転生したら蜥蜴人族の友人と邪仙の恋人ができた件   作:乃出一樹

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お待たせしました、第131話となります。

毎日暑くて嫌になりますね。夏だから仕方ないですけれど。


ガビルVSシオン

仰向けに倒れるシオンの姿に、全員が言葉を失っていた。

 

空を見上げたまま呆然としていたシオンだが、やがてはっとした様子で我に返る。すると、勢い良く起き上がってガビルから少し距離を取った。今の動きからして特に大きなケガはして無さそうだな。一先ず安心した。

 

 

 

「くっ・・・・・・貴様、何をした!?」

 

「何をと言われても・・・・・・ただ貴様の拳を躱し、尻尾で後ろ足を払っただけである。随分と足元がお留守だったのでな」

 

 

 

怒りと戸惑いを隠せない顔で問い掛けてきたシオンにガビルはなんてことは無さそうに答えた。向かい合う二人に視線を向けたまま、俺は心の中で『大賢者』に呼び掛ける。

 

 

 

(・・・・・・なぁ『大賢者』。さっきガビルが何かのスキルを使ったって言ってたけど、その力でシオンの攻撃を避けたのか?)

 

《解。個体名ガビルが行った一連の動作中に、スキルの発動は確認出来ませんでした》

 

(それじゃ、ガビルはスキルに頼らず素の力だけでシオンをどうにかしたってこと?)

 

《その認識にはやや誤りがあります。先程、ガビルが発動したスキルの詳細は不明ですが、それとは別に常時発動しているスキルを確認し、解析を完了しました。スキルの持ち主に対する周囲からの認識を操作するスキルです》

 

 

 

俺の疑問に『大賢者』は答えてくれたが、今一ピンとこない。認識を操作すると言われてもなぁ・・・・・・

 

 

 

《・・・・・・・・・つまり、自身を弱く見せている、ということです》

 

 

 

おぉ、分かりやすい。言葉の意味を理解出来た俺は成程、と一人頷いた。

 

『大賢者』の喋り方がどこか呆れた様子だった気もするが・・・・・・それは置いておこう。

 

 

 

「・・・・・・いやはや、敵の力量を見誤るとは。儂も耄碌したかのう」

 

「ハクロウ・・・今のはまぐれではないのですか?シオンがあんな簡単に・・・」

 

 

 

苦々しい顔で呟くハクロウにシュナが不安そうに訊ねる。するとハクロウは静かに首を横に振ってからこう答えた。

 

 

 

「リムル様の命令に従い、シオンが加減をしていたというのもありますが・・・・・・こちらの油断を突いた際の動きと一瞬の闘気の扱い。それを見るに技量だけであれば、恐らく奴はシオン以上でしょう」

 

 

 

ハクロウの推察にシュナだけでなく、近くにいたクロベエたちも驚く。いや、驚いたのは俺もだけどね。あいつ、そんなに凄いのか。

 

 

 

「認めたくはないが・・・・・・あのガビルという魔人、中々できる。ただ、力の隠し方が妙に巧すぎる気もするがのう・・・」

 

 

 

それを聞いたシュナは口を閉ざし、心配そうにシオンの方に視線を向ける。

 

どうやらハクロウもなんとなくではあるがガビルに違和感を覚えたらしい。俺と違って『大賢者』もいないのに凄いな。歴然の剣士の勘が働いたのだろうか。

 

 

 

「どうした、大鬼族(オーガ)の女。さっさとかかって来るが良い」

 

「ぐっ、おのれ・・・・・・!」

 

 

 

ガビルに槍の切っ先を向けられたシオンは相手を警戒しているのか一歩後退った。どうやらガビルはかなりの実力者のようだし、先程とは事情が違うが、やっぱりシオンを止めた方がいいかもしれない。

 

 

 

「シオン、これを使うだよ!」

 

 

 

俺がそう思案してると、クロベエが先程からずっと担いでいた布に巻かれた巨大な何かをシオンへ投げた。それを受け取ったシオンは一瞬だけクロベエを見た後、すぐに手元へ視線を戻し勢い良く布を剥ぎ取る。

 

すると、シオンの背丈程もある片刃の大剣が姿を現した。

 

 

 

「そいつは剛力丸!シオン専用の武器だよ!会心の出来ってヤツだべ!」

 

 

 

シオンにそう言ってクロベエは得意気に口角を上げた。

 

 

 

このクロベエも、ベニマルたちと同様に俺から名前を貰ったことで『大鬼族(オーガ)』から『鬼人族(キジン)』へと進化を果たしている。しかし、ベニマルたちとは違い彼はそこまで魔素量は増えていない。

 

代わりに、『研究者』というユニークスキルをクロベエは獲得した。このスキルは『万物解析』、『空間収納』、『物質変換』という三つの権能を有している。

 

これらの力を使うことで亜空間に収納した物質を解析し、弄ることが可能。つまり限度はあるが、普通の素材を上質な素材へと変換出来るのだ。シオンの剣もこのスキルを活用し作ったのだろう。

 

クロベエは元々、里では鍛冶師だったらしい。ベニマルたちのように戦士では無かったから、進化によって得た力も戦闘能力ではなく生産能力に特化したのだろうか。

 

 

 

「あれ程の武器を大鬼族(オーガ)を打ったというのか・・・?」

 

「ありがとうございますクロベエ!・・・・・・待たせたな蜥蜴。望み通り・・・」

 

 

 

剛力丸の性能が分かるのか、ガビルはクロベエと剛力丸を交互に見つめ、信じられないと言った表情を浮かべる。一方シオンは余裕を取り戻したようで、剛力丸を何度か振るい具合を確かめると、ガビルを見据えにやりと口元をつり上げた。

 

 

 

「───こちらから行くぞッ!」

 

 

 

そう叫んだシオンは大きく踏み込むと、剣を上段に構えガビル目掛け振り下ろそうとする。ガビルは最初その一撃を槍で受け止めようとしていたが、直前で何かを察したのか慌てて横に飛んでそれを躱す。

 

 

 

「ぬぅっ・・・・・・!」

 

 

 

直前までガビルの立っていた場所にシオンの一撃が叩き込まれた。ズガンッ!と凄まじい破壊音が鳴り響き、周囲に砂煙が立ち込める。その威力を目にしたガビルは驚いた様子で小さく唸った。

 

 

 

「ほう、よく躱したな。あのまま受けようとするのならその槍をへし折っていたところだ」

 

「野蛮な大鬼族(オーガ)らしい馬鹿力であるな・・・・・・ここでやり合うのは不味いか。付いて来い!」

 

「逃がすか!」

 

 

 

攻撃の破壊跡を見たガビルは少し逡巡して街の外へと飛んで行く。シオンも彼の後を追って走り出し、俺たちだけがその場に立ち尽くしていた。

 

 

 

「・・・・・・リムル様、どうするんすか?」

 

「どうするって言われても・・・」

 

 

 

困惑した顔のゴブタにそう訊ねられ俺は頭を掻いた。まさかこんなことになるなんてなぁ。しかし、ガビルがあんなに強いとは。

 

 

 

「・・・・・・・・・リムル様。一つ、思い出したことが」

 

 

 

俺が頭を悩ませていると、ソウエイが声を掛けてきた。何だろうと思いつつそちらに振り向き、続きを促した。

 

 

 

「以前・・・・・・友から聞いたのですが、シス湖には強力な上位魔人がいるそうです。奴が恐らくそうではないでしょうか」

 

「友・・・・・・あぁ。ここへ来る前に出逢ったという、白い米をくれた男か?」

 

「えっ!?」

 

 

 

ベニマルのその言葉に俺は思わず声を上げてしまう。俺の反応に驚いたのか、ソウエイとベニマルは目を丸くした。

 

いかんいかん。いくら白米が恋しいとは言え、今はそれよりも目先の問題を何とかしなければ。

 

 

 

「な、なんでもない!それで・・・他にも何か情報はあるか?具体的にどのくらいの強さだとか・・・・・・」

 

「そうですね・・・・・・その友の名はアクトと言うのですが」

 

「えっ」

 

「シス湖にいるという上位魔人は自分と同じくらいの力を持っていると話していました。最も、アクトの実力は不明なのですが・・・」

 

「えっ!?」

 

 

 

連続で驚く俺にソウエイたちが訝しげな視線を向けてくる。とりあえず、俺は深く息を吐いた。

 

・・・・・・落ち着け、まだだ。まだ、名前が同じだけの別人って可能性もある。

 

 

 

「・・・・・・なぁソウエイ。そのアクトって奴、長いピンク色の髪を後ろで束ねたイケメンじゃなかった?」

 

「その通りです。彼を御存知なのですか?」

 

 

 

はい確定しました。間違いなくあのアクトだよ。世間の狭さを感じて、俺は思わず苦笑した。

 

しかし、だとするなら少し不味いかもしれない。

 

ドワルゴンでアクトと初めて会った時、実は『大賢者』が彼を解析していたのだ。その時のアクトは妖気を抑えていたし、今の俺はイフリートを吸収し、シズさんからスキルを受け継ぎあの時よりも強くなっている。なので、現時点でのアクトとの正確な力量差は分からないのだが・・・・・・

 

 

 

「あのな、ソウエイ。実はそのアクトって奴、俺の友達なんだけど・・・・・・」

 

「リムル様の友・・・!そうだったのですか」

 

「アクトは、俺と同じくらい強いんだよ」

 

「は・・・・・・!?」

 

 

 

俺の発言に、今度はソウエイたちが連続で驚く番となった。

 

まぁ、あくまで俺の予想だけどね。少なくとも、ドワルゴンでの時点ではアクトの方が実力は上だったらしい。

 

 

 

「そんな馬鹿な・・・!?リムル様と同格の相手がいるなんて・・・!」

 

「確かに信じがたいことですが・・・・・・もしそうだとしたら、シオン殿が危険なのでは・・・?」

 

 

 

ソウエイとベニマルが言葉を失う中、いつの間にか近くへやって来ていたシュナがそう呟いた。他の皆にも動揺が広がる中、リグルドが俺に問い掛けてくる。

 

リグルドに俺が頷いたのとほぼ同時、森の中からドンッ!と、大きな音が響いた。きっとガビルとシオンの戦いによるものだろう。

 

 

 

「・・・・・・とりあえず、俺たちも追い掛けよう」

 

 

 

リグルドの言う通り、本当にガビルがアクトと同じくらい強いのだとしたら、シオンは殺されてしまう。まあ、それならシオンは瞬殺されてただろうし、流石にないだろうけど。

 

それに、俺はガビルが悪い奴だとは思えない・・・・・・いや、寧ろ良い奴だと思っている。

 

もしガビルが大鬼族(オーガ)への憎悪しか持ち合わせていない復讐者、或いは正義の味方気取りな男であれば、問答などせずシオンたち皆を殺そうとしていただろうし、皆を仲間にしている俺に対しあのように穏やかな対応はしない筈だ。

 

それに、わざわざ戦う場所を街中から外へと移したのだって・・・・・・

 

 

 

「リムル様?」

 

「っと・・・・・・悪い。早く行こうか」

 

 

 

つい考え込んでしまったか。こちらの顔を覗き込むシュナに一言謝り、俺はベニマルたち元大鬼族(オーガ)の五人、ランガとゴブタ、彼等と共に今度こそガビルとシオンの後を追った。

 

 

 

二人を追い掛け、俺たちは街から少し離れた森の中までやってきた。周囲を見ると木々が薙ぎ倒され、地面が抉れている。この破壊状況を見るに、かなり激しくやり合っているらしい。

 

その時、すぐ近くで金属がぶつかり合うような音が数回響いた。そこに二人がいる筈だと、俺たちは急いで音のする方へ向かう。

 

程なくして俺たちはシオンを見つけた。しかし、無事とは言い難い。自力で立ってはいるが、呼吸は荒く身体は傷だらけ。その横顔を見るに、相当苦戦しているようだった。

 

 

 

「はぁ・・・はぁ・・・・・・!」

 

「見つけた!シオン、大丈夫──・・・」

 

「離れよリムル殿!」

 

 

 

俺はシオンに呼び掛けようとしたが、ガビルのその声に遮られた。声のした方へ振り向くと、そこに立っていたガビルが一気に闘気を高め、手にする槍へそれを集中させている。次の瞬間、ガビルは槍に込めた闘気をシオン目掛け一気に撃ち出した。

 

 

 

超龍槍撃(ドラゴンクラッシュ)ッ!!!」

 

 

 

闘気によって形成された龍がシオンへと真っ直ぐ飛んで行く。かなりの速さで迫るそれを回避することは難しいと判断したのか、シオンは剣を盾のようにして防御の姿勢を取った。

 

直後、ガビルのアーツがシオンの剣に炸裂した。剣のお陰で直撃こそ防いだものの、その凄まじい威力にシオンは大きく吹き飛ばされる。

 

 

 

「がはっ・・・・・・!」

 

「シオン!?」

 

 

 

吹き飛ばされたシオンはその勢いのまま後方の木々に激突し、それらを薙ぎ倒していく。その光景を目にしたシュナは悲鳴にも近い声を上げた。

 

 

 

「ひぇええ・・・!あの人、本当に滅茶苦茶強いじゃないっすか。シオンさんが押されてるっす・・・!」

 

「うぅむ・・・・・・単純な力だけならシオンの方が上じゃろうが、やはり技量は奴が上回るか。今のアーツといい、敵ながら見事なものよ」

 

 

 

ガビルの強さにゴブタが慄く中、ハクロウはその隣で髭を撫でながら冷静にガビルを観察していた。確かに、ガビルはいくらかダメージを負っているように見えるが、シオンのように呼吸は乱れていない。それに大分余裕もありそうだ。

 

 

 

「・・・・・・勝負ありである。リムル殿の前だ、命までは取らずにおいてやろう」

 

 

 

やがて、勢いを失ったシオンはごろごろと地面を転がりそのまま倒れた。それを見たガビルはそう宣言し、俺たちに振り返った。

 

 

 

「どうする大鬼族(オーガ)共。大人しくリムル殿の元から去ると言うのであれば、今回だけは見逃してやろう。それとも、貴様たちもあの愚かな女のように叩きのめされたいか?」

 

 

 

目付きを鋭くし、槍をベニマルたちに向けながらガビルはそう言った。未だ収まらない敵意にどうするべきかとベニマルは困惑した様子でこちらを見つめる。そんなベニマルに俺は無言で頷いた後、ガビルに一方近付いた。

 

 

 

「あー・・・・・・待ってくれガビル。シオンのことは謝る。だから一旦落ち着いて話を──」

 

 

 

 

 

「────ッ、はぁああああああああああああああああっ!!!」

 

 

 

ガビルに話し合いを持ち掛けようとしたその時だった。

 

倒れていたシオンが立ち上がると同時に咆哮を上げ妖気を高め始めたのだ。そのままシオンはガビルの方にゆっくりと歩き出し、両手から集中させた魔力を胸の前で圧縮して球状にしていく。

 

 

 

「ほう、まだ立ち上がれるか。しぶとさだけは大したものである」

 

 

 

僅かに驚いた素振りをしてガビルがシオンへ向き直る。槍を構えシオンを警戒するガビルだが、彼女の様子がおかしいことに気付き怪訝そうに眉を顰めた。

 

 

 

「リムル様の・・・・・・リムル様の前で、こんな無様な姿を晒すなんて・・・!ゆ、許さん・・・・・・」

 

 

 

シオンは俯いたままぶつぶつと呟いていたが、突然ぴたりと足を止めた。

 

次の瞬間、胸の前で溜めていた魔力球が一気に膨れ上がった。それはあっという間にシオンが完全に隠れる程のサイズになる。

 

 

 

「絶対に許さんぞ蜥蜴め!この一撃で消し飛ばしてくれる!」

 

「な、なんだあれ!?極大魔力弾!?ちょっと待てシオン!そんなのが炸裂したらガビルだけじゃなくここら一帯が吹っ飛ぶぞ!」

 

「ふ、ふふふふ・・・・・・あはははははははっ!」

 

「あ、こりゃ聞いてないわ」

 

 

 

『魔力感知』で調べたところ、あの魔力弾には凄まじい威力が秘められていることが分かった。あんなのが直撃したら流石のガビルもひとたまりもないだろう。慌てた俺はシオンを制止しようとしたが、狂気的に笑う彼女の耳には届いていないらしい。

 

 

 

「ふん、どこまでも愚かな女よ。仮にも主と認めた者の言葉が聞こえんとは。そもそも、だ。確かに破壊力だけはあるようだが、そんな苦し紛れの攻撃が我輩に当たるとでも・・・・・・?」

 

 

 

魔力弾で隠れているので姿は見えていないだろうが、俺の言葉が聞こえていないシオンを目の当たりにし、ガビルは嘲るようにして言った。確かに、少しだが二人の間には距離があるし、空も飛べるガビルならあの極大魔力弾も簡単に避けられるだろう。

 

まぁ、俺ならあの魔力弾を受け止めてどうにかすることも出来るだろうけど手間だしな。俺たちは位置的に当たることはまず無いし、とりあえずシオンの魔力弾はこのままどこかに真っ直ぐ飛ばして・・・・・・

 

 

 

・・・・・・・・・・・・ん?待てよ、シオンの向いてる方向って・・・・・・

 

 

 

「・・・・・・っ、不味い!シオン、やめ──!」

 

「いかん!やめるのだ大鬼族(オーガ)!そこから魔力弾を放っては・・・・・・!」

 

 

 

呑気にしていた俺だが、あることに気付き慌ててシオンに呼び掛けた。それとほぼ同時、ガビルも焦った様子でシオンに叫ぶ。恐らく、俺と同じことに気付いたのだろう。

 

しかし、シオンは何も反応しない。ガビルへの怒りと魔力弾の生成に意識を割いてしまっているのだ。

 

 

 

「喰らえェッ!」

 

 

 

そうこうしている内に、シオンは魔力弾を放つ態勢に入ってしまう。次の瞬間には発射されそうな魔力弾を見て他の皆にも緊張が走る。爆発に備え、各々が妖気を高めているのを感じた。

 

仕方ない、ここは俺が何とかするしかないか。『捕食者』なら魔力弾を飲み込めると思うし、最悪爆発したとしても他のスキルも使えば被害を抑えることが出来る筈だ。

 

 

 

そう覚悟を決め、俺が飛び出そうとした時。

 

 

 

「・・・・・・っ、うぉおおおおおおおおッ!」

 

 

 

なんと、俺より先にガビルが魔力弾へと突撃していったのだ。いつの間にか槍を手放していたガビルは闘気を全開にして身に纏い、真正面から魔力弾を両手で受け止める。ガビルの放つ闘気とシオンの魔力弾がぶつかり合い、バチバチとスパーク音が辺りに鳴り響いた。

 

 

 

「ガビル!?お前何を・・・・・・」

 

「リムル殿!今すぐこの場を離れるのだ!この魔力弾はいつ破裂してもおかしくはない!ここは我輩がなんとか抑える!だから早く───」

 

 

 

顔だけこちらに向けて、必死な表情でガビルは叫ぶ。彼のその姿を目にした俺は思わず立ち止まって目を丸くしてしまった。

 

大鬼族(オーガ)であるベニマルたちは違うんだろうけど、初対面である俺やゴブタたちを、ガビルは命懸けで守ろうとしてくれている。

 

いや、俺たちだけじゃない。俺の勘が正しければ、ガビルはきっと──・・・・・・

 

 

 

《告。魔力弾が爆発するまであと三秒です》

 

「って、感心してる場合じゃなーい!」

 

 

 

『大賢者』からの声に俺は慌てて『思考加速』を発動させた。流石にこの残り時間では『捕食者』で魔力弾を取り込むのは厳しいか。あれが爆発するまでもう三秒もないが・・・・・・やれるだけのことはやるさ。

 

覚悟を決めた俺は全速力でガビルの元へ移動しながら、エクストラスキル『多重結界』を発動する。まずは大雑把にガビルと魔力弾の周囲に結界を展開した。これでベニマルたちや辺り一帯は安全・・・な筈。

 

続いてシオンを囲むように『多重結界』を発動。これでシオンも安全だ。残るは魔力弾に接触しているガビルだが、うまくガビルだけを守るように結界を張るのが難しい。もう少し時間があれば色々と調整し彼だけを守れるような結界を作れるだろうが、もう時間がない。

 

舌打ちして、これ以上の結界を作るのを諦めた俺はガビルの傍へと向かう。そして彼の肩に手が届いた次の瞬間、魔力弾が大爆発を起こした。

 

 

 

「リムル様ッ!?」

 

 

 

結界の外から焦った声色でベニマルが俺を呼ぶ。結界内に充満した爆煙のせいで姿が見えなくなり心配させてしまったようだ。俺は結界を解除すると背中に翼を生やし強く羽ばたかせる。それによって風を巻き起こして煙を吹き飛ばした。

 

 

 

「ふう・・・・・・心配掛けたな、俺なら大丈夫だぞ」

 

 

 

煙が晴れ、姿を現した俺の姿を確認したベニマルたちは安堵の表情を浮かべた。俺は彼等に軽く手を上げ答えると、隣に視線を向ける。そこには、俺の肩に身体を預けるようにして意識を失っているガビルの姿があった。

 

シオンの魔力弾が爆発した瞬間、俺は『捕食者』でその爆炎と衝撃を吸収したのである。とは言っても、『捕食者』は至近距離かつ対象に触れていないと吸収出来ない。時間がなかったのもあり、少しダメージを受けてしまった。

 

『捕食者』で大分威力を削いだとは言え、ガビルは爆発の直撃を受けかなりのダメージを負ったらしい。全身ボロボロで特に両手の損傷は酷いが、『大賢者』の解析によれば命に別状は無いらしい。フルポーションを使えば身体の傷も体力も全回復するだろう。

 

 

 

「・・・・・・・・・あ、あれ?リムル様?」

 

「シオン!愚か者め!」

 

 

 

どうやらシオンも少し落ち着いたらしい。状況を理解出来ずにいるシオンがぽかんとしていると、ベニマルの隣に立つハクロウが彼女を叱り付けた。困惑するシオンにハクロウはそのままこう続ける。

 

 

 

「後先考えずあのような技を使いおって・・・・・・あの蜥蜴が・・・いや、ガビルがいなければどうなっていたことか」

 

「な、何を言ってるんです?ハクロウ」

 

「お主が魔力弾を放り投げた先・・・ガビルの背後に何があったか分かるか?・・・・・・リムル様が造り上げた街じゃよ」

 

 

 

そう。シオンの正面方向には俺たちの街があったのだ。もし誰にも受け止められず途中で爆発もせず飛んで行ってしまったら、街の一部が破壊されていただろう。最悪の場合、街中で爆発し誰かが犠牲になっていたかもしれない。

 

ハクロウの言葉でそれを理解したのだろう、シオンの顔がさーっと青ざめる。かたかたと震え出し目尻に涙まで溜め、慌てて俺に頭を下げた。

 

 

 

「もっ・・・もももも、申し訳ありませんリムル様!私、なんてことを・・・・・・っ!」

 

「あー、気にすんなって。ガビルが避けてたとしても俺が何とかしてたからさ。っていうか、こんなことになったのは俺のせいでもあるし」

 

 

 

俺はガビルを担いだままシオンに歩み寄ると、その頭を優しく撫でる。そのまま慰めてあげるとシオンは鼻をすすりながら顔を上げた。なんか・・・こうして見るとでっかい犬みたいだな、シオンって。

 

 

 

「さて・・・・・・色々あったけどとりあえず街に戻るか。リグルドたちも心配してるだろうし」

 

「リムル様。その・・・・・・使者殿はどうなさりますか?」

 

「ん?勿論治療するよ。それで、今度こそちゃんと話し合う。皆も、こいつが悪い奴じゃないってのは分かっただろ?」

 

 

 

シュナに訊ねられた俺はそう返すとベニマルたちを見回す。全員、先程のガビルの姿を見たのもあり、反対する者は誰もいなかった。まぁ、ベニマルとソウエイは割りと冷静だったし、ゴブタとランガに関しては何も被害を被っていなかったので文句を言うことは無いだろうと確信していたけど。

 

 

 

「それじゃ、帰るとするか」

 

 

 

そう言いながら俺はフルポーションを二つ取り出し、一つをシオンへ手渡す。そして残った一つをガビルに掛けながら、皆と共に街へと戻るのだった。




次回からアクトくんたちサイドに話が戻ります。
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