転生したら蜥蜴人族の友人と邪仙の恋人ができた件   作:乃出一樹

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お待たせしました、第27話となります。

おとわっかを視たんですけど、「あぁ、凄いニコニコって感じだ・・・」って思いました。


指導者

族長ゴズメズたちとの戦いから三日が過ぎた。

 

あれから俺は青娥さんの教えの下、一生懸命『飛空法』の修行に励んでいた。勿論他の修行もしてはいるけども。ちなみにガビルも俺と同じように『飛空法』を教わっている。空を飛ぶことが出来れば今度こそ首領も自分を認めてくれるだろうとのこと。申し訳ないけど、空を飛べるようになっただけでは多分認めてくれないと思う。

 

と、そんな理由で修行するガビルに苦笑しつつ、『飛空法』の修行を続け、三日が過ぎたこの日。

 

 

 

「お、おぉー・・・・・・!おぉーっ!」

 

「飛んだ・・・アクト殿が飛んだぞーーーっ!」

 

 

 

空中を自由に飛び回る俺の姿に地上のガビルが歓喜の声を上げた。そう、俺は遂に『飛空法』を習得したのである。

 

その場に浮くことだけなら修行を始めた日に出来たのだが、こうして自由自在に飛ぶことが中々難しかった。急上昇したかと思えば落下したり、真横に飛んでしまい隣にいたガビルに激突したり、空中でバランスを崩し下にいたガビルに激突したり・・・・・・

 

 

 

「きゃー♪おめでとうございますアクトくん!私もおっぱいを貸した甲斐がありましたわ♪」

 

「・・・・・・・・・・・・・・・」

 

 

 

・・・・・・・・・青娥さんの胸に飛び込んでしまったり。あの時はとても柔らかく・・・・・・じゃなくて。

 

 

 

「あ、あの・・・・・・あの時は本当にすみませんでした・・・」

 

「え?あらあら、そんな顔しないでくださいアクトくん。本当に怒ってませんから私。ガビルさんだったら八つ裂きにしてましたけど」

 

「えっ」

 

 

 

地上に降り、改めて謝罪する俺にいつもの笑顔で青娥さんはそう告げる。最後の一言にガビルは目を丸くしていたが。とりあえず、怒ってはいないようで安心した。あの時も「あらあらうふふー」といった感じで笑うだけだったが。

 

 

 

「あー・・・・・・それより、『飛空法』って簡単なアーツなんですか?まさか三日で覚えられるとは思わなかったんですけど」

 

 

話題を変える為でもあるが、俺は気になっていたことを青娥さんに訊ねた。『気闘法』が出来るようになるまでもう少しかかったのに、空を飛べるアーツをこんなに早く会得できるものなのか気になっていたからである。

 

 

 

「んー・・・アクトくんの場合は『気闘法』と『気操法』を扱えていたから、というのもありますけど・・・・・・もう言っちゃってもいいかなー」

 

 

 

顎に指を当て、なにやら考えるような仕草をしながら青娥さんはそう答える。それから少し悩んでいたが、そう呟いてから話を続けた。

 

 

 

「実は、アクトくんたちの修行を開始してからずっと、私はあるスキルを発動させていたんです。その名も『指導者(ミチビクモノ)』」

 

「『指導者』・・・どんなスキルなんです、それ?」

 

「簡単に説明すると、私に鍛えられる際、通常よりも成長しやすくなる・・・といったユニークスキルですかね。他にも権能が含まれてますけど」

 

 

 

そういうスキルもあるのか。持ち主自身の役にはあまり立たないかもしれないが、原作では霍青娥は豊聡耳神子の師匠であったし、似合ったスキルではある。それを青娥さんに言うとなんのことかとはぐらかされるのだろうが。

 

・・・・・・いや、そんなことよりも。

 

 

 

「・・・・・・そうか。それじゃ、俺が短期間でこんなに強くなれたのは全部青娥さんのおかげで、俺の力じゃなかったのか・・・」

 

「いいえ、それは違います」

 

 

 

僅かに顔を俯かせ呟いた俺の言葉を直ぐ様青娥さんが否定する。先程までとは変わって、その真面目な顔付きと声に俺は少し驚いた。

 

 

 

「確かにこのスキルのお陰でもありますが、『指導者』はそんなに便利なスキルじゃありません。このスキルの効果が発揮されるのは対象次第なんです」

 

「ふむ・・・対象次第とはどういうことだ?青娥殿」

 

「『指導者』は、その対象の強くなりたい、変わりたい、等の思いを強く持った者。それからスキルの持ち主であり、教えを乞う相手であるこの私を師として信じる者・・・そして、相応の努力を積み重ねてきた者。そういった人の成長を手助けするスキルなんです。それ以外の相手では本当に微々たる効果・・・結果しか得られません」

 

 

 

青娥さんの言葉にガビルが首を傾げる。そんな彼を一瞥してから青娥さんはそう続けた。

 

 

 

「勿論、本人の素養も重要ですし、対象が少ない程スキルの効果が増したりもしますが・・・・・・とにかく、成長する為に大切なのは本人の覚悟と努力です。だから・・・胸を張ってください、アクトくん。ついでにガビルさんもね?」

 

 

 

そう言って青娥さんは俺の頭を撫でた。その顔がとても優しく綺麗で思わず見とれていると、ガビルが俺の肩を叩く。

 

 

 

「青娥殿の言うとおりだ。アクト殿がここまで強くなれたのは、アクト殿の努力の賜物!共に修行をした我輩が保証するのである!」

 

「・・・・・・・・・そうか、そうだな。ありがとう、青娥さん。ガビル」

 

 

 

二人の優しさに思わず口元が緩む。俺が二人に感謝を告げると、青娥さんはにこりと微笑み、ガビルは「うむ!」と力強く頷いた。

 

・・・・・・青娥さんに修行をつけてもらって。ガビルと一緒に頑張ってきて、本当に良かった。

 

 

 

「・・・・・・さっ、それではまた修行を始めましょう。ところで、アクトくんは次に覚えたいこととかあります?」

 

「あー・・・覚えたいことじゃないですけど、やりたいことなら少し」

 

「おぉ、流石アクト殿。常に意欲的であるな。して、そのやりたいこととは?」

 

 

 

ガビルの問いに言葉が詰まる。俺のやりたいこと、それは出来ればガビルには内緒にしておきたいのだ。

 

 

 

「えっと・・・・・・それは、だな・・・あー・・・」

 

「ガビル様ーーーっ!」

 

「む?」

 

 

 

なんと答えようか悩んでいたその時、ガビルを呼ぶ声が響く。声のした方を見ると、ガビルと親しくしている部下である緑とモスと忍者の三人、それと爺さんがこちらに向かってきていた。

 

 

 

「やっぱりここで修行してたな、ガビル様!」

 

「お前たちか。一体どうした?」

 

 

 

そう言って小走りでガビルの元までやってきたモスたちに何事かとガビルが訊ねる。その問いに緑が慌てた様子で答えた。

 

 

 

「それが大変なんだよ!畑の近くに弧刃虎(ブレードタイガー)が現れたんだ!」

 

弧刃虎(ブレードタイガー)だと!?」

 

 

 

緑から聞かされた内容にガビルが驚く。弧刃虎(ブレードタイガー) ・・・・・・以前爺さんにこの森に生息する魔物について訊ねた際にその名前を聞いた記憶がある。確かBランクの魔獣で、並みのオーガに匹敵する強さを持っているらしい。

 

数を揃えれば通常のCランクのリザードマンたちでも倒すことは可能だが、犠牲が出る可能性は否めない。確かに大変な事態のようだ。

 

 

 

「それだけでは御座らぬ。さらにリーチリザードの群れが、別の地下洞窟入り口付近で確認されたらしく・・・」

 

「リーチリザードまでか・・・!」

 

「やれやれ、これも邪竜消失が原因なのですかねぇ・・・」

 

 

 

やがて、ゆっくりと歩いてきていた爺さんも輪に加わりそう呟く。なんでも、その邪竜がいなくなったせいで森の魔物たちが活性化しているらしい。恐れていた化物がいなくなったから好き勝手に暴れてやろう、なんて思っているのだろうか。

 

 

 

「その二つの問題の報告を受け、首領はそれぞれの討伐隊の編成をガビル様に任せたいとのことです。それと、ブレードタイガーの討伐隊にはガビル様も加わって欲しいと」

 

「親父殿が?・・・・・・よし、分かった。すぐに行こう」

 

「ガビル、俺も手伝うぜ」

 

「いや、問題ない。ここは我輩たちでどうにかしてみせる。親父殿に我輩の力を見せるチャンスだからな!」

 

 

 

手伝おうとガビルに声を掛けたが、それをガビルは手で制した。少し心配になるが、今のガビルなら実力的に問題ないだろう。油断さえしなければ大丈夫な筈だ。

 

 

 

「・・・・・・分かった。気を付けてな、ガビル」

 

「うむ!では、我輩は失礼するのである。済まぬな青娥殿、折角修行を付けてくれているというのに・・・」

 

「お気になさらず。修行ならいつでも出来ますわ」

 

「はは、そう言ってくれると有り難い。よし、行くぞお前たち!」

 

「おーっ!」

 

 

 

青娥さんに頭を下げたガビルは首領の元へと向かって行った。そのガビルの後を三人の部下たちが付いていき、その場には俺と青娥さん、それに爺さんの三人だけが残る。

 

 

 

「・・・・・・さて。それじゃあガビルさんがいなくなったことですし、何をやりたいのか教えて頂けます?」

 

 

 

首領の元へ向かうガビルの背中を眺めていると、ガビルに声が聞こえないくらいの距離が空いたのを確認した青娥さんがそう訊ねてきた。何故かその場に残った爺さんが興味深そうに俺を見る。

 

 

 

「おや。アクトさん、今から修行をするのではないのですか?今日はどんな修行内容なのかと、気になって見に来たのですが」

 

「はは、悪いな爺さん。もしかするとしばらく修行は出来ないかもしれないんだ」

 

「それはまた、一体どうして・・・?」

 

「・・・・・・・・・実は、ガビルに新しい槍をプレゼントしたいんだ」

 

 

 

俺のその言葉に爺さんは目を丸くする。青娥さんは予想していたのか、特に変わった反応は見せずにいたが。

 

三日前、族長ゴズメズたちと戦った時から考えてはいた。今の槍ではガビルの力に耐えられないと言うのなら、耐えられる槍を用意すればいい。だが、あれから三日経ってもガビルは市販の槍を使い続けている。

 

 

 

「なぁ爺さん。ガビルは新しい槍を買おうとしないのか?」

 

「欲しい、とは思っているでしょうが・・・・・・諦めているのでしょう」

 

「アクトくん。あなたにはまだ詳しく教えていなかったから仕方ないですけど、一般級(ノーマル)以上の武器や防具ってとんでもない値段がするんですよ。Cランクくらいのそこそこの冒険者ならまだしも、リザードマンなどでは一般級(ノーマル)より一つ上の特上級(スペシャル)の購入すら厳しいと思います」

 

 

 

爺さんの返答に俺が何故、と問う前に青娥さんが補足する。やはり金銭的な問題か、なんとなく予想は付いてたけど。

 

 

 

「首領が持つ、水渦槍(ボルテクススピア)なら今のガビル様の力にだって耐えるでしょうがね・・・なにせリザードマン族に代々伝わる特質級(ユニーク)の武器ですし」

 

 

 

目を伏せながら爺さんが呟く。確かに特質級ならば十分過ぎる程の武器だろうが、あれはリザードマンの首領が持つべき物。ガビルの手に渡ることはまだ無いだろう。

 

とにかく、これまでの槍ではガビルの力に耐えられない。しかし、強い武器を買う金は無い。ならば──

 

 

 

「やっぱり、造るしかないよな・・・・・・俺が」

 

「はっ?」

 

「えっ?」

 

 

 

決意し、そう呟くと爺さんと青娥さんが驚いた様子で俺を見る。二人して似たような反応をしたので、面白さから少し口元を緩ませつつ俺は二人に向け言葉を続けた。

 

 

 

「だって、買う金が無いのなら自分で造るしかないじゃないですか」

 

「それはそうかもですが・・・・・・うーん・・・まぁ、アクトくんのスキルがあれば一般級以上の武器を造れるかも・・・?」

 

「でしょ?でも、造るにしたって道具もなければ方法も俺は知らない・・・・・・だから、ドワルゴンへ行こうと思います」

 

 

 

ドワルゴン。青娥さんから教えて貰った、武装国家とも呼ばれるその国はジュラの大森林より北に位置する技術大国である。技術大国と呼ばれる理由は、国民のほとんどが知的好奇心に富み、手先が器用とされるドワーフ族だからなのだそうだ。恐らく、俺が知るファンタジー系の作品に登場するそれと似たような種族なのだろう。

 

そのドワルゴンに行く理由だが、それは俺の持つスキルにある。俺の『脱獄者』に含まれる権能『道具作成』・・・これはなんでも自由に作れる力、とは少し違う。

 

例えば、俺たちが外で食事をする際に使用している、俺が作ったテーブルと椅子があるが、あれらはただ材料にスキルを使用して生み出した物では無い。スキルを使用しつつ、道具を用いて材料を加工し作り出した物なのだ。

 

つまり、俺のスキルは過程をある程度省けはするが、何かを造る際には、それを造る為の最低限の知識と道具が必要なのだ。簡単な物なら、ただスキルを発動するだけで造れる場合もあるかもしれないが。

 

そういう訳で。武器の作り方を誰かに教えて貰って、ガビルの槍を手作りする為にドワルゴンへ行こうと思い立ったのである。聞くところによるとドワルゴンは種族による区別が無く、人間、魔物問わず多彩な種族が行き交い、等しく取引を行える自由貿易都市なのだとか。そこなら、ドラゴニュートである俺でも堂々と街中を歩けるだろう。

 

 

 

「成程・・・・・・確かにそういうことであれば、ドワルゴンは丁度良い場所ですね。腕の良い鍛冶師も多くいるでしょうし」

 

「爺さん。ドワルゴンまではここからどのくらいかかる?」

 

「そうですね、ここからだとドワルゴンへは・・・・・・アメルド大河を北上し二ヶ月程ですね」

 

 

 

顎を触りながら爺さんがそう答える。に、二ヶ月か・・・・・・それは中々の距離だぞ・・・

 

 

 

「とは言え、それは普通に歩いて行った場合ですので・・・アクトさんならもう少し早く辿り着けるのでは?」

 

「そうですね。アクトくんは足の速さは勿論、体力だって並みの人間やリザードマンを大きく上回っていますし。なにより会得した『飛空法』と『脱獄者』の権能『加速』もあれば、恐らくドワルゴンまで数日で行けるでしょう」

 

 

 

ドワルゴンまでかかる日数を聞き思わず表情を引きつらせる俺だったが、その後の爺さんと青娥さんの言葉でほっと胸を撫で下ろした。良かった、流石に二ヶ月も一人旅は辛いだろうし。

 

 

 

「数日・・・・・・それなら何とかなりそうだな。よし、それじゃ早速行ってきますね青娥さん」

 

「お待ちなさいなアクトくん。ガビルさんの槍を造るのは別に構いませんが、一つ大切な物を忘れていますよ」

 

 

 

ドワルゴンへ向かう為に、出発の準備をしようとしたその時だった。背中越しに青娥さんの声が響き、俺は彼女の方に振り返る。

 

 

 

「大切な物って?」

 

「素材ですよ、素材。いくら知識や道具を揃えたって、肝心の素材がなければ武器を造れないじゃないですか」

 

 

 

成程、素材か。武器を造るのであれば、やはり鉄鉱石だとかそういった物が必要になるのだろう。

 

 

 

「あー・・・忘れてましたね。けど、素材くらいドワルゴンで買えば良くないですか?」

 

 

 

なんでもドワルゴンはカナート大山脈という山の内部に都市が作られており、鉱山が都市の内外にいくつも存在しているらしい。そんな場所なら鉱石くらいいくらでも購入できるだろう。

 

 

 

「確かに買えるとは思いますよ。普通の素材ならね」

 

「普通のって・・・・・・どういうことです?」

 

「アクトさん。料理を嗜むあなたなら分かると思いますが、美味しい料理を作るには素材も大切ですよね?」

 

 

 

青娥さんの代わりに爺さんが答える。その答えで全てを察し、俺は頭を掻いた。

 

 

 

「あー・・・・・・つまり、一般級以上の武器を造るのなら、その辺で売ってるような素材じゃ駄目だと」

 

「余程腕の立つ鍛冶師であれば、並みの素材でも特上級(スペシャル)くらいなら造れるかもしれませんけど・・・やはり質の良い素材を使った方が強い武器になるでしょうね」

 

「・・・・・・まぁ、そういった良い素材というのも中々の値段となっていますが」

 

 

 

青娥さんの言葉の後、苦笑しつつ爺さんが続ける。そして再び立ちはだかる金という壁。もしかして詰んだのでは?そんな思いを俺の表情から読み取ったのか、困ったような笑みを浮かべた青娥さんが俺の手を取った。

 

 

 

「・・・・・・もう、仕方ありませんわ。アクトくん、私も手作ってあげますからそんな顔しないでください」

 

「えっ?いいんですか。でも・・・・・・手伝うったって、なにを・・・」

 

「んー・・・やっぱり素材の確保ですわね。良い素材が取れそうな場所に心当たりがありまして」

 

「おや、そんなところを御存知なのですか?」

 

「ふふ・・・あなたたちリザードマンもよく知ってる場所ですよ」

 

 

 

その言葉に爺さんははて、と首を傾げる。リザードマンたちも知ってる・・・?そんな場所があればとっくに爺さんが教えてくれていると思うが。

 

少し考えてもやはり思い当たらない様子の爺さんを見て青娥さんはくすりと笑う。そしていつもの飄々とした顔をしながら、青娥さんは事も無げにこう言い放ったのだった。

 

 

 

「それじゃあ早速向かいましょうか、アクトくん。暴風竜が封じられていた──封印の洞窟へ」




今回からしばらくガビルの出番はありません。辛いですね。
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