転生したら蜥蜴人族の友人と邪仙の恋人ができた件   作:乃出一樹

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お待たせしました、第18話となります。

年度末なので仕事がいつも以上に忙しく辛いです。


『復讐者』と『脱獄者』

「アクトくん。あなたはスキルについてはどこまでご存知ですか?」

 

「えっと・・・・・・」

 

 

 

俺が持つスキルについて教えると言った青娥さんだが、その前にそんな質問を投げかけてきた。その問いに対し俺は僅かに口ごもる。

 

それというのも一昨日、爺さんからスキルについて少し訊ねたのだが、彼自身スキルについて完全に理解している訳ではなかったのだ。爺さんから聞いた説明を纏めると、「強さや希少性などによって四つのカテゴリに分類される、魔法のように詠唱を必要とせず使用できる強力な力」、だったか。

 

ざっくりとした説明だが、生まれた時からずっと身近にあったモノなので「そういうモノなのだろう」と、深く考えなかったのかもしれない。

 

 

 

「んー・・・・・・まぁ、並の魔物の知識としてはそんなものでしょうね」

 

 

 

少し考えてから、爺さんから聞いた通りに答えると青娥さんはそう呟いた。想定していた通りの答えだったのだろうか、彼女の表情は特に変わらない。

 

 

 

「そうですね。折角ですし、スキルについても説明しましょうか」

 

「えっと・・・・・・それじゃ、お願いします」

 

 

 

少し悩んだが、折角なので青娥さんの提案を受けることにした。本音を言えば早く修行を受けたいが、ガビルがまだダウン中だし、スキルについて詳しく知っておきたいという気持ちもあるのでいいだろう。

 

そんな訳で、青娥さんからスキルについてこのような説明を受けた。

 

スキルとは、この世界独特の『特殊現象発動システム』とでもいうべきもの。種類によっては奇跡に近い事象がスキルを獲得、あるいは習得し、行使するだけで現出する。つまり発生する事象の内容と、そのためのトリガーの引き方さえ理解していれば、理論や法則の理解、詠唱などの手順は基本的に不要らしい。

 

スキルの獲得は、進化の他に能力獲得系のスキルの発動によるもの、あとは強い意識など色々な契機があるが、本人の資質や運、それに偶発的な要素が絡み合うのだとか。基本的にはなんらかの成長を世界が認めた時に獲得できることがあるそうだ。

 

そしてスキルを獲得した際には『世界の声』と呼ばれる謎の声が対象にのみ届き、それを知らせるとのこと。

 

 

 

「・・・・・・ん?世界の声?それって・・・」

 

「アクトくん、こちらの世界に来る前に無機質な声を聞きませんでしたか?えっと、○○を獲得・・・成功しました、みたいな」

 

「あー、聞きました聞きました!あれかー・・・」

 

 

 

どうやらあの時の不思議な声が『世界の声』というものだったらしい。ちなみに何故この世界のシステムのようなモノがあちらの世界に現れたのか、それについては青娥さんもよく分からないようだが。

 

 

 

「・・・・・・さて。スキルについては大体説明しましたし、本題と参りましょう。先程言いましたが、アクトくんがこの世界に転生した際に手に入れたユニークスキルは、『復讐者(トゲルモノ)』と『脱獄者(ヌケダスモノ)』の二つです」

 

 

 

『復讐者』に『脱獄者』・・・・・・確かに、あの声はそう言っていた気がする。他にもなにか言っていたような気がするが、何分死にかけていたのでよく覚えていない。まぁ、そちらも多分青娥さんなら教えてくれるだろう。

 

 

 

「『復讐者』、『脱獄者』はどちらも複数の権能・・・スキルが備わっています。まずは『復讐者』の持つ力から説明していきましょう。一つ目は『突破』。『耐性』やスキルによる攻撃の妨害や無効化する効果を無視するというモノですね」

 

「あー・・・『耐性』、ってのは?」

 

「あぁ、すみません。レジスト系スキルのことです。『物理攻撃耐性』とか『炎熱耐性』など、普通のスキル程ではありませんが、そこそこ種類がありますね。ちなみにアクトくんは『状態異常無効』と『精神攻撃耐性』を獲得していますよ」

 

 

 

レジスト、耐性・・・そういうのもあるのか。そして聞いて思い出したが、それも死ぬ間際に世界の声から聞いた気がする。

 

 

 

「二つ目は『思考加速』、知覚速度を大幅に上げるスキルです。アクトくん、なにかを考えている時にあまり時間が経っていなかったり、目に映ったものが遅いと感じたことはあります?」

 

 

 

青娥さんの問いに俺は頷く。昨日、青娥さんを助けようとした時にそんな状態になったっけ。そういえばガビルに助けられ素性を訊かれた時、記憶喪失だと誤魔化すまで少し悩んでいたのだが、ガビルは全く気にしていなかった。もしかするとあの時も『思考加速』が発動していて、時間があまり経過していなかったのかもしれない。

 

 

 

「恐らく無意識の内に『思考加速』を発動させていたんでしょう。これの性能には個人差がありますので、後で使いこなせるようになったらどの程度なのか確認しておいた方がよろしいかと」

 

「分かりました。その時も、見てもらっていいですか?」

 

「ふふ、構いませんわ。それで、最後の三つ目が『身体強化』。文字通り、肉体を強化するシンプルなスキルで近距離で戦う人には便利なスキルですね」

 

 

 

『身体強化』か。そういえばオーガに襲われて抵抗した時に、一瞬だけ凄い力が出た気がする。確か首を掴まれて、逃げようと蹴りを入れた時だったか。あの時も『思考加速』のように無意識に力を発動させていたのだろう。

 

 

 

「ちなみに『身体強化』はエクストラスキルなのですが、ユニークスキルに複数の権能の一つとして組み込まれているモノは、効果が通常のそれより高かったりします。なので、こちらも『思考加速』のように後で確認しましょうね」

 

「了解です。えっと、これで『復讐者』については終わりですかね?」

 

「えぇ。では、次に『脱獄者』の説明をしましょう。このスキルには四つの権能が含まれているようですわ」

 

 

 

四つか。『復讐者』に含まれている権能と合わせれば、耐性を除いて実質俺は七つのスキルを持っていることになる。七つ・・・・・・ガビルが持つスキルは二つだったから、俺は結構多く持ってる部類なのだろうか。

 

 

 

「『脱獄者』に含まれている権能の一つ目は、『空間制御』。こちらも通常のスキルとして存在するのですが・・・・・・アクトくんの持つこれは少し変化していますね」

 

「と、いうと?」

 

「通常の『空間制御』は周囲の空間に干渉し、敵の『空間移動』などを封じるという、文字通り空間を制御するスキルです。しかしアクトくんの持つ『空間制御』は自身にしか作用しないようでして」

 

 

 

・・・・・・それって意味あるのか?というか、自身にしか作用しないって、まさか俺だけ『空間移動』が使えないってこと?

 

そんな考えを俺の表情から読み取ったのか、青娥さんはくすりと笑うと説明を続けた。

 

 

 

「心配要りませんよアクトくん。このスキルは決してハズレではありません。確かにアクトくんの『空間制御』は範囲がかなり狭いですが、その分細かい使用が出来ると思います」

 

「細かい使用?」

 

「例えば、敵の『空間制御』を無効化しつつ、自分だけ『空間移動』するとか、ですね」

 

 

 

つまり、空間系能力に関しては悪い効果だけ跳ね除け、良い効果だけ受け取れるってことか?成程、そう考えると中々便利かもしれない。ドラクエで言うところの『バシルーラ』みたいな技を無効化できるってことだろうし。

 

 

 

「ふふ、安心してくれたようで何よりですわ。さて、二つ目ですが。『脱獄』というモノです。こちらは自身の行動を縛る効果を無効化するスキルですね」

 

「おっ、それは聞くだけで便利そうと分かりますね」

 

「その通り、便利なスキルですよ。例えば力を封じる結界に囚われても普段通りに力を行使出来ますし、結界自体も素通りできます。あと、『魔力妨害』など魔素の働きに影響を及ぼすスキルなどにも有用ですね」

 

 

 

結界なども無効・・・・・・と、言うことは。青娥さんと初めて会った時に結界でガビルと隔離されたが、出ようと思えばすぐにあの中から出られた訳だ。後でそれを青娥さんに伝えたら「確かに!」などと言って笑っていた。

 

 

 

「三つ目の権能は『加速』。これは文字通り、自身の速度を上げるスキルです。こちらも『復讐者』に含まれる『身体強化』のように、通常の『加速』とは効果の程が違う可能性があるので要確認ですね」

 

「へぇ、それも使い勝手が良さそうだ」

 

「近接戦闘は勿論、その場から離脱する際にも便利だと思いますよ。そして最後の権能が、『道具作成』」

 

 

 

四つ目の権能を聞いて少し驚く。今まで戦闘向きな能力ばかりだったのに、最後に出てきたモノがまさかのクラフト能力である。

 

 

 

「『道具作成』・・・・・・それって強いんですか?」

 

「強いか弱いかはともかく、便利なスキルだと思います。ポーションなどの回復アイテムの他、武器なども作成することが可能なようですし」

 

 

 

ほう、それは確かに便利だ。魔物である以上、人間の町で買い物なんて出来ないだろうし、必要な物を自分で作れるのならこれから先役立つだろう。

 

 

 

「この手のスキルは、材料さえあれば手順や完成までの時間を短縮できたりするモノが多いです。結局どのスキルにも言えることですが、こちらも後で何ができるのか確認しておきましょう」

 

「はい・・・・・・あー、これで全部か」

 

 

 

青娥さんの解説が終わったところで、改めて俺が手に入れたスキルについて思案する。なんだか、岩窟王・・・エドみたいな能力だな。もしかして、死ぬ間際に彼のことを想ったからか?そう考えると『道具作成』がスキルに含まれているのも頷ける。確か彼が持つスキル、『窮地の智慧』に「エクストラクラスの特殊性が合わさることでランクB相当の『道具作成』スキルが使用可能となる」って説明があったし。

 

 

 

「ハッキリ言って、どちらもとても強力なスキルだと思います。特に『復讐者』に含まれる『突破』が便利ですね。力のある者程、多くの耐性を持ってますから」

 

 

 

どんな相手であろうと、地力さえ近ければマトモに戦えるスキルが集まっているようだ。これは、尚更青娥さんの修行を頑張らないといけないな。

 

 

 

「・・・・・・・・・う、うぅん・・・?」

 

 

 

密かに決意を新たにした時だった。青娥さん曰く事故により気絶していたガビルが目を覚ましたのである。ガビルは事故に合った箇所が痛むのか、そこを擦りながらゆっくりと身体を起こした。

 

 

 

「あ、ガビル。良かった、目が覚めたか」

 

「アクト殿・・・?ここは・・・湿地帯、だな。確か我輩、アクト殿と共に青娥殿から修行を受けようと・・・・・・っ!あいたたた・・・後頭部が何故か痛むのである・・・一体なにが・・・?」

 

 

 

目が覚ましたガビルは少し混乱した様子で辺りを見回している。どうやら事故の衝撃により直前の記憶が飛んでいるようだ。

 

 

 

「あー・・・・・・ガビル。それはだな・・・その──・・・」

 

「大丈夫ですかガビルさん!良かった!オーガに襲われた時はどうなることかと・・・!」

 

「えっ」

 

 

 

どう説明したものかと悩んでいたその時。ずいっと青娥さんがガビルに近付き、わざとらしく心配しながらとんでもないことを言い出した。

 

 

 

「お、オーガだと?どういうことだ青娥殿?」

 

「あぁ、やはり覚えてらっしゃらないのですね・・・・・・実は先程、オーガが奇襲をかけて来たのです!流石のガビルさんも、不意を突かれ頭を殴られてしまっては・・・・・・よよよ・・・」

 

 

 

いやいやいやいや。なにがよよよだよ、無理があるだろそれは。ちょっと可愛いけど。待て、何考えてるんだ俺。

とにかく、いくらなんでもそんな嘘にガビルが──・・・

 

 

 

「な・・・・・・なんだとぉ!?おのれオーガめ・・・どこまで腐っておるのだ!」

 

 

 

騙されてるな、うん。

 

心配になってくる程素直なガビルに内心ずっこける。そんなガビルを見てにやりと笑った青娥さんは、更に嘘を重ね続けた。

 

 

 

「突然のことだった上、私もアクトくんを守りながらだったので奴らを追い払うのが精一杯で・・・・・・申し訳ありません・・・!」

 

「いや、お主が謝ることはないぞ青娥殿!おのれ、野蛮なオーガめ・・・・・・もう我慢ならん!我輩直々に奴らの住処に乗り込み成敗してくれるわ!」

 

「ちょ、ちょっと待ったガビル!」

 

 

 

青娥さんに騙され怒りの矛先をオーガに向けるガビル。声を荒らげ今にもオーガの元へ走りだしそうな彼を俺は慌てて止めた。

 

 

 

「何故止めるのだアクト殿!最早奴らを放ってはおけぬのである!」

 

「いや、その・・・・・・あー、青娥さん!?」

 

 

 

どうしたものかと青娥さんに振り返る。正直なところ本当のことを言えば済む話なのだが、青娥さんを庇いたいという気持ちが少し出てしまい、真実は言わずにとりあえず青娥さんに丸投げした。

 

 

 

「待ってくださいガビルさん。お気持ちは察しますが、ここはどうか抑えてくださいな」

 

「青娥殿まで何故そのような・・・!」

 

「いいですかガビルさん。無礼を承知で言いますけれど、貴方一人でオーガたちの元へ向かったところで何ができるんです?」

 

 

 

その言葉にガビルは短く唸った。その通りだと思う。もしオーガの平均的な強さが一昨日の二人ぐらいだとしても、ガビル一人で奴らの住処に乗り込むだなんて、いくらなんでも勝ち目はない筈だ。

 

 

 

「部下のリザードマンの方々を引き連れますか?確かにここに暮らすリザードマンたちで攻めれば勝ち目はあるでしょうが、必ず犠牲は出ます。アクトくんも名付けにより強くなりましたが、戦いに関しては素人。武人であられるガビルさんは、まさかそのような子を戦場に連れ出しはしないでしょう?」

 

「くっ・・・!では、このまま泣き寝入りしろとでも!?」

 

 

 

悔し気にガビルは吐き捨てた。無理も無いだろう、つい最近戦った悪党を見逃せと言っているようなものなのだから。

 

・・・・・・まぁ、そもそもオーガに襲われてなんていないのだけども。

 

 

 

「ガビルさん、ここは耐える時です。今は息を潜め、牙を研ぐのです。悪辣なオーガたちのことですわ、いずれまた襲ってくるでしょう・・・・・・その時までに力を蓄え、そして次こそガビルさんの勇姿を見せ付けてあげましょう!」

 

「う、うむ・・・・・・そう・・・そうであるな!確かに今の我輩ではオーガたちを倒せまい・・・だが!アクト殿と共に修行に励み、いつの日か必ず奴らを打ち倒してみせようぞ!」

 

「きゃー♪ガビルさんカッコいい~♪」

 

 

 

見事なまでに青娥さんに騙され、そして乗せられたガビル。拳を突き上げ声高らかに宣言する彼に、青娥さんはおべっかを使いながら拍手を送っていた。

 

 

 

「ま、まぁ・・・オーガ全員が悪党ってことは無いだろうし、無理に滅ぼす必要なんてないし?・・・・・・とりあえず修行頑張ろうぜ!」

 

「ははは、アクト殿は優しいな。あのような連中にまで・・・・・・うむ、共に頑張ろうぞ!」

 

「おー♪」

 

 

 

・・・・・・・・・大丈夫だろうか、色々と。




ステータス
名前:アクト
種族:龍人族(ドラゴニュート)
称号:なし
魔法:なし

ユニークスキル:『復讐者(トゲルモノ)』、『脱獄者(ヌケダスモノ)

耐性:状態異常無効、精神攻撃耐性



ユニークスキル『復讐者(トゲルモノ)

突破:耐性やスキルによりこちらの攻撃を無効、または妨害する効果を無視する。

思考加速:知覚速度を大幅に引き上げる。

身体強化:肉体を強化し、攻撃力や防御力を上げる。


ユニークスキル『脱獄者(ヌケダスモノ)

空間制御:自身に対する空間系能力を制御する。

脱獄:自身の行動を邪魔する効果を無効化する。

加速:速度を増加する。

道具作成:道具や武器を作成できる。モノによっては完成までの手順や時間を短縮可能。
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