転生したら蜥蜴人族の友人と邪仙の恋人ができた件   作:乃出一樹

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お待たせしました、第106話となります。

二回目のSwitch2の抽選も外れました。悲しい。


魔王クレイマン

エヴァさんによる案内の下、遂に魔王クレイマンとの対面を果たした俺たち。同じ魔王なのだから当然かもしれないが、カリオン様と似た威圧感を発する魔王を前に俺とテングは硬直していた。だが、レインさんとエヴァさんは平然とした様子で前へ進んで行く。

 

こちらを振り返って小さく頷いたレインさんを見て、俺たちは我に返ると遅れて動き出す。やがて、エヴァさんは魔王クレイマンの隣へ。レインさんは玉座の少し前に、俺とテングはレインさんより一歩後ろの位置まで移動した。

 

 

 

「・・・・・・御無沙汰しております、クレイマン様」

 

 

 

レインさんが微笑を浮かべたままお辞儀をする。魔王クレイマンに気圧されていた俺たちだが、レインさんに続いて慌ててその場で跪いた。

 

 

 

「クレイマン様が御健勝そうで何よりでございます」

 

「ふん、レインか。ギィの召し使い風情が今日は何の用・・・・・・と、聞く前に・・・そこの二人は誰だい?」

 

 

 

魔王クレイマン・・・様はレインさんの挨拶に鼻を鳴らす。クレイマン様はレインさんに要件を訊ねようとしたが、そう言って俺たちに視線を向けた。

 

 

 

「こちらの二人は私が雇った傭兵のようなものです」

 

「傭兵だと?ギィのところにいるデーモン共ではないのか?」

 

「はい。お二人共、クレイマン様に御挨拶を」

 

 

 

俺たちが返答に窮していると、代わりにレインさんが答えてくれた。眉を顰めるクレイマン様に頷いた後、レインさんは俺たちに促す。

 

 

 

「御目に掛かれて光栄でございます、偉大なる魔王クレイマン様。私はドラゴニュートのアクトと申します」

 

「わっ、私は名も無き『長鼻族(テング)』でございます!御目に掛かれて光栄です!魔王クレイマン様!」

 

「・・・・・・ほう。最低限の礼儀はなっているようだね。どこの馬の骨かと思ったが・・・安心したよ」

 

 

 

俺とテングの挨拶を聞いたクレイマン様は静かにそう告げる。俺たちを一瞥したクレイマン様は、レインさんに視線を戻し口角をつり上げた。

 

 

 

「しかし・・・・・・傭兵か。ククッ、弱者はただ生きるだけでも苦労するな。こんな情けない部下を持ってギィには同情するよ」

 

「返す言葉もございません」

 

 

 

嘲るように笑うクレイマン様にレインさんは表情を変えずに頭を下げる。

 

・・・・・・この魔王、カリオン様より恐ろしい印象があったけど、本当にレインさんの実力を知らないんだな。少し気が楽になったかも。

 

 

 

「で?弱者の貴様がこの私に何の用だ」

 

「はい。本日お伺い致しましたのは他でもありません。偉大なる魔王であらせられるクレイマン様にお願いがございます」

 

 

 

そう前置きしてレインさんは『侵略種族(アグレッサー)』が現れる予兆があったこと。それから奴等を倒す為に戦略を集めていることを語り始めた。

 

何故か、青娥さんの名前は一切出さずに。

 

 

 

「・・・・・・成程。異界がジュラの大森林と繋がった。そして大森林や周囲に影響が及ぶ前に、私にその事態を収拾して欲しい、と。そういうことだな」

 

「クレイマン様。これは・・・・・・」

 

「黙っていろエヴァ。部下であるお前からの指図は受けん」

 

「・・・・・・申し訳ございません。出過ぎた真似でした」

 

 

 

何かを言い掛けたエヴァさんだが、クレイマン様に睨まれ口を噤む。頭を下げた彼女を見てクレイマン様は不機嫌そうに舌打ちすると、レインさんに視線を戻す。

 

 

 

「勿論、謝礼は用意してございます。凡庸な私共としては、何卒クレイマン様の有能さにお縋りしたく・・・」

 

 

 

クレイマン様がこちらに向き直ったのを確認してから再びレインさんは口を開いた。下手に出てたままの彼女に機嫌を良くしたのか、クレイマン様は少しだけ表情を柔らかくする。

 

 

 

「全く、与えられた仕事すら満足にこなせずこの私に泣き付くとはな。ふっ、安心するが良いレイン。こう見えて私は慈悲深い男でね、知った顔である貴様の頼みを無下にはしないさ」

 

「まぁ・・・ありがとうございます。心より感謝致しますわ、クレイマン様」

 

「ククッ。生憎私も忙しい身でね。直々に手伝うことは出来ないが・・・・・・代わりに何人か部下を貸してあげようじゃあないか。そこにいる無能そうな二人とは違う、私の優秀な部下をね。ふははははっ!」

 

 

 

俺たちをちらりと見て、クレイマン様は高笑いする。

 

・・・・・・正直、この御方の言葉に思うところが無い訳ではないけれど。レインさんが何も言わずにいるし、エヴァさんも申し訳無さそうな顔をしているから俺たちが怒る訳にもいかない。いやまぁ、仮に怒ったところでクレイマン様に殺されるのがオチだけど。

 

それに、クレイマン様からすれば俺たち二人など実際無能に見えるだろう。テングが可哀想ではあるが、ここはとりあえず我慢するしかないな・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「────おや。無能そうな・・・とは、一体誰のことを指しているのでしょう」

 

「ッ!?」

 

 

 

その時だった。聞き慣れた声が耳に届いた瞬間、玉座の間の・・・クレイマン様の背後の壁に取り付けられていた大きな窓ガラスが音を立てて砕け散る。何事かとそちらに視線を向けると、クレイマン様以上に冷たい微笑を浮かべて宙に浮いた青娥さんの姿があった。

 

 

 

「まさか・・・・・・私のアクトくんのことじゃ、ありませんよね?」

 

「なっ・・・せ、青娥!?何故貴様がここに!?いや待て。私のだと・・・?」

 

 

 

がたりと玉座から立ち上がりクレイマン様が驚愕する。この慌てよう・・・・・・どうやら青娥さんの実力は知っているらしい。

 

 

 

「何故って、私もレインさんに『侵略種族(アグレッサー)』の討伐を依頼されたからですよ。それと・・・アクトくんは私の可愛い弟子です。隣にいるテングさんは違いますけれど」

 

「弟子だと・・・・・・エヴァ!何故黙っていた!?」

 

「申し訳ありません。黙っているようにと命を受けましたので」

 

「~~ッ!」

 

 

 

エヴァさんの返答を聞いてクレイマン様はぎり、と歯を噛み締める。確かに、さっき自分で黙っていろって言ってたもんな。

 

・・・・・・それよりも。もしかして青娥さん、怒ってるのか?なんで?

 

 

 

「それで?私への返答がまだですが。クレイマン様?」

 

 

 

そう言いながら、青娥さんはふわりと宙に浮いたままクレイマン様の横を通り抜け、俺たちの傍に移動する。その様子を緊張した面持ちで眺めていたクレイマン様は、少し間を置いてからこう答えた。

 

 

 

「っ・・・・・・そ、そう怒らないでくれ青娥。つい私の優秀な部下と比べてしまってね。だが、そうだね。確かに少しばかり言葉が悪かったかもしれないな・・・はははっ・・・」

 

「・・・・・・・・・」

 

「・・・・・・青娥・・・」

 

 

 

引きつった笑顔で取り繕おうとするクレイマン様に青娥さんの目付きが鋭くなる。しかし、まるでもうやめてくれと懇願しているかのようなエヴァさんの表情を見て、やがて青娥さんは深く溜め息を吐いた。

 

 

 

「・・・・・・はぁあああ・・・・・・分かりましたよ。エヴァさんに免じてこのくらいで勘弁して差し上げます」

 

「ごめんなさい青娥・・・・・・ありがとう」

 

 

 

頭を下げた後、エヴァさんは小さな声で礼を言った。青娥さんはエヴァさんに何も言わず、どこか呆れたように、困ったように眉を寄せて微笑した。

 

 

 

「・・・・・・・・・それではクレイマン様。貴方様の配下を一時貸して頂けるということでよろしいでしょうか?」

 

「あ、あぁ・・・勿論だとも。それで貴様に貸す私の部下だが・・・どういった者が良いか、なにか希望はあるかな?」

 

 

 

静かに様子を窺っていたレインさんだが、青娥さんが怒りを収めたタイミングでそう確認した。玉座に座り直しながら返したクレイマン様のその問いに、レインさんは思案する。

 

・・・・・・少し態度が柔らかくなったな。

 

 

 

「そうですね。闘気、もしくは物理攻撃を得意とする方が望ましいです。魔法に関しては『魔導師(ウィザード)』である青娥様が居られますし、不肖ながらこの私めも多少は魔法の扱いに長けておりますので」

 

 

 

魔導師(ウィザード)』。それを聞いて、青娥さんから以前教えてもらったことを思い出す。

 

魔法には『元素魔法』や『精霊魔法』、『刻印魔法』に『召還魔法』、更には『神聖魔法』といくつもの系統がある。それらの系統を二つ極めた者を『魔術師(マジシャン)』、三つ極めた者を『魔導師(ウィザード)』と呼ぶらしい。

 

それはさておき。何故かは分からないが、今回現れる『侵略種族(アグレッサー)』は『蟲魔族(インセクター)』である可能性が高いということをレインさんは話していない。気にはなったが、とは言え態々指摘することでもないか。

 

 

 

「勿論、魔法が使えること自体は問題ありません」

 

「ふむ・・・・・・それなら、ヤムザが適任かもしれんな」

 

 

 

クレイマン様は顎に手を当て少し思案した後、そう呟いた。

 

ヤムザ・・・・・・城へ向かう途中でエヴァさんから聞いた名前だ。最も、いくらこちらが友人である青娥さんの連れとは言え、主に仕える配下・・・しかも幹部の情報を他人に明かすのは憚られたのか、そこまで詳しい情報を教えてはもらえなかったけれど。

 

話を戻して。ヤムザとは魔王クレイマンの配下にして最高幹部である五本指筆頭の男だ。中指の座を与えられた彼は凄腕の剣士であると同時に氷の魔法も得意としており、『氷結魔剣士』の二つ名を持つという。

 

 

 

「さて、他の面子はどうしたものかな」

 

「恐れながらクレイマン様。今回の依頼に貸し出す配下の選抜ですが、私に一任しては頂けないでしょうか。相応しいと思われる者たちに心当たりがあります」

 

「なに?・・・・・・分かった。お前に任せよう、エヴァ」

 

「はっ。ありがとうございます、クレイマン様」

 

 

 

エヴァさんの意見にクレイマン様は少し思案していたが、すぐに頷いてみせた。これも青娥さんが目の前にいる影響だろうか。

 

 

 

「では、とりあえずヤムザを呼び出そう。少し待つがいい」

 

 

 

そう告げ、クレイマン様は瞳を閉じた。玉座から立ち上がりもしないその姿を見て俺は不思議に思ったが、もしかすると『思念伝達』で連絡を取っているのかもしれない。

 

とにかく、この調子ならここでの用事はすぐ済みそうだ──と、内心安堵していたその時だった。

 

 

 

 

 

「ヤムザさん、ですか・・・・・・・・・本当に役に立つんですか?その方」

 

「・・・・・・・・・なに?」

 

 

 

青娥さんが発した失礼極まりない言葉に、クレイマン様が目を薄く開けた。鋭くなるクレイマン様の目付きに俺だけでなくテングやエヴァさん、レインさん以外の三人は慌て出す。

 

 

 

「いえ、会ったことがないのでなんとも言えないんですけども。いくら最高幹部と言っても所詮はクレイマン様の部下ですし?ぶっちゃけクレイマン様の部下で強いのはアダルマンさん・・・あと、『中庸道化連』の皆さんくらいでしょう?」

 

「・・・・・・・・・青娥。ラプラスたちは私の友人であって部下ではない──二度と間違えるな」

 

 

 

どこか馬鹿にした様子で喋る青娥さんだったが、最後の言葉を聞いたクレイマン様は青娥さんを鋭く睨んだ。緊張した面持ちではあったものの、先程青娥さんの言動に怯えていた方とは思えない、誇りや意地のようなものを感じさせるその表情に俺は一瞬見とれてしまう。クレイマン様のその姿に青娥さんも驚いたのか、目を丸くし、それから肩を竦めた。

 

・・・・・・魔王クレイマン。なんとなく冷酷な男だというイメージがあったけれど、友達想いの一面もあるんだな。

 

 

 

「・・・・・・失礼しました。けれど、ヤムザさんの実力には疑問があります」

 

「そこまで言うのなら確かめてみるかい?ヤムザの実力がどれ程か・・・・・・お前の可愛い弟子と戦わせて、ね」

 

「えっ!?」

 

 

 

突然クレイマン様に視線を向けられ俺は思わず声を上げてしまう。困惑する俺の傍で青娥さんは小さく笑った。

 

 

 

「あら、いいですね。絶対私のアクトくんが勝つと思いますけれど」

 

「ちょっ、青娥さん!?」

 

 

 

余裕そうな笑みを浮かべ、青娥さんはそう言い放つ。そんな青娥さんにクレイマン様は苛立ちからかひくりと口端を動かしたが、深く息を吐いてから笑顔を取り繕った。

 

 

 

「決まりだね。それでは移動しようか・・・・・・外の訓練場で待っているぞ」

 

 

 

立ち上がったクレイマン様はそう言い残すと玉座の間を出ていった。エヴァさんも俺たちに一礼してからクレイマン様の後に続き、俺たち四人だけがこの場に残された。

 

 

 

「・・・・・・・・・こ・・・・・・怖かったぁああ~~!」

 

 

 

クレイマン様たちがいなくなったことで緊張の糸が切れたのか、テングは今にも泣きそうな顔でへなへなとその場に崩れ落ちた。俺は苦笑して、そんな彼女の肩を叩く。

 

 

 

「なんか、ごめんなテング・・・・・・って、それより!青娥さん!?」

 

「あー・・・・・・その、えぇ・・・・・・ごめんなさい?」

 

 

 

俺に詰め寄られた青娥さんは最初顔を背けていたが、やがて観念したかのようにこちらを向き直り、苦笑しながら謝罪した。俺は暫しそんな青娥さんをじとっと見つめていたが、やがて小さく溜め息を吐く。

 

 

 

「・・・・・・まぁ、青娥さんのお陰で重苦しい空気が和らいだんで別にいいですけど」

 

「んんん~・・・!本当にごめんなさいアクトくん。クレイマン様の顔を見てたらついイライラしちゃって・・・」

 

 

 

青娥さんは眉を八の字に寄せ、申し訳無さそうに再び謝罪した。その姿がどこか可愛らしく、俺は思わずくすりと笑ってしまう。そもそも元から大して怒っていないし、気にしなくて良いと告げると、青娥さんは安堵したのか胸を撫で下ろしていた。

 

 

 

「予定にはない展開ですけど、これはこれで良いのではないでしょうか。実のところ、私もクレイマン様の部下がどの程度の力を持っているか確認しておきたかったですし」

 

 

 

レインさんの言葉に俺は頷く。実力だけでなく、どのような魔人なのかも知っておきたいことではあるし。

 

こうして、俺たちもクレイマン様が言っていた訓練場へ向かうこととなった。場所は青娥さんとレインさんの二人が知っているそうなので迷う心配は無いだろう。

 

レインさんが案内するということで、俺たちは彼女の後に続くように歩き出す。そしてレインさんが玉座の間から出ようと扉に手を掛けた時、俺たちに振り返ってこう言った。

 

 

 

「・・・・・・それにしても。青娥様は余程アクト様の力を信じているのですね。それともクレイマン様の部下を侮っているのでしょうか。アクト様はまだ、名付けによる弱体化が治っていないというのに」

 

「───あっ」

 

「───あっ」

 

 

 

レインさんが微笑みながら呟いたその内容に、俺と青娥さんは間の抜けた声をこぼして思わず顔を見合わせる。

 

 

 

・・・・・・・・・本調子じゃないこと、すっかり忘れてた。




次こそ当選しますように・・・
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