転生したら蜥蜴人族の友人と邪仙の恋人ができた件 作:乃出一樹
四月末から五月中は色々と忙しくなりそうなので投稿が遅れたり、無い週があるかもです。
俺の『飛空法』会得の為の修行が始まった次の日。
朝食を済ませ、いつも通りガビルと共に湿地帯で青娥さんを待っていたのだが、青娥さんが約束の時間はなっても現れない。仕方なく、二人だけでも出来る修行を始めて少し経った頃だった。
「すみませーん、遅れちゃいましたー♪」
突然近くの空間が歪み、そこからそんな声と共に青娥さんが現れた。彼女の姿を見て、俺とガビルは修行を中断し青娥さんの元へ向かう。
「おはようございます、青娥さん」
「おはようである!青娥殿、今日は遅かったであるな、寝坊か?」
「いえいえ、違いますわ。ちょっと確認をしてきまして」
「確認・・・・・・なんの?」
「それは見れば分かりますわ。と、言う訳で・・・今日の修行はお休みして、実戦と行きましょーう♪」
おー♪といつもの笑顔を見せながら腕を上げる青娥さん。だが、こちらはどういうことなのか全く分からないので返事など出来る訳もなく。俺とガビルの二人で必死に抗議した結果、青娥さんはぶーと口を尖らせつつも渋々説明してくれた。
俺とガビルに修行を付けてくれるようになってから、青娥さんは俺たちの修行に丁度良さそうな面白いことがないかと修行の合間にジュラの大森林のあちこちを見て回っていたらしい。するとつい最近、『
牛頭族と馬頭族とは、このジュラの大森林に生息する魔物の中で上位に君臨する種族の内の二つだという。なんでもこの森で百年近く争っているらしい。ちなみに両者共その名通りの姿だとか。
その魔物たちが争っているのを見て、「あ、アクトくんたちの修行に使えるかも?」と青娥さんは思ったそうだ。そして今日、昨日牛頭族たちを見掛けた場所を確認してみると、昨日と同じく朝から元気に殺し合っていたのでそれに混ざろうということらしい。
なんだその理由・・・・・・と、俺が呆れる横で、ガビルは顎に手を当てながら「ふむ・・・」と呟くと、何やら考え込んだ様子で青娥さんに訊ねた。
「牛頭族と馬頭族か・・・・・・その名は知っているが、この辺りにいる魔物ではなかった筈だぞ?」
「えぇ、そうですわ。地図で説明すると・・・・・・シス湖がここで、牛頭族たちを見掛けたのはこの辺りですね」
青娥さんはどこからともなく地図を取り出し、ある一点を指差す。恐らく牛頭族と馬頭族がいるのだろうその地点を見て、俺とガビルは眉を顰めた。
「んー・・・・・・青娥さんがやれって言うんならやりますけど・・・この場所まで行くのは無理じゃないですか?結構距離ありますよ」
「うむ・・・ジュラの大森林は広い。一日ではとても辿り着けぬよ。ホバーリザードに全力で走らせたとしても無理であろう」
「御心配無く。その点についてはちゃーんと考えてありますので♪」
不安がる俺とガビルに青娥さんはにこりと微笑んだ。そして青娥さんは足元の地面に手をかざす。何をするのかと首を傾げていると、突然地面が光出してそこに小さな魔法陣が浮かび上がった。
「魔法陣、であるか?これは一体・・・・・・」
「
つまり、これを使えば瞬間移動が出来るという訳か。ドラクエの『旅の扉』みたいだな。
「既にもう一つの魔法陣を牛頭族と馬頭族の抗争が起きている近くに設置してあります。なので、ワープポータルを使えば移動の時間については気にしなくても平気ですよ」
「流石、仕事が速いですね・・・」
「しかし、多種族のトラブルに首を突っ込むのは如何なものか・・・・・・それが原因で、もし我等がその二種族の標的になったら・・・」
「大丈夫ですわ。連中の住処はここからはかなり離れた場所ですし、此処まで攻めて来るのも手間でしょう。それに、最悪の場合は私が責任を持ちます。話を持ってきた訳ですしね」
青娥さんのその言葉を聞いて、それならばとガビルは納得した。ちゃんと仲間たちのことを考えられる辺り、やはりガビルは上に立つ者としての自覚はあるのだろう。
「・・・・・・しかし青娥殿は確か『空間移動』が使えた筈・・・移動はそれでも良かったのでは?」
「ん~・・・・・・確かに『空間移動』でも良かったんですけれど、折角なのでアクトくんに魔法を体験して貰おうと思いまして」
「はは、正直嬉しいです・・・・・・ところで青娥さん。これ、他の誰かに使われたら危険じゃないですか?」
もしも向こうで牛頭族か馬頭族のどちらかがワープポータルを勝手に使い、シス湖にやって来られでもしたら大変なことになるだろう。リザードマンが全滅することは無いと思うが、かなりの被害が出る筈だ。
「ふふ、大丈夫ですよ。向こうに着いたらあちらの魔法陣を一旦消しますので。そうすれば誰も私のワープポータルを使用できませんわ」
成程、と俺は頷いた。そして帰る時にまた新たに魔法陣を設置すればいいだけなのだろう。まぁ、青娥さんがその辺考えてない訳がないか。
「よぉし、それならば問題は無いな!では早速、我輩とアクト殿で奴らを懲らしめてやるのである!行くぞ、アクト殿!」
俺に振り返りそう力強く言い放つと、ガビルは迷いなくワープポータルの上に乗った。するとガビルの周囲が一瞬光り、次の瞬間にはガビルの姿が消えていた。
「うわ、本当に瞬間移動したんだ・・・」
「えぇ。それでは次はアクトくんですね?どうぞー♪」
青娥さんに促され意を決して魔方陣の上に乗る。それと同時にガビルの時と同じように周囲が輝き出す。恐らく魔素の働きによるものなのだろう。そんなことを考えながら、俺は転移に備え目を瞑った。
「──・・・・・・あ?ここは・・・」
ワープポータルによる転移が成功したらしく、目を開くとそこは湿地帯ではなく森の中だった。足元を確認してみると湿地帯で青娥さんが設置した魔法陣と同じものがある。
「おぉ・・・・・・本当に一瞬で移動できるのだな・・・!」
先に到着していたガビルが辺りを見回しながら、少し感動しているかのように呟く。確かにこれは凄い。元の世界でも欲しかったな・・・・・・もし使えれば、家と学校の行き来が滅茶苦茶楽になっただろうに。
「二人共ちゃんと居ますね?よしよし、有り得ませんけど失敗しなくて良かったですわ」
俺に続いて青娥さんもワープポータルで移動し終える。そう呟きながら俺の隣まで歩いて来ると、ふわりと宙へ浮き上がった。
「では、牛頭族と馬頭族の元へ向かいましょうか。彼らはこの先に──」
『ドッ・・・ベキベキ・・・!』
青娥さんがそこまで言い掛けた時、どこかから凄い音が聞こえた。なにか、強い衝突があったような音と、何かが折れて倒れるような・・・・・・もしかして、木が折れたのか?
「今の音はもしや・・・・・・青娥殿!」
「えぇ、連中の戦闘によって生じたものでしょう。今の音からするにそう離れた場所ではない筈・・・・・・アクトくん、ガビルさん。覚悟はよろしいですか?」
「ここまで来た以上、やってやりますよ・・・・・・よし、行くかガビル!」
「うむ!我輩とアクト殿に掛かれば朝飯前である!」
こちらを見つめ確認する青娥さんにそう答え、俺はガビルの方へ振り向いた。俺の視線を受けたガビルは力強く頷き、先程の音がした方向へ歩き出す。彼の後に続くように足を踏み出した俺の隣で、どこか満足そうに青娥さんが微笑んでいた。
牛頭族と馬頭族はまだ書籍版などで姿が描かれてなかったですよね・・・もし既出でしたらすみません