転生したら蜥蜴人族の友人と邪仙の恋人ができた件   作:乃出一樹

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お待たせしました、第128話となります。

今回から少しの間、リムルたちサイドのお話です。


リムルの歩み

見晴らしの良い小高い丘の上で、ぼんやりと青空を眺める。やがて心地好い風に吹かれた俺は、ふと視線を空から丘の下へと移した。

 

ジュラの大森林の一部を開いて作った土地。そこには、今この瞬間も少しずつ出来上がっていく俺たちの街があった。

 

 

 

俺の名前は三上悟。大学を出て一応大手と言われるゼネコンに入社し、何ということもない普通の人生を送っていた・・・・・・というのは前世の話。

 

ある日、後輩の田村を庇って通り魔に刺され死亡。享年三十七歳。しかし、何と異世界に転生してしまったのだ。スライムとして。

 

初めはそりゃあもう滅茶苦茶に驚いたものの、割りとすぐにその事実を受け入れた俺は、二度目の生が始まった洞窟で暴風竜という異名で呼ばれるヴェルドラと出逢う。かつて勇者に封印されたというヴェルドラだが、見た目と違い優しくて少し寂しがり屋なドラゴンだった。

 

そんなヴェルドラと友達になった俺は、彼と互いに名を贈り合うことに。俺からはヴェルドラへ同格の証として共通の名である『テンペスト』を。そしてヴェルドラからは『リムル』の名を授かったのだ。

 

その後、転生した際に獲得したユニークスキル『大賢者』から、ヴェルドラに掛けられた『無限牢獄』という封印を解くにはそれの内と外から解析する必要があると告げられ、同じく転生時に獲得した『捕食者』で俺はヴェルドラを体内に取り込む。そして、スライムとして生まれ変わった場所である洞窟──封印の洞窟と呼ばれているらしい──を出て、ジュラの大森林へやってきたのである。

 

 

 

「まだ一年も経ってないってのに、色んなことがあったな・・・」

 

「そうですね、我が主。我も、これだけ仲間が増えるとは思いませんでした」

 

 

 

俺が呟くと、下から声がした。その正体は俺を乗せて地べたに寝そべっているランガだ。角の生えた巨大な狼のような姿をしたこいつにそうだな、と返して俺は再び当時を振り返る。

 

 

 

封印の洞窟を出て、俺がジュラの大森林を自由に歩き回っていると、小鬼族(ゴブリン)の群れと出くわしたのだ。

 

彼らは牙狼族という魔物たちに襲われており、生き延びる為に俺に助けを求めてきた。彼らの頼みを聞き入れた俺は牙狼族と戦い、勝利。その後、生き残った牙狼族を仲間にし、群れの長の息子であるリーダー格の一匹と全てのゴブリンたちに名付けを行った。

 

その結果、俺は名付けにより魔素をごっそり消耗し一時的にダウン。暫くして目を覚ますと、名付けをした牙狼族のリーダー格・・・ランガは『嵐牙狼族(テンペストウルフ)』へと進化していた。牙狼族は全にして個、という特殊な魔物らしく、正確に言うとランガに名付けをしたことで仲間の牙狼族たち皆も同じく進化していたのだが。

 

ちなみに、ゴブリンたちは人鬼族(ホブゴブリン)やゴブリナへと進化。中でもリグルドと名付けた老ゴブリンはとんでもない変化を遂げていて滅茶苦茶驚いた。

 

 

 

そうして、ゴブリンたちとランガたち嵐牙狼族(テンペストウルフ)を仲間にした俺は、トラブルを避ける為に人間を襲わない等、いくつかのルールを作った。それから皆と暮らしていく場所をより良くしていこうと衣食住を整えることを決意。リグルドからドワーフたちなら衣と住について詳しいだろうと教えてもらい、彼らが暮らすドワルゴンへ向かうこととなったのだが・・・・・・そこでは多くの出来事があった。

 

凄腕の鍛冶職人であるカイジンとドワーフ三兄弟たちが仲間になって。シズさんという運命を知って。

 

そして、俺と同じ異世界からの転生者である少年と出逢った。

 

 

 

「アクトの奴、元気にしてるかなぁ・・・」

 

 

 

空を見上げ、歳の離れた友人のことを思い出す。

 

アクトと名乗ったそいつは、外見だけなら普通の人間にしか見えない『龍人族(ドラゴニュート)』という種族の魔物に転生した高校生。ある日、信号無視で突っ込んできた車との交通事故で命を落とし、気が付いたらジュラの大森林で目を覚ましたそうだ。しかも、何故か『グランブルーファンタジー』の推しキャラだという『ランドル』そっくりな姿となって。

 

まだ若いというのに死んでしまうなんて、と俺は少し同情したが、本人は特に気にしていなかった。寧ろ、病状で身体が弱かった前世と違って健康そのもの・・・というより力強い魔物の身体となり、自由に歩き回れることが嬉しいと話していたっけ。ただ、向こうに残してきた両親のことは心配しているようだった。

 

 

 

出逢ってすぐに意気投合し友人となった俺たちだが、別れの時もすぐにやってきた。エルフのお姉さんたちがいる店に行った時、アクトは『捕食者』で俺の中に入れておいたのだが、店でカイジンを目の敵にするベスター大臣と一悶着が起きてしまったのだ。

 

このままではアクトまで巻き込んでしまうと危惧した俺とカイジンはこっそりとアクトを外へ出してその場から逃がすことに成功。その後、ベスター大臣に冤罪を掛けられ不利な裁判を起こされるも、ドワルゴンを治めるガゼル王のお陰で難を逃れた俺はカイジンたちを連れジュラの大森林に戻って来たのだった。

 

 

 

しかし、アクトとはそれっきりになってしまいあれから一度も会えていない。別れる際にまた会おうと約束はしたが、アクトがどこに住んでいるのかは聞いていなかったのである。リザードマンの友人がいることと、魔人の師匠に面倒を見てもらっているとは話してもらったが・・・・・・そのどちらの名前も分からないし、家も分からない。

 

そう言えば、別れる際にアクトへ魔鋼塊を二つ上げたけど、うまく使ってくれただろうか。

 

実はアクトがドワルゴンに来た理由というのが強い槍を造る為だったのだが、あんなことになってしまい有耶無耶になってしまったのだ。一応ガルムたちから鍛冶の基本を教わり、あとは自身のスキルで何とか出来ると言っていたが・・・・・・

 

 

 

ともかく、カイジンやガルムたちも心配していたし、俺としても仲間たちに友達であるアクトを紹介したいからどうにかして会いたいものだが・・・・・・まぁ、これからこの街が大きくなれば話題になるだろうし、それを聞き付けアクトがここへ足を運んでくれるかもしれない。きっとそう遠くない内に再会できる筈だ。

 

 

 

「完成した街を見たらアクトも驚くぞ~・・・!」

 

 

 

その時の光景をイメージし、俺は口角をつり上げた。しかし、これだけの規模の街になるとは俺も予想していなかったけど。

 

 

 

俺がカイジンたちを連れ村に帰ると、なんと五百人近くのゴブリンが村にやってきていた。なんでも俺が牙狼族を返り討ちにする程の実力者だという噂が広まり、庇護を求めてきたという。

 

こうなっては仕方ないと新しくやってきたゴブリンたちにも名付けをし、全員が暮らせるよう広い土地へ引っ越すことに。その結果、封印の洞窟に近いこの辺りの森を開き大きな街を作ることにしたのである。

 

 

 

そして、引っ越した先で街造りを開始してから少し経った頃。俺は予想よりもずっと早く、運命の人と出逢うこととなる。

 

 

 

 

「・・・・・・・・・シズさん」

 

 

 

シズさん・・・・・・本当の名をシズエ・イザワ・・・いや、井沢静江。

 

白い仮面を身に付け、『爆炎の支配者』の異名で知られた英雄。その名から分かるように、俺やアクトと同じ異世界人だ。

 

彼女はエレン、カバル、ギドの三人と一緒にヴェルドラのいなくなったジュラの大森林が現状どうなっているのか、ブルムンドのギルドからの依頼で調査しに来たのだ。その途中、魔物に襲われているところを俺が助けたのが始まり。

 

正確には、エレンたち三人のことは以前から知っていたのだが・・・・・・それは置いておこう。封印の洞窟から出る時にちらっと見掛けただけだし。

 

 

 

魔物から助けた後、俺はシズさんたちを街へと招待した。まぁ、その時はまだまだ完成には程遠くてテントしかなかったけど。

 

そうして色々話す内に、彼女が俺と同じ異世界人で、七十年くらい前にこちらの世界へやってきたことを知る。戦争の時代を生きたシズさんに、俺は『大賢者』と『思念伝達』を使って戦争が終わり平和となった時代を見せた。大切な友人から話は聞いたけれど、未来の世界を実際に見ることが出来て嬉しいと微笑むシズさん。そして俺は、向こうのようにこちらの世界でも、皆が平和に暮らせる街を作りたいという思いを彼女に語った。

 

その思いを・・・夢を、シズさんは応援してくれた。笑顔を浮かべて素敵だと言ってくれた。だから、完成した街をシズさんにも見せてあげたかったけれど。その願いは叶わなかった。

 

 

 

七十年前。シズさんは魔王レオン・クロムウェルによってこちらの世界へ召還された。その時、魔王レオンは上位精霊であるイフリートをシズさんの身体に宿らせたという。理由は、正直よく分からない。ただ、そのお陰でシズさんはこの世界で生きていく力を得て、数十年経ってもまるで二十歳くらいの若さを保つことが出来ていた。

 

彼女はイフリートから得た炎の力を人々を守ることに使った。しかし、炎は少しずつ彼女を蝕み、やがて彼女は炎を御することが出来なくなった。そして遂に、肉体が限界を迎えてしまう。エレンたちがブルムンドへ帰るその日、シズさんの肉体がイフリートに乗っ取られ暴走してしまったのだ。

 

 

 

エレンたちの協力もあり、俺はなんとかイフリートだけを『捕食者』で飲み込みシズさんから引き剥がすことに成功する。しかし、イフリートとの同化によって生き永らえていたシズさんは、力の源とも言える奴がいなくなったことで衰弱し、それから一週間目を覚まさなかった。

 

漸く意識を取り戻したシズさんだったが、その命の灯火は消える直前で。絶望する俺を慰めるかのように、シズさんは力なく微笑んでこう言った。

 

辛いことも沢山あったけど、良い人たちとも沢山出会えて。最後は、こんな奇跡みたいな出会いがあった。心残りが無い訳じゃないけど、私はもう十分生きたから・・・・・・と。

 

 

 

彼女の様子から、もう時間が無いと俺は悟る。なんでもいい、少しでもいいから彼女に何かしてあげたいと思った俺は、シズさんの力になりたいと告げた。シズさんはキミの人生の重荷になるから、と遠慮していたが、俺が背負いたいんだと何とか説得を続ける。

 

やがて折れてくれたのかシズさんは小さく笑ってから、『あなたの見せてくれた、懐かしい故郷の景色の中で眠りたい』、と掠れる声で呟いた。

 

 

 

少し悩んだけれど、俺はシズさんの願いに応えた。それが俺に出来る唯一の葬送だったから。その結果、俺は人間の姿になれるようになった。その姿を見たカバルたちは、まるで小さいシズさんのようだと驚き、それから俺の中にいるシズさんに向けて感謝の言葉を述べていた。

 

シズさんを皆で弔った後、エレンたちもブルムンドへ帰ることに。三人にも世話になったし、お礼としてカイジンやガルムたちが造った装備をプレゼントしてあげた。三人は悲しみを吹き飛ばすかのように大はしゃぎして、俺たちに礼を言って去っていった。そのたくましさを俺も見習わなければなるまい。

 

 

 

「・・・・・・・・・・・・『せいが』、か」

 

 

 

シズさんを取り込んだ時、ほんの少しだけ彼女の記憶・・・いや、心残りを垣間見た。五人の子供たち。二人の男女。そして、青空のような髪色をした女性。

 

最後の女性はきっと、この世界でシズさんが一番大切に想っていた誰かなのだろう。子供たちや二人の男女より、少しだけ多くの記憶を・・・想いを感じることが出来た。それと、シズさんを飲み込む直前。消え入りそうな声であの人は言ったのだ。『さよなら、せいが』・・・と。きっとそれが、青空のような髪色をした人の名前なのだろう。

 

その人はシズさんが亡くなったことを知ったらどんな反応をするだろう。やはり泣くだろうか。それとも、救えなかった俺を、シズさんを取り込んだ俺を憎むだろうか。

 

 

 

「殺されてやる訳にはいかないけど、どんな呪いの言葉も受け止めるよ」

 

 

 

スキルで体内にしまっていた白い仮面を取り出す。シズさんから受け継いだ大切なものだ。俺はそれを見つめながら、自分に言い聞かせるように呟く。

 

彼らの居場所はなんとなく分かる。多分、シズさんの未練が俺の心に伝えてくれているのだろう。

 

今はまだ街も全然出来てないし、なんだか森の様子も少しおかしいからここを動くことは出来ないけど。いつか必ず、あなたの大切な人たちに会いに行く。それまで、もう少しだけ待っててくれ。シズさん。

 

 

 

しかし・・・・・・どこかで見たような気がするんだよなぁ、『せいが』って人。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「────ここにいたんですか、リムル様」

 

「ん・・・・・・?おぉ、ベニマル」

 

 

 

そんなことを考えていると、背後から声を掛けられた。仮面を体内へしまいながら振り返ると、深紅の髪と瞳、漆黒の二本の角を生やした男がこちらへ近付いてきていた。

 

 

 

彼の名はベニマル。シズさんの事件の後、最近仲間になったばかりの『鬼人族(キジン)』である。元々は『大鬼族(オーガ)』という魔物で、他五人の仲間たちと共にこの街へやってきた。出会った時に一悶着あったものの、今は彼を含め全員俺たちの仲間となった。一時的にだけど。その時に俺が名付けをしたことで全員『鬼人族(キジン)』へと進化している。

 

ちなみに、元の容姿はもっと荒々しいというか、肌の色も浅黒く角も背丈も今より大きかったのだが、進化した後は肌色が明るくなり、身体も少し縮んで普通の人間に近い容姿となっている。今ではただの高身長のイケメンだ。チクショウ。

 

 

 

「・・・・・・あー、こほん。どうした?何か用?」

 

「はい。実は、思い出したことが・・・・・・」

 

 

 

しょうもない嫉妬心を咳払いと共に吹き飛ばし訊ねる。ベニマルは頷くと、そう前置きして話し始めた。

 

 

 

「リムル様は『豚頭帝(オークロード)』という存在を御存知でしょうか?」

 

「『豚頭帝(オークロード)』?何だそりゃ」

 

「まぁ簡単に言うと・・・・・・化物です」

 

「本当に簡単だな。皆化物だよ」

 

 

 

真顔で話すベニマルに思わずツッコむ。説明が足りなかったとベニマルは苦笑してこう続けた。

 

 

 

「数百年に一度、豚頭族(オーク)の中に生まれると言われている特殊個体(ユニークモンスター)です」

 

「ユニーク・・・・・・特別ってことか」

 

 

 

確か俺もその特殊個体(ユニークモンスター)なんだよな、一応。あと、アクトもそうだった筈。

 

 

 

「何でも、味方の恐怖の感情すらも喰う為、異常に高い統率能力を持つんだとか。里を襲った豚頭族(オーク)共は仲間の死にまるで怯むことがなかった。あるいは、と思いまして・・・・・・」

 

 

 

そこまで言うと、ベニマルは静かに目を伏せた。

 

実はベニマルたち六人は、ある日豚頭族(オーク)の大群に里を襲撃されたのだ。奴らに里は滅ぼされ、三百人近くいたという大鬼族(オーガ)の仲間たちも皆殺されてしまったらしい。

 

豚頭族(オーク)たちは人間が着用するような全身鋼鎧(フルプレートメイル)を全員が装備していたという。それを聞いたカイジンとリグルドは豚頭族(オーク)たちがそんな高価な物を沢山用意出来る訳がないと、奴らの背後で何者かが糸を引いているのではと怪しんでいたっけ。

 

実際、里が襲われた際にベニマルは仮面を付けた上位魔人を見たらしい。もしかすると魔王の内の誰かに豚頭族(オーク)が組したのではないか、とカイジンたちは話していたが・・・・・・

 

 

 

「・・・・・・まぁ、可能性で言えば非常に低い話です」

 

「ふーん・・・・・・けど、何でお前たちの里が襲われたんだろうな。なにか心当たりは無いか?」

 

 

 

その問いにベニマルは少し考え込む。すると何かを思い出したらしくそう言えば・・・・・・と呟いた。

 

 

 

「関係あるか分かりませんが、二つほど」

 

 

 

二つもあるのか・・・・・・と思ったが俺は口に出さず黙ってベニマルの話を聞くことに。

 

まず一つめの心当たりだが、なんでも豚頭族(オーク)たちから襲撃される数ヶ月前に、里から二人の大鬼族(オーガ)を追放したという。その二人はかなりの乱暴者で、ちょくちょく里で問題を起こしていたらしい。

 

その度にベニマルや他の仲間がボコボコにして抑え付けていたそうだが、ある日とうとうベニマルの父親でもある里の長に追放を言い渡され、半ば無理矢理追い出されたそうだ。

 

 

 

「ただ、あんなゴロツキ同然の外道が二人だけで豚頭族(オーク)を唆し操れる訳がない。魔王、もしくは上位魔人に取り入ろうにもツテも無いだろうし、やはり奴らは関係ないでしょう」

 

「となると、ベニマル的には二つ目の方が本命って思ってるのか?」

 

「前者よりは可能性がある、というだけですが・・・・・・」

 

 

 

自信無さげにベニマルは語り出す。

 

二人の大鬼族(オーガ)を追放して二、三ヶ月が経った頃、里にある魔人がやってきたそうだ。名前をやろう、とその魔人は言ってきたそうだが、あまりに胡散臭かったので里長とベニマルが追い返したらしい。その時は悪態をつくだけで特にトラブルはなかったそうだが、もしかするとその魔人から恨みを買っているのでは、とのこと。

 

 

 

「主に見合わなけりゃ、こっちだって御免だ。名を付けてもらうのも誰でも良いって訳じゃありませんからね」

 

「そ、そっかぁ・・・・・・えへへ・・・」

 

 

 

そう言ってベニマルは微笑む。つまり俺なら良かったってことか・・・少し照れるぜ。

 

 

 

「なんて名前だったかな・・・?確か、ゲラ・・・ゲリ・・・ゲレ・・・ゲロ・・・・・・?」

 

「──ゲルミュッド、だ」

 

 

 

ベニマルが魔人の名前を思い出そうとしていると、突如俺の隣から声が飛んで来た。そちらへ振り向くと、黒みがかった青髪に、額から白い角を一本生やした男がいつの間にか立っていた。

 

彼の名はソウエイ。ベニマルと一緒に仲間になった、六人の元大鬼族(オーガ)の内の一人。クールなイケメンって印象を受ける容姿と雰囲気をしている。

 

 

 

「ゲルミュッド・・・なんか聞いたことあるような・・・・・・・・・あっ!」

 

 

 

その名を聞いて俺もあることを思い出した。

 

俺の仲間であるゴブリンたちの中にリグルという奴がいるのだが、そいつには『リグル』という名前の兄がいた。残念ながら兄のリグルは俺がゴブリンたちと出会う前、村が牙狼族に襲撃された時の戦いで命を落としてしまっている。

 

俺は村の皆を守る為に命を掛けた兄の意思を継げるようにと想いを込めて弟──つまり俺の仲間となったリグルに兄と同じ名前を付けたのだが、兄リグルに名付けをしたのがゲルミュッドという名前の魔人だったと弟リグルから聞いたことがある。

 

 

 

「同じ奴っぽいな・・・・・・あちこちで名前を付けてんのか?なんでだろ」

 

「リムル様、御報告がございます」

 

 

 

ゲルミュッドの目的がなんなのか考えていると、ソウエイが跪いて頭を垂れた。そう言えばいきなりやってきた理由を聞いてなかったけど、何かあったのだろうか。とりあえず俺はゲルミュッドのことを一旦頭の隅に追いやり、彼の報告を聞くことにした。

 

 

 

蜥蜴人族(リザードマン)の一行を目撃しました」

 

 

 

蜥蜴人族(リザードマン)。その名を聞いてアクトの顔が脳裏に浮かんだが、今はソウエイの話に集中しよう。

 

 

 

「湿地帯を拠点とする彼らがこの辺りにまで・・・・・・しかも複数の集団で行動しているのは異常ですので、取り急ぎ御報告をと。何やら近くの子鬼族(ゴブリン)村で交渉に及んでいるようでした。恐らく他の村にも・・・・・・ここへもいずれ来るかもしれません」

 

 

 

ソウエイは街の周囲を中心に広い範囲の見回りを買って出てくれている。豚頭族(オーク)たちの件があるから警戒しているのだろう。

 

ちなみにソウエイだけに任せている訳ではなく、元々の警備チームもちゃんと存在している。先程のリグルたちとランガ以外の嵐牙狼族(テンペストウルフ)を組ませたチームだ。

 

 

 

蜥蜴人族(リザードマン)、か・・・・・・どんな連中なんだろう」

 

「────リムル様ぁ~~~っ!」

 

 

 

蜥蜴人族(リザードマン)について考えていると、また俺のことを呼ぶ声が響いた。ベニマルたちより大きな声に少し驚きつつも、声のした方に視線を向ける。そこには全速力で丘を駆け上がってくるリグルドの姿があった。

 

 

 

「こちらにおられましたか!」

 

「おぉ、どうしたリグルド。そんなに慌てて」

 

「実は、先程蜥蜴人族(リザードマン)の使者だと名乗る者が現れまして・・・」

 

 

 

汗を拭いながらリグルドはそう答えた。蜥蜴人族(リザードマン)の使者か、噂をすればなんとやらだな。

 

 

 

「なに?街へ向かってくる一行はいなかった筈だが・・・あれだけの数ならばどうやっても目立つ」

 

「いえ、やってきたのは一人です。街から少し離れたところを警戒しつつ、ついでに食糧を集めていたリグルたちが遭遇したそうで」

 

 

 

確か、見回る範囲が被らないようにソウエイと他の警備チームの担当するエリアを分けていたんだっけ。それでも大勢で動いていればソウエイも気付いただろうが、恐らくたった一人でリグルたちの担当エリアにいたから見つけられなかったんだろう。

 

 

 

「それで、その使者の何が問題なんだ?あ、もしかして俺に用事があって呼びに来たとか?」

 

「確かに、『この街を治める者と話がしたい。どうか取り次いで頂けないだろうか』と頼まれましたが・・・・・・問題はそれではないのです!」

 

 

 

俺の言葉を肯定するも、リグルドは焦ったままだ。一体なにがどうしたのかと詳しい話を求める俺に、リグルドは一度呼吸を落ち着かせてからこう続けた。

 

 

 

「リグルたちがその使者殿を街へ案内している際、シオン殿とシュナ殿に会ったそうなのですが・・・・・・お二人と顔を合わせた瞬間、使者殿が急に態度を一変させてしまい、今にも戦いが始まりそうな一触即発の事態に!」

 

「はぁ!?」

 

 

 

予想外の展開に俺は思わず間の抜けた声を上げてしまう。どうしてそんなことになってるんだよ!

 

 

 

「シュナが・・・・・・!?リムル様!」

 

「っと、そうだな。とにかくその使者のところへ行こう。リグルド、案内してくれ!」

 

「御意!」

 

 

 

ベニマルはシュナの兄だ。やはり兄として、妹がトラブルに巻き込まれていると知れば心配なのだろう。不安そうな顔でこちらを見つめる彼に頷いた後、俺はリグルドに使者とやらのいる場所までの案内を頼む。そうして俺たちは駆け出したリグルドの後を付いて行くのだった。

 

 

 

全く・・・・・・次から次へと退屈しないなぁ、本当に!




正直、ドラクエ12よりモンスターズ新作の方が嬉しかったりします。
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