転生したら蜥蜴人族の友人と邪仙の恋人ができた件   作:乃出一樹

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お待たせしました、第116話となります。

いよいよZA発売まで一週間を切りましたね。


蟲魔族(インセクター)

蟲魔族(インセクター)との戦いが始まってから、もう三日目となっていた。

 

ラプラスの隠された実力の一端を目の当たりにした一日目の夜。アルヴァロがちゃんと見ていてくれたお陰か、あの後ヤムザはちゃんと野営地に戻り、それ以降は特にトラブルもなく二日目の朝を迎えることが出来た。ただ、どうもショックから立ち直っていなかったようで、二日目の戦闘中、ヤムザはどこか動きにキレが無かったように思える。とは言え、仮にも上位魔人なのでその状態でも蟻たちに遅れを取ることはなかったが。

 

しかし、昼間の戦闘を終えた後にそれ以上の問題が発生した。なんとガビルとシーザーが離脱することになったのである。

 

念の為に言っておくが、二人の身に何かが起きた訳ではない。ガビルとシーザーのいなくなった戦場で蟻たちを倒しながら、俺は昨日の出来事を思い出していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「──なんですと!オークたちの調査に出ていた部隊が戻った!?」

 

 

 

青娥さんから告げられた言葉を聞いたガビルは驚いた様子でそう繰り返した。

 

俺たちの担当する昼間の戦いが終わり、夜間の戦闘を担当する三人と交代する際のことだった。野営地に戻ろうとする俺とガビル、それからシーザーは青娥さんに呼び止められる。どうしたのかと話を聞くと、俺たちの戦闘中にシス湖にいる首領から青娥さんへ連絡があったそうだ。

 

 

 

「えぇ。何かあった時は連絡するようにと首領にマジックアイテムをお貸ししてまして。調査隊は数時間程前にシス湖へと戻り、首領たちは既にオークたちについての報告を受けたそうです」

 

「で、では何故すぐに我輩に伝えてくれなかったのだ!?」

 

「私もそうした方がいいかなー、と思ったんですよ?けど、首領にお伺いしてみたら、息子に伝えるのは昼間の戦闘が終わってからで良いと仰ったので」

 

 

 

青娥さんに詰め寄るガビルだったが、彼女の返答を聞くとそういうことなら・・・と、納得して落ち着いた。戦いの途中でガビルとシーザーが抜けたらこちらが大変になるだろうと、首領なりに気を遣ってくれたのだろう。

 

 

 

「詳しい内容は向こうへ戻ってから首領たちに直接聞いてください」

 

「うむ、そうするのである・・・・・・済まぬなアクト殿。我輩とシーザーはここまでだ」

 

『悪い大将・・・』

 

 

 

青娥さんとの話を終えたガビルは俺に向き直ると小さく頭を下げた。隣にいたシーザーも申し訳無さそうな顔をしながら『思念伝達』でそう伝えてくる。

 

 

 

「仕方ないよ、元々何かあったらあっちを優先するって話だったんだし。寧ろ今日まで一緒に戦ってくれて凄い助かった」

 

「そう言って貰えると有り難いな・・・・・・スフィア殿も申し訳ない。ジュラの大森林を守る為に力を貸してくれたと言うのに、そこに住む我輩が皆より先に離脱するなど・・・」

 

「気にすんなって。そっちの問題だってほっときゃ森の危機に繋がるんだろ?さっさと行って親父さんたちを助けてやりな。頑張れよ、ガビル!」

 

 

 

俺の次に謝罪されたスフィアはにかっと笑ってガビルの肩をばしんと叩いた。その威力に堪らずガビルは一瞬よろけるも、スフィアの笑顔を見てふっと表情を緩ませた。

 

 

 

「それじゃあ、俺のスキルで二人をシス湖に送還するよ。ガビル、首領や爺さんたちによろしく」

 

「うむ。アクト殿、スフィア殿、皆。武運を祈っているぞ!」

 

 

 

最後にガビルは俺たちにそう告げて、シーザーと共にシス湖へ帰った。向こうに戻ってもガビルは大変だろうし、彼を手伝えないのは歯痒いけれど、俺はこちらの戦いに集中しようと気持ちを切り替える。

 

その後、夕食の時間で俺たちは戦闘時の編成を考え直すことに。アルヴァロが中心となって皆の意見を取り入れた結果、次のようになった。

 

まず、ガビルが抜けたスフィアのところに俺たちの組からクロコダインとフォスを入れる。初日と二日目の戦いぶりを見ている限り、この二人であればスフィアの足を引っ張ることはないだろうと判断された。勿論、何かあればスフィアだけでなく俺もフォローに回るつもりだ。

 

その俺は、一人で行動することとなった。最初は残ったヤムザと二人でそのままにするか、シーザーの代わりにテングと組ませるか、と案が出た。しかし、前者はヤムザに拒否されてしまい、後者についてはテングにやめた方が良いと止められてしまう。

 

ヤムザに関しては気に入らない俺と二人で組むのが嫌だったからだろうが、テングについては理由が分からず何故かと訊ねる。すると、俺の問いにテングはこう答えた。

 

 

 

『私と組むということはアクトさんも常に空中にいるということ。アクトさんの力が私などよりずっと上なのは理解していますが、それでも常に『飛空法』を維持し、さらに上空から戦場の様子を把握し続けるというのは厳しいかと』・・・と。

 

そう、テングは俺の身を案じてくれていたのだ。青娥さんたち三人を除けばこの中で一番魔素量の高い俺でも、朝から夜までずっと『飛空法』を発動し続けるのは厳しい。その状態で戦場全体を見つつ空を飛べる個体たちの相手をして、更にピンチになった仲間たちのサポートに回るというのは恐らく不可能だろう。

 

この役目は、テングやシーザーたち種族として翼を持つ者だからこそこなせるのだ。最も、シーザーに関しては進化したばかりだからか体力が足りないからかは分からないが、時折僅かな時間地上に降り翼を休めていたけれど。

 

俺も休憩をこまめに挟めばテングと共に空から皆の援護をすることが出来るかもしれないが、それなら初めから遊撃隊として地上に残り、アルヴァロやテングの指示の元、その都度最適な動きをすれば良い。それなら地上も空もどちらもフォロー出来る筈。よって、俺とテング・・・そしてヤムザは誰とも組まずにそれぞれ一人で行動することに決まったのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「────あやややっ!アクトさーん!ヘルプ、ヘルプでーすっ!」

 

「っと・・・・・・了解、今行く!」

 

 

 

テングの助けを求める声が耳に届き、俺は意識を今に戻す。見上げると、洞窟から飛んできた複数の羽蟻がテングへ向かっていくのが視界に映った。数は・・・六匹か。

 

 

 

 

「大丈夫かテング!オラァッ!」

 

 

 

俺は直ぐ様『飛空法』を発動し飛翔した。その勢いのままテングに接近しようとしていた羽蟻の一匹を地上へ叩き落とす。

 

 

 

「うおぉおおおおおおおッ!!!」

 

 

 

それから残りの羽蟻たちを見据え、俺は闘気を高める。闘気を両手に集中させた俺は声を上げながら連続で闘気弾を発射した。それなりの威力が込められたいくつもの闘気弾は全ての羽蟻たちに炸裂し、そいつらは地上へ落下していった。

 

 

 

「おぉ~、お見事・・・って、全部倒しちゃいましたか。半分は手伝おうと思ってたんですがね」

 

「はは、これくらいならどうってことないよ。それにテングは一人で空を担当してるんだし、少しは楽しないとな」

 

 

 

地上に落ち動かなくなった蟻たちを見下ろしながらぱちぱちと拍手していたテングだが、一瞬はっとした表情を見せた後、申し訳無さそうに苦笑した。そんな彼女に俺はそう告げると地上へと降りていく。

 

 

 

三日目の戦いが始まって、既に数時間が経過していた。

 

ガビルとシーザーが抜けた穴を補えるよう編成し直したお陰で、蟲魔族(インセクター)たちとは今のところなんとか戦う事が出来ている。ただ、やはり戦力が減った影響はそれなりに大きく、それは少しずつ、疲労や傷といった形で皆の身体に表れていた

 

 

 

 

「はぁ・・・はぁ・・・・・・!」

 

「でぇえええええいッ!・・・・・・むっ、大丈夫かフォス!?」

 

「ふぁっ!?は、はいです!まだまだやれるです!」

 

 

 

蟻を一匹仕留めたクロコダインは息を荒くしているフォスに気付いた。心配して声を掛けるクロコダインに振り向いたフォスは、ぱっと笑顔を浮かべそう答える。

 

アルヴァロ、フォビオ、スフィア。それから俺の四人はまだ肉体的にも精神的にも余裕がある。勿論一日目と比べれば疲労は溜まっているが、本気のアーツやスキルはこの三日間ほぼ使用していないし、このペースでいけばあと数日程度なら問題なく戦えるだろう。

 

だが、クロコダインたち残りのメンバーは徐々に疲労が蓄積し始め、蟻たちから受けるダメージも増え始めていた。獣王戦士団随一の実力者であるというグルーシスは比較的大丈夫そうだが、今後どうなるかは分からない。彼らをフォローすることが多くなれば、チームを組んでいるアルヴァロたちもさらに消耗するだろうし、ここはフリーで動いている俺とヤムザが頑張るしかない。

 

 

 

・・・・・・・・・と、思っていたのだが。

 

 

 

 

「はっ、はっ、はっ・・・・・・!ぐぅうう、虫ケラ共が・・・!」

 

 

 

なんと、このメンバーの中で俺の次に強い筈のヤムザが一目で分かる程に消耗しているのだ。それでもクロコダインたちよりは戦えているのは流石だが、昨日までは使わなかったドッペルゲンガーを少し前に発動させ、分身と二人で戦闘してこの状態である。正直ヤムザのこの状況は予想外だった。

 

 

 

「げっ!?おいアルヴァロ!また大量に出て来やがったぜ!」

 

「分かった!ヤムザ、頼むぞ!」

 

「チッ・・・命令するなッ!」

 

「『水氷大魔嵐(アイスブリザード)』ッ!!!」

 

 

 

その時。洞窟から蟻たちが現れ、ジョイスが嫌そうな顔でアルヴァロに報告する。それを受けたアルヴァロの呼び掛けにヤムザは腹立たしそうに舌打ちしそう吐き捨てる。それでも即座に動き出すと、分身と二人掛かりで白銀の渦を巻き起こし蟻たちを吹き飛ばした。

 

 

 

「ピギャアァアアアアア───・・・・・・ッ!!!」

 

「ぜぇ、ぜぇ・・・・・・!次から次へと・・・っ!」

 

 

 

悲鳴を上げながら絶命していく蟻たちを一瞥したヤムザだが、酷く疲れた顔をして肩で息をしている。ガビルが抜けてからは、今のように群れが現れるとヤムザとその分身、もしくは俺が対処するようになった。今回は蟻たちに近い位置にいたヤムザの魔法で倒してもらった訳だが、やはり彼の様子に違和感を覚える。

 

確かにガビルが抜けてからヤムザの負担は増えたが、彼だけに任せきりにはならないよう俺も動いているのだ。だと言うのに彼ほどの実力者がフォビオやスフィアより先にこれだけ消耗しているというのは妙だ。

 

そう思った俺は、蟻たちの数が減った今の内にアルヴァロの元へ行きそのことについて話す。どうやらアルヴァロもそのことが気になっていたらしく、少し考える仕草をしてから口を開いた。

 

 

 

「・・・・・・恐らくだが、ドッペルゲンガーを使った影響かもしれない」

 

「ドッペルゲンガーの?」

 

 

 

そう問い返す俺に、アルヴァロは静かに頷く。すると彼はヤムザを見つめながら自分の立てた仮説を語り始めた。

 

 

 

特質級(ユニーク)アイテムであるという、魔宝装身具(アーティファクト)、『鏡身の腕輪(ドッペルゲンガー)』。

 

その力は所有者と同じ能力を持つ分身を造り出すというものだが、正確には少し違う。魔素量が倍になる訳ではなく、所有者の魔力を本体と分身に分割しているというのだ。

 

つまり、攻撃の手数は倍になるしそれぞれの単純なパワーというか出力こそ変わらないようだが、魔力量が減っている為に強力なアーツや魔法が連発出来なくなり、耐久力も半分になってしまうのである。

 

 

 

「そんなデメリットがあったのか・・・!」

 

「あくまで私の仮説だが・・・・・・今のヤムザの様子からしてほぼ間違いないと思う。恐らく、これまで奴は格下ばかりとしか戦わず、さらにドッペルゲンガーを使えばすぐに勝負を決められていたことでその欠点に気付かなかったのだろう」

 

 

 

仮説を聞いて驚く俺にアルヴァロはそう補足した。彼の言葉の後、俺はヤムザへ視線を向け思案する。俺としてもアルヴァロの仮説は正しいと思う。そうなるとヤムザにはドッペルゲンガーの使用を控えてもらい、少し休憩してもらった方が良いかもしれない。

 

そう考え、ヤムザに声を掛けようとしたその時だった。

 

 

 

「・・・・・・・・・っ!?皆気を付けろ!地中に何かいる!」

 

 

 

突然、顔色を変えてアルヴァロがそう叫んだ。その声に俺はヤムザのことを一旦頭の片隅に追いやり、『魔力感知』を発動する。すると、アルヴァロの言う通り地面の下・・・しかもすぐそこに六つの反応が迫っている。

 

くそ、油断した・・・!今まで洞窟からしか現れなかったから、そこだけ注意していれば良いと思って『魔力感知』を切ったままだった。他の皆もアルヴァロに言われるまで気が付いていなかったらしい。その場を離れるよりも先に、地中からそいつらは現れた。

 

 

 

「ギチギチギチギチ・・・・・・!」

 

「む、百足・・・!?」

 

 

 

不快な音を立てながら地中から飛び出してきたのは百足たちだった。以前、封印の洞窟で倒したエビルムカデはどことなくファンタジー世界に登場するモンスターらしい姿をしていたが、蟲魔族(インセクター)であるそいつらは普通の百足と大差無い姿となっている。しかし、そのサイズは普通の百足と全く違った。

 

 

 

「でっか!?」

 

 

 

思わずそう叫んだ俺は百足たちを見上げる。穴から這い出し俺たちの前に現れたそいつらはどれも二、三十メートルはありそうなほどの巨体だったのだ。首をもたげると、その顔が上空にいるテングに届きそうなほどである。あまりに大きい蟲を前にして、流石の彼女も顔を引きつらせていた。

 

 

 

「気を付けろ!長く生きた個体なのか、Aランク以上の魔素量を持った奴が二体いる!」

 

 

 

突然現れた蟻以外の蟲に俺を含む何人かが困惑する中、アルヴァロが声を上げる。すると、まるでその言葉が合図となったかのように百足たちは一斉に動き出した。

 

見る人によっては悲鳴を上げそうな、身体をくねらせるような動きで百足たちは俺たちに襲い掛かってくる。というか実際、上空からテングの悲鳴が聞こえた。俺は『魔力感知』で百足たちを詳細に観察しながら、アルヴァロを庇うように彼の前へ出て迎撃の態勢に移る。

 

 

 

・・・・・・成程。アルヴァロの言う通り、確かにAランク級の個体が二体いるな。具体的には、以前戦った牛頭族や馬頭族の族長たちに匹敵する魔素量を持っている。

 

その二体だが、一体は空を飛んでいるテングを狙っており、もう一体は近くにいたヤムザに襲い掛かっている。残りの三体はスフィアやフォビオたちの方へ向かっていた。

 

とは言え、焦ることはないだろう。確かにこの百足たちがいきなり地面から飛び出てきた時は驚いたが、Bランク四体とAランク級が二体出てきたところでこのメンバーの相手にはなるまい。現に、こんなことを考えながらも俺は闘気弾を放ち、こちらに迫ってきていた百足の頭部を吹っ飛ばすことに成功。あっという間に一体を倒したのである。

 

これなら問題なく対処できる・・・・・・と、内心ほっとした俺だったが、その判断は甘かったのだとすぐに思い知ることとなる。

 

 

 

「おいおい・・・!くっそ、アルヴァロ!追加で来やがったぜ!」

 

 

 

ジョイスの声に振り向くと、洞窟から蟻たちがわらわらと現れてくるのが見えた。かなりの数を確認し、タイミングが悪いなと俺が思わず顔をしかめていると、蟻たちを追い抜くように複数の何かが洞窟の外へ飛び出してきた。一瞬、羽蟻かと思ったが、フォルムが全く違う。

 

 

 

「あれは・・・・・・カナブン!?」

 

 

 

飛んできたのはカナブンの蟲魔族(インセクター)だった。そのサイズだが、言うまでもなく通常のそれとは全く違う。流石に百足と比べれば小さいが、それでも三メートルくらいはあるだろうか。ちなみに蟻たちよりかは少し小さい。

 

そんなカナブン型の蟲魔族(インセクター)だが、羽蟻たちよりも飛行スピードがずっと速い。奴らは洞窟から飛び出るとそれぞれバラバラに移動し皆に向かっていく。その内の二体はテングとクロコダイン目掛け飛んで行き、百足の対処に意識を割いていた二人に突撃した。

 

 

 

「お、ぶっ・・・!?」

 

「ぐわぁああああああああああああああっ!!!?」

 

「テング!?クロコダイン!?・・・・・・くそっ!」

 

 

 

まるで弾丸・・・いや、大砲のようなカナブンの突撃をテングとクロコダインはモロに喰らってしまう。真横から突撃されたテングはくぐもった声を漏らし苦痛に顔を歪め、背中から攻撃されたクロコダインは何故か聞き覚えのある悲鳴を上げながら吹き飛ばされた。

 

空中で態勢を崩し落下を始めるテングと、地面を転がるクロコダイン。百足とカナブンたちの登場により混乱が広がる戦場を見回しながら俺は僅かに逡巡し、それからテングの助けに向かうことを決めた。クロコダインには申し訳ないが、あちらにはスフィアがいるので何とかしてくれるだろう。

 

 

 

「はぁあああああああッ!」

 

 

 

『飛空法』に『脱獄者』の『加速』を合わせ、空を飛んでテングの元へ急ぐ。その際、テングが戦おうとしていたAランク級の百足、それからテングに体当たりをしたカナブンへ闘気弾を放った。蟻たちに撃っていた時より闘気を込めたそれはカナブンは勿論百足すら一撃で倒すほどの威力で、直撃を受けたそれぞれはバラバラに砕け散った。死んだ蟲たちの死骸を一瞥し、俺は落下するテングを受け止める。

 

 

 

「大丈夫かテング!?」

 

「ごほっ、ごふっ・・・・・・あやや、すみませんアクトさん。助かりました・・・あのままだとさっきの百足に食べられてましたよ・・・」

 

 

 

声を掛けると、テングは無理に笑顔を作ってそう答えた。顔に脂汗を浮かべているが、ランクとしてはあのカナブンよりテングの方が上。不意打ち気味に攻撃を受けてしまったせいでダメージが大きくなってしまったのかもしれないが、そこまで重症では無いらしい。

 

ほっと一息吐いた俺は、テングを抱えたままクロコダインがどうなったか地上の様子を確認する。どうやら予想通りスフィアがフォローに入って助けてくれたようだ。とりあえず、これで一安心──・・・

 

 

 

 

 

 

 

「ぎゃああああああああああああああああッ!!?」

 

 

 

・・・・・・しかけたその時。ヤムザの絶叫が響き渡った。

 

何事かと慌ててヤムザのいる方へ視線を向けた俺は、目に入った光景に驚愕する。なんと百足がヤムザの腹に噛み付いていたのだ。

 

激痛から声を上げるヤムザは自身の腹部に突き刺さった百足の牙を必死に抜こうとする。だが、これまでの戦いで体力と魔力消耗しているヤムザでは、Aランク級の蟲魔族(インセクター)を振りほどくことは出来ないようだった。俺は彼の周囲を見回したが、百足を含む複数の蟲たち以外は誰もいない。ドッペルゲンガーの分身もだ。まさかやられてしまったのか?

 

 

 

「さっき・・・カナブンに体当たりされた時、ヤムザさんの方にもカナブンたちが飛んでいくのを一瞬見ました・・・多分、私みたいに不意を突かれて、そこを百足に・・・・・・」

 

 

 

危機に陥っているヤムザの姿に俺が驚いていると、痛みを堪えながらテングが俺に告げた。そう言えばヤムザはかなり消耗していた。普段ならともかく、あの状態ならテングのように不意打ちを喰らってしまってもおかしくはない。そこをAランク級の百足に襲われ、分身共々やられてしまったのだろう。

 

・・・・・・って、呑気に考えてる場合じゃないな。

 

 

 

「・・・・・・ごめんテング。もう動けるか?」

 

「えっ・・・?あ、はい。なんとか・・・・・・それに、アクトさんが作ってくれたハイポーションもありますので」

 

「よし、じゃあまた何かあったら呼んでくれ!」

 

 

 

テングが自力で飛ぶ様子を確認した俺は、そう言い残して空を翔けた。向かう先は言うまでもない、ヤムザのところだ。

 

 

 

「だぁああああああああああッ!!!」

 

 

 

ヤムザの傍まで接近した俺は脚に闘気を込め、ヤムザの腹に噛み付く百足の頭部を蹴り飛ばす。百足の頭が破壊され、それと切り離された長い胴体がびたんと地面に落ちた。俺は息絶えた百足の牙が刺さったままのヤムザに駆け寄り、その場で闘気弾を周囲に連射。ヤムザに群がっていた蟲魔族(インセクター)たちを一掃した。

 

 

 

「しっかりしろヤムザ!今助けるから!」

 

「う、ぁ・・・・・・っ・・・あ・・・くと・・・?」

 

 

 

周囲の安全を確保した俺はヤムザに声を掛けながら突き刺さっている百足の牙を抜き抜く。か細い声ではあったがそう反応するヤムザの腹にハイポーションを振り掛けた。液体が傷口に滲みるのかヤムザの身体がびくりと跳ね呻き声を漏らす。だが、やがて全ての傷が癒え激痛から解放されるとヤムザははっとして身体を起こした。

 

 

 

「はぁ、はぁ・・・・・・?お、俺は・・・」

 

「良かった、傷は全部塞がったみたいだな。けど無理はするなよ?俺のはハイポーションだから傷も体力も完全に回復する訳じゃないんだ」

 

 

 

自身の身体の具合を確認するヤムザに俺は安堵しつつそう告げた。リムルならフルポーションを作れるのだが、いない者のことを考えても仕方ないな。

 

 

 

「アクト!ヤムザは無事か!?」

 

 

 

ヤムザが回復した直後、アルヴァロが声を上げて安否を訊ねてきた。そちらに振り向くと、洞窟からぞろぞろと出てきた蟲たちを彼が魔法で迎撃しているところだった。いや、彼だけではなく皆も大量の蟲たちを相手に奮闘している。

 

 

 

「大丈夫!ハイポーションで怪我は治った!」

 

「よし!アクト、済まないがヤムザのフォローをメインに動いてくれ!蟲たちの数が急に増えた、油断するなよ!」

 

「了解!」

 

 

 

俺はアルヴァロと視線を合わせ、彼の指示に頷きそう答える。アルヴァロも小さく笑ってこちらに頷き返すと、それからすぐに蟲たちとの戦闘に意識を戻した。

 

 

 

「さて・・・・・・立てるか?ヤムザ。厳しい状況だけど何とか乗り切ろうぜ」

 

「うるさいっ・・・!貴様の手など、誰が借りるか・・・!」

 

 

 

ヤムザに向き直った俺は手を差し出すが、それをヤムザは振り払ってしまう。少しふらふらしながらも剣を支えに立ち上がり、こちらに向かってくる蟲たちを睨み付ける。

 

気難しい彼に思わず苦笑してしまうが、この調子なら大丈夫だろうか。そう思いながら俺はヤムザの隣に並び立ち、襲い掛かってくる蟲たちに立ち向かうのだった。




ZAを楽しみたいので、暫くの間投稿頻度が落ちるかもしれません。本当に申し訳ありません。
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