転生したら蜥蜴人族の友人と邪仙の恋人ができた件   作:乃出一樹

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お待たせしました、第129話となります。

ガビル推しなので、今回の話は書いてて少し辛かったです。


ガビル来訪!

リグルドの案内の元、一人でこの街にやってきたという蜥蜴人族(リザードマン)の使者のいる場所へ急ぐ俺たち。そこまで向かう途中にもう少し詳しい事情を聞けないかと、俺はランガの背に乗ったままリグルドに訊ねた。

 

 

 

「シオンとシュナに会った途端に態度が変わったって・・・・・・具体的に何があったんだ!?」

 

「も、申し訳ありません・・・・・・私も後から駆け付け、リグルに少し話を聞いただけでして・・・!」

 

 

 

リグルドは走りながら器用に頭を下げる。気にするなと慰めてから、知っている範囲でいいので話して欲しいと俺が頼むと、リグルドは顔を上げて説明を始めた。

 

 

 

今日もいつもと同じように、リグルたち警備チームは街の周囲を見回りつつ食糧を集めていた。すると、森の奥から何者かが凄いスピードで飛んで来たという。

 

現れたのは、赤い槍を持ち翼を生やした一人の蜥蜴人族(リザードマン)。自分たちの目の前で急停止した蜥蜴人族(リザードマン)にリグルたちは警戒し戦闘態勢へと移ったのだが、そいつは慌てることなく驚かせてしまい申し訳ない、と冷静に謝罪したそうだ。

 

戸惑うリグルたちに蜥蜴人族(リザードマン)は名を名乗り、それから自身が蜥蜴人族(リザードマン)一族からの使者だと告げる。蜥蜴人族(リザードマン)がこんなところまで一体何の用かとリグルが訊ねたところ、使者はこう言ったらしい。

 

 

 

『ジュラの大森林を脅かす『豚頭帝(オークロード)』、そして奴が率いる二十万の豚頭族(オーク)軍と共に戦う味方を集めている。その途中、封印の洞窟近辺に街を造ろうとしている上位魔人がいると聞いた。その者はゴブリンだけでなく牙狼族をも纏め上げる程の実力者らしいのだが・・・・・・もしや、あなた方の主がその上位魔人では?』・・・・・・と。

 

 

 

 

 

「・・・・・・・・・って、豚頭族(オーク)たち二十万もいんの!?」

 

 

 

リグルドの話の途中だが、思わず俺は声を上げてしまった。二十万て。五百人で驚いてたのが馬鹿みたいに思えてくるな。

 

いや、待て。それよりも。

 

 

 

「『豚頭帝(オークロード)』・・・・・・まさか本当に・・・?」

 

 

 

僅かではあるが、クールなソウエイが動揺しているように見える。ベニマルがさっき話していたとは言え、ほとんど有り得ない可能性の話が現実味を帯びてきたからだろう。

 

 

 

「二十万・・・・・・里を襲った豚共は、軍のほんの一部だったという訳か・・・・・・・・・リグルド殿、続きを聞かせて貰えるか?」

 

 

 

ベニマルの言葉の後、リグルドがちらりと俺を見る。ベニマルに同意するように俺が無言で頷くと、リグルドは再び口を開いた。

 

 

 

使者からの問いにリグルは警備チームの皆とどうするべきかを相談したという。その結果、リグルは使者の疑問にその通りだと肯定し、俺と会わせることに決めた。ベニマルたちのこともあり、豚頭族(オーク)について何か情報を得られれば、と思ったらしい。

 

俺との面会を許された使者はリグルに笑顔で感謝した。そのままリグルたちに連れられ街の中に入ると、使者は驚きつつも感心した様子で造りかけの街並みを眺めていたそうだ。

 

 

 

『異なる二つの種族を纏め上げるだけでなく、部下たちの為にこれだけの街を造ろうとするとは。ここ、ジュラの大森林には危険な魔物も数多く生息するというのに・・・・・・あなた方の主である上位魔人は強大な力を持っているにも関わらず、心優しい人物なのだな』。使者はそう言っていたらしい。

 

俺のことを評価されてリグルたちは喜んだ。それに使者は、蜥蜴人族(リザードマン)からすれば遥かに格下であるリグルたちゴブリンを見下さず、高圧的な態度も取らず真摯に接してくれたという。それらのことから、出逢ってまだ短い時間ではあるものの、使者が信頼に値する人物だとリグルたちは判断したのだろう。

 

 

 

しかし、俺の元へ案内する途中で事態は一変する。

 

使者を連れて街の中を歩くリグルたちの前に、偶然シオンとシュナが現れた。彼女たちにリグルが挨拶しようとしたその時、突然使者がリグルの視界を遮るように前に立つ。すると使者は槍を構え、シオンとシュナの二人に殺気を放ち始めたのだ。

 

使者の取った行動にシオンとシュナが彼を敵だと勘違いし、二人も戦闘態勢へ入る。一触即発の空気になるが、慌てたリグルたちが三人の間に入り必死に抑え付ける。そこに駆け付けたリグルドは事情を聞くと、その場にいる面子では三人を止められないと判断し、今に至るという訳だ。

 

 

 

 

 

「・・・・・・成程、そんなことがあったのか」

 

 

 

リグルドから話を聞き終え、俺は小さく息を吐く。シオンとシュナを見た途端に蜥蜴人族(リザードマン)の使者がおかしくなったと。

 

シオンとシュナ。この二人も、ベニマルたちと同じく最近仲間になったばかりの元大鬼族(オーガ)だ。どちらも女の子で、紫髪と額から生える一本の黒い角、そして素晴らしいおっぱ・・・・・・じゃなかった。抜群のスタイルをしているのがシオン。知的美人といった印象を受けるが、ちょっとアレなところもある。

 

シオンと違い少し小柄で、桃色の髪と白い二本角を持つのがシュナ。こちらはベニマルの妹で大鬼族(オーガ)の姫。ベニマルいわく箱入り娘だったそうだが、割りとすぐ仲間たちと打ち解け、得意とする料理や織物を皆に教えてくれている。

 

 

 

「なぁ、ベニマル。念の為に聞くんだけどさ・・・・・・お前ら、他の奴らにも俺と初めて会った時みたいなことしてないよな?」

 

 

 

実は、ベニマルたちとの出逢いは穏やかなものではなかった。本人に訊ねながら、俺はその日のことを思い出す。

 

 

 

シズさんを看取った俺は、人間の姿や仮面だけでなく、彼女の持っていたスキルも受け継いでいた。『変質者』というユニークスキルなのだが・・・・・・まぁ、その力については今は置いておこう。

 

人間形態で『変質者』の力を試していると、ランガから助けを求める『思念伝達』が入ったと『大賢者』から告げられる。何事かと慌ててランガの元へと駆け付けると、名付けをする前のベニマルたち六人がランガやリグルたちに襲い掛かっているところだったのだ。

 

そのまま俺にも攻撃を仕掛けてきたが、戦いを続ける内に名付け前のシュナがベニマルたちを止めてくれた。どうやら、シズさんから受け継いだ仮面を身に付けていた俺を、里を襲った仮面の上位魔人の仲間だと勘違いしたらしい。

 

その後、誤解が解けたベニマルたちからの謝罪を俺は受け入れた。そして彼らの事情を把握して、一先ず豚頭族(オーク)たちを倒すまで俺の配下として働く契約を結ぶことに。

 

こうして、一時的にベニマルたち六人が仲間になり、彼らにも名前を与えたという訳だ。

 

 

 

「はは・・・・・・していませんよ。里にいた頃も、特に蜥蜴人族(リザードマン)たちと因縁等があったなんて話は聞いたことありません。そもそも、里を滅ぼされてからリムル様に会うまで皆、その時に負った傷を癒していましたから」

 

 

 

あの一件は彼らにとって軽い黒歴史なのだろう、ベニマルは苦笑いを浮かべてそう答える。ともかく、俺の思い過ごしだったらしくそこは一安心だ。

 

 

 

「しかし、だとすると使者殿は何故あのような行動に出たのか・・・・・・」

 

「さぁな。とにかく話を聞いてみるしかない。使者の相手は俺がするよ」

 

 

 

リグルドにそう告げ、俺はランガの上で人間形態へと変身した。スライムのまま使者と会っても良かったのだが、ドワルゴンでしたアクトとの会話を思い出したのだ。

 

ゴブタと二人でドワルゴンへ入国する為に門の前で審査待ちをしていた際、チンピラたちに襲われたことがあった。とは言え大した連中ではなかったので軽く威圧しただけでなんとかなったのだが。

 

そのことをアクトに愚痴ったところ、スライムの姿では余計なトラブルに巻き込まれやすいのかも、という話になったのだ。そのことがあり、大切な時なんかは嘗められない姿になって対応しようと思ったのである。折角人間の姿になれるようになったのだし。

 

 

 

まぁ、ベニマルたちの時は結局戦闘になったんだけど・・・・・・あれは仮面を付けたままだったってのもあるからな。今回は大丈夫だろう、きっと。

 

 

 

「・・・・・・!見えてきました。あそこです、リムル様!」

 

 

 

そんなことを考えている内に使者たちのすぐ近くまで来ていたらしい。リグルドが指差した方へ視線を向けると、何やら人だかりが出来ていた。恐らくあの中心に使者やシオンたちがいるのだろう。

 

 

 

「リグルド、案内ご苦労さん。ランガ、先に行くぞ」

 

 

 

リグルドを労った俺はランガの背から飛び上がる。同時に背中から翼を生やし、皆より早く飛んで行く。これはユニークスキル『捕食者』の力だ。

 

『捕食者』にいくつかの権能が含まれているのだが、その中の『捕食』で取り込んだ生き物の特徴を、『擬態』によって再現することが出来る。こうして全身を人間のように変身させるだけでなく、身体の一部のみを変化させることも可能なのだ。ちなみにこの翼は封印の洞窟で取り込んだ『吸血蝙蝠(ジャイアントバット)』のものである。

 

 

 

「到着、っと」

 

 

 

人だかりの真上まで来た俺はその場で滞空し周囲を見渡す。やはり中央辺りにシオンたち、それから使者と思われる魔物がいた。紫の鱗をした人型の蜥蜴・・・というよりはドラゴンっぽいけど。

 

シオンたちと使者の間には両者を抑えているらしいリグルたち警備チームの姿もある。と、俺の存在に気付いたらしく、使者が顔を上げこちらを見た。

 

 

 

「むっ?もしや、貴殿がこの街を治める上位魔人だろうか?」

 

「あぁ。リムルだ、よろしくな」

 

「リムル様!」

 

 

 

使者に遅れてシオンたちも俺に気付いたようだ。二人に軽く手を振ってから改めて使者に視線を向ける。目を丸くして、どこか驚いている様子だ。まぁ、シズさん似の美少女が魔物たちの親玉だなんて信じ難い話かもしれない。

 

結局舐められて戦闘になったりするのかなぁ、なんて不安に思いつつ、いつまでも上から見下ろしたままというのもアレなのでとりあえず地上へ降りることにした。それと同時に使者を観察したかったので、なるべくゆっくりと。

 

 

 

「改めて見てもそんなに蜥蜴って感じしないな。角は立派だし、翼もあるし・・・・・・ドラクエのリザードマンそっくりだ」

 

《告。あの個体は『蜥蜴人族(リザードマン)』ではなく『龍人族(ドラゴニュート)』です》

 

 

 

俺の一人言に反応して、脳内にやや無機質な女性の声が響く。今の声はユニークスキル『大賢者』だ。この世界のことに疎い俺に色々なことを教えてくれる、頼れる相棒といったところかな。

 

 

 

「『龍人族(ドラゴニュート)』・・・・・・アクトと同じ種族だな」

 

《『龍人族(ドラゴニュート)』は『蜥蜴人族(リザードマン)』の上位種であり、魔物としてのランクは『大鬼族(オーガ)』と同じBです》

 

「つまり、出逢った時のベニマルたちと同じくらいの強さってことか」

 

 

 

しかし、何故かは分からないがあの時のベニマルたちと同格の相手には見えないんだよな・・・・・・あんなに強そうな槍だって持ってるのに。

 

・・・・・・あれ?なんか、あの槍・・・見覚えがあるような・・・

 

 

 

「・・・・・・上位魔人、リムル殿・・・であるな。我輩は蜥蜴人族(リザードマン)族の次期首領、ガビルと申す者。以後、見知りおき願いたい」

 

 

 

使者の持つ槍に既視感を覚えながら地面に降り立つと、黙ってこちらを見つめていた使者が口を開いた。ガビルと名乗ったそいつは予想と違って俺を疑うことも侮ることもしない、礼儀正しい男のように思えた。

 

 

 

「まずは貴殿の治める地で騒ぎを起こしてしまったこと、謝罪させて頂きたく。申し訳なかったのである」

 

「信じるのか?俺がこの街の・・・こいつらのボスだって」

 

 

 

頭を下げるガビルを見て、俺は少し驚いた。スライムの姿ではないとは言え、外見はただの美少女。正直笑い飛ばされると思っていたのだが。

 

 

 

「ふっ、確かに貴殿の姿を目の当たりにして最初は面食らったが・・・・・・実力はともかく、素晴らしい主であることくらいはこの場にいる者たちと街を見れば分かるとも」

 

 

 

意外そうな表情をしていただろう俺にそう告げると、ガビルは周囲を見回し始めた。集まっているゴブリンたちや嵐牙狼族(テンペストウルフ)たち、それから建築途中の家々を眺めながら続ける。

 

 

 

「彼らが貴殿へ向ける表情と目からは、尊敬や親愛の念を感じ取れる。我が同胞たちも、首領を前にすると似たような顔をするのでな。力と恐怖で抑え付けていてはこうはならぬよ」

 

 

 

優しい笑みを浮かべ、穏やかな雰囲気でガビルは語る。なんというか、普通に話が出来そうな相手だぞ?こんな奴がいきなり喧嘩売ったりするか?

 

 

 

「それから、我輩をここまで案内してくださったリグル殿たちから聞いたのだが、部下たち全員の住処・・・家を建てているとか。それがこれらであろう?」

 

「そうだけど・・・」

 

「やはりな。全ての部下にこれ程立派な、まるで人間たちが暮らすような家を用意するなど並の魔物には不可能だ。街を造る知識を自身で得たのか、他者の手を借りたのかは分からぬが・・・・・・どちらにせよ、貴殿の能力の高さを窺える。見事、の一言である」

 

 

 

満足気に頷き、俺を真っ直ぐ見据えガビルはそう褒めてくれた。途中とは言えこれだけの街を造れたのは、前世で勤めたゼネコンで得た知識もあるが、それ以上にドワーフであるカイジンたちの力が大きい。

 

勿論、俺たちの指示通りに働いてくれるゴブリンたちのお陰でもあるが、こうも素直に評価されると正直嬉しいな・・・・・・前世ではなかったかもしれない。

 

 

 

「我輩も完成したこの街を見てみたくなった。なんとしても、『豚頭帝(オークロード)』を倒さねばならぬ」

 

「って、そうそう!その『豚頭帝(オークロード)』ってのは本当に存在するのか?あと、二十万の軍勢を率いてるって聞いたけど」

 

 

 

緩みそうになる口元をなんとか抑えていると、ガビルが決意に満ちた顔で呟く。彼の発した『豚頭帝(オークロード)』という言葉にハッとした俺はそれらの話が真実なのか直接訊ねた。

 

 

 

「うむ、信じられぬだろうが事実だ。軍勢の数については我等が同胞の調査隊の尽力によって。『豚頭帝(オークロード)』の存在は・・・ある仲間が明らかにしてくれた」

 

「ある仲間?蜥蜴人族(リザードマン)じゃないのか?」

 

「同族ではない、フリーの魔人だ。出逢った経緯等は話すと長くなるのでやめておくが、少し前から色々と協力してもらっているのだよ。しかし、これが食えないお方というか、クセのあるお方というか、恐ろしいお方というか・・・・・・・・・っ、ごほん!とにかく、頼れるお方なのである!うむ!」

 

 

 

俺の疑問にガビルはそう答えたのだが、その魔人と何かあったのか、途中から苦い顔をしていた。すぐに笑顔を取り繕ってはいたが・・・・・・彼の言うように、相当恐ろしい魔人とみた。

 

 

 

「それはともかく・・・・・・今伝えたように、このジュラの大森林に『豚頭帝(オークロード)』という脅威が迫りつつある。我輩や他の仲間たちは首領の命を受け、森の各地に暮らすゴブリンたちと協力を結び、共に戦おうと動いていたのだ」

 

「成程、とりあえず話に聞いてた通りみたいだな。それで、俺たちにも一緒に戦って欲しいってこと?」

 

 

 

話を聞き終えた俺が確認すると、ガビルはうむ、と頷く。俺はガビルを見つめたままその場で少し考え込んだ。

 

ベニマルたちの話も考慮すると、『豚頭帝(オークロード)』とやらが現れたというのはほぼ間違いないとみて良いだろう。二十万の軍勢もいると信じるのなら、ガビルの誘いに乗るのは悪くない話だ。寧ろこちらから頼みたいくらいである。

 

 

 

しかし、気掛かりなのはシオンとシュナに殺意を向けたということ。今はそんな様子ではないが・・・・・・

 

 

 

「貴殿たちが力を貸してくれるというのであればこんなに心強いことはない。牙狼族もいるし、どうやらリグル殿たちは普通のゴブリンではないようだしな。それに、今は力を抑えているようだが、リムル殿もそれなりの実力者な筈」

 

 

 

悩む俺に気付いているのかどうかは知らないが、微笑みながらガビルは話し続けている。すると、彼は俺の強さにも言及し始めた。確かに妖気は抑えているので、俺の本来の強さは分からない筈なのだが・・・・・・

 

疑問に思い、その理由を俺が訊ねようとした次の瞬間。

 

 

 

 

 

「・・・・・・なにせ、ジュラの大森林の汚点すら従えているのだからな」

 

 

 

突然、優しかったガビルの眼差しが鋭くなった。その視線の先にはシオンとシュナの姿がある。声も心なしか低くなり、雰囲気ががらりと変わった。

 

 

 

大鬼族(オーガ)などという愚かで野蛮な種族にはリムル殿の優しき想いも言葉も通じぬ。であれば力で示すしかないが、大鬼族(オーガ)のランクは腐ってもB。少なくとも、リムル殿がBランク以上の力を持っていることは間違いあるまい」

 

 

 

二人を睨み付けたままガビルはそう言った。俺と話していた時とはまるで別人である。俺が困惑していると、シオンの後ろに立っていたシュナがゆっくりと前に出た。

 

 

 

「随分な物言いですね、使者殿。我々が何か失礼をしたでしょうか?」

 

「それは自分たちの胸に聞けば分かるであろう?自らの愚かさすら理解出来ぬとは、貴様ら大鬼族(オーガ)はどれだけ罪深い存在なのだ?」

 

 

 

ガビルはシュナをじろりと見下し、フン、と鼻を鳴らす。その言葉にシュナは目付きを鋭くする。シオンは完全に怒りが表情に出てしまっており、シュナが制していなければ今にも殴り掛かりそうな程だ。

 

そんな二人を眺めていたガビルは、冷たい表情でこう言った。

 

 

 

「まぁ・・・・・・故に天罰が下ったのであろうな」

 

「・・・・・・・・・天罰?」

 

 

 

何を言っているのか理解出来ないという顔でシュナが繰り返す。そんなシュナを嘲るように、ガビルは口端をつり上げた。

 

 

 

「聞いたぞ。里が滅んだそうだな?」

 

「っ!?何故、それを・・・・・・」

 

「例の魔人が教えてくれたのだよ。全く、ジュラの大森林から忌まわしい種族が消えて清々していたというのに・・・・・・その一点だけは、豚共に感謝したいくらいだ」

 

「・・・・・・なぁガビル。それは・・・」

 

 

 

それは流石に言い過ぎだ。ガビルの事情は知らないが、今のシュナたちは俺の部下。これ以上皆への侮辱を見逃すことは出来ない。敵意を剥き出しにするガビルを諫めようと俺が動き出そうとした、その時。

 

 

 

 

 

「───今、何と言った?」

 

 

 

怒りを滲ませた声と共に背後から近付く足音が二つ。振り返ると、ランガやリグルドと共に遅れて付いてきていたベニマルとソウエイ、二人の姿があった。

 

いや、二人だけじゃない。

 

 

 

「天罰・・・?オラたちの里が滅んだのは、天罰だとぉ!?」

 

 

 

ベニマルたちとは別の方向から、大柄な男が人混みをかき分けるようにして現れた。一見すると、黒髪の普通の人間にも思えるが、その額からは小さな白い角が二本生えている。

 

彼の名はクロベエ。ベニマルたちと同じ生き残った大鬼族(オーガ)の一人だ。

 

布に巻かれた巨大な何かを担いだクロベエはガビルの言葉に歯を食い縛り、空いている片手を血が滲みそうな程、固く握り締めている。

 

 

 

「蜥蜴風情が、図に乗りおって・・・!」

 

 

 

続いてやってきたのは腰に刀を携えた白髪の小柄な大鬼族(オーガ)

 

小さな二本の白い角、長く蓄えた顎髭。六人の中でただ一人の老人で、俺がハクロウと名付けた大鬼族(オーガ)だ。年老いてはいるが、長年鍛え上げられた技量は凄まじい。

 

 

 

生き残った六人の鬼たちがこの場に集い、全員の殺気が俺の眼前に立つガビルに集中した。並の相手ならば完全に戦意喪失しているようなプレッシャーが場を支配する。

 

 

 

だが、この状況でもガビルは微塵も動揺する素振りは見せず、まるでベニマルたち六人を見定めるかのように、彼らをゆっくりと見回していた。




という訳で、オーガたちに敵意と怒り全開なガビルでした。
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