転生したら蜥蜴人族の友人と邪仙の恋人ができた件   作:乃出一樹

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お待たせしました、第123話となります。

27日のポケモンデー、楽しみです。


不思議のダンジョン再び

ごろりと地面を転がる。閃光のせいで視界が封じられているが、洞窟に現れた何者かとレインさんの魔法がぶつかり合い炸裂した際の爆風で俺は吹き飛ばされたのだろう。

 

すると、瞼越しに感じていた眩い光や吹き荒れる爆風が突然消えた。疑問に思いつつ急いで体勢を立て直して周囲を確認した俺は、視界に映った景色を前に呆然とした。

 

 

 

「・・・・・・ダンジョン化してる・・・!」

 

 

 

ほんの少し前まで、俺は皆と一緒に一本の道にいた。けれど今俺がいる場所は前方に二つ、後方に一つの通路と繋がったやや広めの空間だ。近くには俺以外誰もいない。恐らく、何者かとレインさんの魔法が炸裂した瞬間にこの洞窟が不思議のダンジョン化し、内部の再構成に伴って皆とはぐれてしまったのだろう。

 

 

 

「皆は・・・?青娥さんたちはどうなったんだ・・・!?」

 

 

 

洞窟がダンジョン化する直前、俺やヤムザたちが魔法の余波で吹き飛ばされる中、青娥さんとレインさんは何者かと対峙していた。ラプラスは分からないが、二人は魔法が炸裂した地点に一番近い位置にいた筈。無事でいてくれると良いけれど。

 

 

 

「・・・・・・いや。あの二人よりも、今は自分の心配をしなくちゃだな」

 

 

 

魔王よりも強い青娥さんとレインさんだ、あれくらいでやられたりなどは絶対にない。それよりも、バラバラになってしまった俺たちの方が現状危険と言える。

 

あの何者かがまだ青娥さんたちと一緒にいるのなら問題ない。いや、青娥さんたちに任せっきりにしてしまうのは少し申し訳無いとは思うが・・・・・・あの二人なら大抵の相手には勝てるだろう。きっとあの何者かを叩きのめして捕縛してくれる筈だ。

 

だが、もし青娥さんとあの何者かが一緒にいない場合。あの何者かに俺たちが狙われたとしたら恐らく勝ち目は無い。奴の高まった魔素量を一瞬だけとは言え感じ、俺はそう判断した。

 

 

 

「とにかく、皆と合流しないと・・・」

 

 

 

一人でここを脱出する訳にもいかないし、これからどうするか話し合う為にもはぐれた皆を探すことにした。一応『魔力感知』を発動してみるが、先程よりも精度が悪い。やはりユーラザニアのダンジョンと同じように、内部では探知に妨害が掛かるようになっているのだろう。

 

 

 

「『魔力感知』に引っ掛かる反応は無い・・・・・・となると、探し回るしかないか」

 

 

 

溜め息を吐いた俺は頭を掻きながら改めて周囲を見回す。さっきも確認したが、ここから行ける道は前方に二つと後方に一つ。少し考えてから俺は前方の右側の通路を進むことにした。

 

それから数分後、この時の選択が正しかったのだと思える展開となった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「おおっ!アクト!」

 

「良かった、無事だったか・・・!」

 

 

 

右側の通路を抜けてから暫く一本の道が続いた。そこをずっと歩いた先は開けた空間と繋がっており、そこに二つの人影があった。クロコダインとアルヴァロである。

 

 

 

「クロコダイン、アルヴァロ!」

 

 

 

思わず口元が緩み、俺は二人へと駆けていく。彼等もこちらへ近付いてきて、思っていたよりも早く再会することが出来た俺たちは互いの無事を確認し安堵した。

 

 

 

「アクトよ、お前は一人だったのか?」

 

「あぁ・・・・・・気が付いた時には周りに誰もいなくて。クロコダインたちは?」

 

「俺たちはダンジョン化した直後も一緒だったぞ」

 

 

 

そうなのかと意外そうにしていた俺を見て、アルヴァロが補足をする。なんでも、レインさんとあの何者かが放った魔法の激突によって俺たちが吹き飛ばされた際、クロコダインがアルヴァロを受け止めていたらしい。最も、クロコダインもあの凄まじい余波には耐えきれず、アルヴァロを抱えたまま吹っ飛んだそうだが。

 

 

 

「恐らく、密着していたから私たちは一緒にいられたのだろう。だが、他の皆は違う。きっとこの洞窟・・・ダンジョンの各地に一人でいる筈だ」

 

「そっか・・・・・・アルヴァロ、これからどうしたら良いと思う?」

 

 

 

俺はチームの頭脳役とも言えるアルヴァロにそう訊ねた。アルヴァロは僅かに俯くと唸りながら考え込む。一応、彼にはここ数日間の間に俺のスキルについて説明済みだ。つまり俺が『脱獄者』のスキルを使えばここから脱出出来ることも知っている。

 

少しして、考えを纏めたアルヴァロが口を開いた。

 

 

 

「・・・・・・・・・三人で行動し、他の皆を見つけよう。青娥殿、レイン殿、ラプラス殿は除いて」

 

「うん?アルヴァロ殿、何故その三人は除くのだ?」

 

「強いからだ。クロコダインはあの夜の戦いを見ていないから知らぬだろうが、ラプラス殿も二人に並ぶ程の実力者でな。助けなど必要無いんだよ」

 

 

 

首を傾げたクロコダインにアルヴァロはそう返した。確かにアルヴァロの言う通りではある。いや、あの三人を全く心配していない訳ではないけれども。

 

 

 

「始めはアクト一人でここを抜け出し、助けを呼んで貰おうかとも思ったが・・・・・・アクトは転移系のスキルも魔法も無いからな。ユーラザニアやジスターヴへすぐに向かうことが出来ないのでは仕方ないだろう」

 

 

 

それを聞いて俺は成程、と頷く。皆を置いて一人で逃げられないとその選択はしなかったが、そこまでは考えていなかった。一応、ここを出ることさえ出来れば『思念伝達』も『魔物召還』も使えるようになるのでガビルとシーザーだけになら助けにきてもらうことも出来る。

 

オークロードの対処で忙しいであろう彼等に申し訳無いし、それはなるべく取りたくない策だ。しかし今は緊急事態。皆を助ける為だと、このことをアルヴァロに伝えたところ、彼は難しい表情を浮かべた。

 

 

 

「それも当然考えた。しかし、例の何者かの動向も気になってな」

 

「と、言うと?」

 

「もし奴が青娥殿たちから逃れ、洞窟の外で待ち構えていたら?・・・・・・アクト、お前なら理解出来ているだろうからハッキリ言おう。一人では間違いなく奴に殺される」

 

 

 

真っ直ぐこちらを見据え、アルヴァロはそう告げた。それに対して俺は苦笑しつつ、だよね?と返す。俺の直感は間違いではなかったようだ。

 

奴に俺たちを殺す理由があるかは分からない。そもそも、奴がダンジョンや特殊な魔物を造っている目的すら分からないのだ。青娥さんが言うには、ユーラザニアでダンジョンを造っていたのは練習ではないかとのことだが・・・・・・

 

まぁ、とりあえず警戒しておくに越したことはないだろう。現に先程襲撃されたのだし。

 

 

 

「かと言って、青娥殿たち三人を除いた我々だけで奴を倒せるかと言われると不安ではあるのだが・・・・・・少なくとも全員で纏まって行動している方が安全ではある筈だ」

 

「それじゃ、急いで皆を探そう。異界の裂け目は開いたままだし、ダンジョン化した場所は魔素が充満していて魔物が発生するらしいから、のんびりしてたらどんどん面倒なことになる」

 

 

 

俺のその言葉に頷く二人。こうして、俺とクロコダインにアルヴァロの三人PTでダンジョン内を探索することとなった。

 

ダンジョン化して間もないということもあり、道中で魔物と遭遇することは一度も無かった。蟲魔族(インセクター)たちもほとんど倒していたため、そちらとも戦闘が発生することなく、平和にダンジョンを探索する俺たち。

 

 

 

「・・・・・・まさか、ダンジョン探索をすることになるとは思わなかったよ」

 

「わはは、俺もだアルヴァロ殿。まぁ、これも良い経験になるだろう」

 

 

 

こうして雑談する余裕が生まれる程である。先頭を歩くクロコダインが後ろで苦笑するアルヴァロに振り返って笑い掛けており、なんだか和やかな雰囲気だ。割りと危機的状況だとは思うが、塞ぎ混んでいるよりは良いだろう。

 

 

 

「ふふ・・・・・・おっと。クロコダイン、そこの別れ道を左だ」

 

「了解だ」

 

「はー・・・『地図作成(オートマッピング)』だっけ?やっぱり魔法って便利だな」

 

 

 

指示を出すアルヴァロを見つめながら俺はそう感心する。ダンジョンの探索だが、俺たちはアルヴァロの指示を受けて行っていた。彼が会得している『地図作成(オートマッピング)』という魔法、これを使えば自分が今いるダンジョンのマップが脳内に浮かんでくるらしい。

 

 

 

「ダンジョンに潜る機会などあまりないが・・・偉大なる魔王クレイマン様の配下である以上、何が起ころうと冷静に対処出来るようにならねばな」

 

「凄いなアルヴァロは・・・・・・・・・無数の知識と呪文を抱え、仲間を危機から守るのが魔法使いの役目、だもんな。俺には出来そうにないよ」

 

「そんなに大それたものでもないが・・・・・・素直に褒め言葉として受け取っておこう。ありがとうアクト」

 

 

 

俺の言葉を受けたアルヴァロはどこか気恥ずかしそうにしつつも微笑んだ。ちなみに今の俺のセリフだが、『ダイの大冒険』に登場するキャラクター、マトリフの名言を使わせてもらった。俺は一つも魔法を使えないし、素直な気持ちである。

 

 

 

「・・・・・・・・・ん?アルヴァロ殿、アクト。あれを見てくれ」

 

 

 

アルヴァロとそんなやり取りをしていた時だった。突然クロコダインが足を止め、ある箇所に指をさす。何事かと指し示された方に視線を向けた俺とアルヴァロはあっと声を上げた。

 

 

 

「あれは・・・・・・ヤムザのアイスブレード!」

 

 

 

三人でそこまで掛け寄って確認する。するとやはり、ヤムザが愛用している特質級(ユニーク)武器のアイスブレードだった。死骸となったカナブン型の蟲魔族(インセクター)を串刺しにし、岩壁に突き刺さっている。

 

 

 

「何故奴の武器だけがこんなところに・・・?」

 

「そうだ。転移する直前、このカナブンに不意打ちされそうになったところをヤムザが助けてくれたんだった。アイスブレードをぶん投げて・・・」

 

「・・・・・・となると・・・ヤムザ殿は今、武器を持たずに一人でダンジョンを彷徨っている可能性が高いということか・・・?」

 

 

 

不安そうな声色でクロコダインが呟く。それを聞いてはっとした俺がアルヴァロを見ると、眉を寄せた難しい顔で小さく唸っていた。

 

 

 

「・・・・・・ヤムザは剣士だ。素手での戦闘は差程得意ではないし、『水氷大魔嵐(アイスブリザード)』もアイスブレードの力を操ることで発動している。それが手元に無いとなれば、普段よりも弱体化していると見て間違いないだろうな」

 

「そんな・・・・・・」

 

 

 

アルヴァロの言葉に俺は堪らず俯いて歯を噛み締める。俺が油断したせいでヤムザがピンチに陥ってしまうなんて。ふと、脳裏に彼の姿が浮かぶ。自身の武器を投げてまで俺を助けようとしてくれた姿。一昨日の夜、うっかり眠ってしまった俺に何も言わず肩を貸してくれていた姿。

 

彼の身に何かあったらどうすれば・・・・・・

 

 

 

「・・・・・・・・・アクト、心配は要らないさ。あれでも奴はAランクオーバーの上位魔人・・・五本指筆頭の中指だ。例え剣や魔法が使えなくても、そう簡単に死にはしない」

 

 

 

そう言って、アルヴァロは俺の肩に優しく手を置いた。落ち込む俺を励まそうとしているのだろう。それを察した俺は顔を上げ、小さく笑ってみせた。

 

 

 

「・・・・・・そうだね。ありがとう、アルヴァロ」

 

 

 

俺が礼を言うと、笑みを浮かべたままアルヴァロは頷いた。それから俺は壁に突き刺さっているアイスブレードに手を伸ばし、それを引き抜く。カナブンの死骸もくっついてきたので足を使って取り除いた。

 

 

 

「よっと・・・これはヤムザに返してあげないと」

 

「うむ、そうだな。しかしそれではアクトの手が塞がってしまうぞ。俺が持っていこう」

 

「うぅん、いいんだ。これは俺の手でヤムザに渡すよ」

 

 

 

クロコダインからそう言われ手を差し出されるが、俺は首を横に振る。それを見たアルヴァロは苦笑してこう言った。

 

 

 

「・・・・・・お前は優しいな、アクト。助けられたのは分かるが、それを踏まえてもお前がそこまでしてやる程の男ではないと思うぞ、ヤムザは」

 

 

 

大分辛辣なその言葉に俺も苦笑してしまう。見ると、アルヴァロと同意見なのかクロコダインも渋い顔で頷いていた。

 

 

 

「ははは・・・・・・まぁ、アルヴァロはこれまであいつと色々あっただろうし、そう思っても無理ないけど・・・でも、ヤムザにも良いところはあるよ」

 

「例えば?」

 

「顔」

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

 

 

そう返したところ、二人は互いに顔を見合わせた後でとんでもないものを見るような顔をこちらへ向けてきた。その反応がどうにも面白くて、俺は小さく吹き出してしまう。

 

 

 

「ふ、ふふっ・・・!ごめんごめん、冗談」

 

「安心したぞ・・・・・・で、ヤムザの良いところは?」

 

「んー・・・・・・貪欲なところ?上昇志向が強いというか」

 

 

 

ほっとした様子のクロコダインに俺は少し考えてからそう答えた。一応、間違ってはいないだろう。クレイマン様から一目置かれる為に色々やっていたようだし。

 

 

 

「あとは、皆が汚いって訳じゃないけど。ヤムザって食べ方結構綺麗なんだよな・・・それになんだかんだ言っても残さず全部食べてくれるし」

 

「わはは、残さないのは当然のことよ。なにせアクトの作る料理はどれも絶品だからな!あんなに美味いものは俺の暮らしていたところでは食ったことがない!」

 

 

 

笑顔で語るクロコダインに俺はつい口元を緩ませる。彼の裏表のない素直な言動には少し照れてしまうな。原作からのイメージもあるのかもしれないけれど。

 

 

 

「マナーについては、それもクレイマン様によるものだろうな。あの方は礼儀や作法に少し厳しいところがあってな。傍に置いて頂けるようその辺りも勉強したんだろう」

 

 

 

アルヴァロの言葉を聞いて、ジスターヴでのクレイマン様の様子を思い返す。確かに、クレイマン様はカリオン様よりもそういったことに厳しそうだ。いや、カリオン様が礼儀作法に無頓着という訳ではないけれど。

 

 

 

「それで、ヤムザの良いところはそれだけか?」

 

「あー・・・・・・・・・うん、それくらい──」

 

 

 

誰に対してのものか分からない言い訳を脳内で展開していると、アルヴァロが問い掛けてきた。俺はそこまで言い掛けて・・・・・・口を閉ざす。

 

突然黙り込んだ俺にクロコダインとアルヴァロが訝しげな視線を向ける中、俺は思い出していた。一昨日の夜──彼の肩を枕にうたた寝したことを。

 

 

 

 

 

「・・・・・・・・・隣で眠らせてくれるくらい、夜は優しいみたいだよ」

 

「えっ」

 

 

 

ぽつりと呟いたその一言に、アルヴァロは間の抜けた声を漏らし、クロコダインが目を丸くしてぽかんとした表情を浮かべる。どちらも、先程の俺の発言を聞いた時以上に驚いているらしい。

 

そんな二人の顔を見て、俺は先程よりも大きく吹き出して笑う。そしてどういうことか追及される前に、早く先へ進もうと二人に告げて探索を再開するのだった。




転スラの映画も27日でしたね。
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