皆様の応援のお陰です。本当にありがとうございます。

これからもどうぞよろしくお願い致します。


原初の青、襲来③

目を覚ますと、そこには知らない天井があった。

 

・・・・・・って、いやいや。違う。ここには見覚えがある。そう、ここは・・・

 

 

 

「・・・・・・・・・青娥さんの、家・・・?」

 

 

 

呟きながら俺はゆっくりと身体を起こす。起きたはいいが、何故か頭がぼんやりする。はて、俺は何故青娥さん家のベッドに?一体何をしていたのだったか・・・・・・

 

 

 

「あら、気が付かれましたか」

 

「──っ!?」

 

 

 

その時、横から掛けられた声を聞いた俺は一瞬で全てを思い出した。思い出してしまった。

 

ひゅっと喉から空気が漏れる。俺は表情が引きつるのを感じながら、ゆっくりと声のした方へ顔を向ける。そこにはやはり、先程戦っていたレインさんの姿があった。

 

 

 

「おや。顔色が悪いですね・・・如何なさいました?」

 

「あ、はは・・・・・・そんなこと・・・」

 

 

 

あなたが目の前にいるからです・・・とはとても言えず、俺は曖昧に笑って誤魔化した。遅れて気付いたのだが、青娥さんの姿がどこにもない。どこかへ出掛けているのだろうか。

 

レインさんと二人きりという事実に俺は少しばかり不安になる。と、そこで俺の脳裏にレインさんとの模擬戦で意識を失う直前の状況が浮かぶ。そう言えば、アソコはどうなったのだろうかと俺は恐る恐る下半身に目を向けた。

 

 

 

「・・・・・・?あぁ、御心配無く。そちらは綺麗に治してありますよ」

 

「オギャーーーーーッ!!?」

 

 

 

俺の様子を訝しげに観察していたレインさんだったが、俺の視線の先を見ると納得したように小さく頷く。すると何をとち狂ったのか、いきなり俺のズボンをずるりと脱がしたのである。彼女の取った予想外過ぎる行動に俺は堪らず情けない悲鳴を上げてしまった。アソコが丸出しの状態で。

 

 

 

「なっ・・・!ななな、なぁっ・・・何すんだァ!?」

 

「いえ、何やら気になっているようでしたので・・・コレが」

 

「見るな!もういい!もういいから離して!」

 

「・・・・・・・・・・・・・・・何やってるんですか?あなたたち」

 

 

 

レインさんとズボンの引っ張り合いをしていたその時、ドアの方から声がした。そちらに視線を向けると青娥さんが呆れた顔をしてこちらを見つめていた。

 

 

 

「お帰りなさいませ、青娥様」

 

「あぁああああ!青娥さんお願いします助けてぇええーーー!」

 

「・・・・・・レインさん?」

 

 

 

形振り構わず悲鳴に近い声を出して俺は青娥さんに救いを求めた。青娥さんは小さく息を吐いた後、にこりと笑みを浮かべながら、どこか圧のある声でレインさんを呼び掛ける。すると、レインさんは真顔のまま俺のズボンから手を離した。

 

 

 

「アクト様ったら、そんなに驚かなくても良いじゃありませんか。ただ怪我の具合を確認したかっただけですのに」

 

「他人にズボン脱がされてチン・・・アソコが丸出しになったらそりゃ驚くだろ!」

 

「怪我なら私の神聖魔法で綺麗に治しましたので御心配なく!」

 

 

 

眉を下げ、困ったような顔をして呟くレインさんに俺と青娥さんはそれぞれそう叫んだ。それはさておき、俺の股間は青娥さんが治療してくれたらしい。改めてこっそり確認すると、確かに傷一つない綺麗な状態だった。

 

・・・・・・つまり、青娥さんにアソコを見られてしまったという訳なのだが。うん、まぁ・・・忘れよう。

 

 

 

「あ、あー・・・・・・その、治してくれてありがとうございます、青娥さん」

 

「うぅん、気にしないでいいんですよ。あれくらいで・・・って言っていいのかは微妙ですが・・・とにかく無事で良かった」

 

 

 

青娥さんに礼を言うと、彼女は少し苦笑してからそう答えた。多分、俺がレインさんに股間を潰された時のことを思い出していたのだろう。

 

・・・・・・負け方はともかく、完敗だった。『脱獄者』はレインさんの意表を突けていたが、それ以外の俺の力は全て彼女に届かなかった。しかも手加減までしてもらってあの様だ。青娥さんの見ている前で。

 

 

 

「・・・・・・アクトくん?どうかしました?もしかして、まだ痛い?」

 

 

 

そんなことを考えていると、心配そうな顔をして青娥さんがこちらに近寄ってきた。ベッドの左側に屈んでこちらの顔を覗き込んでくる青娥さんに少しどきりとしつつ、俺は曖昧に笑う。

 

 

 

「はは・・・いや、怪我はもう何ともないんです。ただ・・・・・・情けなくて」

 

「情けない?・・・・・・アクトくん。レインさんは本当に強い人・・・悪魔です。それこそ、カリオン様たち一部の魔王よりも。だから、例え手加減された上での敗北でも、それを恥ずかしく思う必要はないんですよ」

 

 

 

青娥さんはこちらを真っ直ぐ見つめ、優しい声色で諭すようにそう告げた。俺は首を横に小さく振って口を開く。

 

 

 

「そうじゃないんです・・・・・・昨日、青娥さんの傍にいるとか、大切な人になれるよう頑張るとか、あれだけ格好付けたのに、昨日の今日でボロ負けでしょ?だから・・・はは」

 

 

 

俯いて自嘲し、そう語りながら拳に力が入る。情けなさや恥ずかしさ、いくつかの暗い感情が胸の中で渦巻く。

 

俺の言葉の後、青娥さんは黙ったままだった。つい青娥さんから視線を逸らしてしまったが、沈黙に耐えきれずそっと顔を上げ彼女の反応を見る。その時に俺が見たものは、きょとんとした様子でこちらをじっと見つめている青娥さんだった。やがて青娥さんは呆れとも笑みともつかない息を漏らす。

 

 

 

「・・・・・・もう。そんなことを気にしてたんですか?」

 

「まぁ、一応・・・・・・俺にとっては、大事なことなんで」

 

「・・・そう。大事なことなのね・・・・・ふふっ。約束、守ろうとしてくれたんだ?・・・・・・ありがとう、アクトくん」

 

 

 

青娥さんの手が、俺の固く握り締められた左手にそっと重ねられる。白くて綺麗な温かいその手に触れられ、僅かに身体が跳ねた。驚いて彼女を見れば、こちらに向ける目元が柔らかく緩められる。

 

気が付けば、ほんの少し前まで胸の中を埋め尽くしていた嫌な感情は消え始めていて。今度は正体の分からない熱が、鳩尾からじわじわと込み上げてくる。ただ、少なくとも悪いものではない筈だ。俺はその熱を確かめるように手で胸に触れながら、青娥さんと静かに見つめ合った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「────こほん」

 

「「あっ」」

 

 

 

その咳払いが耳に入り、俺と青娥さんの間の抜けた声が重なった。

 

・・・・・・マズイ。レインさんのことすっかり忘れてたな。

 

 

 

「すみませんが、私だけ残して二人の世界に入らないでくださいます?」

 

「ご、ごめんなさいね?レインさん・・・」

 

「すみませんでした・・・・・・と、ところでレインさん。青娥さんに何か話があったんじゃ・・・」

 

 

 

不機嫌そうに眉を顰めるレインさんに苦笑しながら俺たちは謝った。申し訳無く思いつつも、俺は模擬戦を行う前のここでのやり取りを思い出してそう訊ねる。

 

 

 

「ん?・・・・・・あぁ、そうそう。うっかり忘れてました」

 

「えぇ・・・」

 

 

 

首を傾げた後、そう言って頷いたレインさんに俺と青娥さんは顔を見合わせた。内心呆れたが、確か急ぎの用事でもないと言っていたし、大したことでは無いのかもしれない。

 

とりあえず、寝たままなのもどうかと思った俺はベッドに腰掛ける。すると青娥さんが俺の右隣に座り、何故かレインさんも左隣に座った。俺と青娥さんがその行動に驚く中、特に気にした様子もなくレインさんは口を開いた。

 

 

 

「ジュラの大森林に、異界と繋がりそうな兆候が見られました」

 

「・・・・・・マジですか」

 

 

 

レインさんから告げられた言葉に青娥さんの口が引きつる。何のことか分からない俺は二人の顔を交互に見た後で青娥さんに質問した。

 

 

 

「あの、青娥さん。異界って・・・?」

 

「おっと・・・そうですね、アクトくんにも分かるようにちゃんと説明しないと」

 

「では、私の方から簡単に」

 

 

 

青娥さんの代わりにレインさんが説明役を買って出てくれた。軽く頭を下げる彼女にお願いしますと俺も慌てて頭を下げる。距離が近いのが気にはなるが、一先ずそれは置いておこう。

 

 

 

「まず、我々が今こうしている世界を『半物質世界』または『基軸世界』と呼びますが・・・この場においては『基軸世界』で呼び方を統一させて頂きます」

 

 

 

『半物質世界』・・・昨日青娥さんから聞いた言葉だ。ざっくり言うと魔素のある世界のことで、俺と青娥さんが元いた魔素の無い世界を『物質世界』と呼ぶのだったか。

 

 

 

「ここ『基軸世界』は、『物質世界』やいくつかの『精神世界』と重なり合って形成されており、その『精神世界』を我々は『異界』と称しています」

 

 

 

と、ここで『精神世界』について何も知らないだろうと察した青娥さんが捕捉をしてくれた。

 

『精神世界』とは文字通り精神生命体が暮らす世界のことで、悪魔たちが暮らす『悪魔界』や精霊たちが暮らす『精霊界』等があるのだとか。

 

 

 

「『基軸世界』と異界は勿論地続きではないので簡単に行き来は出来ません。しかし、稀にですが何らかの原因によって空間に亀裂が生じる場合があります。それが大きく広がると異界の裂け目となり、あちらとこちらの世界が繋がってしまうのです。そして今回こちらと繋がりそうな異界ですが、『侵略種族(アグレッサー)』たちの巣食う異界だと思われます」

 

「まぁ、レインさんが動くということはそうでしょうね」

 

 

 

頬に手を当てながら困ったように青娥さんは呟いた。

 

侵略種族(アグレッサー)』。レインさんからの説明によれば、異界にて互いに争いながらこちらの世界への侵攻を目論む半精神生命体である種族たちをそう呼ぶらしい。

 

その種族とは、『蟲魔族(インセクター)』、『幻獣族(クリプテッド)』、『妖魔族(ファントム)』の三つ。これらの種族は悪魔や精霊たちと違って半精神生命体なので、時間を掛ければ具現化が可能なのだとか。

 

 

 

「我々の調査によると、恐らくですが今回現れるのは『蟲魔族(インセクター)』かと思われます」

 

「種族名からして、虫っぽい魔物なんですか?」

 

「えぇ。蟷螂だったり蜘蛛だったり飛蝗だったりと様々です。細かく分類すると、蟲魔族(インセクター)の中でも人型の上位種を蟲型魔人(インセクター)、虫そのものの姿をした下位種を蟲型魔獣(インセクト)と呼びますね」

 

 

 

人型の蟲か・・・・・・『冒険王ビィト』に登場した魔人(ヴァンデル)のロズゴートやベンチュラみたいな感じだろうか。

 

 

 

 

蟲魔族(インセクター)の特徴としては、魔法に対する優位性を持つ者が多いことですね。なので魔法を得意とする法術師(ソーサラー)や並みの悪魔族にとっては天敵のような存在とも言えます」

 

「まぁ、私クラスになればなんてことは無いのですけれど」

 

 

 

ふふん、とレインさんは自慢気な笑みを浮かべる。苦笑してしまったが、実際大口を叩くだけの実力をレインさんは持っているんだよな。

 

 

 

「・・・おっと。それと蟲魔族(インセクター)は下位種である蟲型魔獣(インセクト)でもB~B+程度の強さがあります。下級個体はほとんど知能がありませんが恐怖心も無いので、相手がどれだけ強くても基本的に逃げることはなく襲い掛かってくるんですよ。なのでもし現れたら殲滅させる他ありません」

 

 

 

真剣な表情に戻って俺にそう告げるレインさん。彼女はさらにこうも言った。

 

極一部ではあるが、蟲型魔人(インセクター)の中には並の魔王すら凌駕する個体も存在するのだと。最も、そういった実力者は『幻獣族(クリプテッド)』や『妖魔族(ファントム)』にもいるらしいが

 

 

 

「アグレッサーたちを放っておくと、こちらの世界に甚大な被害が出ます。最近ですと七十年前・・・オークたちの国であるオービック付近と繋がった異界から蟲魔族が大量に出現。その時はカリオン様に対処して頂いたのですが・・・とある事情から対応が遅れた為に、オービック中の木々や作物が食い荒らされてしまいまして。結果、オークたちが困窮し始め、オービックはほぼ壊滅してしまいました」

 

 

 

七十年前は最近では無いと思うが・・・・・・いや、それよりかなり大事じゃないか。何故忘れてたんだこの悪魔。

 

 

 

「・・・てか、オーク?」

 

 

 

ふと、オークロードのことが頭に浮かんだ。オークロードの出現による影響と思われるここ最近のオークたちの行動・・・・・・この七十年前の事件が何か関係しているのだろうか。

 

ちら、と右隣に座っている青娥さんを見る。彼女も同じことを考えていたのか、俺と視線を合わせながら小さく頷いた。

 

 

 

「・・・・・・オークたちの件は一先ず置いておきましょう。それで、レインさん。つまり今回のお話というのは、その異界の裂け目を何とかする為に私たちに協力して欲しいということですか?」

 

「流石は青娥様、話が早くて助かります」

 

「お世辞は結構・・・・・・・・・もう、オークロードだけじゃなく侵略種族(アグレッサー)まで現れるなんて」

 

 

 

額に手を当てながら、困った顔をして青娥さんは溜め息を吐いた。と、ここでレインさんがオークロードについて訊ねてきたので俺が簡単に説明する。

 

 

 

「なんと。オークロードとは・・・これはまた悪いタイミングですね」

 

「あの、レインさん。その侵略種族(アグレッサー)・・・蟲魔族(インセクター)か。今回現れるかもしれないそいつらとオークロード、どっちの方が厄介だと思います?」

 

 

 

俺がそう訊ねたところ、レインさんはふむ、と思案し始める。目を伏せていた彼女だが、すぐに顔を上げて答えを出した。

 

 

 

「・・・・・・オークたちの数が不明なので断言は出来ませんが、恐らく蟲魔族(インセクター)かと」

 

「それは、さっき言ってた魔王よりも強い個体がいるから、ですか?」

 

「いえ。確かにそのような個体はいますが、そうそう現れはしません。私がそう判断した理由は二つ。まず侵略種族(アグレッサー)たちは大規模な群れでやってくることが多いのですが、群れを統率する個体がそれなりに強いのです。最低でもAから特Aランクくらいですね。ちなみに、オークロードのランクはA+くらいだと聞いたことがあります」

 

 

 

特Aランク・・・ということは、ユーラザニアのダンジョンで戦ったドラゴンゾンビと同じくらいの強さか。どちらも厄介だが、オークロードの強さの目安が分かったのは収穫だな。

 

 

 

「そして二つ目。今回我々が察知した異界の裂け目ですが、実は二ヶ所あるんです」

 

「はっ!?」

 

 

 

青娥さんがぐいっと身体を乗り出しつつ声を上げた。胸が俺の身体に当たっているが、今指摘すると二人に揶揄われそうな気がするのでぐっと堪える。大事な話の最中でもあるし。

 

 

 

「一つはジュラの大森林の北側に、もう一つは西側で確認されまして。恐らく明日中にはどちらもこちらの世界と繋がるでしょう」

 

 

 

レインさんから告げられた内容に俺と青娥さんは思わず顔を見合わせる。まさか明日とは・・・オークロードよりも先に何とかしなければならない事件が起きてしまった。

 

 

 

「異界の裂け目が二つとなると、流石に私でも手が足りず・・・・・・そこで青娥様に協力して頂こうとこうして参った次第でございます」

 

「青娥さん・・・その、これは流石に・・・」

 

「そうですね・・・・・・やるしかないでしょう」

 

 

 

再び青娥さんは溜め息を吐いた。先程よりも深く。

 

 

 

「まぁ!ありがとうございます青娥様!青娥様と、それにアクト様も力を貸してくださるのなら百人力ですわ」

 

「・・・・・・とりあえず、一度シス湖に戻りましょうか。ガビルさんや首領さんたちにもこのことを伝えなければいけませんし・・・」

 

「ですね・・・」

 

 

 

嬉しそうに微笑むレインさんとは対照的に、俺と青娥さんの表情は暗い。俺たちは二人でそう話すと、頭を悩ませながら青娥さんの『空間移動』でブルムンドを後にするのだった。




異界や侵略種族(アグレッサー)等の情報が間違っていたらすみません・・・
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