転生したら蜥蜴人族の友人と邪仙の恋人ができた件   作:乃出一樹

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お待たせしました、第132話となります。

今回からまたアクトたちサイドの話です。


邪悪なる道化師

戦いが終わり、辺りは静まり返っていた。

 

俺は疲労感から大きく息を吐いた後、共に戦ってくれた仲間・・・・・・ヤムザへ視線を向ける。目を伏せている上にマスクで口元が覆われている為に表情が分かり辛いが、今の彼はどこか嬉しそうに見えた。勘違いかもしれないけれど、そんなヤムザの姿に俺は口元を緩ませる。

 

 

 

「ヤムザっ!」

 

「・・・・・・・・・なんだ」

 

 

 

緩んだ表情のまま俺はヤムザに小走りで駆け寄る。俺に呼び掛けられたヤムザは少し間を置いてから顔を上げた。

 

 

 

「やったな!俺たちの勝ちだ!」

 

「当然だろう、この俺が手を貸してやったのだからな。感謝しろよ」

 

「うん、ありがとう!」

 

「・・・・・・・・・っ・・・・・・」

 

 

 

強気な態度でそういうヤムザだが、それは事実ではある。なによりあれだけの強敵に勝利出来たことが嬉しくて、俺は彼のそんな態度を気にすることなく素直な気持ちで感謝を告げた。

 

・・・・・・何故か目を逸らされてしまったけれど、流石に浮かれ過ぎてたかな?

 

 

 

「アクト!ヤムザ!」

 

「おおっ、二人とも無事だったか!」

 

 

 

ヤムザの反応に首を傾げていると、フロアの入口側からアルヴァロとクロコダインの声が響いた。そちらに振り向くと、二人がこちらに駆け寄ってくるところだった。俺は軽く手を挙げて二人を迎える。

 

 

 

「流石だな、あれ程強力な蟲型魔人(インセクター)を倒してしまうとは」

 

「ヤムザのお陰だよ。俺一人じゃ絶対勝てなかった」

 

「ヤムザの・・・・・・そうか」

 

 

 

アルヴァロは俺の返答を聞くと一瞬意外そうに目を丸くして、それからヤムザをちらりと見て微笑んだ。これまでアルヴァロと何度か話す中で、ヤムザに対して悪印象を持っているように感じていたが・・・・・・少しは見直してくれたのだろうか。

 

 

 

「おいアルヴァロ。お喋りする前に異界の裂け目をとっとと消してくれ。今回の依頼は蟲型魔人(インセクター)の討伐ではなくそっちだろ」

 

「悪いが、私には出来ない。空間に干渉する魔法は非常に難しくてな・・・・・・レイン殿か青娥殿が来るまで待つしかない」

 

「チッ、使えん奴だ」

 

 

 

やっぱり無理かもしれない。ヤムザから舌打ちされ、アルヴァロが眉間に皺を寄せたのを見て俺はそう思った。

 

 

 

「・・・・・・むっ!?皆、見ろ!」

 

 

 

ヤムザに軽く注意しようとした時だった。突然クロコダインが声を上げてある一点を指差す。そちらを見ると、なんと死んだと思っていたスコルパイドが動いていたのだ。

 

 

 

「ヒ、ヒィイイイ・・・・・・!」

 

「あの蟲め、まだ息があったか」

 

 

 

面倒臭そうに呟いてヤムザは再び剣を構える。俺たちもすぐ身構えたが、そこまで警戒しなくても良いかもしれない。

 

俺とヤムザの攻撃によってスコルパイドはもうボロボロ。『暴走蟲』とかいうスキルの効果は切れ、甲殻は元の黒色に戻り、まともに立つことも出来ず地を這っている有り様だ。

 

 

 

「恐らく異界の裂け目に飛び込み、精神世界に逃げようとしているのだろう」

 

 

 

アルヴァロの言う通り、スコルパイドは異界の裂け目のある方へ移動している。まぁ、この状況から逃げられる訳ないのだが。

 

 

 

「下がっていろアクト。奴にはこの俺がトドメを刺してやる」

 

「分かった、ヤムザに任せる。けど、油断するなよ?」

 

「はっ、笑わせるな!あんな無様な蟲ケラなんぞ、どれだけ油断したって────・・・ッ!?」

 

 

 

俺の忠告を鼻で笑ったヤムザだが、その言葉を最後まで言い切ることは出来なかった。

 

突如、フロア全体を重苦しい威圧感が支配したのだ。ヤムザだけでなく俺も身体が硬直し、ぶわっと嫌な汗が噴き出すのを感じた。

 

 

 

「これ、は・・・・・・っ・・・!?」

 

「はぁーっ・・・!はぁーっ・・・っ!な、なんという妖気・・・!」

 

 

 

アルヴァロとクロコダインもそれに気付いている。だが、やはりと言うべきか。二人もその威圧感に気圧され、その場から動けずにいた。

 

クロコダインが言ったように、この威圧感の正体は何者かが発する妖気だ。フロアの入口付近に突然現れた何者かが放つそれは、これまで味わったことのないような悍ましさを感じさせ、さらに魔素量も桁違いな高さであることを俺たちに伝えている。

 

 

 

その時。全員が身動き出来ずにいる中で、俺はあることに気付いた。

 

・・・・・・似ている。あの時とは全く規模というか、大きさが違うけれど、封印の洞窟に現れた反応と。

 

 

 

 

 

「まさか──・・・!?」

 

 

 

気力を振り絞って身体を動かし、妖気の発生源がある方へ振り返る。

 

 

 

その視線の先に、奴が立っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「────悲しいなぁ」

 

 

 

一人の男がいた。

 

毒々しい色の、まるで道化師のような衣装に身を包んだ男だ。顔は白く染められ、両目は額から瞼の下にかけて赤いラインが入っている。

 

 

 

「悲しい・・・・・・悲しいなぁ・・・・・・」

 

 

 

道化師はそう呟きながら、こちらに向けゆっくりと歩き出した。紡がれる言葉とは違って、その口は緩く弧を描いている。だが、見るだけで背筋が凍り付きそうな、得体の知れない不気味さを感じる表情だった。

 

 

 

・・・・・・知っている。あの顔を、あの人物を、俺はよく知っている。ゲームの中でしか見たことはなかったけれど、見間違える筈もない。

 

 

 

 

 

「─────ドルマゲス・・・!?」

 

「・・・・・・・・・・・・・・・」

 

 

 

震える声で、俺はその名を口にした。すると、あまり大きな声ではなかった筈だが道化師の耳に届いたらしく、奴は興味深そうな視線を俺に向ける。そしてこちらと少し距離を取ったまま足を止めた。

 

 

 

ドルマゲス──ドラクエ8に登場する敵キャラクターの一人。

 

元々はごく普通の青年だったドルマゲスは、七賢者の末裔であるマスター・ライラスの元で魔法の修行をしていた。しかし、中々成果を挙げることが出来ず、人々から馬鹿にされていた。

 

そしてある日、ライラスの持つ魔導書の文献を盗み読みしているところをライラスに見咎められ厳しい言葉をぶつけられてしまう。それをきっかけにドルマゲスはライラスの元から逃亡してしまうのだ。

 

 

 

ドルマゲスが向かった先は、ドラクエ8の主人公が近衛兵として仕えているトロデーン城。文献を盗み読みした際、トロデーン城には代々封じられてきた伝説の杖があることを知ったドルマゲスは、ライラスや自分を馬鹿にしてきた人々に復讐するために道化師としてトロデーン城に赴いた。

 

トロデーン城を訪れたドルマゲスは唯一の特技とも言える手品をトロデとミーティアに披露し、二人を上手く丸め込むことに成功。その後、伝説の杖を奪うことに成功したドルマゲスは杖の力を使い、呪いによって城中の人々を茨に、トロデを魔物に、ミーティア姫を馬の姿に変えてしまったのだ。

 

この時、何故か一人だけ呪いをはね除けた主人公が、変わり果てたトロデとミーティアを元に戻す為にドルマゲスを追う冒険の旅に出ることとなるのだが・・・・・・つまり、ドルマゲスはドラクエ8における全ての元凶だ。更にラスボスでこそないが、長きに渡って物語に関わる為、宿敵とも言える存在だろう。

 

 

 

しかし、ドルマゲスを倒してもトロデとミーティア姫に掛けられた呪いは解けなかった。実はドルマゲスが奪った杖にはある秘密が隠されており──・・・・・・って、今はそんなこと考えている場合じゃない。

 

 

 

「ドルマゲス・・・・・・?奴を知っているのかアクト」

 

「い、いや・・・・・・何て言うか、その・・・」

 

「ド・・・・・・ドルマゲス様ァ~~~・・・!お助けくだサイィイイ・・・!」

 

 

 

アルヴァロの問いになんと答えれば良いか悩んでいると、スコルパイドが情けない声を上げた。様付けで呼んだ辺り、ドルマゲスが奴に名付けをした可能性が高い。が、ドルマゲスはスコルパイドを一瞥するとすぐに俺たちへ視線を戻した。

 

 

 

「・・・・・・・・・成程。その名前を知っているということは、同類のようですね」

 

「同類・・・・・・」

 

 

 

最初、奴が何を言っているのか分からず俺はそう繰り返したが、一瞬遅れてその言葉の意味を理解した。

 

恐らく、ドルマゲスと呼ばれたあいつは俺と同じ異世界人なのだ。ドラクエのドルマゲスと同じ姿で同じ名前の存在が異世界にいるだなんて偶然、有り得ないだろうし。きっと俺や青娥さんと同じように、こちらに来た時に何らかの理由で姿が変化したのだろう。ただ、あの杖を持っていないのが気になるが・・・・・・

 

 

 

「・・・・・・ドルマゲス、とか言ったな。貴様は一体何者だ・・・!」

 

 

 

俺がドルマゲスについて考えていると、ヤムザがそう問い掛けながら奴へ剣の切っ先を向けた。冷や汗を浮かべ、どこか呼吸は荒いが、奴の威圧感に屈してはいないらしい。ヤムザの行動を見て我に返ったのか、アルヴァロとクロコダインもドルマゲスへ向き直って身構えた。

 

 

 

「何者・・・・・・と、申されましても。御覧の通り、しがない道化師に御座います」

 

 

 

ヤムザの鋭い視線に全く動じることなく、ドルマゲスはそう答えると共にまるでマジシャンがするような仰々しいお辞儀をした。馬鹿にされたと感じたのか、ヤムザの目付きがさらに鋭くなる。そこで俺はあることを思い出し、それについて訊ねた。

 

 

 

「ドルマゲス・・・・・・青娥さんたちはどうした?」

 

「青娥・・・・・・?はて、どちら様でしょう」

 

 

 

お辞儀を止めたドルマゲスは笑みを浮かべたまま首を傾げた。とぼけているのか、本当に知らないのか・・・・・・とりあえず、まだ襲ってくる気配はしない。もう少し会話は出来そうか。

 

 

 

「さっき・・・・・・ここがダンジョンに変わる前、お前が仕掛けた攻撃を防いだ女の人たちだよ」

 

「あぁ!あの方たちですか。申し訳ありませんが、どちらにいらっしゃるか私には分かりかねます」

 

 

 

俺の言葉を聞いたドルマゲスはわざとらしく思い出したとでも言いそうな表情と仕草をする。しかし、人を小馬鹿にするように肩を竦めるそいつからは、二人の安否を知ることは出来なかった。

 

 

 

一瞬、嫌な想像が頭に浮かんだが・・・・・・大丈夫。青娥さんとレインさんは強い。きっと、目の前にいるこいつより。だから、大丈夫な筈だ。

 

 

 

「へらへらと・・・・・・!調子に乗るなよ、胡散臭い道化師野郎!そもそも貴様、一体何が目的だ!?こんなところまで俺たちを追って来やがって!」

 

 

 

俺が心の中で自分に言い聞かせていると、ヤムザが苛立ちを隠さずにドルマゲスへ叫んだ。奴の威圧感や魔素量に慣れてきたのか、段々と攻撃的・・・というか、普段のヤムザになってきている。

 

 

 

「目的、ですか?そうですねぇ・・・・・・このようなダンジョンにも恐れず挑み、そして攻略してしまう勇者たちに一目御会いしたく・・・・・・なんちゃって」

 

「そのダンジョンを造ったのはお前だろう?アクトや青娥殿から話は聞いている。ユーラザニアでも悪さをしていたらしいじゃないか」

 

「それから、封印の洞窟にもいたよな。ユーラザニアのダンジョンにいた腐肉竜(ドラゴンゾンビ)と同じ、妙な嵐蛇を送り込んできたこと、覚えてるぜ。それに気付いたのは青娥さんだけどな」

 

 

 

やはりマトモな返答をしなかったドルマゲスにヤムザは更に苛立ちを強める。そんな彼をアルヴァロは片手で制し、緊張した面持ちで話し掛けた。彼に続いて俺もそう告げると、ドルマゲスは僅かに目を細める。

 

 

 

「・・・・・・おやおや。そこまでバレていたとは・・・少し邪仙を侮っていたようです」

 

 

 

顎に手を当て、ドルマゲスはくつくつと不気味に笑う。今の台詞からして、青娥さんのことを知っていたらしい。さっきはすっとぼけていたようだ。

 

 

 

「・・・・・・もう一度聞くぞ道化師。貴様の目的はなんだ」

 

「ふふふふ・・・・・・はてさて。当ててみては如何です?」

 

「貴様のクイズに付き合うつもりなど、ないッ!」

 

 

 

今度もドルマゲスは質問に答えず、薄く笑ってはぐらかした。するとヤムザは怒りを帯びた声色で叫ぶと同時に、『水氷大魔嵐(アイスブリザード)』をドルマゲスへ放った。いきなりの攻撃にぎょっとした俺は慌ててヤムザに詰め寄る。

 

 

 

「ちょっ、ヤムザ!?こっちから仕掛けなくても・・・!」

 

「なに甘いことを言ってやがる!くだらんお喋りをする為だけに、奴がこんなところまで来たとでも思っているのか!?やらなければこっちが殺されるぞ!」

 

「悪いがアクト、今回ばかりは私もヤムザと同意見だ。奴の目的は不明だが、我々に向けるあの威圧感・・・・・・話し合いでどうにかできそうもない」

 

 

 

ヤムザに怒鳴られ、俺は思わず言葉を失う。そんな俺にアルヴァロは、ドルマゲスを見据えたまま諭すように言った。

 

 

 

・・・・・・・・・二人の言う通りだな。そもそも悪意の無い相手ならば、洞窟に入った俺たちに奇襲などしてこない。俺の認識が甘かった。

 

俺が自身の危機感の無さを反省していた時。ドルマゲスを飲み込んだ白銀の渦がいきなりぶわっと霧散した。

 

 

 

「ふぅ・・・・・・残念です。嫌われてしまいましたか」

 

 

 

そこから再び姿を見せたドルマゲスは無傷だった。微笑を崩すことなく、やれやれとでも言いたげに首を横に振っている。その姿を見たヤムザは目を見開いて驚愕していた。

 

 

 

「馬鹿な・・・俺の『水氷大魔嵐(アイスブリザード)』が直撃したんだぞ・・・!?」

 

 

 

信じられないといった様子でヤムザは呟く。ヤムザはスコルパイドとの戦いでかなり消耗しており、今撃った魔法は本来の威力を出せてはいない。

 

しかし、それでも上位魔人が放つ魔法だ。それなりの威力はある。だと言うのにドルマゲスはそれを正面から、しかも防御もせずに受けたというのに傷一つ付いていないのだ。何かスキルを使ったのか、蟲魔族(インセクター)と同じく魔法攻撃に耐性があるのか、単純にヤムザを圧倒的に上回る魔素量の持ち主なのか・・・・・・俺たちにその理由を知る術は無い。

 

 

 

「ぐ・・・・・・ぬぉおおおおおおおおおおおおっ!」

 

「おっと」

 

 

 

魔法が駄目なら物理でと考えたのか、クロコダインが勢い良く斧を投擲する。だが、それもドルマゲスには通用せず、人指し指と中指の二本だけで摘まむようにして止められてしまった。

 

・・・・・・・・・今のはスキルとか関係なく、奴の地力によるものだろう。もしかすると本当に、青娥さんに匹敵する実力があるのかもしれない。こうなったら仕方ないな。

 

 

 

「・・・・・・アルヴァロ、あいつは俺が引き受ける。その隙に皆でここから逃げてくれ」

 

「なんだと・・・?」

 

 

 

皆より一歩前に出た俺は小声でアルヴァロに告げる。困惑する彼に振り返らず、ドルマゲスを見据えたまま俺は続けた。

 

 

 

「この中で一番強いのは俺だろ?それに少しだけど余力もある。すぐ殺しに来ない辺り、あいつも遊んでる気がするし・・・皆が逃げる時間くらい稼げるよ、多分」

 

「だが、それではお前が・・・・・・!」

 

「誰が残るにしたって死ぬ可能性はあるだろ。だったらそれが一番少ない奴の方が良い。だって俺なら──・・・っ?」

 

 

 

食い下がるアルヴァロに俺は努めて明るく振る舞う。余計な心配をさせたくなかったからだ。それに、俺には奥の手もある。それについて話そうとした瞬間、誰かに肩を強く掴まれた。

 

 

 

「・・・・・・っ・・・」

 

「・・・・・・ヤムザ?」

 

 

 

驚いて振り返ると、そこにはヤムザがいた。俺の肩を強く掴んだ彼は酷く焦ったような、不安そうな、これまで見たことのない表情をしている。

 

 

 

「お前は・・・・・・何故、そんな・・・・・・少しは自分の身を・・・・・・っ!・・・・・・何でもない。忘れろ」

 

 

 

何かを言い掛けたヤムザだったが、そこまで言ったところで顔を背けると俺の肩から手を離した。ヤムザの行動の意味が理解出来ず、俺は彼の横顔を静かに見つめる。

 

・・・・・・・・・もしかして、俺のことを心配してくれたのか?いや、それは無いか。俺はヤムザのことを悪く思ってないけれど、向こうからすれば気に入らない奴だろうし。

 

 

 

それに、俺には奥の手こと『脱獄者』があるもんな。これなら奴の造ったダンジョンからも脱出できるから、皆を逃がした後に運が良ければ俺も助かる。正直、一番この場を切り抜けられる可能性があるのは俺だし、そんな奴をヤムザは心配しないだろう。

 

 

 

「・・・・・・ならば俺も残ろう。一度くらいなら盾になれる筈だ」

 

「クロコダイン?いや、ここは俺一人で・・・!」

 

「仮にも名付け親であるお前を置いて俺だけ逃げる訳にもいかん。なにより、そんな情けない真似をしたらガビル様に会わせる顔がない。こればかりは譲れんぞ、アクト」

 

 

 

そう言いながらクロコダインが俺の隣に並び立つ。顔に冷や汗を浮かべているものの、その目は力強く敵を見据えていた。

 

気持ちは有り難いが、死なせたくはない。何とかしてクロコダインにも逃げてもらおうと俺が適当な理由を必死で考え始めた時、ドルマゲスが肩を震わせ始めた。

 

 

 

「く、くくくっ・・・・・・・・・くく、くひゃっ、あひゃっ!あひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃっ!・・・・・・悲しいなぁ、悲しいなぁ・・・」

 

「チッ・・・・・・気色悪い笑い方しやがって・・・!そんな顔している癖に、さっきから何が悲しいと言うんだ!?」

 

 

 

突如、ドルマゲスが不気味な笑い声を上げる。驚いた俺たちの視線が集中しても変わらず笑い続け、やがて落ち着いたかと思えば口癖のようにそう繰り返す姿にヤムザが声を荒らげた。

 

 

 

「だって、そうでしょう?貴方たちが力を合わせ、どれだけ足掻こうとも、仲間を想う尊い心と共に──・・・・・・」

 

 

 

口角を吊り上げたままドルマゲスは目を細める。そして、ゆっくりと片手をこちらに向けて──。

 

 

 

 

 

 

「全て等しく────無意味に消えてしまうのですから」

 

 

 

これまでよりも一層、狂気的な笑みを見せた。

 

直後、奴から凄まじい程の妖気が吹き荒れた。まるで暴風のようなそれを全身に叩き付けられ、俺は堪らず腕で顔を覆う。

 

魔素量も先程よりも膨れ上がっており、これまで見たこともない程の膨大なそれに俺だけじゃなく全員が言葉を失っていた。

 

 

 

 

「きひゃひゃひゃひゃっ!くくっ、くひひっ!あーっひゃっひゃっひゃっひゃっひゃっひゃっひゃっひゃっ!!!」

 

 

 

 

ダンジョンに、道化師の笑い声が木霊する。邪悪な道化師の闇が加速する。

 

フロア中に充満していく妖気によって息苦しさが増していく中、こちらに向けられた奴の手に魔力が収束し始めた。強力な魔法を放つつもりなのだろう。それを視認した瞬間、背筋が凍り付くかのような感覚が俺を襲った。

 

 

 

逃げられない。死ぬ。

 

必死に闘気を練り上げ身に纏う俺の脳内を、その二つの言葉が埋め尽くしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ひゃっ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

「っ・・・・・・?」

 

 

 

俺が死を覚悟したその時だった。突然、ドルマゲスの狂った笑い声がピタリと止んだ。どうしたのかと様子を窺うも、ドルマゲスはその場から全く動こうとせず、いつまで経っても仕掛けてこない。

 

一瞬、背後を気にしたように見えたけど・・・・・・あいつの後ろには何もないぞ?

 

 

 

「・・・・・・・・・ふっふっふっ・・・・・・どうやら神は、貴方たちを見捨ててはいなかったようですね」

 

 

 

そう呟くと同時、ドルマゲスは片手を下げて魔力を霧散させた。身体から放出されていた妖気も収まり、息苦しさが段々和らいでいく。どういうつもりなのかと俺たちが困惑していると、ドルマゲスは右手を胸に添えて深くお辞儀をした。

 

 

 

「残念ですが、本日はこの辺りでお暇させて頂きましょう」

 

「はっ・・・?」

 

 

 

ドルマゲスは目を伏せると、頭を下げた姿勢のままそう言った。予想外の言葉に俺は思わず面食らってしまう。ほんの少し前まであれだけ緊迫した状況だったのに、ここに来て帰るだって?一体何を考えてるんだこいつ。というか、何がしたいんだ?

 

 

 

「しかし・・・・・・折角の出逢いです。その記念と言ってはなんですが、ささやかな贈り物を用意しました」

 

「贈り物・・・だと?」

 

「えぇ。どうか存分にお楽しみくださいませ・・・・・・それでは、また」

 

「ちょっ、おい!?」

 

 

 

そう言ったドルマゲスの身体がぼんやりと霞んでいく。俺が声を掛けるも、まるで霧のようにドルマゲスの姿はあっという間に消えてしまった。『魔力感知』で辺りを探ってみるも、奴の反応はどこにもない。

 

 

 

「き・・・消えた・・・・・・見逃してくれた、のか?」

 

 

 

ドルマゲスが立っていた場所を見つめ、クロコダインが呟く。彼の疑問に誰も答えずにいる中で、俺はあることが気になっていた。

 

 

 

「・・・・・・・・・贈り物」

 

 

 

姿を消す前、ドルマゲスは確かにそう言った。しかし、それらしいものはどこにも見当たらない。最も、俺たちが貰って嬉しいものだとは思えないし、別に要らないのだが。

 

だが、どうにも嫌な予感がする。ドルマゲスの言う贈り物とは一体何なのか。一人頭を悩ませる俺だったが、その答えはすぐに明らかとなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ヒャハハァアアアアーーーーーーーーーーーーッ!!!」

 

「ッ!?」

 

 

 

突然、歓喜の色に染まった声が響いた。この声は、スコルパイドか。先程まで戦っていた相手だしすぐに分かった。

 

しかし、あれだけボロボロだったというのにいきなりこんな叫び声を上げるだなんて一体どうしたのだろう。不思議に思いながらどこか呑気に振り向いた俺だったが、そこにいたスコルパイドの姿を見た瞬間、驚愕し目を見開いた。

 

 

 

「なっ、なんだと!?ダメージが回復している!?」

 

 

 

俺と同じくスコルパイドの姿を見てヤムザが叫んだ。彼の言葉通り、スコルパイドの身体からは俺たちとの戦いによって受けた傷が全て消えている。中身が見えるくらい砕かれた甲殻も完全に元通りだ。

 

しかも、それだけではない。

 

ユニークスキル『暴走蟲』。それによって『暴走強化状態(オーバードライブ)』が発動しているようで、奴の甲殻が黒鉄色から紅く染まっている。あれは確か、ある程度体力を消耗していなければ発動出来ないと奴自身が言っていた筈なのだが、今のスコルパイドは体力も回復しているように見える。

 

というか、『魔力感知』で調べたところ、魔素量が先程戦っていた時と比べかなり増加しているようだ。

 

 

 

「一体何が起きたというんだ・・・・・・奴はもう戦える状態では無かった筈・・・!」

 

「ヒヒヒヒヒヒッ!驚いているようダナ!まぁ無理もナイ・・・ドルマゲス様の『邪配合』の力を前にすれバナ!」

 

「『邪配合』・・・?」

 

 

 

呆然とするアルヴァロにスコルパイドは笑みを強めてそう返した。

 

『邪配合』・・・・・・何処かで聞いた覚えがあるな。ドルマゲスの力ということは、元の世界にあった何かしらのドラクエ作品に由来する能力だろうか。確か、モンスターズには『配合』という技術があったけど。

 

 

 

「俺が『邪配合』によって取り入れたのは『吸血鬼族(ヴァンパイア)』。だが、ただの『吸血鬼族(ヴァンパイア)』じゃあナイ。ドルマゲス様は『超克者』の個体を用意して下さったノダ!」

 

 

 

取り入れた・・・・・・つまり、『邪配合』というのは魔物と魔物を合体させるスキル、もしくは魔法ということか。もしかすると、封印の洞窟で戦った嵐蛇やユーラザニアのダンジョンにいた腐肉竜(ドラゴンゾンビ)もその力によって生み出されたのかもしれない。

 

それと、また気になる言葉が出てきたな。『吸血鬼族(ヴァンパイア)』の方はまぁ大体分かるけど、『超克者』か・・・・・・俺はスコルパイドを警戒したまま、それについてアルヴァロに訊ねる。

 

 

 

「『吸血鬼族(ヴァンパイア)』は基本Bランクで、生来太陽を弱点とする種族なのだが・・・・・・鍛練を積んだり長い時間を掛けることでそれを克服することが出来るという。そうした連中を『超克者』と呼ぶんだ。個体によってはAランクオーバーにもなるらしいが・・・・・・」

 

「ヒヒッ、その通リ。そして俺が取り入れた個体は正しくAランクオーバー!特Aランク級の中でも弱い方ではあルガ、『超克者』の『吸血鬼族(ヴァンパイア)』ヨ!それをこの身に取り込んだことで俺は全快シ、さらに魔素量を増やすことに成功したノダ!」

 

 

 

アルヴァロの後で、スコルパイドは自身の身体を見せ付けるようにして語った。

 

きっと、体力が万全に近い状態なのに『暴走強化状態(オーバードライブ)』を扱えているのも、『邪配合』によって強力な魔物を取り込み本体とスキルがパワーアップしたからなのだろう。

 

 

 

「成程、これが贈り物って訳だ・・・」

 

「くそったれめ!あの道化師が消えたかと思えば、まさかこいつが立ち塞がるとは・・・!」

 

 

 

贈り物の意味を理解し苦笑する俺の隣でヤムザが苛立ちながら吐き捨てる。スコルパイドはそんな俺たちを見て口角をつり上げると、ゆっくりと歩き出しこちらとの距離を詰め始めた。

 

 

 

「サテ・・・・・・そろそろお喋りは終わリダ。さっきは油断したが今度はそうはいカン。ドルマゲス様より与えられたこの力デ貴様ら全員皆殺しにしてヤル!まズハ──・・・!」

 

「ッ!皆、来るぞ!構えろッ!」

 

 

 

歩きながらそう話すスコルパイドだが、そこまで言い掛けた瞬間に妖気を一気に解放した。その大きさに驚愕しつつもアルヴァロは叫び、俺たちは戦闘態勢に入る。

 

 

 

・・・・・・・・・こちらは全員かなり消耗している上に、相手は先程よりもパワーアップした状態。正直、今の俺たちに勝ち目がほぼ無いことを全員が理解しているだろう。

 

 

 

「俺の身体を蹴り砕いたクソガキ!貴様かラダァアアーーーーーーーーッ!!!」

 

 

 

それでも、ここから生きて帰る為にはやるしかない。それにドルマゲスを相手にするよりはマシな筈だと、凄い勢いでこちらに向かってくるスコルパイドを見据え、俺は覚悟を決めるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「────そら困るわ。アクトはんにもしものことがあったら、青娥はんに何言われるか分かったもんやない」

 

「・・・・・・・・・・・・ハ?」

 

 

 

その時。ラプラスの声が背後から響いた。直後、何故かスコルパイドが前のめりに転倒する。

 

突然聞こえたラプラスの声、そして倒れたスコルパイド。二つの出来事に俺が困惑していると、起き上がろうとしたスコルパイドが目を見開いた。

 

 

 

「ギ───ギィイイイイイイイイイイッ!?ナッ、何ダ!?何故俺の脚がァアアッ!?」

 

 

 

スコルパイドの悲鳴にも近い声が辺りに響く。どうしたのかと奴の脚に目をやると、なんと前脚の二本が根元近くから砕かれていたのだ。

 

一体今何が起こったのか誰もが理解出来ずにいると、バギャッ!と硬いものが砕けたような音がした。直後、スコルパイドの背後にどさりと何かが落ちる。

 

スコルパイドにも当然その音は聞こえており、奴は恐る恐るそちらを振り返る。そこには、紅い甲殻ごと中身を破壊され千切られたスコルパイドの尻尾があった。

 

 

 

「ウァアアアァアアアアアアアアアアアアッ!?馬鹿ナ、有り得ナイ!俺の身体が、こンナ・・・・・・ッ、誰ダ・・・!どこにイル!?俺に殺されたいのはどこのどいつダァアアアッ!!?」

 

 

 

「ここにおるで。殺されるんはごめんやけども」

 

 

 

自身の千切れた尻尾を見たスコルパイドは怒り狂ったように叫びながら辺りを見回し始める。すると、俺の後ろからラプラスの呑気そうな声がした。

 

 

 

「うわっ!?ラ、ラプラス・・・!」

 

「まいど。探したでぇ、アクトはん」

 

 

 

振り返ると、やはりそこにはラプラスの姿があった。驚く俺にラプラスは気さくに片手を軽く上げる。

 

・・・・・・もしかして、スコルパイドの脚や尻尾を破壊したのはラプラスなのか?でも、どうやって?俺にはスコルパイドの脚と尻尾が勝手に砕けたようにしか見えなかった。

 

そもそもラプラスは一体いつから・・・というか、いつの間に俺の後ろにいたんだ?まさか、最初の声がした時からずっと?

 

いや・・・・・・だとしたら、どうやってスコルパイドに攻撃したんだろう・・・?スキルか魔法で遠距離攻撃でもしたのかな。

 

 

 

俺がそう思案していると、ラプラスの姿を見たスコルパイドが小さく笑った。

 

 

 

「・・・・・・・・・キ、キヒヒッ。そウカ、貴様がやったノカ・・・・・・いくら不意打ちだったとは言エ、暴走強化状態(オーバードライブ)した俺の身体にダメージを与えられるとは驚キダ」

 

「なんや、随分余裕そうやんけ。脚と尻尾がそんなんなっとったらもう戦えんやろ」

 

「ヒヒッ、それはどうカナ・・・!」

 

 

 

飄々としたラプラスの態度に苛立っているんだろう、彼を見つめるスコルパイドの視線は鋭い。だが、奴はまだ余裕があるかのように口端を緩めている。

 

奴の意味深な態度を俺が訝しんでいると、奴の脚と尻尾の傷口がぐじゅぐじゅと蠢いた。するとそこから凄い勢いで新しい脚と尻尾が生え始め、スコルパイドはあっという間に元の身体になった。

 

 

 

「キヒヒヒヒヒヒッ!見るがイイ!『邪配合』で俺が手に入れたのは魔素量だけではナイ!これは取り込んだ超克者が所有していたスキル、『超速再生』!このスキルがある限リ、俺は無敵なノダ!」

 

 

 

自身の身体を見せ付けるようにスコルパイドは両腕を広げる。『超速再生』・・・・・・名前からして、『自己再生』の上位版だろうか。ガビルも『自己再生』のスキルは持っているが、あちらと比べると再生の速度が凄まじい。

 

 

 

「あ、あれじゃあ・・・どれだけ攻撃しても倒せんぞ・・・!」

 

 

 

スコルパイドの傷が一瞬で癒えたのを見たヤムザは驚愕した様子で呟いた。いや、彼だけではない。アルヴァロもクロコダインも、勿論俺も、『邪配合』によってパワーアップしたスコルパイドを前に驚き、そして半ば絶望していた。

 

 

 

・・・・・・これじゃあ、こちらが万全の状態だったとしても勝てるかどうか分からない・・・!

 

 

 

「キヒヒヒャハハハハハハッ!ソウ、そレダ!貴様のその顔が見たかったんだよクソガキィ!」

 

 

 

表情を曇らせる俺を指差してスコルパイドが嘲笑う。俺は悔しさから奥歯を噛み締めつつスコルパイドを睨み返すが、相手は余裕そうににやにやと不快な笑みを浮かべていた。

 

・・・・・・まだ、諦めた訳じゃない。こんなところで、こんな奴に殺されたくなんかない。皆を死なせたくなんかない。

 

けれど、この状況を打開する方法が何も思い浮かばず、俺は自分の無力さを呪うことしか出来なかった。

 

 

 

「キヒャハハハハハハッ!そこで震えながら待っていろクソガキ!まずは愚かにも俺の身体を傷付けたピエロから──コプッ・・・・・・?」

 

 

 

勝利を確信し、勝ち誇った顔でスコルパイドがそう言い掛けた時だった。

 

突然、スコルパイドが吐血したのである。予想外の事態にスコルパイドは状況を理解出来ずにいるようだ。口元を拭った際に手に付いた血を見つめ固まっている。

 

しかし、俺たちには分かった。何故そうなったのかは分からないが、スコルパイドの身体に何が起きたのかを。

 

 

 

「穴・・・・・・?」

 

 

 

そう、スコルパイドの胸に穴が空いていたのだ。人間の拳程度なら簡単に入りそうなくらいの穴が。

 

そこからぼたぼたと流れる血の音で、漸くスコルパイドも気付いたらしい。自身の身体に穴が空いているのを視認し、最早悲鳴にも近い声を一瞬上げ驚愕する。

 

 

 

そのスコルパイドの背後に、立つ影があった。

 

 

 

 

 

「『超速再生』なぁ・・・・・・確かに便利なスキルや。クレイマンも持っとるし。けど──」

 

 

 

その正体はラプラス。いつの間にか俺の背後からあちらへ移動していたらしい。彼の話す声を聞き、スコルパイドは慌ててそちらを振り返る。すると、スコルパイドは一瞬びくりと身体を揺らし、再び硬直した。その視線は、ラプラスの右手に向けられている。

 

 

 

「一瞬で大事なトコ潰されてもうたら、どうしようもないわなぁ?」

 

 

 

するとラプラスは真っ赤に染まった右手をスコルパイドの方へ差し出した。その掌には、赤黒いなにかが乗せられている。

 

 

 

 

「ま、まサカ・・・・・・!?」

 

「そう、これはお前の心臓(コア)や」

 

 

 

その言葉を聞いて、スコルパイドの表情が驚愕と恐怖で歪んだ。

 

先程の見えない攻撃のこともあり、もしやと思っていたが、スコルパイドの胸に穴を空けたのはやはりラプラスだったようだ。しかし、この場にいる全員が視認出来ないよう何らかの力を用い、しかも一瞬で奴の心臓を抜き取るだなんて。

 

ラプラスも相当な実力者であることはなんとなく分かっていたけれど、まさかここまでとは。ほんの少し前までスコルパイドの力を前に絶望し掛けていた俺だが、今はそんな感情など何処かへ消えてしまい、ラプラスの強さに目を輝かせていた。

 

 

 

「さっさと逃げとったらこうならんで済んだかもしれへんのに・・・・・・気付くのがちっと遅かったな」

 

「ま、待ってクレ!やメ────・・・!」

 

「こう見えて──ワイは強いんや」

 

 

 

情けなく命乞いをしようとしたスコルパイドを無視し、ラプラスは掌にある心臓を握り潰した。

 

ぐちゃりというどことなく不快な音を立て、血と肉片がラプラスの周辺に飛び散る。ラプラスを止めようと慌てて飛び掛かろうとしていたスコルパイドだったが、目の前で自身の心臓を潰された直後に力無くその場に崩れ落ちた。

 

 

 

「・・・・・・・・・・・・凄ぉ」

 

 

 

目の前で起きた一方的な戦い、ラプラスの圧倒的な力に全員が呆然と立ち尽くしていた。思わずそう呟く俺の視線の先では、ラプラスが自分の手に付いたスコルパイドの心臓や血を汚そうに払っている。

 

やがて俺の視線に気付いたラプラスはゆっくりとこちらに歩き出した。いつかの嵐蛇のように身体が消滅し始めているスコルパイドを一瞥し、その横を通り過ぎて俺たちの前まで戻ってくると。

 

 

 

 

 

「お疲れさーん♪いやー、何とかなって良かったわぁ」

 

 

 

俺たちからすればとんでもない強敵だったというのに、なんてことはなさそうにラプラスは軽い調子を見せる。そんなラプラスの姿に、俺は安堵からか気の抜けた笑みを浮かべるのだった。




という訳で、ダンジョンを造ったり魔物を合成したりと暗躍していた相手の名前が判明した回でした。
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