転生したら蜥蜴人族の友人と邪仙の恋人ができた件   作:乃出一樹

104 / 127
お待たせしました、第104話となります。

Switch2、抽選落ちました。


傀儡国ジスターヴ①

クロコダインに名付けを済ませ、無事に彼を味方に引き入れることに成功した俺たち。頼もしい仲間をさらに増やした俺と青娥さんは、テングを連れてレインさんが待つブルムンドにある青娥さんの家の前へと転移していた。

 

クロコダイン、それからガビルとシーザーはどうしたのかと言うと、それぞれの住処で待機してもらっている。万が一オークたちが攻めて来た際に皆を守れる戦力がいないと不味いだろうと判断したのだ。仮に二人の力が必要になる場面があったとしても、俺が名付けをしたガビルたちなら『魔物師者』の権能でいつでも近くに召還出来るし、元居た場所に送還も出来る。

 

よって、俺が呼び出すことの出来ないテングのみこうして一緒に付いてきてもらった訳だ。最初、魔物を人間の街に連れ込むのはどうかと思ったが、何も街中を歩かせる訳じゃないし、そもそも俺だって魔物なのに普通に出入りしているので誰かにバレなきゃ問題は無いだろう。多分。

 

 

 

「レインさん、お待たせしました」

 

「あら。思ったよりお早いですね」

 

 

 

家の中に入るとソファの上でぐでっと横になっているレインさんがいた。完全に寛いでいるその姿を前に青娥さんは苦笑する。

 

 

 

「あのー・・・アクトさん、あちらの方は・・・?」

 

 

 

青娥さんに続いて家に上がろうとした時、後ろにいるテングがちょいちょいと俺の服の裾を摘まみながら訊ねて来る。どこか怯えているようにも見えるが、もしかしてレインさんの力を本能的に察知したのだろうか。

 

 

 

「ん?あぁ、レインさんって言うんだ。青娥さんの友人で、十大魔王のギィ・クリムゾン・・・様だっけ?その人の部下をやってる悪魔だよ」

 

「ぎっ、ギィ・クリムゾン!?あの『暗黒皇帝(ロード・オブ・ダークネス)』のぉ!?」

 

「ちなみに、『上位魔将(アークデーモン)』を越えた『悪魔公(デーモンロード)』っていう種族らしいぞ」

 

「『上位魔将(アークデーモン)』を越えた・・・!?なにそれぇ・・・!」

 

 

 

俺が喋る毎にテングの動揺と震えが加速していく。仮面の下の素顔が今どうなっているか想像してつい口元が弛んでしまった。

 

 

 

「・・・・・・おや。『長鼻族(テング)』じゃないですか。まさかスカウトしてきたので?」

 

「はっ、はいぃ・・・!名も無きただの一般長鼻族(テング)でございますぅ・・・どどどどうかお見知りおきを・・・!」

 

 

 

そんなやり取りをしていると、レインさんがテングの存在に気付いた。レインさんに見詰められたテングはまるで蛇に睨まれた蛙のように縮こまりながらそう返答する。

 

 

 

「ガビルさんたちの言っていたリザードマンを味方にするついでに連れてきちゃいました。結構な実力者みたいですし、きっと役に立ってくれますよ」

 

「どうやらそのようですね。ちなみに本来の目的であるそのリザードマンは?」

 

「勿論、そっちも問題無いです。名付けも済ませました」

 

「それはそれは」

 

 

 

俺と青娥さんからの報告を受け、レインさんはソファに座り直る。このまま立ったままというのもアレなので、俺たちもとりあえず適当な場所に腰を下ろす。それから一息吐いたところで青娥さんがレインさんに訊ねた。

 

 

 

「それでレインさん・・・次はどうするんですか?戦力は増えましたけどまだまだ心許ない数です。このメンバーだけで二つもある異界の裂け目をどうにかしろ、というのは少し厳しくありません?」

 

「それについては御安心を。伝え忘れておりましたが、内一つの裂け目はミザリーが対処しますので」

 

「あら。ミザリーさんまで動くんですね」

 

 

 

ミザリー・・・・・・知らない名前が出てきたな。と、そんな俺に気が付いた青娥さんとレインさんが説明してくれた。

 

 

 

ミザリーさんはレインさんと同じ『悪魔公(デーモンロード)』であり、共にギィ・クリムゾン様に仕えている女性らしい。二人は普段ギィ・クリムゾン様の側近かつメイドとして働いているそうだが、今回のように『侵略種族(アグレッサー)』が現れる兆候があると、それの対処に向かうこともあるという。

 

ちなみに、ミザリーさんは緑眼でロングの緑髪をした美女なのだそうだ。

 

 

 

「・・・・・・とにかく、ミザリーさんがいるならそちらは安心ですね」

 

「まぁ、彼女も私に近い実力を持っていますし?それに部下の上位悪魔(グレーターデーモン)たちを沢山連れて行くようですしね」

 

 

 

安心した様子の青娥さんにレインさんが答えた。

 

・・・・・・いや、レインさんは軽く言ったけど・・・上位悪魔(グレーターデーモン)って結構強い魔物だよね?A-ランクでしょ?そんな連中が沢山いて、かつ青娥さんと同格らしいレインさんとミザリーさんを部下に持つ、そのギィ・クリムゾンという魔王は一体どれだけ強いんだよ。

 

 

 

「・・・・・・しかし。対処する裂け目が一つだとしても、今のままでは青娥様の言うように戦力不足は否めません。恐らく長期戦になるでしょうし・・・・・・さて、と」

 

 

 

そこまで言ったところでおもむろにレインさんが立ち上がった。俺たちの視線が集まる中、レインさんは微笑を浮かべたままこう呟く。

 

 

 

「もう少し、戦力を補充するとしましょうか」

 

「補充と言ったって・・・・・・どこから連れて来るんです?ギィ様のところから・・・は、連れて来れるなら最初から連れてきてますよね」

 

 

 

言葉の途中で一人そう納得した青娥さんにレインさんはむっと頬を膨らませる。そう言えば、レインさんはミザリーという人と違って単独で行動している。まさか主であるギィ・クリムゾン様から部下を任せて貰えないんじゃ・・・?

 

 

 

「と、とにかく!私に心当たりがありますのでそちらを頼りましょう」

 

「心当たり?カリオン様にでも頭を下げるんですか?」

 

 

 

どこか呆れたような口調で喋りつつ、青娥さんはジト目でレインさんを見つめる。確かにカリオン様ならフォビオやスフィアたち、部下を少しくらい貸してくれそうではあるが。

 

 

 

「あー、カリオン様ですか。あのお方にもお力添えをして頂くことになるかもしれませんけれど・・・・・・ここはまずカリオン様より使いやす・・・こほん。頼りになるお方に御協力願いましょう」

 

「えっと・・・・・・それは一体・・・?」

 

 

 

使いやすい、と言い掛けたことには触れず、俺はレインさんに恐る恐る訊ねる。するとレインさんは俺を少し見つめて、それからにこりと微笑んでこう答えた。

 

 

 

 

 

「傀儡国ジスターヴの主───魔王クレイマン様ですわ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

傀儡国ジスターヴ。

 

カリオン様と同じ『十大魔王』の一人であり、『人形傀儡師(マリオネットマスター)』の異名を持つ魔王クレイマンが治める国だ。

 

この国には様々な種族の魔物や亜人が暮らしており、総人口は一億にものぼる。ただし、そのほとんどは奴隷階級だ。膨大な人口と獣王国ユーラザニア以上の領土を誇るジスターヴ。魔王クレイマンは多くの奴隷たちに農業等を行わせることで、それらを賄う食糧を確保していた。

 

そんなジスターヴの首都の名はアムリタ。ただ情報統制が敷かれており、首都がどこにあるのかは誰も知らない。魔王クレイマンと、極一部の配下を除いて。

 

 

 

 

 

「・・・・・・・・・と。この国の説明はこんなところですかね」

 

 

 

説明を終えた青娥さんはいつもの笑みを浮かべたまま、正面を向いて視線を上げた。彼女に続いて俺も同じ方向を見上げる。

 

深い霧に覆われた鬱蒼とした森。その先の小高い岩山の上に、魔王の住まう居城があった。

 

 

 

魔王クレイマンの城・・・・・・いかにも中世風ファンタジーな作品に登場しそうな西洋の城といった外見である。周囲を包む霧の影響もあってか、荘厳さだけでなくどこか恐ろしい印象を受ける。

 

 

 

「・・・・・・なんか、不気味な雰囲気ですね。それに国の名前もちょっとアレだし・・・」

 

「全くです。傀儡国、だなんて」

 

 

 

俺の言葉に同意して青娥さんは嘆息する。青娥さんと挟むようにして俺の隣に立つレインさんもうんうんと同意している。

 

 

 

レインさんの提案により、俺たちはここ傀儡国ジスターヴへとやって来ていた。城の手前にあるこの不気味な森まではレインさんの転移魔法で移動してきたのだが、何故直接城へ転移しなかったのかと疑問に思った俺はそれについてレインさんに訊ねた。

 

レインさんによると、魔王クレイマンの城には外敵の侵入防止の為、内部に転移を妨害する魔法が安全装置として機能しているという。それにより、魔王クレイマンに認められた者しか城へ直接移動することは出来ないそうだ。

 

 

 

「成程・・・・・・ん?城の中に飛ぶのが無理でも、城門までは行けたんじゃ・・・」

 

「えぇ、その通り。ですが、城へ向かう途中で挨拶しておきたい方がいまして」

 

 

 

再び浮かんだ疑問に今度は青娥さんが答えてくれた。挨拶・・・こんな森に誰か暮らしているのだろうか。

 

 

 

「・・・・・・・・・あの~・・・・・・どうして私までここに連れて来られたんでしょうか・・・?」

 

 

 

と、その時。背後からか細い声が聞こえた。振り返ると、おずおずと片手を上げたテングがこちらを見つめている。

 

 

 

「ん?それなら青娥さん家に行く時にも言ったろ?名付けをしてないテングは俺のスキルで呼び出せないから付いてきてもらうって」

 

「いやいやいや・・・・・・それなら私だけ青娥さんのお宅で待機してれば良かったじゃないですか」

 

「えー、嫌ですよ。友人でもない知り合ったばかりの他人を家に置いていくなんて」

 

「あ、やー・・・・・・それは、そうですけれども・・・」

 

 

 

眉を顰める青娥さんの言葉にテングは何も言えなくなってしまった。うん、確かに青娥さんの言う通りではある。

 

 

 

「皆様、そろそろ出発致しましょう。明日の戦いに備えたいですし、さっさと目的を済ませて戻らなくては」

 

「そうですね。それじゃ、青娥さんの知り合いと会ってから城に行きましょうか」

 

「とほほ・・・・・・これなら御山に残ってた方が良かったかな・・・」

 

 

 

レインさんに促されて俺たちは霧の中を歩き始める。その後ろを嘆きながら付いてくるテングに少し申し訳無さを感じつつも、青娥さんの知り合いの元へ向かった。

 

 

 

そうして青娥さんとレインさんの案内の元、俺たちは森の中をどんどん進んで行く。依然として晴れる気配の無い霧に理由の分からない不快感を覚え始めた俺は大きく溜め息を吐いた。

 

 

 

「はぁ・・・・・・しかし鬱陶しい霧だな・・・ここっていつもこうなのか・・・?」

 

「そう言えば、この霧についてアクトくんに説明していませんでしたね。この霧は霧の迷路(メイズミスト)と言いまして。この土地の魔素を活用した防衛装置なんですよ。侵入者の感覚を狂わせ惑わす効力があるんです」

 

「それだけではなく、魔法の発動を妨害する効果も備わっています。最も、私と青娥様ならどちらも問題ありませんが」

 

 

 

青娥さんによる解説の後、どこか得意気にレインさんは語る。俺はそういったものあるのかと驚きつつ、改めて二人の凄さに感嘆した。

 

 

 

「・・・・・・と、そろそろ抜けますね」

 

 

 

青娥さんがぽつりと呟いたその言葉の意味が分からず俺は訝しむ。すると、周囲の霧が徐々に消え始めた。どうやら霧の迷路(メイズミスト)を抜けたということだったらしい。

 

 

 

「ん~、息苦しさというか・・・嫌な感じも消えましたね」

 

 

 

霧の迷路(メイズミスト)の影響下から解放され、テングがほっとしたように息を吐く。同じく俺も安堵していると、青娥さんが城とは違う方向に視線を向けていることに気付いた。

 

 

 

「青娥さん?」

 

「アクトくん、付いてきてください。向こうにさっき話した方が・・・・・・いえ、方たちがいるようなので」

 

 

 

俺にそう告げると、青娥さんはどこかへ歩き出した。『さっき話した』・・・というのは、挨拶しておきたい方のことだろう。しかし、『たち』ということは一人では無かったようだ。

 

とりあえず、俺たちは青娥さんの後に付いて行った。何もない森の中を、今度は城という目印すら無い場所を、青娥さんは迷う素振りも無く進んで行く。

 

何故その人たちの居場所が分かるのか疑問に思う俺だったが、もしかして『魔力感知』かなにかでその人たちを見つけているのでは、と思い至る。そこで俺も『魔力感知』を発動し、青娥さんの進む方向を探ってみることにした。

 

青娥さんとは技量が、もしかするとスキルのランクも違うからか、発動してすぐは俺の『魔力感知』には何も引っ掛からなかった。それでもスキルを発動させたまま青娥さんの後ろを歩き続けていると、漸く反応があった。

 

 

 

「なんだ、これ・・・・・・!?」

 

 

 

その『魔力感知』で得た情報に、俺は思わず言葉を失う。青娥さんの向かう方向に魔物と思われる反応があったからだ。ただし、一つや二つでは無く、大量の反応が。正確な数は分からないが、恐らく百はいるだろう。

 

『魔力感知』の結果に俺が一人驚いている間にも青娥さんはどんどん大量の反応があった場所へ向かっていく。青娥さんだけじゃなくレインさんだってそれには気付いているだろうが、二人とも口を閉ざしたままだ。

 

不安を抱いたまま、俺は青娥さんの後を付いて行く。言葉も無く歩き続けて、遂に反応のあった場所へ辿り着く。木々の開けたその場所に足を踏み入れた俺とテングは、異様な光景に己の目を疑った。

 

そこにはなんと、大量の死霊(ワイト)骸骨剣士(スケルトン)たちの姿があったのだ。百にも及ぶ『魔力感知』の反応の正体がアンデッドだったことにも驚いたが、それすらも上回る衝撃の光景が目の前に広がっていた。

 

俺だけじゃなく、テングもそれを見て絶句する。無理も無いだろう。何故なら、Bランクの魔物が百体近くも集まって───。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ほーら、テキパキやるのだぞー。向こうの畑もあるのだからなー」

 

「カタカタカタ・・・」

 

 

 

流暢に喋る一体のワイトによる指示の下、田植えをしていたのだから。

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・・・・いやなんでぇ!?」

 

 

 

困惑して、俺は思わずそう叫んだ。いや本当になんでだよ。なんで骨が田んぼで働いてるんだ。あとなんでこんな森の中に田んぼがあるんだ。

 

 

 

「むっ、何奴!?」

 

 

 

すると、俺の声を聞いたワイトがこちらをばっと振り向く。しまった、あまりにも意味不明な光景についツッコんでしまった。

 

指示を出していたワイトが誰何の声を上げると同時に、その場に集う全てのアンデッドたちが一斉にこちらを見る。敵に気付かれるという最悪の失態を犯したことを悔やみながら、俺は戦闘態勢に入って青娥さんたちの前に飛び出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・おや?誰かと思えば青娥殿ではありませんか。それにレイン殿まで」

 

「お久しぶりです、アダルマンさん」

 

「・・・・・・・・・へ?」

 

 

 

その時。ワイトが青娥さんとレインさんの名前を口にした。ワイトの言葉に青娥さんは微笑みながらそう返し、レインさんは小さく会釈する。俺は状況が飲み込めず、三人を見回しながら間の抜けた声を溢した。

 

 

 

「まぁ、青娥?レイン殿もいらっしゃったんですね」

 

 

 

困惑していると、ワイトの後方から女性の声が響いた。そちらに視線を向けると、一人の女性がこちらに歩いてくるのが見えた。

 

長い銀髪で肌は褐色。レインさんのそれとは少し意匠が異なるメイド服を身に纏った、綺麗な女性だ。よく見ると耳が尖っている。もしやエルフだろうか。

 

ワイトたちに混じる銀髪褐色美女メイド。異質な組合せと、青娥さんたちとの関係が分からず俺はただ混乱するばかり。そんな俺の表情が面白かったのか、青娥さんは小さく笑った。

 

 

 

「ふふふっ、ごめんなさいアクトくん?何も言わなかったから驚いちゃいましたよね」

 

 

 

くすくすと笑いながら青娥さんは謎のメイドの方へ歩いて行く。俺が呆然とする中、青娥さんはメイドの隣に立つと、いつもの笑顔を浮かべてこう言った。

 

 

 

「彼女の名はエヴァ。魔王クレイマンの古くからの配下であり・・・・・・私の友人でもある『黒妖耳長族(ダークエルフ)』です」




クレイマンの城に転移を妨害する魔法が掛けられている、というのは本作オリジナルの設定です。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。