転生したら蜥蜴人族の友人と邪仙の恋人ができた件   作:乃出一樹

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お待たせしました、第13となります。

外見通りランドルにしようか、などと思ったりもしたのですがね。


アクト

「──・・・はい。これでもう大丈夫です」

 

「おぉ・・・・・・!?本当に怪我が治ってる・・・!」

 

 

 

そう言った青娥さんが俺の身体にかざしていた手を退けると、リーチリザードから受けた傷は綺麗に無くなっていた。いや、それどころか昨日治り切らなかった傷まで全て治っている。傷のあった箇所に触れながら驚く俺を見て、青娥さんはくすりと笑った。

 

 

先程、俺に名前を付けてくれると言う青娥さんにガビルと二人で驚いていた時。その前に俺の怪我を治さないと、と青娥さんが言ったことでこうして治療を受けていたのだ。最初はポーションかなにかを使うのかと思ったが、魔法で治療とはますますファンタジーさを感じる。

 

ちなみにガビルは大してダメージを受けていなかったので、必要ないと断っていた。

 

 

 

「神聖魔法『傷病治療(リカバリー)』か・・・・・・回復魔法も使えるなんて青娥さんは凄いですね」

 

「ふむ、初めて見たが神聖魔法とはとんでもないな。神を信仰する人間だけが使える魔法か・・・・・・」

 

「あら、神聖魔法はなにも人間だけに許された魔法ではありませんよ?現に、私は人間ではなく魔人ですし」

 

「なぬ!?」

 

 

 

青娥さんのその返しにガビルは声を上げて驚く。昨日、爺さんから神聖魔法とは人間だけが使える魔法、のように説明を受けたが違うのだろうか。

 

しかし、青娥さんが人間じゃなかったとは・・・・・・どう見ても人間にしか見えないが、まぁ原作でもあの見た目でどちらかと言えば妖怪寄りの存在だったしな。もしかするとこの世界では、魔人という存在は皆人間にそっくりなのかもしれない。

 

 

 

「神聖魔法を行使する為に必要なのは、神への信仰心では無く、誰かを信じる心です。信じる対象は神だろうと人だろうと、魔物だろうと構わないのです」

 

「信じる心、か・・・」

 

「勿論、信じるだけで誰もが使える訳ではありませんけれど。得手不得手などもありますし」

 

 

 

そう青娥さんは付け加えた。しかしそうなると、青娥さんが信じている誰かとは一体何者なのだろうか。

 

 

 

「・・・・・・さて、と。余計なお喋りは一旦ストップ。治療も終わったことですし、いよいよ名付けと行きましょうか」

 

「おぉっ!待ってたのである!」

 

 

 

ぱん、と手を叩き青娥さんはそこで話を切り上げる。俺が名付けされることをガビルは自分のことのように喜んでいるが、俺は少し乗り気ではなかった。

 

 

 

「・・・・・・む?どうしたのだ旅人殿。折角ネームドになれるチャンスだというのにあまり嬉しそうではないな?」

 

「ん、あぁ・・・・・・ほら、爺さんが言ってたろ。名付けをした時に消費した魔素は回復しないことがあるって。だから、俺に名前を付けたせいで青娥さんが弱くなったりしたら大変じゃないかなー、と」

 

「ふふ、気にしなくて構いませんよ。私が今まで見た限り、強者である程そのデメリットは無いようなモノですから」

 

 

 

心配する俺に、青娥さんは笑顔でそう返す。ついでにさらっと自分は強いアピールしてきた青娥さんに苦笑しつつ、俺は頷いた。

 

 

 

「まぁ・・・・・・あって困るモノじゃないし、青娥さんが良いなら是非。けど・・・・・・どうしてです?さっきの青娥さんじゃないけど、どうして出逢ったばかりの俺なんかに名前を付けてくれるんですか?」

 

 

 

俺に名前を付けても青娥さんにメリットなど無いと思うのだが。俺の疑問を受けた青娥さんは、顎に指を当て何やら考える仕草をする。が、すぐにそれを止めるとくすりと微笑んだ。

 

 

 

「ふふ・・・・・・いけませんね。旅人さんは本心を語ってくれたのですもの。それならば、多少気恥ずかしくともこちらもそれに向き合わなければ」

 

「えっ?」

 

「これでも私、受けた恩は必ず返すことにしてるんです。旅人さん、貴方が私を命懸けで助けようとしてくれたこと。心から感謝しますわ」

 

「い、いやいや。そんな大したことは・・・・・・!」

 

「そう謙遜なさらず。とにかく、これは私からのお礼です。美味しいサンドイッチもご馳走になりましたしね?」

 

 

 

そう言って、青娥さんは悪戯な笑みを浮かべる。その笑顔を見て、俺もつられて口元を緩ませた。

 

確かに、この世界で生きていくのならば力は必要だろう。魔物となってしまった以上、人間社会で生きていくのは無理だろうし。

 

 

 

「これはほんのお手伝いです。貴方がこの先、この世界で生きていけるように」

 

「───・・・分かりました。お願いします青娥さん。俺に、この世界で生きていく為の名前をください」

 

「喜んで。では、どんな名前にしましょうか・・・・・・なにか希望はあります?」

 

「希望、なぁ・・・・・・」

 

 

 

さて、名前だが。どうやら彼女は俺の希望に沿った名前にしてくれるらしい。そう問われ、俺は腕を組んで小さく唸った。

 

今の俺の姿はランドルだ。だが、いくら外見がそうだからと言って、軽々しくその名を名乗るのも少し烏滸がましい気がする。なにせ外見と名前に、中身と実力が伴っていない。自分で名乗ったら死にたくなってくる可能性すらある。ランドルに申し訳が無さすぎて。

 

 

 

「まぁ、簡単には決まりませんよね。うーん・・・・・・参考までに、元の名前を伺っても?」

 

「え?あー、元の名前は空野行人です。ちなみに、この姿はグラブルのランドルって言うんですけど」

 

「あー、グラブル!懐かし・・・・・・・・・く、ないですわ。初めて聞きましたものね」

 

「・・・・・・・・・あの。青娥さん、それは無理があるのでは」

 

「シャラップ」

 

 

 

口を滑らせ、それを無理矢理青娥さんは誤魔化そうとする。そんな青娥さんに苦笑しつつそう訊ねると、彼女にぴしゃりと一蹴された。どうやら転生者だとは頑なに認めたくないらしい。

 

ちなみにガビルだけ話に付いて来れず、少し寂しそうにしていた。

 

 

 

「とにかく名前です!えっと、ランドルでは不満ですか?」

 

「そう、ですね・・・・・・まず、ランドルは無理です。彼を汚したくないというか・・・いくら姿が同じでも、中身が違う以上その名を名乗るのには抵抗があって・・・」

 

「そ、そうですか・・・・・・それなら元々の名前は?」

 

「・・・・・・ランドルの姿で、自分の名前を名乗るのもちょっと・・・」

 

「えぇ・・・・・・」

 

「我輩気付いたのだが、ひょっとして旅人殿は割りと面倒臭いな?」

 

 

 

呆れたような、引いているような声を上げる青娥さん。ガビルまで真顔のままそんな言葉を放つので少し泣きそうになった。そんなことを言われたって仕方ないんだ、オタクとはそういう生き物なのだから。

 

 

 

「ん~・・・そうですわね・・・・・・旅人さん、ランドルは好きなのですか?」

 

「そりゃ勿論。一番の推しですよ」

 

 

 

初めて彼を見た時からずっとそうだ。SSR実装を心から願っているし・・・・・・まぁ、仮に実装したところでもうその姿を見ることは出来ないけども。

 

 

 

「それなら、彼のようになりたい・・・そう思ったことは?」

 

「え?・・・・・・・・・そう、ですね。元の世界では身体が弱かったからっていうのもあるけど、ランドルみたいに強くなりたい・・・そう思ったことなら何度か」

 

 

 

そう、確かに憧れたのだ。口が悪く、喧嘩っ早いけど。どんな相手にも自慢の脚で果敢に挑み、そして優しく熱い心を持ったあの少年に。

 

 

 

「・・・・・・けど、元の世界じゃすぐに諦めましたけどね。身体だけじゃなく、俺は心も弱かったんだ」

 

「・・・・・・・・・」

 

 

 

自嘲気味に笑い、そう吐き捨てた。そう、なれなかったのだ。どんなに憧れていても。格好良くもないし、強くもない自分には。努力しようにも、身体と心が付いていかなかった。

 

 

 

「・・・・・・それでも。何度倒れても、死にかけても。頑張って鍛え続けていたら、何か変わってたのかな・・・・・・・・・」

 

「・・・・・・・・・・・・・・・よし、決めました」

 

「えっ?」

 

「貴方の名前ですよ。今、決まりました」

 

 

 

青娥さんのその声に、俯いていた顔を上げる。今のやり取りで名前が決まったというのだろうか。きっとそんな疑問が顔に出ていたのだろう。不安に思う俺を見つめ、青娥さんは優しく微笑んだ。

 

 

 

「おぉ!それで、旅人殿に付ける名前とは・・・!?」

 

「えぇ──『アクト』、というのはどうでしょう」

 

「あく、と・・・・・・?」

 

 

 

青娥さんが口にした名を繰り返す。アクト・・・・・・良い名前だと思うが、何故この名前になったのだろうか。

 

まるで俺のその考えを呼んでいたかのように、青娥さんは穏やか笑みを浮かべたまま言葉を続けた。

 

 

 

「旅人さん。あなたは元の世界では、理想の自分になれなかった。変わりたいと思っても、身体と心が弱くて諦めてしまった」

 

「・・・・・・・・・」

 

「けれど、少なくとも私は。貴方の心が弱いとは思いません」

 

 

 

先程の俺の言葉を、目の前に立つ『強い人』は否定した。何も言えずにいる俺を真剣な眼差しで見据え、青娥さんは言葉を続ける。

 

 

 

「大切な誰かを汚すまいという強い意思。そして、目の前の誰かを助ける為に。友を想い並び立つ為に。あの瞬間、危険を省みず駆け出した貴方を私は尊敬します」

 

「うむ、その通りである!旅人殿、お主は紛れもなく強き者だ!我輩が保証するぞ!」

 

 

 

俺を真っ直ぐ見つめる青娥さんとガビル。二人の優しく暖かい言葉に、目頭がじわりと熱くなる。ふと、胸元を強く抑える。心に、火が灯ったような感覚がした。

 

 

 

「最初は真似でも良いんです。理想の自分を演じ、そしていつか、思い描いた新しい自分になれるように・・・・・・その願いを、この名前に込めました」

 

「思い描いた、新しい自分に・・・・・・」

 

 

 

青娥さんの言葉を静かに繰り返す。なんとなく、自分の掌を見つめ握り締める。少しの間の後、場の静寂を破るかのように青娥さんはくすくすと笑い出した。

 

 

 

「ふふふ・・・・・・なーんて、少し臭かったですかね。他にも理由は考えたんですよ?」

 

「ほう、それは?」

 

「旅人さんはこの世界の空に転移したのでしょう?つまり旅人さんの新たな日々はこの空・・・青空から始まった。青空の始まり、『あ』を元の名前の頭と入れ換えてアクト・・・・・・そんな感じです♪」

 

「・・・・・・はは、なんですかそれ」

 

 

 

ガビルの問いに、空を指差し青娥さんはそう答えた。無邪気な青娥さんの笑顔につられて口元が緩む。そんな俺を見て小さく微笑んだ後、青娥さんは改めて訊ねた。

 

 

 

「・・・・・・さて、では旅人さん。私からの名前・・・受け取って頂けます?」

 

「──はい、喜んで。暖かく、優しい名前をありがとう。今日・・・今この時より、俺は──ドラゴニュートの『アクト』だ」

 

 

 

瞬間、俺の身体が光を放った。突然のことに慌てていると、ガビルの歓喜の声が響く。そちらを見ると、喜ぶガビルと静かに微笑む青娥さんの姿があった。二人の反応からするに、これは名付けによって起こる現象なのだろう。

 

ほっと息を吐き落ち着くと、身体中に力が満ち満ちてくるのが分かった。未知の感覚だが不思議と恐ろしくはない。寧ろ、とても心地好かった。

 

身体が光に包まれている中、ふと空を見上げる。雲一つ無い、澄み渡る青空が広がっていた。

 

この異世界の空の下──昨日、転生したばかりではあるが。この日、俺は再び生まれ変わったのだった。

 




アクト、act。

行動、演じる、務める、など。
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