転生したら蜥蜴人族の友人と邪仙の恋人ができた件   作:乃出一樹

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お待たせしました、第119話となります。

もうすぐZAのDLCが来ますね、楽しみです。


ガビルとゲルミュッド

近頃は違和感も無くなり、すっかりそこにあるのが当たり前と思えるようになった背中の翼を羽ばたかせる。アクト殿と共に青娥殿から習った『飛空法』も使い、木々の隙間を縫うようにしてジュラの大森林を高速で飛んでいく。身体で風を切るようなこの感覚は中々どうして爽快で気分が良い。

 

 

 

「ある意味、一人で動いたのは正解だったな」

 

 

 

ホバーリザードに乗って大地を駆けるのとはまた違う、リザードマンだった頃では味わえなかった感覚に、我輩は思わずふっと口元を緩ませた。これを見越しての判断では全く無かったが、部下たちと共に行動していてはこの速度で移動は出来ない。

 

 

 

我輩ことリザードマン族次期首領であるガビルは今、ある目的の為にジュラの大森林を飛び回っている。その目的とは、来るべき豚頭帝(オークロード)が率いるオーク軍との戦いに備えて味方となってくれるゴブリンたちを探しているのだ。

 

ジュラの大森林の各地に存在するゴブリンたちの村を回り、彼等が交渉に応じてくれたのならシス湖にある我等の住処へ向かってもらう。今日までに我輩一人で多くの村を回ったが、交渉の結果、ほとんどの村が我々に協力してくれることとなった。親父殿も言っていたが、オークロードの出現はゴブリンたちにとっても脅威となる事態だ。彼等としても生き残る為に我等の力に縋りたいのだろう。

 

 

 

ちなみに。ほとんどと言ったが、協力してくれない村には断られた訳ではない。そもそも交渉が出来なかったのだが・・・・・・とりあえずそれについては置いておくとしよう。

 

 

 

オークロード・・・・・・ジュラの大森林に伝わる伝説の特殊個体(ユニークモンスター)。ニ十万にも及ぶオークたちを支配し、ジュラの大森林すら手中に収めようと企む化物。そいつは間違いなく強敵で、オーク軍との戦いも厳しいものになるのだろう。

 

しかし、我輩はそちらよりも別の勢力を警戒していた。それはジュラの大森林の西側にて、アクト殿たちが現在戦っている蟲魔族(インセクター)たちである。

 

 

 

「アクト殿たちはどうしているだろう・・・・・・怪我などしていないといいが・・・」

 

 

 

我輩がシス湖に戻り、その日の内に準備を整えゴブリンたちの村巡りを開始してからもう四日。アクト殿たちの戦いは六日目に突入している。相手となる蟲たちはほとんどがBランク程度なのだが、その数がとんでもないのだ。我輩は二日間しか戦いに参加していなかったが、それでもかなりの数を相手にした。今日まで戦いが続いているのなら皆かなり消耗している筈。怪我などはしていないだろうか?万が一、もしものことがあったら・・・・・・

 

 

 

「・・・・・・おっと、いかんいかん!」

 

 

 

慌てて首をぶんぶんと振ってその考えを振り払う。今は間近に迫っているであろうオークたちとの戦いに集中しなければ。

 

実は我輩、『思念伝達』の使用を現在禁止している。これがあると離れたところにいるアクト殿と会話が出来てしまうからだ。合間にアクト殿と『思念伝達』で楽しく話していては他の者たちに示しもつかないし、我輩自身の気の緩みにも繋がると判断してのことである。

 

爺にはそこまでしなくても・・・と心配されたが、これまで何度も親父殿と青娥殿から我輩の未熟な精神面について指摘をされている。アクト殿は気にすることはないと励ましてくれているものの、いずれ偉大な親父殿の後を継ぐのだ。気を引き締める意味も込めて、オーク軍との戦いの準備が終わるまではアクト殿との連絡はやはり断っておこう。

 

 

 

勿論、何か緊急の事態が発生すれば向こうから連絡をしてくるだろうし、それに応じるつもりだ。だが、アクト殿たちであれば問題ない筈だ。多少苦戦することはあるかもしれないが、蟲魔族(インセクター)たちになど絶対負けはしない。我輩とシーザーがいなくとも、必ず戦い抜き、そして勝利するだろう。

 

とは言え、彼等に任せ切りにはしたくない。急ぎゴブリンたちを集め、なるべく早くアクト殿たちの元へ戻らなければ。

 

 

 

「・・・・・・・・・ふむ、地図によればこの先にまた村があるようだな」

 

 

 

決意を新たにして、我輩は改めて手にした地図を眺める。見たところ、すぐ近くにゴブリンの村があるらしい。次の村でもしっかり交渉せねば・・・・・・と、我輩が気合いを入れ直した時だった。

 

 

 

 

 

「うわぁあああーーーーーーーーーっ!!!!?」

 

「むっ?」

 

 

 

少し先の方から何者かの悲鳴が聞こえてきたのだ。それも一つではなく、複数。恐らくこれから向かうつもりだったゴブリンの村で何かあったのだろうと思い、我輩は急いで飛んでいく。

 

 

 

「なっ・・・槍脚鎧蜘蛛(ナイトスパイダー)だぁああーーーっ!!!」

 

「皆逃げろ!急げ!」

 

 

 

そうして村に到着した我輩が目にしたのは、槍脚鎧蜘蛛(ナイトスパイダー)から逃げ惑うゴブリンたちの姿だった。ゴブリンたちの住居であろう、簡素な建物をその長い脚で踏み潰しながら、槍脚鎧蜘蛛(ナイトスパイダー)がゴブリンたちを追う。

 

その時、槍脚鎧蜘蛛(ナイトスパイダー)が突然動きを止めたかと思うと、進む方向を変えた。どうしたのかとそちらに視線を向けてみると、一匹のゴブリンが座り込んで震えていた。どうやら恐怖心で腰を抜かしてしまい動けないらしい。

 

動けずにいるゴブリンへと迫る槍脚鎧蜘蛛(ナイトスパイダー)。動きは緩慢だが、その巨体故に一歩が大きく、ゴブリンとの距離がすぐに縮まる。そしてゴブリンの目の前で足を止めた槍脚鎧蜘蛛(ナイトスパイダー)は、そいつを踏み潰そうと前脚を振り上げた。

 

 

 

「とうっ!」

 

 

 

その瞬間、我輩は勢い良く飛び出し槍脚鎧蜘蛛(ナイトスパイダー)に接近すると、奴の振り上げられた前脚をバーニングランスで切断した。突然の痛みと現れた敵に困惑したのか、槍脚鎧蜘蛛(ナイトスパイダー)は不快な声を上げつつももう片方の前脚を振り回す。

 

しかし、そんな攻撃は今の我輩にとって悪足掻きにも等しい。動きを見切った我輩はそれを躱しつつ、バーニングランスで残った前脚を斬り落とす。絶叫する槍脚鎧蜘蛛(ナイトスパイダー)を見据えたまま我輩は空中で体勢を整えると、闘気を右手と槍に込め、それを撃ち出した。

 

 

 

「喰らうが良い!超龍槍撃(ドラゴンクラッシュ)ーーーッ!!!」

 

 

 

放たれた闘気の塊は真っ直ぐ槍脚鎧蜘蛛(ナイトスパイダー)へと向かい、そして一撃でその頭部を粉砕した。体液を撒き散らしながら音を立てて崩れ落ちる槍脚鎧蜘蛛(ナイトスパイダー)。周囲の安全を確保した我輩はゆっくり地面に降りると、腰を抜かしたままのゴブリンに声を掛けた。

 

 

 

「ふっ、他愛ない・・・・・・そこのゴブリンよ、無事であるか?」

 

「・・・・・・・・・・・・はっ・・・はい・・・!」

 

 

 

我輩にそう問われたゴブリンは、最初の内は呆然とした表情でこちらを見上げていた。しかし、やがてはっとした様子で我に返ると、安堵からか涙を流しつつも笑顔を浮かべる。

 

無事だったことを確認して我輩が頷いていると、周囲が騒がしくなってきた。見ると、槍脚鎧蜘蛛(ナイトスパイダー)が倒されたことで逃げ出していたゴブリンたちが戻ってきたようだ。

 

 

 

「皆、見ろ!槍脚鎧蜘蛛(ナイトスパイダー)が・・・!」

 

「あのお方が倒してくれたんだ!」

 

「ありがとうございます!貴方様のお陰でこの村は救われました!」

 

 

 

驚きと感謝の言葉を述べながら我輩の回りに集まってくるゴブリンたち。我輩は彼等に返事をした後、この村で一番偉い者を呼んで欲しいと頼んだ。すると、一人のやや年老いた雄のゴブリンが姿を見せる。

 

ここの村長だという彼から改めて感謝の言葉を受けた我輩は簡単に自己紹介を済ませる。そして今回ここへやってきた目的、オークロードの件を伝えた。

 

我輩の話を聞いてゴブリンたちに再び混乱が広がっていく。折角槍脚鎧蜘蛛(ナイトスパイダー)の脅威から逃れられたというのに今度はオークたちの魔の手が迫っているというのだ、無理も無いだろう。

 

ざわめく声が段々大きくなってきた時、村長ゴブリンが声を上げ場を静めた。彼は仲間たちをぐるりと見回してから、我輩に向き直りこう言った。

 

 

 

「・・・・・・成程、そんな事態になっていたとは。分かりました。我々も及ばずながらガビル様のお手伝いを致します」

 

「感謝する。戦えない女子供たちも共にシス湖まで来ると良い。男手がいなくなったこの村に残っていては危険であろう。ならば、我等の住処に一時身を寄せた方が安全だからな」

 

「お心遣い、痛み入ります」

 

 

 

深々と頭を下げる村長。また味方のゴブリンが増えたことを我輩は内心で静かに喜んでいたが、ふとあることを思い出し、それについて村長に訊ねた。

 

 

 

「村長よ、一つ聞きたいことがある。実はここへ来るまでにも多くの村を回ったのだが、その中のいくつかはもぬけの殻だったのだ。他の魔物に襲われ全滅した、という訳では無さそうだったし・・・何か知らないだろうか?」

 

 

 

そう。実は今日までに訪れたゴブリンの村の内、いくつかは誰も住んでいなかったのだ。村の場所を記した地図が間違っていた、ということは無い。ちゃんとここの村と同じような簡素な建物が存在していたからだ。

 

我輩の質問に村長は顎に手を当て考え込む。それから少しすると何か思い至ったのか、ぽんと手を叩いた。

 

 

 

「あぁ!それでしたら、恐らく引っ越しですよ」

 

「引っ越し?全員で・・・しかも複数の村がか?」

 

 

 

眉を顰める我輩に村長は頷く。どういうことかと詳しく訊ねたところ、村長から気になる話を聞くことが出来た。

 

何でも、多くのゴブリンたちを纏め上げる何者かがジュラの大森林に最近現れたのだという。恐らく上位魔人であろうその人物は、封印の洞窟近くを拠点とし、そこに街を作ろうとしているのだとか。

 

噂では牙狼族の群れを従えているらしく、その強さを知り他の村からゴブリンたちが庇護を求めてやってくる程なのだとか。

 

 

 

「封印の洞窟近く、であるか・・・・・・では、次はそちらへ向かってみるとしよう。村長殿、情報提供感謝する」

 

「いえいえ、お役に立てたのなら何よりです。我々は準備を整えてからシス湖へと向かいます。ガビル様もどうかお気をつけて・・・」

 

 

 

村長に礼を言って、我輩は村を後にした。去る途中に多くのゴブリンたちから感謝の言葉を掛けられたり手を振られて少し気恥ずかしくもあったが、悪くはない気分だったのでこちらも軽く手を振ってそれに答える。

 

そうして村を出て、封印の洞窟までの道のりを地図で確認しようとした時だった。

 

 

 

「──そこのお前!」

 

「む?」

 

 

 

なんだか聞き覚えのある声に我輩は地図から顔を上げる。振り返って声のした方へ顔を向けた我輩は、そこに立っていた人物を見て目を見開いた。

 

 

 

「見ていたぞ。槍脚鎧蜘蛛(ナイトスパイダー)を倒すとは中々やるな。どうだ?この俺が名を授け──」

 

「お、おぉおおおっ!?ゲルミュッド様!」

 

「へっ?」

 

 

 

そこにいたのは、嘴の突き出た鳥を模したような仮面をした魔人・・・・・・そう、我輩にガビルという素晴らしい名を授けて下さった大恩人、ゲルミュッド様だったのだ!こんなところで再会するとは思わず、驚きながらも我輩はゲルミュッド様に駆け寄り頭を下げた。

 

 

 

「お久しぶりでありますな!いやはや、お元気そうで何より!」

 

「え、えーっと・・・・・・お前、俺のこと知ってるの?どっかで会ったっけ?」

 

 

 

ところが、何故かゲルミュッド様は困惑した様子で首を傾げる。どうしたのかと疑問に思う我輩だったが、すぐにその理由に思い至った。

 

 

 

「・・・・・・あぁ、成程!これは失礼を、少々見た目が変わっておりましたな!我輩ですよゲルミュッド様!ガビルでございます!」

 

「ガビル?ガビル・・・・・・・・・えっ!?ガビル!?お前ガビルなの!?」

 

 

 

名前を聞いたら思い出したようだが、ゲルミュッド様は信じられないと言った反応を見せつつ確認してきた。そう言えば、アクト殿から名付けをされて進化したことで種族が変わり、角が伸びたり翼が生えたり鱗の色が変わったりしていたのだった。これではゲルミュッド様が気付かないのも無理はないだろう。

 

 

 

「思い出して頂けましたか!」

 

「お、おぉ・・・・・・いや、なんて言うか・・・お前そんなに強かったか?A-ランクの槍脚鎧蜘蛛(ナイトスパイダー)を瞬殺するなんて・・・あと何か身体の色とか違うし翼なんかも生えてるし」

 

「ふっふっふっ・・・実はですな、ゲルミュッド様の後に新たに名付けをされまして」

 

「はぁ!?」

 

 

 

我輩がそう言うと、ゲルミュッド様は再び驚いて声を上げた。この方、驚いてばかりだな・・・・・・などと思いながらも我輩は話を続ける。

 

 

 

「アクト殿という、我輩自慢の友からです。それに毎日修行を続けていたのもあって、これだけの力を・・・・・・」

 

「ちょっ、待て待て待て!そのアクトって奴は何者だ!?ネームドにさらに名付けをするなんて聞いたことがないぞ!」

 

 

 

そこまで言い掛けたところでゲルミュッド様から待ったがかかる。確かに、それについてはゲルミュッド様が動揺するのも理解出来る。あの青娥殿も、名前の重ね掛けには驚いていたし。

 

それはともかく、ゲルミュッド様の質問に答えなければ。

 

 

 

「アクト殿はドラゴニュートで・・・・・・いや、青娥殿の弟子と言った方が良いだろうか」

 

「・・・・・・・・・・・・なぁ、ガビル。その、今お前が言った青娥って・・・・・・あの青娥か?邪仙の」

 

 

 

何故か急に声が小さくなったゲルミュッド様の問いに我輩は頷く。すると、ゲルミュッド様は絶句して震え始めた。

 

 

 

「ど、どうかしましたかな?ゲルミュッド様」

 

「・・・・・・ガビル。もしかして、邪仙って今この森にいるの?」

 

「えっ?は、はい。今はとある用事で森の西側におりますが・・・それが何か?」

 

 

 

心配して声を掛けたところ、ゲルミュッド様は我輩に青娥殿の所在について訊ねられた。何故そんなことを聞くのか不思議に思いながらも我輩がそう答えたところ、ゲルミュッド様は頭を抱えたまま俯いてしまう。

 

 

 

「まさか邪仙がジュラの大森林にいるなんて・・・・・・もし奴らと鉢合ってしまったら・・・・・・い、いや・・・でも西の方にいるんなら・・・」

 

「・・・・・・?・・・・・・おっと。そうだ、今はのんびりと話をしている場合ではなかったのだ」

 

 

 

何やらぶつぶつと呟いているゲルミュッド様を静かに見つめていた我輩だったが、封印の洞窟へ向かおうとしていたことを思い出す。黙っていなくなるなど失礼だろうと判断し、移動する前にゲルミュッド様へ声を掛けることにした。

 

 

 

「申し訳ありませぬゲルミュッド様。本当なら我等の住処へお招きし歓迎したいところなのですが、現在リザードマン族は・・・・・・いえ、このジュラの大森林は大きな危機を迎えているのです。それを何とかする為に我輩たちは動いておりまして」

 

「・・・・・・ん?・・・あぁ、オークロードだろ?」

 

「なんと、御存知でありましたか!流石はゲルミュッド様!」

 

 

 

説明する手間が省けたと内心で喜びつつ、この方の情報網に我輩は驚く。青娥殿でさえ、ラビットマンたちとの一件で偶然知ることが出来たというのに、流石は我輩を見出だしてくださったお方だ。

 

 

 

「ふん、俺から名を授かったお前には教えてやるか・・・・・・くっくっくっ・・・何を隠そう、オークロードを操っているのは他でもない──」

 

「しかし、御心配には及びませぬ!アクト殿と青娥殿が我輩たちに力を貸してくれますからな!」

 

「えっ」

 

 

 

我輩が力強く宣言すると、ゲルミュッド様は間の抜けた声を漏らしこちらを向いて固まった。しまった、何か言い掛けていたようだが邪魔をしてしまったか?

 

 

 

「む、失礼しましたゲルミュッド様。お話を遮ってしまうとはなんたる無礼を・・・・・・それで、何でしたか?確か、オークロードがどうとか・・・」

 

「い、いやいやいやいや!何でもない、何でもないぞ!うん!・・・・・・・・・なぁガビル。邪仙がお前らリザードマンの味方って・・・マジ?」

 

 

 

ぶんぶんと首を横に振った後で、ゲルミュッド様は恐る恐ると言った様子で我輩に訊ねてきた。その問いを受け、我輩は少し思案する。

 

青娥殿が協力してくれるとつい口走ってしまったが、直接は戦うつもりはないと、そのようなことを以前彼女は言っていた。とは言え彼女の弟子であるアクト殿は共に戦ってくれるし、万が一アクト殿の身に何かあればきっと青娥殿は動いてくれるだろう。彼女は一見自由気ままで冷たい女のように思えるが、あぁ見えてアクト殿にはどこか甘く優しいところがある。本人は恐らく認めないだろうが・・・・・・

 

 

 

とりあえず、青娥殿が我々の味方であることには変わりない。そう結論付けた我輩はゲルミュッド様の問いに頷いて肯定した。

 

 

 

「そっ・・・かぁ・・・・・・邪仙が味方なのかぁ・・・そっかぁ・・・」

 

 

 

するとゲルミュッド様は小さく呟いて空を仰いだ。どこか残念そうに聞こえるのは気のせいだろうか?

 

 

 

「げ、ゲルミュッド様?先程からどうも様子がおかしいようですが・・・・・・お身体の具合でも?」

 

「いや、違う・・・そうじゃない・・・・・・・・・あー、ガビル?邪仙たちをオークロードとの戦いに関わらせないようにって、出来たりする?」

 

「えっ、無理ですけど」

 

「だよな、ごめん」

 

 

 

我輩が即答すると、ゲルミュッド様はそれを薄々気付いていたのか食い下がったりはせず謝罪した。ゲルミュッド様からの頼みを断るのは心苦しいが、我輩が何を言っても青娥殿は聞いてくれないだろう。それに、オークロードとの戦いにはアクト殿も参加して欲しいからな。

 

念の為に言っておくが、アクト殿無しでオーク共に勝つ自信が無い訳ではない。我輩も以前よりずっと力を増したし、誇り高き我等リザードマン軍ならば、たとえオークロードがどれだけ強大だろうと、二十万近いオークたちが相手だろうと倒せるだろう。

 

だが、アクト殿が共に戦ってくれるのならばこちらの勝利はより確固なものとなるし、味方の被害もかなり減る筈だ。申し訳無いが、いくらゲルミュッド様の頼みと言えど、こればかりは聞く訳にはいかない。

 

 

 

「本当に申し訳ありませぬゲルミュッド様。歓迎も出来なければお役にも立てず・・・・・・」

 

「もういいよ・・・・・・ほら、何か用事あるんだろ?さっさと行けって」

 

 

 

そう言って、ゲルミュッド様は我輩を追い払うかのように片手を振った。理由は分からないが、やはり残念そうというか、落ち込んでいるように見える。ゲルミュッド様は我輩に名付けをしてくださった大恩人だ。力になって差し上げたいが、今の我輩には時間が無い。

 

申し訳無さから我輩は深々とゲルミュッド様に頭を下げる。それから顔を上げ、後ろ髪を引かれる思いでその場を立ち去ろうとした時。

 

 

 

 

 

「・・・・・・・・・やっぱり『あいつ』を呼ぶか」

 

 

 

ゲルミュッド様が零した、そんな言葉が耳に入った。

 

振り返ると、ゲルミュッド様が懐から水晶玉を取り出しているのが見えた。あれは恐らく連絡用のマジックアイテムだろう。

 

誰を呼ぼうとしているのか。そもそもゲルミュッド様は何をしようとしているのか。少し気にはなったが、我輩は再び前を向くとその場から飛び立ち、そして封印の洞窟へと向かうのであった。




クロバットとグソクムシャに会えるのが滅茶苦茶嬉しいです。
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