転生したら蜥蜴人族の友人と邪仙の恋人ができた件   作:乃出一樹

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お待たせしました、第23話となります。

クレイマン主役のスピンオフとは驚きましたよね。


牛頭族と馬頭族

「ぶもぉおおおおおおおおおおっ!!!」

 

「がぁああああああああああああっ!!!」

 

 

 

そこに辿り着くと、凄まじい怒号と激しい衝突音が辺りに響いていた。

 

周囲の木々は薙ぎ倒され、地面の至る所に血溜まりが出来ている。予想はしていたが、激しい戦闘が行われているらしい。

 

その戦いを繰り広げているのは二つの種族。片方は、二足歩行する牛の怪物・・・俺のいた世界で言うところの『ミノタウロス』とでも呼ぶべき姿をした魔物、牛頭族(ゴズ)

 

もう片方は、同じく二足歩行する馬の怪物。こちらは何と言おうか・・・・・・あぁ、アレだ。ドラクエⅤに出てきた馬の魔物、『ジャミ』や『ケンタラウス』に似てるんだ。ただ、あちらと違い手だけ人間のようになっている。どうやら牛頭族も馬頭族もそれぞれ武器を使って戦っているようだ。

 

 

 

「へぇ、あれが牛頭族と馬頭族・・・・・・青娥さんが言った通り、名前通りの姿だな」

 

 

 

少し離れたところから隠れて様子を伺いながら呟く。数は・・・・・・どちらも十一人。と、牛頭族と馬頭族たちの数を数えていた時、俺はあることに気が付いた。

 

 

 

「あそこの二人・・・・・・あいつらだけ他の連中より魔素量が抜き出てるな」

 

 

 

それは群れの中央辺りで戦っている牛頭族と馬頭族だった。斧と盾を持った牛頭族と、短槍と盾を持った馬頭族。戦いぶりから見ても、その二人だけ他の牛頭族と馬頭族より強い。それぞれのリーダー格だろうか。

 

そうそう。俺はこの一ヶ月の修行で『魔力感知』を習得している。本当に世界の声というものが聞こえた時は少し驚いたものだ。

 

 

 

「確かに・・・・・・あの者たちだけ別格であるな」

 

「他の牛頭族、馬頭族がBランク程度なのに対して・・・おそらくAランクはありますわね。流石、ジュラの大森林の上位種族」

 

 

 

俺の言葉にそいつらを見たガビルと青娥さんがそれぞれそう口にする。平均がBランク・・・・・・つまりオーガたちと同じくらいの力を持つ種族なのか。あのAランクの二人がいる以上、オーガたちより戦力は上なのかもしれない。

 

 

 

「まぁ、今のアクトくんなら問題ない相手だと思いますけどね」

 

「うむ、その通り。アクト殿は間違いなく、Aランクオーバーの上位魔人であるからな!」

 

「はは、ありがとなガビル。青娥さんも」

 

 

 

褒めてくれる二人に、少し照れつつも礼を言う。自分ではよく分からないが青娥さんたち曰く、俺はオーガたちや目の前で戦っている牛頭族に馬頭族よりも強いらしい。

 

なんでも強さとは一般的に、魔素の量やその者が放つ妖気(オーラ)で測れるそうだ。オーラに関してはなんとなくでも感じ取れるようだが、よりハッキリと確認する為には・・・それと魔素を感知する為には『魔力感知』のスキルが必要とのこと。

 

ちなみに俺は普段はオーラを抑えている。青娥さんに言われ、他のリザードマンたちが怯えないようにする為だったが、そのお陰でこうして隠れることができる。オーラが駄々漏れだとすぐに何かがいると察知されてしまうからな。

 

 

 

「・・・・・・それより、この騒ぎにどうやって混ざるんです?」

 

「んー、そうですわね・・・・・・ここは、誇り高きリザードマン族の時期首領たる、ガビルさんに頑張ってもらいましょうか」

 

「えっ、我輩?」

 

 

 

目の前で繰り広げられる戦いを眺めながら俺は青娥さんに訊ねる。すると青娥さんは少し考えるような仕草をした後、そう言ってガビルに振った。思わずきょとんとするガビルを気にすることなく、青娥さんは言葉を続ける。

 

 

 

「ふふ、難しいことは何もありませんわ。ただガビルさんの威厳あるお姿と声で連中の意識をこちらに向ければ良いだけです」

 

「なぬ?」

 

「ガビルさん程の強者が突然現れれば連中も動揺するでしょう。そこにアクトくんも加わって『ジュラの大森林に暮らす他の種族がお前たちの争いで迷惑してる』、と因縁・・・ではなく、正当な理由を叩きつけて・・・あとはなんとなく言いくるめて、一番強い牛頭族と馬頭族をそれぞれ一対一で倒してください」

 

 

 

言い直したが、確かに因縁と口にした青娥さんに苦笑する。だが、連中の争いのせいで迷惑している者たちがいるのはきっと確かだろう。なんとなく言いくるめて、なんて投げられたのは少し困るが、『他の種族たちから頼まれた』とでも言えば介入する理由にはなるか。

 

 

 

「けど、倒すのはその二人だけでいいんですか?」

 

「えぇ。恐らくあの二人は両者の族長・・・彼らさえ倒せばきっと他の連中も引くでしょう・・・・・・アクトくんなら全員倒すのは簡単でしょうけど、そんなことをすれば二種族から余計な恨みを買ってしまうかもしれませんので」

 

 

 

なんだかんだで、青娥さんはこちらのことを考えてくれているようだ。恐らく心から俺を心配しているとバレるのが恥ずかしいのだろう、視線を合わせずにそう言ってくれた青娥さんに、俺はただ静かに微笑んだ。

 

 

 

「よし、では我輩が先に行こう。リザードマン族の時期首領として、圧倒的な威圧感を放ってみせるのである!」

 

「頑張ってくださ~い♪骨は拾って差し上げますわ~♪」

 

「縁起でもないこと言わないでくださいよ・・・」

 

 

 

胸を叩き自信満々に言い放つと、ガビルは隠れていた茂みから出て連中の元へ歩き出す。こんな時でもお気楽な青娥さんに俺が苦笑していると、彼らの側に近寄ったガビルが叫んだ。

 

 

 

「──そこまでである!野蛮な牛頭族、そして馬頭族共よ!」

 

「あん?」

 

「なに?」

 

 

 

その場に響いたガビルの声に中央辺りで戦っていた牛頭族と馬頭族の動きが止まる。その二人の異変に気付いたのか、周囲で戦っていた他の連中もやがて戦いの手を止めた。

 

 

 

「なんだぁ、お前は?」

 

「リザードマンだと?馬頭族の族長たるこの俺に・・・ついでに牛頭族の族長であるこいつに何の用だ」

 

 

 

ガビルを見据え、そう訊ねる牛頭族と馬頭族。青娥さんの予想通り、彼らがそれぞれの族長らしい。そんな二人の声は戦いを邪魔されたせいか怒りを感じさせるものだったが、それに臆することなくガビルは声を張り上げた。

 

 

 

「知れたこと!ジュラの大森林を荒らす不届き者を成敗しに来たのだ!このガビルと・・・・・・我が友、アクト殿がな!」

 

 

 

高らかにそう宣言するガビル。出るタイミングを見計らっていた俺だが、丁度良く名前を呼ばれたので一つ深呼吸をしてから彼らの元へ向かった。

 

 

 

「人間・・・?こんなところまで来れるということは、冒険者か?」

 

「まぁ・・・・・・そんなとこだ」

 

 

 

本当は冒険者でもなければ人間ですらないのだが、説明が面倒なのでとりあえず適当に答えた。

 

 

 

「俺のことはともかく・・・・・・牛頭族に馬頭族。お前ら、この森でもう百年近くくだらねえ喧嘩をしてるらしいな?」

 

「く、くだらないだとぉ!?」

 

 

 

揶揄うように言った俺の言葉に牛頭族は憤慨する。黙ったままではあるが、その隣にいる馬頭族も怒りを感じさせる顔付きになっていた。その二人に内心少し怯えながらも、それを表に出さないようにしつつ俺は続けた。

 

 

 

「そう怒るなよ。とにかく、お前らのせいで色んな奴らが迷惑してるんだ。つー訳で、この戦いを止めさせてもらう」

 

「他の奴らなど知ったことではない!・・・・・・それより、止めるだと?お前たちが?」

 

「その通り、貴様らを倒してな!牛頭族と馬頭族の族長よ。我輩たちは貴様らに決闘を申し込む!いざ尋常に勝負せよ!」

 

 

 

戦いを止める、そう言った俺をどこか嘲笑うように馬頭族が訊ねる。それに俺が答えるより先に、ガビルが目の前の二人を指差し力強く言い放った。その言葉を聞いた他の牛頭族と馬頭族は、自分たちの族長に対し無礼なガビルに怒りをあらわにする。

 

 

 

「なんだとぉ!蜥蜴風情が、調子に乗りやがって!」

 

「たった二人で何ができる!牛頭族共の前にお前たちから片付けてやるわ!」

 

「──待てッ!」

 

 

 

ターゲットを切り替えた取り巻きの牛頭族と馬頭族たちは、声を荒らげながら俺たちを取り囲む。これは全員と戦わなくてはならない流れか・・・と、思ったその時。牛頭族の族長が声を上げ連中を制した。

 

 

 

「ぞ、族長・・・?」

 

「我が馬頭族の同胞たちよ、お前たちも下がれ」

 

 

 

それぞれの族長からの言葉に両種族の取り巻きは狼狽える。だが、やがて族長の指示に従い俺たちから離れていった。

 

 

 

「・・・・・・いいのかよ?部下たちを戦わせなくて」

 

「ふん、侮るなよ人間。そこのリザードマンが言っただろう、決闘を申し込むとな」

 

「この森で、牛頭族と馬頭族に戦いを挑む者はそう居らん・・・・・・いいだろう。わざわざここまで来たことと、我等に戦いを挑むその勇気に敬意を表し、相手になってやろうではないか」

 

 

 

訝しげに訊ねた俺にそれぞれの族長が答える。どこか見下すような態度ではあるが、割りと武人肌な奴らなのかもしれない。

 

 

 

「ふっふっふ・・・・・・どうやら貴様らを見くびっていたようだ。野蛮ではあるが、一応武人ではあったらしい」

 

「本当に生意気な蜥蜴だ。決めたぞ、お前はこの牛頭族の族長である俺が相手をしてやる」

 

 

 

不敵な笑みを浮かべるガビルを見て、牛頭族の族長・・・族長ゴズもつられたかのように口元を歪ませる。族長ゴズの言葉を聞いた馬頭族の族長・・・族長メズは、手に持っている槍を俺に向け言った。

 

 

 

「ならば、俺の相手はお前だ人間。くっくっく・・・牛頭族との戦いにも少し飽きてきたところだ。たまには別の相手で楽しむとしよう」

 

「そりゃ百年も戦ってりゃ飽きるわな・・・・・・あー、その前に。一応名乗っておくぜ、俺の名前はアクト。よろしくな」

 

 

 

族長メズは残った俺を戦う相手にしたようだ。彼の言葉に冷静にツッコミを入れつつ名を名乗る。しかし、百年もの間決着が付かないということは、両者の戦力はそこまで拮抗しているのだろうか。

 

 

 

「ぐはははっ!馬頭族よ、相手が脆弱な人間だからと言って油断するなよ?他の奴にお前の首を取られては、我等一族のこれまでの百年が無駄になるからな!」

 

「ふん。お前こそリザードマン如きに負けるなよ、牛頭族。お前を倒すのは俺だと言うことを忘れるな!」

 

 

 

バトル漫画に出てくるキャラが言いそうなテンプレ台詞を言い合う族長ゴズと族長メズ。この二人、実は割りと仲が良いのでは・・・?

 

 

 

「随分と余裕であるな、あの二人・・・」

 

「まぁ、オーガに並ぶ上位種族なんだしあんなもんだろ。それにあの二人はAランク級の力があるみたいだし」

 

「それもそうか・・・・・・では、その上位種族たちの鼻を明かしてやろうぞ!」

 

「はは、そうだな」

 

 

 

そう言って笑みを浮かべながらガビルは俺を見る。そんなガビルにこちらも口元を緩ませ答えて、俺たちはそれぞれの戦う相手へと向き直ったのだった。




こっそり『魔力感知』を習得していたアクトくん。
ゴズメズの詳しい姿は分からないので、アニメか単行本の方で情報が入りましたら修正するかもしれません。
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