転生したら蜥蜴人族の友人と邪仙の恋人ができた件   作:乃出一樹

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お待たせしました、第20話となります。

前書きだけでなく、サブタイトルすら考えるのが大変になってきました。


一ヶ月後

「・・・・・・・・・爺よ。息子は今日もか?」

 

「はい、今日もですよ」

 

 

 

リザードマンたちの住処であるシス湖周辺の湿地帯の地下洞窟。その首領の間にて、三人のリザードマンが会していた。

 

一人は我等がリザードマンの首領。一人は親衛隊長を務める、首領の娘。そして最後が、親衛隊長とその兄の教育係を務めた私である。

 

ジュラの大森林に封印されし邪竜・・・暴風竜ヴェルドラ。彼の者が突如姿を消してもう一月以上経つ。首領はそれによってこの森になにか異変が起きるのではないかと危惧していた。例を挙げれば他種族の勢力の変化である。暴風竜がいなくなった今、この森の覇権を握ろうと行動を起こす者が現れるかもしれない。森の外から侵略者がやってくる可能性もある。

 

そのような懸念から、少し前から首領は部下たちに森の見回りを命じていた。なにか異変があれば、直ぐ様それに対応できるようにと。とは言っても、ジュラの大森林は広い上にリザードマンより強い魔物も多く生息している。よって森の中全てを調査することはとても難しいのだが。

 

とりあえずシス湖周辺の見回りから始め、今日はその結果を報告する日。見回りから戻ってきた部下たちの報告を親衛隊長である妹様と纏め、その結果を首領に伝え終えた時である。ふと思い出したかのように、首領は目を伏せたまま先のように私に訊ねたのだ。

 

他の者が聞いたら何のことか分からないだろう詳細の分からぬ問いであったが、この場にいる私と妹様は何のことかすぐに察することができた。

 

 

 

「いつも通り、兄上は湿地帯でアクト殿と共に青娥殿から修行を受けているようです」

 

 

 

私の返事を補足するように妹様がそう告げる。青娥という魔人をここへ連れ帰った翌日から、ガビル様はアクト殿と共に彼女から修行を受けているのだ。当初は素性の知れぬ上に強大な力を持つあの魔人を随分恐れたものだが、我々に危害など一度も加えないし、案外しっかりと二人の面倒も見ている。底が知れぬ方ではあるが、そう悪い人ではないのかもしれない。

 

・・・・・・ガビル様には心なしか当たりが強いように思えるが。

 

 

 

「そうか。すぐに根を上げるかと思っていたが・・・・・・案外根性はあるらしい」

 

「えぇ。貴方の自慢の息子ですからね」

 

「・・・・・・茶化すな、爺」

 

 

 

僅かに眉を下げた首領の顔を見て思わず笑みを浮かべる。ガビル様がゲルミュッドなる魔人に名を貰ってから、ガビル様と首領の関係は少し悪かった。理由については訊ねていない。だが、私と妹様はなんとなくその理由を察していた。

 

 

 

「ホッホッホッ、失礼しました。さて・・・・・・では私はこれで。話をしていたら気になってしまったので、少しガビル様たちの様子を見てきます。妹様は?」

 

「いえ、私はまだやることがありますので・・・・・・お爺様、兄上のことをよろしくお願いします」

 

「儂からも頼むぞ、爺。息子が迷惑をかけていないか確認しておいてくれ」

 

 

 

頭を下げる妹様と、少し申し訳なさそうにそう言った首領に頷いて、私は首領の間を後にする。なんだかんだ言いつつもガビル様を心配しているのですね、とは口にせず。不器用な二人の姿を思い出し、小さく笑ってから私は湿地帯へと向かうのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ジュラの大森林の中央付近にあるシス湖。その周囲に広がる湿地帯にこの俺──ドラゴニュートのアクトは立っていた。

 

目の前には自分よりも遥かに大きな岩が聳え立つかのように置かれている。修行に使う為、青娥さんがどこかからわざわざ用意してくれたものだ。

 

 

 

「・・・・・・ふー・・・・・・よし」

 

 

 

岩の大きさを確認したあと、ゆっくり深呼吸をする。そしてそう呟くと俺は、闘気を解放し全身にうっすらとそれを纏ってから、さらに大きく解放して脚に集中させた。この一ヶ月で青娥さんから教わった『気操法』である。修行を始めたばかりの頃は闘気を放出することすら出来なかったが、青娥さんのお陰で今では難なく闘気を操れるようになった。心の中で彼女に感謝しつつ、目の前の大岩に近付き──

 

 

 

「──オラァッ!」

 

 

 

気合いを込めた声と共に蹴りを放った。闘気を纏った脚は硬い岩と激突しても痛みはほぼ無い。なので気にすることなく二度、三度とランドル自慢のすらりと長い、そして強靭な脚による蹴りを叩き込む。すると大岩はそれらの威力に耐えきれず、びきりと亀裂が入ったかと思うと勢い良く砕け散った。

 

 

 

「はぁっ!」

 

 

 

だが、それでは終わりではない。俺は体勢を整えると、砕けた大岩の破片の中で一番大きそうなものを見付ける。それに狙いを定めると、手の平に闘気を集中させ、圧縮させ弾にして放った。闘気の弾──『闘気弾』はかなりの速度で飛んで行き、『ドッ!』という音を立てて岩の破片を粉砕したのだった。

 

 

 

「ふぅ・・・・・・良い感じだな!」

 

 

 

一連の動きに満足し、思わず俺は笑みを浮かべる。そう言えば、青娥さんが言うには『闘気弾』もアーツに分類されるらしい。まだ闘気をかめはめ波のようには放てないが、ドラゴンボールの登場人物になったみたいで、初めて撃った時はとても嬉しかった。

 

 

 

「けど、あの技も完成したし・・・・・・きっといつかはかめはめ波みたいなのも出せる日が来る筈・・・!」

 

 

 

この一ヶ月の間、基本の『気闘法』と平行して自身のスキルの把握だけじゃなく、俺だけのアーツも練習していたのだ。修行の合間だったのでそこまで時間は取れなかったのだが、『気操法』を会得してからは闘気の扱いに慣れ、それを纏ったり放てるようになった頃。遂に俺だけのアーツが完成したのだ。

 

・・・・・・まぁ、ドラゴンボールに出てくるあの技をまんまパクっただけなんだけど。

 

 

 

「ホッホッホッ。いやはや、凄まじいですねぇ・・・」

 

「あ、爺さん」

 

 

 

そんなことを考えていると、後ろから声が聞こえた。振り返るとリザードマンの爺さんがこちらへ歩いて来ていた。爺さんは俺の隣まで来ると、足を止めて破壊された大岩の残骸を眺める。

 

 

 

「これだけ巨大な岩をいとも簡単に破壊してしまうとは・・・・・・最早私などでは正確な強さを計れませんが、少なくとも我等が首領よりも遥かに強いことは間違いないでしょうね」

 

「マジで?まぁ、俺は青娥さんに名付けして貰ってるし、そのお陰かな」

 

「ホッホッホッ、それだけではないでしょう。この一ヶ月間での努力により、アクトさんはこれだけの力を手に入れたのです。誇ってもいいと思いますよ?」

 

 

 

俺を見て、そう言うと爺さんはにこりと微笑んだ。

・・・・・・面と向かって褒められると流石に照れ臭い。むず痒さを感じつつ視線を反らす俺の姿に、爺さんはまたくすりと笑った。

 

 

 

「やめてくれよ爺さん。なんつーか、そういうの慣れてねぇんだ」

 

「おやおや、失礼しました・・・・・・そうそう。ところで、ガビル様はどちらに?」

 

「あー、ガビルなら・・・・・・」

 

 

 

爺さんからガビルの所在を訊ねられ、俺はある方向へと振り返る。つられてそちらを見た爺さんは、目に飛び込んできた光景に言葉を無くした。俺と爺さんの視線の先には・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

『ドドドドドッ!』

 

 

 

「ぬわぁああああああああああっ!?青娥殿、これ昨日より多いと思うのだがー!?」

 

「はい、昨日より多めに火炎球(ファイアボール)を撃ってまーす♪平気平気!ガビルさんなら問題ありませんわ♪」

 

 

 

 

火炎球(ファイアボール)を連続で放ちながら追いかけてくる青娥さんから必至に逃げるガビルがいた。悲鳴を上げるガビルの姿に、爺さんは顔を青くしながら俺を見る。

 

 

 

「あの、アクトさん。あれガビル様死にませんか?」

 

「大丈夫だと思うぞ?最近はよくあの修行やってるし」

 

「修行というかイジメだと思うんですけど・・・」

 

 

 

最初は俺も止めたけど、青娥さんもちゃんと考えてのことらしい。なんでも『気操法』で闘気を全身に纏い防御力を上げながら走り回ることで、防御に特化した『金剛法』と高速移動を可能とする『瞬動法』会得の為の修行になるんだとか。それにガビルも気にしなくていいから是非と言っていたし。それなら俺も何も言えない。二人のことを信じるだけだ。

 

 

 

 

 

「アァアアアアアアアアアアアッ!?アッツイ尻尾がぁあああああああああっ!!!」

 

「あ、燃えた」

 

「ガビル様ーーー!?」




基本はカッコ良くて愉快なガビルの姿が好きなのですが、やっぱり少しは不憫な目に遭って欲しいとも思うのです。
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