転生したら蜥蜴人族の友人と邪仙の恋人ができた件   作:乃出一樹

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お待たせしました、第108話となります。

Switch2はまだ買えておりません。


アクトVSヤムザ①

青娥さんやクレイマン様たちが去った闘技場の舞台の上で、俺とヤムザは向かい合っていた。

 

魔王クレイマン配下。最高幹部である五本指筆頭、氷結魔剣士のヤムザ。既に得物である剣を抜き放っており、臨戦態勢に入っている。クレイマン様に早く終わらせるようにと命令されたのもあり、やる気は十分のようだ。

 

 

 

「では、私の方から簡単にルールを説明させて頂きます」

 

 

 

その時、舞台端に待機していたエヴァさんからそう声が掛かる。どうやら彼女が審判を務めてくれるらしく、これから始まる模擬戦のルールを説明してくれた。

 

と言っても、複雑なものではない。相手の殺害は禁止。舞台から落ちたり気絶したら負け。相手が降参したら必ず戦いの手を止める・・・・・・こんなところか。それ以外は特に縛りは無い。武器も魔法もスキルもアーツも何でもアリだ。

 

 

 

「五本指の筆頭であるこの俺に戦いを挑むとはな・・・・・・馬鹿な奴め。本来貴様如きには使うまでも無い、が・・・・・・御多忙なクレイマン様は早々の決着をお望みだ。故に、この氷結魔剣(アイスブレード)で相手をしてやろう」

 

 

 

こちらを鋭く睨み付けながら、ヤムザは手にした剣の切っ先をこちらに向けた。俺は言葉を発することなく静かに彼の剣を観察する。

 

鍔と思われる箇所にはまるで蛇の目玉のような魔石が埋め込まれ、刀身は青く輝いている。いかにもファンタジーな世界の武器と言った感じで、普通の剣では無さそうだ。少なくとも等級は一般級(ノーマル)ではないだろう。

 

そんなことを考えていると、エヴァさんが俺たちに模擬戦を開始しても良いかと確認を取る。彼女にヤムザが短く了承の言葉を返した後に俺も頷き、これより始まる戦いに向け精神を集中させた。

 

 

 

 

 

「それでは・・・・・・始め!」

 

「ふッ!」

 

 

 

俺とヤムザの二人を交互に見た後、エヴァさんはばっと右手を振り上げ試合開始の宣言をした。それと同時にヤムザは地を蹴りいきなり突っ込んでくる。かなりの速度だが、俺は冷静にヤムザの動きを見極め、奴が剣を横薙ぎに振るうのに合わせ蹴りを放った。

 

 

 

「ぜぇあッ!」

 

「オラァッ!」

 

 

 

ヤムザの剣と俺の脚がぶつかり合い、火花が散ると共に金属質な音が周囲に響く。俺が攻撃を受け止めたことに驚いたのかヤムザは僅かに目を見開いたが、すぐに表情を戻した。

 

 

 

「ほう?俺の一撃を・・・特質級(ユニーク)武器のアイスブレードによる攻撃を受け止めるとはな。中々の装備だ」

 

「そいつはどうも・・・!」

 

 

 

やり取りの後、互いに弾かれるようにして後方へ下がる。俺は短く息を吐きつつ改めてアイスブレードを眺めた。ただの武器ではないとは思っていたけど、まさか特質級(ユニーク)の武器だったとは。

 

ちなみに俺の装備・・・魔鋼を素材に作成したこのブーツの等級は希少級(レア)である。まぁ、ガビルにプレゼントしたバーニングランスを作成した際の余りで作った物だし、そっちと違って特別な素材も混ぜてないしな。

 

 

 

「少しは楽しめそうな相手らしい・・・・・・だが、いつまで持つかな!?」

 

 

 

マスクのせいで表情がよく分からないが、微笑しているのかヤムザは目を細める。それから剣を構え直すと再びこちらに接近し、ヤムザの猛攻が始まった。

 

 

 

「そらそらそらそらァッ!」

 

 

 

流れるような動作でヤムザは連続で斬撃を繰り出してくる。俺はそれを『思考加速』を発動することによって回避し続ける。避けきれない一撃は脚で受け止めることで凌いでいるが・・・・・・今更だけど、こっちは素手なのに向こうは剣を持ってるってかなり不利だよな。

 

 

 

「チッ、ちょこまかと・・・・・・ならば!」

 

 

 

やがて、攻撃が当たらないことに苛立ったヤムザはこちらを睨み付けながら舌打ちした。すると、何故か攻撃の手を止め後方へ下がった。何をするのかと俺が身構えたと同時、ヤムザはこちらにばっと片手を向ける。

 

 

 

「『水氷大魔嵐(アイスブリザード)』!!!」

 

「うおっ!?」

 

 

 

ヤムザがそう叫ぶと、彼の手から白銀の渦が放たれた。彼が発動した魔法は、元素魔法『水氷大魔嵐(アイスブリザード)』・・・ドラゴンゾンビやレインさんも使用していた強力な氷の魔法だ・・・・・・しかし。

 

 

 

「この程度なら!」

 

「なにッ!?」

 

 

 

こちらを飲み込まんと迫る氷の嵐を前に俺は口角を上げる。『魔力感知』でヤムザが発動したこの魔法の威力を大体把握することが出来た。レインさんは勿論、ドラゴンゾンビが使ったそれに比べれば大した威力は無い。ガビルの使う『火炎大魔嵐(ファイアストーム)』よりは強力だが・・・・・・これなら弱体化している今の俺でもなんとかなる。

 

そう判断した俺は『水氷大魔嵐(アイスブリザード)』を避けるのではなく、真正面から打ち破ることを選んだ。左右に広げた両手を前へ突き出し、込めていた闘気を一気に放出する。ファイナルフラッシュの構えだ。

 

眼前まで迫っていたヤムザの『水氷大魔嵐(アイスブリザード)』と、俺の撃った闘気流が激突する。一瞬、二つの力は拮抗しているかのように見えたが、徐々に俺の闘気流が相手の冷気を押し返し始めた。

 

 

 

「くっ!」

 

 

 

撃ち合いは不利だと悟ったのか、ヤムザは魔法の発動を中止し転がるように横へ回避した。上空へ飛んでくれれば『飛空法』と『脱獄者』の『加速』を使って一気に勝負を決めに行けたのだが、そう簡単にはいかないか。

 

ともかく、少しの時間ではあるがヤムザと戦ってみて大体の戦闘力は分かった。フォビオとスフィアよりは魔素量を多く保有していて、アルビスとはほぼ互角と言ったところか。最も、アルビスには二段階目の変身があるので二人が戦った場合は間違いなくアルビスが勝つだろう。

 

剣の腕については・・・・・・正直全く分からない。だって俺剣士じゃないし、そういう相手とマトモに戦ったこともないしね。強いて言えばラビットマンの里で戦った伏せ耳と、冒険者試験の時に戦ったダークゴブリンくらいだが・・・・・・正直あれらは戦いとは呼べないし。

 

 

 

「クソッ、気闘法の使い手か・・・!中々のパワーだが、それでも!」

 

 

 

言い終わらない内にヤムザは駆け出すと、こちらを翻弄するかのように不規則に左右へ動いてフェイントを掛けつつ接近してきた。パワーで劣っているのならスピードで攻めようと思ったのだろう。

 

 

 

「悪いけど・・・見えてるぜ!」

 

 

 

だが、俺にその作戦は通用しない。かなりの速度を誇るヤムザではあるが、俺は『思考加速』を所持している上に彼より格上のアルビスとの戦闘経験もあるのだ。

 

『思考加速』を発動することによって、俺はヤムザの動きを完全に把握する。そうとも知らずこちらに接敵したヤムザは勢い良くアイスブレードを振り下ろすが、それに対し俺は『身体強化』を乗せたハイキックを放ち攻撃を防いだ。

 

 

 

「なッ・・・!」

 

「おぉおおッ!」

 

「がはぁっ!?」

 

 

 

剣を手放すことはなかったが、今の蹴りによってヤムザは大きく体勢を崩した。俺はその隙を突いて、驚愕しているヤムザの腹に一撃を叩き込む。

 

俺の攻撃で吹き飛ばされたヤムザは苦悶の声を上げ舞台の上を転がる。しかし、アイスブレードを舞台に突き立てることで勢いを殺し場外への落下を免れた。流石は魔王の幹部。そう簡単には勝たせてくれないらしい。

 

 

 

「ぐ、ぐぅうう・・・・・・おのれ・・・!」

 

 

 

膝を付いたヤムザは片手で腹を押さえながら俺を睨み付ける。その視線を気にせず、俺は少し考えてからヤムザにこう告げた。

 

 

 

「・・・・・・降参してくれヤムザ。お前じゃ俺には勝てないよ」

 

「な、なんだとぉ・・・!?」

 

 

 

降参を促されたヤムザはゆっくりと立ち上がった。プライドが傷付いたのか、わなわなと肩を震わせている。今にも襲い掛かって来そうな気迫を見て、言葉選びを間違えたかと少し後悔していたその時。

 

 

 

「何をしているヤムザ!貴様、それでも五本指筆頭か!」

 

「く、クレイマン様・・・!申し訳ございません!」

 

 

 

舞台外から響いた怒声に少し驚き、俺はそちらを振り向く。そこには、いつの間に持ってきたのか豪華な意匠が施された椅子に座るクレイマン様の姿があった。

 

その声色だけでも察することが出来たが、表情を見るにかなり苛立っているようだ。そんな主からの叱責を受けたヤムザは慌ててその場に跪き謝罪する。

 

 

 

「謝罪など要らん!とっとと片付けなさい!」

 

「ははっ!直ちに!」

 

 

 

顔を伏せたまま、ヤムザはそうクレイマン様に答える。それからヤムザはゆっくり立ち上がると、先程以上に鋭い目付きでこちらを見据えた。

 

 

 

「・・・・・・貴様のせいで、これまで必死に積み上げたクレイマン様からの信頼を損なってしまった・・・!許さん・・・絶対に許さんぞ!」

 

 

 

こちらを射抜くかのような視線と共にヤムザは殺気を放つ。魔素量では上回っていても、戦い・・・いや、殺し合いの経験では負けているからだろうか。思わず気圧されてしまう程、恐ろしい眼光だった。

 

 

 

「こうなれば、奥の手を見せてやる!」

 

「奥の手?」

 

「・・・・・・かぁああああッ!」

 

 

 

奥の手とは一体何なのか、眉を寄せる俺目掛けヤムザは再び『水氷大魔嵐(アイスブリザード)』を放った。それを見て、何故か先程よりも威力が高いことに気付く。ヤムザがまだ本気ではなかったのか、それとも彼の怒りが魔法の威力に影響を及ぼしたのか。

 

魔法を扱うには精神力も重要となる。それを考えれば有り得なくは無い話だが、今は一先ず置いておこう。ヤムザの言う奥の手は間違いなくこれでは無い筈だから。

 

 

 

「はぁッ!」

 

 

 

一度思考を打ち切り、俺は『水氷大魔嵐(アイスブリザード)』に対処する。と言っても、また闘気で吹っ飛ばすだけなのだが。

 

 

 

「おぉおおおおおッ!」

 

 

 

俺の闘気が白銀の渦を貫く。押し負けた吹雪が周囲に拡散されていくが、それに紛れてヤムザが高速で接近してきた。一瞬姿を見失ったが、『魔力感知』を使うことで位置の特定に成功する。

 

 

 

「死ねェッ!」

 

 

 

俺がヤムザを視界に捉えた時、彼は声を上げてアイスブレードを突き刺そうとしてくるところだった。殺すのはルール違反だって忘れたのかよ。

 

内心でやや呆れつつ、俺は『魔力感知』を切ってヤムザの攻撃に集中する。この距離まで来たのならもう見失うことは無いと判断したからだ。

 

 

 

「だぁッ!」

 

「おぐっ!?」

 

 

 

放たれた刺突攻撃を身を反らして回避すると、ヤムザもそれで終わらず剣で斬り払う動作に繋げてくる。それも『思考加速』によって躱し、俺はヤムザの腹に拳を叩き込んだ。

 

苦し気な声を上げ、殴り飛ばされるヤムザ。このまま場外へ吹き飛ばそうと闘気弾で追撃しようとした、その時。

 

 

 

 

 

「────くく」

 

 

 

転がりながら、ヤムザがこちらを見て不気味に笑っていた。見間違いかとも思ったが、妙に嫌な予感がする。とにかく何かされる前に場外へ落とそうと、俺は片手に闘気弾を形成しヤムザ目掛け発射──・・・

 

 

 

「───アクトくんッ!」

 

「ッ!?」

 

 

 

しようとした瞬間、青娥さんが焦った声色で俺の名を呼んだ。俺は咄嗟に攻撃を中断し、何事かと青娥さんの方へ振り向く。いや、振り向こうとした。

 

 

 

「『水氷大魔嵐(アイスブリザード)』ッ!!!」

 

 

 

しかし、それは背後から巻き起こる吹雪によって阻まれた。聞こえる筈の無い男の声に驚きながらも、俺は背後を確認することすらせずその場から逃れようとする。『加速』も発動させたのだが間に合わず、俺は白銀の渦に飲み込まれた。

 

 

 

 

「つ、ぁ・・・・・・ッ!」

 

 

 

全身を襲う衝撃と冷気に俺は声にならない声をこぼす。凄まじい吹雪にもみくちゃにされながらも俺は『身体強化』と『加速』を発動させ、何とか『水氷大魔嵐(アイスブリザード)』から抜け出すことに成功した。

 

 

 

「チッ、決め切れなかったか」

 

「あのまま場外に落としてやるつもりだったんだがな・・・」

 

 

 

舞台上に膝を付いて荒い呼吸を繰り返していた俺は攻撃を受けた方向を見て俺は目を見開く。そこに立っていたのは、間違いなくヤムザだった。俺が困惑していると、先程ヤムザを殴り飛ばした方向から声が聞こえた。そちらを確認するとそこにいたのはやはりヤムザで、呟きながらこちらに歩いてくる。

 

 

 

「青娥、貴様・・・!卑怯なことをしてくれましたね。さっき貴様が余計なことを言わなければ、ヤムザが勝っていたかもしれないというのに!」

 

 

 

舞台外でクレイマン様が青娥さんに怒鳴っているが、そちらに気を回す余裕も無い。俺は全身の痛みに耐えるよう歯を食い縛りながら、二人並んだヤムザたちを見据える。

 

 

 

「アクト、貴様は確かに強い。だが・・・・・・これまでだよ」

 

魔宝装身具(アーティファクト)、『鏡身の腕輪(ドッペルゲンガー)』・・・・・・これがある限り、俺は無敵だ・・・!」

 

 

 

まるで鏡に映したかのように髪色や服装が反転している二人は、マスク越しでも分かるくらい不敵な笑みを浮かべている。突如敵が増えたことで状況が不利になったことを悟りつつも、俺は無理矢理口端をつり上げて立ち上がってみせるのだった。




戦闘描写はやはり難しいですね・・・
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