転生したら蜥蜴人族の友人と邪仙の恋人ができた件   作:乃出一樹

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お待たせしました、第122話となります。

あっという間に一月が終わってしまった・・・


予想外の襲撃者

今日で八日目へと突入した蟲魔族(インセクター)との戦い。

 

初日と比べればヤムザも他のメンバーとそれなりに上手く連携を取れるようになっており、蟲たちを相手にもう危機的な状況など起こらなくなっていた。とは言え、やはり五本指筆頭であるというプライドのせいなのか、同僚であるアルヴァロか、自分より強い俺以外からの指示は受けたくないようだけれど。

 

そんなヤムザに時折苦笑しつつ蟲たちを倒し続ける俺たちだったが、戦い始めてから二、三時間程である変化が起きた。

 

 

 

「・・・・・・・・・アクト、気付いているか」

 

「あぁ。アルヴァロがそう言うんならやっぱり気のせいじゃないよな」

 

 

 

背後から近付いてきたアルヴァロの問いに、振り返りながら俺は答える。変化というのは蟲魔族(インセクター)の数のことだ。

 

これまで、戦いが始まってから無限とも思えるくらいひたすら湧き続けた蟲魔族(インセクター)たち。だが、先程から現れる数が減ってきているのだ。一時的に出現する数が少なくなったり、数分だけとは言え一匹も洞窟から出てこないなんてことはこれまで何度かあったが、今日はその頻度がかなり多いのである。

 

 

 

「もしかして、もうほとんどやっつけちゃったです?」

 

「うーん、・・・・・・アルヴァロはどう思う?」

 

「・・・・・・そうだな」

 

 

 

フォスからの疑問を受け、俺はアルヴァロに意見を求めた。彼は一瞬考え込んだ後、青娥さんたちに報告しようと提案する。あの三人の見解も聞きたいのだと言う。

 

アルヴァロの案に反対するものは誰もいなかった(ヤムザだけ肯定も否定もしなかったけれど)ので、青娥さんたちを呼ぶことに。その役に名乗り出たジョイスが戻るまで洞窟の様子を見ていたが、その間には最早一匹も蟲たちは現れず、特に何も起きずに青娥さんたちがこちらに合流した。

 

 

 

「・・・・・・・・・・・・成程」

 

 

 

到着した青娥さんたち三人はこちらへの挨拶もそこそこに洞窟を観察し始める。ここに来るまでにジョイスから説明を受けていたらしい。それから少しして、観察し終えたレインさんが口を開いた。

 

 

 

「恐らくですが、皆様の予想通り蟲共の数が減ってきたのだと思います」

 

 

 

その言葉に俺たちは笑顔を浮かべた。八日間にも及ぶ長い戦いに漸く終わりが見えてきたのだ。こちらを見上げて、やりましたね!と嬉しそうに笑うフォスに俺は頷き返す。

 

とは言え、まだ油断は出来ない。

 

 

 

「あとは、異界の裂け目をどうにかすれば終わりっちゅー訳やな」

 

 

 

場が明るい雰囲気になってきたところで、ラプラスが頭の後ろで手を組みながらそう告げた。そう、その異界の裂け目を消さない限り今回の事件は解決しない。それを放っておけば、また別の蟲魔族(インセクター)たちが精神世界から現れてしまう。

 

 

 

「それじゃ、さっさと裂け目を消しに行きますか」

 

「邪仙、俺らはどうすりゃいい?」

 

「んー・・・・・・折角ですし皆さんにも付いて来てもらいましょう。待っているのも暇でしょうし、中にまだいくらかは敵もいるかもしれませんしね」

 

 

 

青娥さんは少し考えてフォビオにそう返した。この人数で潜るにはあの洞窟はやや小さいように思えるが・・・・・・確かにこの場に残っていても何もやることがないし、異界の裂け目にも興味があるし、俺は付いて行きたい。他のメンバーも同行することにしたようだし。

 

 

 

「よし、では異界の裂け目があると思われる洞窟最奥部へと向かう。ほとんど倒したとは言え、まだ生き残りもいるだろう・・・油断しないように」

 

 

 

アルヴァロの号令を受け、俺たちは洞窟へと足を踏み入れた。内部は至って普通の洞窟だが、『魔力感知』を使ってみたところ、充満している魔素が外よりも濃い。ヴェルドラさんが三百年封印されていた封印の洞窟に比べれば薄くはあるが、あそことは違いどことなく重苦しい空気を感じる。これも異界の裂け目の影響なのだろうか。

 

 

 

「・・・・・・・・・おや、これは少々面倒ですね」

 

「レインさん?」

 

 

 

洞窟に入って十分程経った頃だろうか。先頭を歩いていたレインさんが突然立ち止まりぽつりと呟いた。どうしたのかと俺が声を掛けると、彼女の代わりに青娥さんが答えた。

 

 

 

「『魔力感知』で洞窟内を調べていたんですけどね、どうも異界の裂け目の近くに特Aランク級の反応があるんですよ」

 

「な、なにぃっ!?特Aランクだとぉ!?」

 

「もしかして、上位種の蟲型魔人(インセクター)って奴ですか?」

 

 

 

青娥さんの話を聞いたクロコダインが驚愕する。彼からすればこれまで出逢ったことのないランクの敵なのだ、無理もない。一方、テングは落ち着いていた。長老代理のモミジさんという強者を知っているからだろう。そんなテングの問いにはレインさんがこう答えた。

 

 

 

「それはなんとも。下位個体でも長く生きれば特A程度に成長する可能性もありますし」

 

「ふぁー・・・・・・あの、青娥さん。ちなみにですけど、こないだのダンジョンにいた腐肉竜(ドラゴンゾンビ)と比べるとどっちの方が強いです?」

 

「魔素量だけで言えばそちらが上です。それに今回はこのメンバーですから心配要りませんよ」

 

 

 

フォスの疑問には青娥さんが答えた。それを聞いていた俺はほっと胸を撫で下ろす。この後にオークロードとの戦いも控えているのだ。流石にあれクラスの化物とはなるべくやり合いたくない。

 

 

 

「・・・・・・それはそうと、やっぱり青娥さんたちは流石ですね。ここからそんな奥まで探知出来るなんて」

 

 

 

再び歩き出したところで、俺は素直な気持ちを伝えた。実は俺も洞窟に入ってから『魔力感知』を使用しているのだが、思っていたよりもこの洞窟は長く続いているようで、その特Aランク級の個体の反応は探知出来ていない。同じスキルではあるが、実力者である青娥さんとレインさんの索敵範囲はかなり広いのだろう。

 

 

 

「一応、少し先にBランク級の個体が何体かいるのは分かるんですけど」

 

「ふふ、それだけ探知出来ていれば十分ですよ。これからより鍛えていけばアクトくんだって──・・・?」

 

「・・・・・・?これは・・・」

 

 

 

そう青娥さんと話している時だった。そこまで言い掛けたところで青娥さんが再び足を止め、目を丸くする。レインさんも不思議そうな反応をしていたので、気になった俺は声を掛けた。

 

 

 

「どうかしました?」

 

「いえ、それが特Aランク級の個体がいる場所に別の反応が現れたんですよ。魔素量的には特Aより少し下くらいなのですが」

 

 

 

レインさんの返答に俺はそうですか、と呟く。もしや異界の裂け目から新しい蟲が出てきてしまったのだろうか。だとしたら、急いで奥へ向かった方が良さそうだ。

 

俺がそう考えていると、真剣な顔をした青娥さんがこちらを向いた。

 

 

 

「アクトくん。今現れた反応ですが・・・・・・恐らく、封印の洞窟にいた何者かだと思います」

 

「っ!それって・・・・・・」

 

「封印の洞窟・・・?アクト、何の話だ?」

 

 

 

予想もしていなかったことを青娥さんから告げられ俺が動揺していると、アルヴァロが訊ねてきた。俺は青娥さんと一度顔を見合せると互いに頷き、事情を知らない皆に説明した。

 

以前、封印の洞窟で戦った嵐蛇と、それからユーラザニアのダンジョンで核となっていた腐肉竜(ドラゴンゾンビ)と戦ったこと。その二体が何者かの手によって生み出された特殊な魔物だったこと。そして、姿は見ていないけれど、嵐蛇と戦う直前に現れた何者かが、今この洞窟にも現れたということを。

 

 

 

「なんだと!?おい、それってあの腐肉竜(ドラゴンゾンビ)を作った奴がここにいるってことか!?」

 

「一体何の為に・・・・・・いや、それはそいつをとっ捕まえれば分かる話か」

 

 

 

こちらに詰め寄るスフィアの後ろでフォビオはそう呟き獰猛な笑みを浮かべる。彼等からすれば、そいつは自国を荒らした悪人だ。こうして近くに現れた以上、捕まえようとするのは当然だろう。

 

 

 

「けどよ、そう簡単にいくかぁ?アクトたちの話を聞く限り特殊な魔物を操るとんでもない奴っぽいし、しかも転移系の魔法かスキルまで持ってるみたいじゃん」

 

 

 

しかし、話を聞いていたジョイスは頭の後ろで手を組みながら首を傾げた。確かに、そいつは封印の洞窟やここにいきなり現れたところを見るに、それらの力を使いこなしているのかもしれない。となると、捕まえるのは難しいか。アルビスがいれば『制圧者』で逃走するのを防げたかもしれないけれど。

 

まぁ、青娥さんやレインさんと比べればそいつは弱いだろうし、この二人なら逃走を阻止する手段も持っているかもしれない。油断している訳ではないが、正直俺は今の状況にさほど危機感を抱いてはいなかった。

 

 

 

次の瞬間までは。

 

 

 

「うぉおおっ!?」

 

「あややっ!?地震ですか!?」

 

 

 

突如、激しい揺れが起こり数名の慌てる声が洞窟内に響いた。クロコダインは咄嗟に踏ん張り、テングは翼を広げると天井にぶつからない程度の高さまで飛んで揺れを回避する。

 

随分大きな揺れだなと、俺は洞窟が崩れたりしないか心配していた。その時、ヤムザの驚愕する声が耳に届いた。

 

 

 

「な、なんだこれは・・・・・・!?」

 

 

 

ヤムザの視線を追い、そして俺は目を見開いた。なんとヤムザの見つめている先の空間が歪み始めていたのだ。その歪みは徐々に大きくなり、俺たちの周囲にまで広かっていく。俺はこの光景に見覚えがあった。

 

 

 

「アクトさん!これって・・・・・・!」

 

「あぁ・・・あの時、ダンジョンの中で起きた現象にそっくりだ・・・!」

 

 

 

フォスも気付いたようで、揺れに耐えながら俺に確認してきた。頷いた俺の返答を聞いたフォスは、何故ここであの時と同じ現象か起きるのか疑問に思っている様子だが、俺や一部のメンバーはその理由に思い至っていた。

 

 

 

「封印の洞窟にいたっつー野郎が現れた瞬間にこれかよ!やっぱそいつがダンジョンを作ってた犯人じゃねえか!」

 

 

 

スフィアがそう叫ぶのを聞いてフォスがはっとした表情を浮かべる。もしこれがダンジョン化の前兆なのだとすれば、スフィアの言う通り封印の洞窟にいた何者かとダンジョンを作った犯人が同じである可能性は高い。

 

これからどう動くべきか。俺が青娥さんの判断を仰ごうとそちらを向いた時、アルヴァロの声が響いた。

 

 

 

「皆、気を付けろ!蟲魔族(インセクター)だ!」

 

 

 

彼の声に振り向くと、洞窟の奥から蟻型の蟲たちが迫ってきていた。その数は三。まだ残りが少し先にいるが、先程俺の『魔力感知』に反応した奴らの一部だろう。魔素量からして、全てBランク級の個体だ。

 

 

 

「この異変で混乱しているのか・・・?」

 

「けどまぁ、こいつらくらいならすぐ片付くぜ!」

 

 

 

蟻たちを見据え構えるサイラスとジョイス。確かにこの程度のランク、それと数の蟲たちなら今の俺たちであれば問題ない。ここはさくっと片付けて、急いでこの状況をどうするか青娥さんと話し合わなくては。

 

 

 

「よし、ここは俺とジョイスにサイラスの三人で───ッ・・・!?」

 

 

 

そう言いながら俺が飛び出したその時だった。俺たちの後方・・・やや離れたところに突然大きな反応が現れたのだ。

 

魔素量は、ユーラザニアのダンジョンにいた腐肉竜(ドラゴンゾンビ)より低い。しかしこの反応を俺は知っていた。封印の洞窟に現れた奴である。

 

ここの最奥にいた筈のそいつだが、俺たちの存在に気付いて始末しに来たのだろうか。だとしたら残念だったと言う他ない。なにせこちらには青娥さんとレインさん、さらにラプラスもいるのだ。あの腐肉竜(ドラゴンゾンビ)以下の奴一人で勝てる訳が無い。

 

 

 

だから、俺は一瞬躊躇いはしたものの、振り向くことなく蟻たちへ突っ込んで行ったのだ。しかし、蟻を一匹を蹴り倒した次の瞬間、信じられないことが起きた。

 

 

 

「はっ・・・・・・!?」

 

「おいおい・・・なんだよこの魔素量は・・・!」

 

 

 

同じく蟻を倒していたジョイスが表情を引きつらせる。サイラスも言葉は無かったが信じられないと言った顔をしていた。

 

なんと、その何者かの魔素量が急激に跳ね上がったのだ。それも、ユーラザニアのダンジョンで戦った腐肉竜(ドラゴンゾンビ)以上に。

 

これまでは目立たないよう魔素量を抑えていたのだろう。それがまさかここまでの強さだったなんて。もしかすると、模擬戦時のレインさんくらい強いかもしれない。

 

 

 

 

 

「余所見するな!アクトッ!」

 

「っ!?」

 

「チッ!」

 

 

 

ヤムザの声に我に返ると、カナブン型の蟲魔族(インセクター)がこちらに飛来してきていた。何者かの莫大な魔素量に気を取られて周囲への警戒が疎かになっていたのだろう。かなりの速度で突っ込んできたカナブンに反撃が間に合わない、と思ったその時。ヤムザがアイスブレードを投擲しカナブンを突き刺した。その勢いのまま、アイスブレードはカナブンを串刺しにして壁へと突き刺さる。

 

 

 

「ご、ごめん!ありがとなヤムザ!」

 

「礼などいい!それよりも・・・・・・!?」

 

「───アクトくん下がって!」

 

 

 

礼を言ったところ、ヤムザにぴしゃりと言い捨てられた。続けて何かを言おうとする彼だったが、後方で魔力の高まる反応を感じて言葉を失い冷や汗を浮かべる。

 

ヤムザと同じく、高まる魔力に驚いた俺はそちらへ振り向こうとしたが、それより先に青娥さんがこちらを庇うように立ちつつそう指示を出した。その声はどこか焦った様子で、こんな青娥さんは珍しいなどと俺はその背中を眺めながら呑気なことを考えてしまう。

 

 

 

だが、そんな思考はすぐに消え失せた。高まる魔力の反応の元は例の何者かだったのだが、青娥さんが俺にそう言い終えるかどうかというところで、そいつは極太の熱線をこちらに向けて発射したのである。

 

 

 

 

 

 

『──ベキラゴン』

 

「・・・・・・!?」

 

 

 

元の世界で大人気だった、とある作品に登場する呪文の名と共に。

 

 

 

「レインさんッ!」

 

「分かっています・・・!」

 

「こら・・・・・・あかん・・・!」

 

 

 

洞窟内を埋め尽くすかのような熱線が迫る。それに対し青娥さんは結界を、レインさんは魔法の『水氷大魔嵐(アイスブリザード)』を発動し対抗した。

 

 

 

「~~~・・・ッ・・・・・・青娥さんッ!」

 

 

 

ぶつかり合う二つの魔法。それによって生じるエネルギーの余波のせいで、青娥さんたちの方を直視できない。顔を腕で覆いつつ必死に呼び掛けてはみたが、青娥さんからの返答は無かった。

 

やがて、拮抗していた二つの力は炸裂し、凄まじい爆音と閃光がその場を飲み込んだ。




咄嗟に助けてくれるくらい、ヤムザのアクトくんへの好感度が増してます。
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