転生したら蜥蜴人族の友人と邪仙の恋人ができた件 作:乃出一樹
新御三家の中から誰を選ぼうか今から悩んでます。
アルヴァロ、クロコダインの二人と合流して三時間程が経過した。
あれからアルヴァロの案内でダンジョン内をずっと探索しているが、青娥さんやフォビオたちの誰とも出逢えていない。アルヴァロの魔法、『
だが、会いたくないものたちとはこの三時間で顔を合わせることが多くなってきていた。
「───『
アルヴァロの詠唱によって、周囲の壁や地面からボゴボゴ、と音を立てて拳大の石や土の塊が宙に浮かび上がる。アルヴァロが杖を前方にかざすと同時に、それらは勢い良く正面へ発射された。
「ギィイイイイイイイイイイイッ!!!?」
ズガガガッ!と、アルヴァロの放った魔法が
『
「よし、こちらは片付いた。アクト、クロコダイン!援護はいるか?」
「大丈夫!」
「おぉ、心配無用だ!」
「ギャガァアアアアアアッ!」
咆哮と共に突撃してきたのは
「はぁっ!」
俺はヤムザのアイスブレードを構え、
痛みに悶え、悲鳴を上げながら足を止める
「カギャッ・・・・・・!?」
「やった!」
『復讐者』の権能、『突破』が付与されたアイスブレードによる斬撃は
「ぬぅううううううううううっ!」
一息吐こうとしたところ、クロコダインの力んだ声が耳に届いた。そちらに顔を向けてみると、
「うぉおおおおおおおおおおおっ!」
顎から地面に叩き付けられた
『身体装甲』のスキルによってBランク程度の魔物にしては強固な守りを持つ
「ふぅ・・・流石に頑丈な相手だったが、今の俺ならばどうということもなかったな」
「お疲れクロコダイン。楽勝だったみたいだな」
「そちらも片付いたかアクト。なに、お前から名を貰ったお陰だ。以前戦った時はなんとか勝てたものの、大分苦戦したからな」
どうやらクロコダインは
だが、クロコダインは今の戦いで『剛力』や俺のあげた斧を使っていない。あれくらいの相手なら、手加減をしても十分勝てるようになったのだ。
ちなみに、クロコダインは闘気こそ両手に込めて戦っていたが、それは進化によってコツを掴み、この八日間の間に俺から『気闘法』について簡単に教わったことでなんとなく扱えるようになったそうだ。少なくとも俺やガビルのようには使いこなせていないが、青娥さんのような達人に鍛えてもらえればすぐに俺たちと同じくらいに『気闘法』を使えるようになるだろう。
「しかし、厄介だなこのダンジョンは・・・・・・探知系の魔法やスキルが使えないとは。『
こちらに近付きながらアルヴァロが溜め息混じりに呟いた。彼の言う通り、ここでは『魔力感知』等のスキルや魔法が使えない。青娥さんの推測では、例の何者かがダンジョン内での探知や通信、それから転移を封じることに力を割いているのでは、とのこと。
何故『
「俺の『熱源感知』も反応が悪い。ここがダンジョンと化してから大分立ち、魔物が魔素から自然発生し始めた。曲がり角や広い部屋に入った際に急な襲撃をされぬよう気を張り続けてはいるが、中々くたびれるな・・・」
苦笑しながら、地面に突き刺しておいた斧を手にしてクロコダインが言う。一応、クロコダインも俺とアルヴァロも体力にはまだまだ余裕があるが、この状況が長引くのはあまり良くはないだろう。まさかこんなことになるとは思っていなかったので皆も大して準備をしていなかったのだ。昼食だって食べてないんだぞ。
「ポーションの数もあんまり無いしなぁ。青娥さんたちも一緒だったからって少し気が緩んでたかも」
「あれ程の実力者が三人も傍にいたんだ、無理もないさ。正直な話、私ももう勝ったつもりでいたからな」
現在の俺たちの置かれた状況を客観的に見て僅かに顔を俯かせていると、アルヴァロが慰めるように俺の肩を優しく叩く。顔を上げた俺は彼に心配を掛けまいと慌てて笑顔を取り繕う。
俺に微笑み返すアルヴァロだったが、そこで俺の手に握られたアイスブレードに視線を向けこう訊ねてきた。
「・・・・・・ところでアクト。さっきからアイスブレードで戦っているようだが、無理に使わなくてもいいんじゃないか?」
「えっ?いや、別に無理してる訳じゃないけど」
「そうなのか?済まないが、扱い方があまり良くないように思えてな」
指摘を受けた俺の返答を聞いて、アルヴァロはどこか言い辛そうな面持ちで続けた。そんなに下手だったのかと、俺は堪らず苦笑する。
「そう言われれば、確かにアクトは剣術が得意では無いようだったな。武器に闘気を込めること自体は出来ていたが、
どうやらクロコダインにも同じことを思われていたらしい。二人はそう言った後に俺をじっと見つめる。こちらの返答を待っているらしく、俺は口元を引きつらせつつゆっくり口を開いた。
「あ、あー・・・・・・その・・・ちょっと剣で戦ってみたくてさ。何て言うか、憧れ?みたいなのがあって・・・」
「憧れ?」
「・・・・・・剣で戦うのって、格好良いよなー・・・って・・・」
その言葉に、クロコダインとアルヴァロはきょとんとした表情を浮かべた。
・・・・・・だから言いたくなかったんだよ。恥ずかしいから。いや、だって折角異世界に来たんだし剣とか魔法で戦ってみたいじゃん?まぁ、俺じゃアイスブレードの力を引き出せなくて『
「・・・・・・・・・く、ふふっ・・・あはははははっ!そうか、格好良かったか!」
「ぐわ~はっはっはっはっ!アクトにも子供らしいところがあったのだな!」
遅れてツボに入ったのか、やがてアルヴァロとクロコダインは声を上げて笑い出した。二人の笑い声が周囲に響き、俺は堪らず熱くなった顔を手で覆った。
「~・・・・・・っ!子供っぽくて悪かったな!ほら!いいから先に進もうぜ!」
「ははは・・・・・・済まん済まん。少し笑い過ぎた」
「ふふっ、許してくれアクト」
声を荒らげる俺は二人に背を向けて歩き出す。二人はどこか楽し気な声色で謝罪して俺の後ろを付いてくる。こうして、何故か俺は辱しめを受けつつも、再び三人でダンジョンの奥へ進み始めた。
その後の探索中も、俺たちは何度も魔物と戦った。
先程の
しかし、探索を再開してから早二時間。遭遇する魔物の数も頻度も増え、俺たちも少しずつ疲労が溜まり始めていた。幸いAランク級の魔物はまだ出て来ておらず、三人でなら対処のしやすい弱めの魔物としか今のところ戦っていない。
だが、それでも不意打ちやモンスターハウス等に引っ掛からぬよう、普段より効果の薄い『魔力感知』を頑張って発動させているので、それなりに消耗しているのだ。ちなみにアルヴァロが言うには『
「ぬぅ・・・・・・出てくるのは魔物ばかり。他の皆は一体どこにいるのだ・・・?」
長時間の探索と戦闘の連続。それらの疲労によって生じた額の汗を腕で拭いながらクロコダインが呟く。俺とアルヴァロはそこまでではないが、俺たちより魔素量の低いクロコダインはやや消耗しているようだ。体格的にはクロコダインが一番タフそうなんだけどね。
「ここまで誰とも会えないとは・・・・・・まさか、もう全員外に脱出しているのか?」
「いや、そんなことは無いと思う。多分、フォビオなら俺たちと同じ想定をするだろうし、あとユーラザニアの皆ならダンジョンの核をどうにかしようとする筈・・・」
俯きながら思案するアルヴァロに俺はそう告げる。この数日の間、俺は皆と多く会話をした。その中でエンリオとグルーシスから、フォビオは俺との闘いを経て以前より思慮深くなったと聞かされていたのである。
そんな彼なら、例の何者かの恐ろしさに気付かぬ訳が無い。さらにダンジョンがどれだけ危険であるかも、ユーラザニアに暮らす彼なら理解しているだろう。
であれば、単独や少数での行動は控え、仲間たちと合流することを優先する筈だ。そしてこの洞窟のダンジョン化を解く為に行動すると思う。エンリオと、それからグルーシスも意外と知恵者っぽいし、フォビオの考えに賛同してくれるだろう。
「・・・・・・ちょっと脳筋っぽいスフィアが心配だけど、あいつも別に馬鹿な訳じゃないし、フォビオたちと合流出来てれば大丈夫かな」
「それを言うならウチのジョイスも・・・・・・ん?」
アルヴァロと顔を見合せ苦笑している時だった。急にアルヴァロが通路の先に視線を向けた。どうしたのかと俺もそちらに意識を集中させた次の瞬間、見覚えのある顔がこちらに飛び込んできた。
「見つけた~~~~!!!アクトさぁああ~~~~~~んっ!!!」
「テング!」
その声と共に現れたのはテングだった。全速力で飛行してきたテングは俺たちの目の前で急停止する。ぶわりと巻き起こる突風に思わず目を瞑りながらも、俺はやっと見つけられた仲間を前に弾んだ声で彼女を呼んだ。
「おおっ、無事だったかテング!」
「お前一人か?他の皆は──」
「話は後です!皆さんこちらへ!───このままではフォビオさんたちが殺されてしまいます!」
俺に続いてそれぞれテングに声を掛けるクロコダインとアルヴァロ。だが、それを遮ってテングがそう叫んだ。
突然の言葉に俺たちは一瞬面食らうが、テングの真剣な表情を見て只事ではないと察知し、互いに顔を見合せてから全員で駆け出した。
「何があったんだよテング!?」
「・・・・・・とんでもない化物が現れたんです・・・!」
テングと並走する形で俺は訊ねる。彼女はクロコダインをギリギリ置いていかないくらいの速度を維持して飛びながら、何が起きたのかを語り出した。
例の何者かによる襲撃により、洞窟がダンジョン化し俺たちは散り散りになった後。テングも俺のようにいつの間にか一人で洞窟内にいたという。
その時はまだ何が起きたか理解し切れていなかったそうだが、直前にレインさんと例の何者かの魔法の激突を見て、敵がとんでもない力を秘めていることは理解したらしい。とにかく俺たちと合流するべきだと判断し、ダンジョン内を飛び回っていたそうだ。
すると、同じく一人でダンジョン内を彷徨っていたフォスとの合流に成功。思っていたよりも早く味方と再会出来たテングはそのことに喜んだ後、フォスからダンジョン化についての話をされた。ユーラザニアで暮らしているだけあり、何より俺たちと共に一度ダンジョン攻略をしたこともあったフォスは、洞窟がダンジョン化したことに気付いていたという。
それを踏まえてどう動くべきかと頭を悩ませた二人は、ここを脱出するのではなく、皆と合流することを選んだ。テングもかなり頭が良いようで、フォスの話を聞いて冷静になり、アルヴァロと同じ答えを出したらしい。
そこから暫くは二人で行動していたそうだが、最初にフォビオ。次にサイラス。さらにエンリオとスフィア、そしてグルーシスと最後にジョイスと合流。そのメンバーで探索を続けていると、いつの間にかダンジョン最奥付近まで到達してしまった。
その場にいたメンバーで改めて方針を話し合った結果、俺たちとの合流を待たずにダンジョンの核を排除するということに・・・・・・って、ちょっと待て。
「ちょ、ちょっと待ってくれテング。ヤムザは?話に出てこなかったけど」
「それが、ヤムザさんだけ見つからなかったんですよ」
と、言うことは・・・・・・ヤムザは未だ一人で、しかも武器も持たずにダンジョン内を彷徨っている可能性があるということ!?
テングの言葉で俺はヤムザが益々心配になったが、とりあえず話の続きを促した。
「えっと・・・・・・それで結局、ヤムザさんやアクトさんたちがいなくとも、このメンバーならどうにかできるって判断して最奥部へ足を踏み入れたんです」
洞窟がダンジョン化する前、青娥さんが『魔力感知』により最奥部に特Aランク級の反応を見つけていた。フォビオとスフィアは、例の何者かはその魔物を核としてここをダンジョン化させたのだろうと推測。特Aランク級とは言っても、俺たちが倒した
そうして、テングたちは足を踏み入れたダンジョン最奥部にて一体の魔物を発見した。そこにいたのは、この八日間で一番多く倒したであろう、蟻型の
その
だが、フォビオとスフィア。そしてジョイスとサイラスは百戦錬磨の実力者。彼等四人が中心となり、テングたちが援護に回る形で戦闘を有利に進めていき、遂に女王蟻の討伐に成功した。思っていたよりは弱かった、等と全員の気が緩んだその時、そいつが姿を現した。
「・・・・・・その化物は、私たちが女王蟻との戦いで消耗するのを隠れて待っていたんだと思います。いえ・・・それだけではなく、私たちの能力を見極めていたんでしょう。そして、その力は女王蟻を上回っていました」
「て、テング!そいつは一体何者なのだ!?」
どすどすと、俺たちより数歩程遅れた位置を走りながらクロコダインが叫ぶように訊ねた。その問いに振り返ることなくテングは答える。
「
「馬鹿な、ただの
テングの告げた内容に異を唱えようとしたアルヴァロだったが、途中で言い掛けた言葉を飲み込み目を見開いた。一瞬の間の後で、信じられないと言った表情を浮かべつつアルヴァロは静かにテングを見つめる。
遅れて俺も、アルヴァロの思い至ったことに気付き、はっとしてテングに視線を向ける。俺たちの視線を受けたテングは静かに頷いた。
「・・・・・・その化物に襲われた私たちは全滅の危機に陥りました。当然私も殺されそうになったのですが、間一髪というところをフォビオさんに助けられ、そしてアクトさんたちを探してくるようにと言われその場から逃がしてもらったんです」
「で・・・・・・その化物が、ここにいるって訳か」
そう呟いて、俺は目の前の階段を眺める。急いだお陰か、話をしている内に最奥部手前までやって来ていたらしい。
ここまで接近すれば流石に分かる。この奥にいるのは間違いなく
しかし、ここにいるであろう皆の反応がない。正確にはいくつか小さい反応はあるのだが、テングから聞いていた人数分と合わないのだ。
「・・・・・・『魔力感知』の効果が妨害されてるせいだと祈ろう」
「モタモタしている暇はない。アクト、皆、準備はいいな?・・・・・・行くぞ!」
皆の無事を祈る俺にアルヴァロが声を掛けた。すぐに意識を切り替えて俺は頷く。クロコダイン、テングも同様に無言で頷いたのを確認したアルヴァロはそう合図を出した。
「フォビオ!皆──・・・・・・っ!」
最奥部へと突入した俺たちがまず目にしたのは、巨大な蟻の死骸だった。身体の至る所がボロボロで、手足も数本もげている。これがテングの言っていた女王蟻だろう。
だが、これは今どうでも良い。問題は、この死骸の先にある光景だ。
「サイラス、ジョイス!?」
俺と同じ光景を目の当たりにして、アルヴァロが驚愕する。そこにはボロボロになって地面に倒れている仲間たちの姿があった。思わず駆け寄りそうになる彼だったが、仲間たちのすぐ近くにいる存在に気付き動きを止めた。
「が、かふっ・・・・・・!」
「フォビオッ!?」
ジョイスやスフィアたちが倒れている中、フォビオだけは意識があるようだった。しかし、その状態は決して無事とは言えない。片膝を付き、口から血反吐を吐いている。それだけではなく、脇腹が大きく抉れていた。他の誰よりも傷付いている筈なのに、倒れている皆を守ろうという揺るぎない意思をその背中から感じる。
そんなフォビオは、仲間たちの近くに立つ存在をじっと見据えている。予想外の現状を前に硬直する俺にテングが言った。
「アクトさん・・・奴です。奴が、フォビオさんたちを圧倒した、
三メートルはあろうかという巨体だった。下半身は蠍のようで、上半身は人間に近い姿。その全身は黒鉄色の甲殻に覆われている。
隠そうともしない膨大な魔素を持つそいつは、こちらの存在に気付いたらしくゆっくりと顔を動かし水色の瞳をこちらに向ける。そしてフォビオを貫いたと思われる血に塗れた尻尾を振るいながら不気味に口端を歪めた。
「・・・・・・オォ?まだ仲間がいたノカ。だが、悲しいナァ・・・誰に助けを求めたとしテモ、全てこの『スコルパイド』に喰らい尽くされる運命なのだカラ・・・!」
蟻の『