転生したら蜥蜴人族の友人と邪仙の恋人ができた件   作:乃出一樹

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お待たせしました、第125話となります。

チャンピオンズ配信まで一週間を切りましたね。楽しみです。


蟲型魔人(インセクター)スコルパイド①

ダンジョンと化した洞窟の最奥部にて、フォビオたちを倒した蟲型魔人(インセクター)と相対する俺たち。

 

スコルパイドと名乗ったそいつは不気味な笑みを浮かべながら、まるでこちらを品定めするかのようにじろじろと見つめてくる。

 

 

 

・・・・・・・・・しかし、スコルパイド・・・?どこかで聞いたことがあるような・・・というか、見覚えがあるような・・・

 

 

 

「はぁ、はぁ・・・・・・っ・・・へっ、やっと来やがったか・・・!」

 

 

 

そんなことを考えていると、フォビオがこちらに振り向いて口端を緩めた。改めて彼の様子を見ると本当に酷い怪我をしている。俺たちが来るまで皆を守ろうと必死に戦っていたのだろう。俺はフォビオを助ける為に急いで彼の元へ駆け出そうとした。

 

 

 

「フォビオッ!」

 

「あぐぅッ!?」

 

「っ、とぉっ!?」

 

 

 

その時、突然アルヴァロが叫んだかと思うと、ドゴッ!という音が響いた。スコルパイドが尻尾を振るいフォビオを弾き飛ばしたのである。動き出し始めていた俺は慌てて足を止めると同時に持っていたアイスブレードを手放し、こちらに飛んできたフォビオをなんとか受け止めた。

 

 

 

「フォビオ!大丈夫か!?」

 

「ぐ、ぅ・・・・・・・・・」

 

「待ってろ、今ポーションを──・・・!」

 

「待てアクトっ!」

 

 

 

呼び掛けてみるが、フォビオは小さく呻くだけ。このままでは不味いと判断し、俺は懐からポーションを取り出そうとした。瞬間、再びアルヴァロが叫ぶと同時の俺の視界の端に何かが映った。

 

 

 

「『死蠍刺突(デス・スコルピオ)』ッ!!!」

 

 

 

それは、スコルパイドが持つ黒鉄色の尻尾だった。いつの間にか接近していたスコルパイドは、恐らくアーツなのだろう、凄まじい程の妖気が込められた尻尾を槍のようにして俺目掛け放ってきた。

 

寸でのところで、俺はフォビオを抱き抱えたまま『飛空法』を使用。さらに『脱獄者』の『加速』を重ねて発動させ後方へ飛ぶ。それとほぼ同時に、俺のいた場所にスコルパイドの尻尾が深く突き刺さった。

 

 

 

「ほホウ?よく避けられタナ」

 

 

 

不敵な笑みを浮かべながらスコルパイドは尻尾を引き抜く。自身の攻撃によって土煙が生じたが、尻尾を軽く振るってそれを吹き飛ばした。あの尻尾、見かけより長いな・・・・・・いや、伸びるのか?

 

 

 

「・・・ってか、あっぶな・・・・・・アルヴァロに言われなかったらあのままやられてたかも・・・」

 

 

 

先程の状況を思い出して俺は身震いした。スコルパイド・・・奴の全力がどれ程かはまだ分からないが、あの攻撃は凄まじい妖気が込められていた。直撃していたら、恐らく只では済まなかっただろう。

 

 

 

「無事かアクト?・・・敵の前で隙を見せ過ぎだ」

 

「ご、ごめん。つい・・・」

 

 

 

そこにアルヴァロが駆け寄ってきた。彼に謝っていると、クロコダインとテングもこちらにやってきて周囲を固める。俺たちを守ってくれているのだと察した俺は、スコルパイドに注意を払いつつフォビオにハイポーションを使った。

 

 

 

「・・・・・・・・・ッ、・・・アクト・・・?」

 

「フォビオ、良かった・・・もう大丈夫だぞ、ハイポーションで怪我は回復・・・・・・?」

 

 

 

掠れるような声だったが、フォビオは確かに俺の名を呼んだ。完全にとはいかなくともハイポーションで十分回復出来たのだろう。そう安堵し掛けた俺だが、フォビオの様子がおかしいことに気付いた。

 

 

 

「ぐっ・・・・・・おぉ、がぁああ・・・・・・っ・・・!」

 

 

 

意識を取り戻したフォビオだが、途端に苦悶の声を上げ苦しみ始めた。ハイポーション一つでは足りなかったのだろうか。

 

 

 

「フォビオ!?なんで・・・・・・傷口は大体塞がってるのに・・・!」

 

「毒サ」

 

 

 

困惑する俺にスコルパイドがそう言った。咄嗟に奴の方へ視線を向けると、スコルパイドは気味の悪い薄ら笑いを浮かべたまま続ける。

 

 

 

「俺のアーツ、『死蠍刺突(デス・スコルピオ)』は自身の妖気をパワーだけでなく猛毒にも変換し、それを尻尾に込め放つ技。それをそいつは食らったノダ。例え傷口が癒えたとしても、体内の毒までは消えナイ」

 

 

 

余裕そうに腕を組みながら、苦しむフォビオを見下ろすスコルパイド。奴の話を聞いて俺が言葉を失っていると、フォビオが口を開いた。

 

 

 

「あ、アクト・・・・・・」

 

「フォビオ、大丈夫なのか!?」

 

「落ち着け・・・・・・お、お前のハイポーションが効いたな・・・助かったぜ・・・」

 

 

 

脂汗を顔中に浮かべながらも、こちらを安心させようとフォビオは無理に笑ってみせた。どう反応すればいいか分からず戸惑う俺を見つめてフォビオは苦笑する。

 

 

 

「はっ・・・ンな顔すんじゃねぇよ。俺がこの程度でくたばるとでも思ってんのか・・・?」

 

「け、けど、毒を喰らったって・・・」

 

「まぁ、な・・・・・・だが、今言った通りお前のハイポーションでそこそこ回復出来た・・・暫くは問題ねぇよ」

 

 

 

俺を気遣ってかそう強がるフォビオだが、どう見ても苦しそうだ。くそ、俺がリムルみたいにフルポーションを作れたら傷だけじゃなく毒だって完全に治療出来たのに・・・・・・

 

 

 

「しっかりしろアクト!」

 

「っ、アルヴァロ・・・」

 

 

 

呆然とする俺の肩を掴み、アルヴァロが叫ぶ。振り向いて顔を上げた俺を真っ直ぐ見据えると、落ち着かせるような声色で語り掛けてきた。

 

 

 

「・・・・・・力不足を嘆くのは後にしろ。今、お前がやらなくてはいけないことは、ここにいる全員で生き残る為に奴と戦うことだ」

 

「でも・・・・・・このままじゃフォビオは毒で・・・」

 

「彼はそこまで柔じゃない。お前のハイポーションで身体の損傷は大体治ったし、体力も回復した。すぐにどうこうはならんさ」

 

 

 

アルヴァロからそう言われた俺は再び抱き抱えたままのフォビオに視線を向ける。それを受け、彼は無言で頷いた。

 

 

 

「だが、このままだと危険な状態であるのは確かだ。我々にあの蟲型魔人(インセクター)の毒を治療する術はない。青娥殿たちであれば何とか出来るだろうが・・・・・・今この場にはいないし、何時ここへ来てくれるのかも分からない」

 

 

 

・・・・・・・・・そうだ。青娥さんたちはここにいない。だから、俺たちだけでこの状況を何とかしなければならないんだ。

 

アルヴァロの言葉を聞き終え、そう理解した俺はゆっくりと深呼吸をする。それからスコルパイドを見据えたままアルヴァロに訊ねた。

 

 

 

「アルヴァロ。フォビオや倒れてる皆を連れて、あいつから逃げられると思うか?」

 

「恐らく無理だろうな。全員が無事なら私とお前で殿を務めつつ、時折皆に援護してもらえばどうにかなるかもしれんが、全員分のハイポーションは無いだろう?」

 

 

 

俺は小さく頷いて懐にあるハイポーションの数を確認する。今フォビオに一つ使って、残りは・・・三つ。

 

 

 

「そうか・・・・・・・・・よし」

 

 

 

ハイポーションの残数を聞いたアルヴァロは倒れている皆を見回す。少し考え込んだ後、何か思い付いた様子でこちらを向いた。

 

 

 

「アクト、ハイポーションを一つくれ。それをジョイスとサイラスに分けて使う」

 

「二人にも戦ってもらうのか?それなら二つ使った方がいいんじゃ・・・」

 

「いや、戦うのはほぼ万全な状態の私とアクト、それからクロコダインだけだ」

 

 

 

俺の言葉を否定しアルヴァロはそう答えた。どういうことか理解し切れない俺とクロコダインに彼はさらに説明を続ける。

 

 

 

「ジョイスとサイラスにはテングと共に皆を連れてここから離脱してもらう。フォビオ以外の皆は酷い怪我だが、幸い命に別状は無いようだ。暫く放っておいても問題ないだろうが、フォビオは毒の治療を受ける必要がある」

 

 

 

どうやら先程皆を見ていたのは怪我の状態を確認していたらしい。この部屋に入る前、俺が『魔力感知』で調べた時は人数と反応した数が合わなかったが、それは気絶していたり弱っていたからなのだろう。あと、俺の『魔力感知』の精度が悪かったというのもあるか。

 

 

 

「そ、そうは言うがアルヴァロ殿。どうやって治療出来る場所まで向かわせるというのだ?それにもし万が一洞窟の外に例の何者かが待ち構えていたら・・・」

 

 

 

斧を構え、スコルパイドを警戒しながらクロコダインは小声で訊ねる。俺も奴の動きに目を光らせているが、ただ不気味に笑っているだけで今のところ攻撃してくる気配は特に無い。

 

 

 

「ジョイスとサイラスは『拠点移動(ワープポータル)』を会得している。洞窟から出られさえすれば安全な場所へ移動できる。例の何者かについては・・・いないことを祈るしかあるまい」

 

「この状況だし仕方ないな・・・・・・テング、頼めるか?」

 

「はっ、はい!お任せを!」

 

 

 

アルヴァロと互いに苦笑して、俺はテングをちらりと見る。緊張した様子だったが、真剣な目付きで応えてくれたのを見て、俺は彼女へハイポーションとフォビオを預けた。フォビオを背負い、ハイポーションを手にしたテングは倒れているジョイスたちの方へ飛んでいく。スコルパイドはまだ動きを見せない・・・・・・?いや、これは・・・・・・

 

 

 

「ジョイスさん、サイラスさん!しっかり・・・!」

 

 

 

俺がスコルパイドに注意を向けていると、テングのそんな声と共にぱしゃっ、という水音が響いた。二人にハイポーションをかけた音だろう。すると少ししてジョイスの呻く声が聞こえた。

 

 

 

「・・・・・・・・・っ、ぐぅ・・・・・・あ、あれ?俺は・・・確か・・・」

 

「はぁ・・・はぁ・・・・・・アルヴァロ?それにアクト、お前たちまで・・・」

 

 

 

ジョイスに続いてサイラスもすぐに意識を取り戻したようだ。二人の声を聞いて俺たちは安堵するが、今は呑気に話をしている場合じゃない。二人が起き上がったのを見てアルヴァロが叫んだ。

 

 

 

「サイラス、ジョイス!今すぐテングと共に皆を連れてここを出ろ!」

 

「は、はぁ?おいアルヴァロ、そりゃどういう・・・」

 

「詳しくは移動しながらテングに聞いてくれ!私たちはここで奴を抑える!」

 

「・・・・・・了解だ。行くぞジョイス」

 

 

 

そのアルヴァロの説明だけでは状況を理解し切れず困惑するジョイス。しかしサイラスの方は察してくれたのか、頷いた後で倒れている皆を担ぎ上げ始めた。

 

ジョイスも緊急事態であることは遅れて理解してくれたようで、慌てて残りのメンバーを担ぎ出す。そして俺たちに一声掛けた後、このフロアから離脱しようと三人が走り出した時だった。

 

 

 

「ヒヒヒヒヒヒャハァッ!」

 

「なっ・・・!?」

 

 

 

突然スコルパイドが不気味な笑い声を上げたかと思うと、片手をテングたちの背へ向ける。そこから妖気と魔力を圧縮させたと思われるエネルギー弾を三発発射した。一瞬で形成し放った割には、そのエネルギー弾は大きい。どれも人間の子供くらいなら身体を丸ごと消滅させられるだろう。

 

さらにその速度もかなりのもの。三つのエネルギー弾は離脱しようとしていたテングたちとの距離をぐんぐん縮めていく。背を向けていた為か反応が遅れたテングたちは振り返り驚愕に顔を歪めた。

 

今から回避に移ったとしても、怪我人を背負っているあの状態では三つのエネルギー弾全てを全員が回避することは難しいだろう。勿論、あのエネルギー弾は一つ一つが凄まじい威力を秘めている。万全な状態のテングたちならまだしも、大分消耗している今直撃すれば彼女たちには致命傷になってしまう。このままでは、誰かが犠牲になってしまう可能性が極めて高い。

 

 

 

最も、そんなことは絶対にさせないが。

 

 

 

「はぁっ!!!」

 

 

 

闘気を全開、さらに『加速』も発動することで俺はエネルギー弾になんとか追い付く。その勢いのままエネルギー弾を蹴り飛ばしてテングたちへの直撃コースをずらす。そのまま俺は空中で体勢を整えると、もう一つのエネルギー弾目掛け闘気流を放ち、それを爆散させた。

 

あと一つはどうにも出来なかったが、二つ消せれば十分。一つだけになったエネルギー弾をテングたちは避けてこの場を急いで離れていった。

 

 

 

「おっと、よく防げ──・・・」

 

「『火炎大魔壁(ファイアウォール)』ッ!!!」

 

 

 

俺がテングたちを護り切ったのを見てスコルパイドは僅かに驚いているようだった。奴がそこまで言い掛けたその時、アルヴァロの魔法が放たれる。巨大な炎の壁はスコルパイドを飲み込み、まるで津波のように奴を押し流していく。

 

 

 

「皆!今の内に!」

 

「悪いアクト!助かった!」

 

「アクトさん、御武運を!」

 

 

 

振り返らずに皆へ叫ぶと、ジョイスとテングからそう返事が返ってきた。声がした位置からしてもうこのフロアと上のフロアを繋ぐ道の近くのようだ。『魔力感知』で様子を見ていたところ、やがてフロア内からテングたちの反応が消えた。何とか皆を逃がすことに成功し、俺は安堵して小さく息を吐く。

 

その時、ボッ!と妖気が吹き荒れ炎が霧散した。安心したのもつかの間、炎があった場所に目を向けると、そこから無傷のスコルパイドがゆっくりと歩いてきた。

 

 

 

「・・・・・・・・・途中だったから改めて言うが、よく防げタナ?」

 

「・・・また不意打ち喰らうのも嫌なんでね、『魔力感知』でお前のことを見てたんだよ。こっちが作戦会議してるってのに何にも手を出してこないからどうしたんだろうってな」

 

 

 

すると、スコルパイドが静かに妖気を溜めているのが分かり、どこかのタイミングでまた仕掛けてくるだろうと踏んでいたのである。アルヴァロも気付いていたようで、特に打ち合わせなどしなくとも俺の行動に続いて魔法を放ってくれたようだ。

 

 

 

「成程・・・・・・どうやらお前はさっきの連中よりは歯応えがありそウダ。ヒッヒッヒッ・・・進化した俺の力を試すには丁度良い相手かモナ」

 

 

 

満足そうに大きく頷き、足を止めて不気味な笑みを浮かべるスコルパイド。ところで、今『進化』って言ったけど・・・・・・そう言えば名有り(ネームド)なんだよな、こいつ。一体誰が蟲魔族(インセクター)に名付けするんだよ。他の蟲型魔人(インセクター)か?

 

・・・・・・・・・まさか、例の何者かが・・・?

 

 

 

「・・・・・・アクト」

 

「え、あっ・・・・・・っと、どうしたアルヴァロ?」

 

 

 

考え込んでいるところ、アルヴァロから短く声を掛けられた。俺は少し慌てつつも、脳内に浮かんでいた疑問を一旦頭の片隅に追いやり彼の続きの言葉を待つ。

 

 

 

「見ただろう?私の魔法が直撃したというのに奴はほぼ無傷だ。蟲魔族(インセクター)特有の魔法耐性が上位種の人型へと進化したことでより強化されているらしい」

 

 

 

確かに、強力な魔法使いであるアルヴァロの魔法を受けた筈だが、スコルパイドはピンピンしている。元の色が黒いので分かり辛いが、甲殻がやや焦げたくらいか。

 

 

 

「済まないが、今回私は役に立てそうにない。お前たちの援護に徹するとしよう」

 

「気にするなアルヴァロ殿。一番足手まといなのはこの俺だろうからな・・・・・・だが、全力は尽くす!」

 

 

 

自嘲気味にアルヴァロへそう告げたクロコダインだが、一瞬の間の後に覚悟を決めた眼差しを浮かべた。彼自身の言う通り、この三人の中で一番弱い筈のクロコダインが見せた勇気にアルヴァロは僅かに驚いたような顔をして、しかしすぐに微笑むと戦闘態勢に入る。そんな二人の姿を見て、こんな状況だと言うのに俺も思わず口元が緩んだ。

 

 

 

「アルヴァロ、クロコダイン、頼りにしてるぜ・・・・・・・・・絶対、皆で生きて帰るぞ!」

 

「あぁ!」

 

「おうっ!」

 

 

 

三人で顔を見合せ、それぞれ力強く頷く。その後、緩んでいた表情を引き締めた俺は、改めて眼前に立つ強大な敵を見据える。黒鉄色をした蠍の魔人は、尚も余裕そうに不気味な笑みを浮かべていた。

 

 

 

・・・・・・いつも俺を助けてくれる青娥さんはどこにもいない。今回ばかりはこの三人でこのピンチを乗り切らなくてはならないのだと、命を掛けた戦いを前に、少しだけ背筋がぞくりとした。




分かる方には分かるでしょうが、スコルパイドの姿はドラクエⅩのそれとほぼ同じです。違いは杖を持っていない点だけですね。
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