転生したら蜥蜴人族の友人と邪仙の恋人ができた件 作:乃出一樹
Switch2、今年中に買えるといいのですが。
傀儡国ジスターヴへとやって来た俺たちは、
「初めまして、アクト殿。そして
そう名乗ったエヴァさんは俺たちにお辞儀をした。なんだかレインさんよりも上品さというか、おしとやかさを感じさせる。
それと
「では、次は私の番ですな。私は示指のアダルマン。ここ、
「じし?」
エヴァさんの次はやたら流暢に喋る骸骨のアダルマンさんが自己紹介をする。彼の言葉の中にあった意味の分からない単語に俺は思わず聞き返した。そんな俺にアダルマンさんは優しく微笑んでから言葉の意味を説明してくれた。
アダルマンさんは魔王クレイマン配下の最高幹部、『五本指』の一人なのだという。『示指』とはその称号のようなもので、彼の他にも母指、中指、環指、小指が存在するらしい。
つまりアダルマンさんはゲームで良くある四天王的なポジションにいるということか。先程の『魔力感知』では他のワイトたちと区別が付かなかったが、恐らく戦闘時以外は力を抑えているのだろう。
「最も。侵入者などそうは来ないので、最近は専ら青娥殿に頼まれた田畑の整備や作物の収穫ばかりしておりますが」
「へー、そうですか。青娥さんに・・・・・・って、これ青娥さんがやらせてんですか!?魔王の配下、しかも幹部に!?」
アダルマンさんから告げられた内容に驚愕した俺は青娥さんにばっと振り返る。青娥さんは一瞬視線を泳がせた後、何も言わずただにっこりと微笑んでみせた。ちくしょう、顔の良さで誤魔化す気だこの人。
「・・・・・・それにしても、まさか青娥が弟子を取るなんて。驚いたわ」
「もう、皆してそう言うんだから」
頬を膨らませる青娥さんにエヴァさんはくすりと笑う。このやり取りを見るに、本当に仲の良い友人同士のようだ。アダルマンさんは・・・・・・どうなんだろう。
「あはは、ごめんなさい。ところで・・・今日は何の用事かしら?田植えや畑の様子でも見に来たの?」
「いえ、残念ながらそうではなく。今回は私の都合でクレイマン様に御依頼したいことが御座いまして」
「・・・クレイマン様に」
エヴァさんの問いに青娥さんではなくレインさんが答えた。彼女の返事を聞いたエヴァさんは僅かに表情を曇らせそう呟く。
「えっと・・・・・・クレイマン様とは今日会えなかったりするんですか?」
「あ、その・・・・・・いいえ、そのようなことはありませんよ。クレイマン様は本日城にいらっしゃいます」
どこか様子がおかしいように見えた俺が声を掛けたところ、エヴァさんはすぐに笑顔を浮かべてそう答えた。さっき一瞬見せた暗い表情は気のせい・・・・・・じゃ、ないよな。
「それなら良かった。エヴァさん、申し訳ありませんがクレイマン様に取り次いで頂けませんか?事情は城で説明致しますので」
「・・・・・・分かりました。それでは皆様、私に付いて来てください。アダルマン殿、こちらはお任せしますね」
「お任せを」
頷いたアダルマンさんを確認したエヴァさんは城に向かって歩き出そうとした。すると青娥さんがあっ、と声を上げ待ったを掛ける。
「すみません。アクトくんはレインさんたちと先に行っててくれませんか?私はちょっとアダルマンさんとお話があるので」
「ふむ?」
自身の名前が上がり、アダルマンさんが顎に手をやる。どんな話なのか気にはなるが、後で聞けば良いだろう。
「分かりました。それじゃあ青娥さん、また後で」
「えぇ。なるべく早く済ませて追い付きますから」
眉を下げ、少し申し訳無さそうに笑う青娥さんに気にしないで欲しいと俺は告げる。それから彼女に小さく手を振って、俺とレインさんとテングの三人はエヴァさんと共に城へと向かい始めた。
「・・・・・・・・・アクト殿。師匠として、青娥はどうですか?」
青娥さんたちの姿が見えなくなった頃、エヴァさんがこちらを振り向いて突然そう訊ねてきた。俺は少し考えてから、エヴァさんを見据えこう言った。
「そうですね・・・・・・何を考えているのか分からない時もあるし、純粋な善人とは言えない人なのかもしれないけど・・・・・・それでも、俺をしっかり鍛えてくれる、優しくて良い人です。少なくとも俺にとっては」
少し気恥ずかしかったが、青娥さんに対する俺の想いをそのままエヴァさんに伝えた。エヴァさんはそうですか、と呟きつつ、どこか嬉しそうに微笑む。
「青娥様からも割りと大切にされてるようですよ?私と戦ってアクト様がボロ負けした時なんて滅茶苦茶心配していたし、私もかなり怒られたんですから」
「えっ!?アクト殿、レイン殿と戦ったんですか!?」
さらっと告げたレインさんの言葉にエヴァさんは驚愕し、レインさんと俺を交互に見る。成程、友人というだけあってエヴァさんもレインさんの実力と正体を知っているのか。
「よ、よく生きてましたねアクト殿・・・・・・レイン殿!ちゃんと手加減したんでしょうね!」
「してましたぁ~。ちょっとしか攻撃当ててないですぅ~」
怒るエヴァさんに不貞腐れた様子でレインさんが口を尖らせる。本当に仲が良いんだな、と二人を眺めつつ、俺はレインさんに負けた時のことを一人思い返す。
・・・・・・・・・うん、エヴァさんには戦いの詳しい内容は言わないでおこう。今はテングもいるし。二人とも女性だし。
「あー・・・・・・ところで、さっきアダルマンさんが言ってたことなんですけど。田植えとか、俺は見てませんけど畑の世話を青娥さんに任されてるんですよね。なんでまたそんなことに?」
レインさんからその戦いのことを話されないように俺は話題を変えようとする。とは言え、これについても気にはなっていたのでタイミングを見て聞くつもりではあったのだが。
「はい。あれは三年くらい前でしたか・・・・・・青娥がふらりとジスターヴへやって来まして。それで・・・・・・その、えぇ。色々ありまして仲良くなったんです」
懐かしむように目を細めエヴァさんが薄く笑う。色々の部分が気になるが、とりあえず話の続きを待つ。
「青娥とは沢山話をしました。異世界人であること、
「シズさんのことですよね?爆炎の支配者の。大丈夫、全部青娥さんから教えて貰いましたから」
そう言ったところ、エヴァさんは一瞬目を丸くした。過去のことを教えてもらえるくらいの仲なのかと驚いているのだろう。正直、それはこちらの台詞なのだが。
・・・・・・流石に、そのシズさんが亡くなったことまでは知らないんだろうけど。
「・・・・・・・・・ふふ、良かった・・・・・・それで、シズエ・イザワと別れた青娥は、ここジスターヴで私やアダルマン殿と時折修行をするようになったんです」
『良かった』。エヴァさんの発したその一言に何か含まれたものがあるような気がしたけれど、俺はそれには触れなかった。歩きながらエヴァさんはさらに続ける。
「私と青娥様もここで出逢ったんですよ。あの時もクレイマン様に御依頼がありましてね。お話してみたらなんというか、ウマが合いまして」
「へぇ、そうだったんですか」
「そう言えばそうでしたね。それ以降、レイン殿も加わって一緒に修行するようになったんです。青娥は特に魔法に興味があったようで、魔法の扱いに長けたレイン殿とアダルマン殿の二人とよく過ごしていました」
レインさんとの出逢いなど、俺の知らない青娥さんの過去がどんどん出てくる。青娥さんのいないところで勝手に聞いてしまっていいのかと不安に思わなくもないが、青娥さんのことを知れるのは正直嬉しい。
それはそうと、あのアダルマンさんというワイトは魔法に関しては青娥さんやレインさんと同じレベルなのか。力を抑えていたから分からないが、もしかすると俺よりも強いのかもしれない。
「そして、修行と並行して青娥に頼まれたことが一つありました。米です」
「米、って・・・・・・もしかして白米を作れと?」
俺の問いにエヴァさんは苦笑しながら頷いた。まさか米作りまでやらせていたとは。
と、そこで、それまで口を閉ざしていたテングが片手を上げて質問してきた。
「はくまい・・・・・・白い米ってことですか?」
「あぁ。こっちじゃ米は基本黒いらしいけど、俺と青娥さんが元居た世界だと白い米が普通なんだよ」
「へ、へぇ~・・・・・・と言うか、さらっと流しましたけどお二人が異世界人だったなんて初耳なんですが?」
そう言えばテングにはそういったことは何も説明していなかったっけ。時間が無かったから仕方ないとは言え、俺はとりあえず彼女に謝罪した。
「同じ異世界人であり、大切な人であるシズエ・イザワにどうしても食べさせてあげたいのだと必死に頼まれましてね。クレイマン様からも許しを得て私と青娥にアダルマン殿の三人で米作りを始めたのですが・・・これがなんとも大変で」
そう話すエヴァさんだが、その表情は明るい。大変だったのは本当なのだろうが、それと同じくらい楽しい日々でもあったのだろう。
しかし・・・・・・白米に関しては、知り合いの転生者の為にある友人と数年かけて色々と手を尽くし生み出したと、以前青娥さんから聞いてはいたが・・・・・・その転生者とはシズさんだったのか。てっきり青娥さん自身の話かと。それに白米作りに協力したという友人の正体がエヴァさんだったことにも驚いた。あ、一応アダルマンさんもか。
「様々な黒米を交配させたり、専門家に話を聞いたり、色々な手を尽くしましたが全く上手くいかず・・・・・・ですが、米作りを始めて一年程経った頃でしたか。私にとある力が宿ったのです」
「とある力・・・・・・もしかして、スキルですか?」
「はい。その名も、ユニークスキル『
そう語ったエヴァさんは周囲を見渡し、近くに落ちていたごく普通の細い木の枝を拾った。それを優しく握ると、エヴァさんは瞳を閉じる。すると次の瞬間、エヴァさんの手に握られた木の枝がメキメキと音を立てながら数倍以上のサイズになった。さらに粘土のように先端がぐにゃりと曲がっていき、やがて魔法使いが持っていそうな杖へと形を変えた。
「おぉー!」
「ふふっ。このように植物を即席の武器にするだけでなく、植物の遺伝子を弄って品種改良を行うことも可能でして。青娥が望んだ白米を作ることが出来たのはこのスキルのお陰なんですよ」
俺の反応を見て楽しそうにエヴァさんは微笑み、続けてそう話す。
ちなみに、その『
「そんなに難しいというか、大変なんですか?」
「えぇ・・・・・・白米を作って以来、一度も品種改良をしてないくらいには」
苦笑しながらエヴァさんは答えた。俺も『思考加速』と『魔力感知』を全力で使用すると頭痛が起きたりするが、それと似たようなものだろうか。
その後も、俺たちはエヴァさんと他愛ない会話を続けた。最も、テングだけは緊張しているのか口数が少なかったけれど。
魔王クレイマンはどのような人物なのか。アダルマンさん以外の五本指のメンバーはどのような顔ぶれなのか、など。歩きながら俺はいくつか気になることをエヴァさんに訊ねた。答えてはもらえないことも多かったが、それでも道中は穏やかな雰囲気ではあったと思う。
だが、割りと楽しかったそんな時間もやがて終わりを迎えた。
「これが魔王クレイマンの城・・・・・・」
呟きながら眼前に聳えるその城を見上げた。森を抜け、遂にその入口まで辿り着いたのだが、近くで見るとより大きく感じる。少なくとも、カリオン様の居城よりは大きいだろう。
「・・・・・・皆様、こちらへ」
エヴァさんの声にはっとしそちらに向き直る。丁度城の扉が開いたところで、俺たちはエヴァさんの後に続いて城の中へと足を踏み入れた。
外見から予想は出来ていたが、城内はとても広い。さらにいくつもの美術品が各所に飾られており、魔王の城とは思えない程きらびやかだった。
そんな美しい城だと言うのに、中に入ってから俺たちの口数は大分減った。テングに至っては完全に沈黙している。なんか、流石に可哀想になってきたな・・・・・・この戦いが終わったら十分な報酬を青娥さんと一緒に用意しなければ。
そんなことを考えながら歩き続けていると、やがてエヴァさんがある扉の前で足を止めた。城内を歩いている際にいくつか部屋の前を通ったが、そのどれよりも豪華な意匠をしている。もしかして、ここが玉座の間なのだろうか。
「お待たせしました。こちらに我が主、魔王クレイマン様がいらっしゃいます。どうか、くれぐれも無礼の無いよう・・・」
こちらを振り返ったエヴァさんが扉の前でそう前置きした。俺とテングが静かに頷いたのを確認すると、エヴァさんはその扉をノックする。少し間を置いてからゆっくりと扉を開け、室内に入ったエヴァさんは部屋の奥にいるらしい何者かに頭を下げながら言った。
「・・・・・・失礼致します、クレイマン様。クレイマン様にお会いになりたいと言う方々がお見えになりましたのでお連れしました」
「────おや。知った顔が一つと・・・知らない顔が二つあるな」
エヴァさんに続いて、レインさんたちと共に扉をくぐった先には広い空間があった。通ってきた城の廊下以上に豪華な内装となっており、思わず感嘆の息を漏らしかけたが──その声が耳に届いた瞬間、どっと押し寄せてきた凄まじい威圧感に俺は息を詰まらせた。
俺の後ろに付いて来ていたテングが俺の服の裾を弱々しく掴む。振り返って彼女の様子を見ることは出来ないが、その手が震えていることから何となく今の表情は予想出来た。
カリオン様と初めてお会いした時のことが頭に浮かぶ。青娥さんと同格らしいレインさんが傍にいるというのに冷や汗が止まらない。それでも何とか呼吸を整え視線を前に向ける。
そこには、まるで血に染められたかのような赤い玉座に腰掛けた男の姿があった。
「まさか、私が何者か知らずにここまでやって来る愚か者はいないと思うが・・・・・・一応名乗ってはおこう。挨拶は大事だからね」
真っ白な燕尾服を着こなす銀髪の男は足を組んだまま俺たちを鋭い視線で射抜く。そして冷たい微笑を浮かべ、こう言った。
「私の名はクレイマン。十大魔王が
エヴァのスキル『