転生したら蜥蜴人族の友人と邪仙の恋人ができた件 作:乃出一樹
今回は少し短めです。
封印の洞窟。
シス湖から見て西にあるその場所は、ジュラの大森林周囲の国家に大きな影響を及ぼしていた。各国、地域については長くなるので一つを除いて説明はまたの機会とするが、大まかな情勢としてはこうだ。
人間と魔物は基本的に敵対しており、『魔王』と呼ばれる存在も当然人間とは敵対関係にある。しかし積極的に争うというよりは、互いに警戒しつつも不干渉という雰囲気らしい。
その理由が、邪竜こと暴風竜ヴェルドラの存在。以前爺さんからも聞いたのだが、暴風竜の存在によって各勢力の間に暗黙の不可侵の空気が生まれ、ジュラの大森林は一種の緩衝地帯としてこの辺りは安定しているのだとか。そのお陰で、西側諸国からすれば東の帝国に対する抑止力ともなっている。
『力こそ全て』。東の帝国と呼ばれる(正式名称は勿論あるが、長いので今回は割愛)そこはその言葉を体現したような国で、実力があれば出世できる特殊な形態の軍を所有しているという。
そんな東の帝国はかつて、封印される前の暴風竜に都市を一つ滅ぼされているらしい。そこにいるだけで抑止力となるだけはあり、青娥さん曰く並みの魔王より暴風竜は遥かに強いそうだ。そのせいか、暴風竜が封印されたジュラの大森林の先にある国家にはそれ以来攻め入ったことはないと言う。
そんなこんなで、人々は暴風竜ヴェルドラが封印されていた洞窟を中心とする、ジュラの大森林西部の地域を『不可侵領域』と呼び、そこへ近付かなくなったのだ。
「・・・・・・と。こんなところですわね」
「へー・・・詳しいですね、青娥さん」
件の封印の洞窟の入り口で、俺は青娥さんからそんな話を聞かされていた。
つい先程、湿地帯で「封印の洞窟に行こう」と言い出した青娥さんに連れられ、俺はいまここにいる。ちなみに今回は青娥さんの『空間移動』でやってきた。
封印の洞窟に向かうと青娥さんが言った時、最初爺さんは慌てて俺を引き留めようとした。なんでも封印の洞窟は強力な魔物が多く跋扈しているらしい。と言うのも、実は魔物は通常の生殖行動によってのみ生まれてくる訳では無く、魔素から自然発生することもあるのだという。そして封印の洞窟は暴風竜から溢れた魔素で満ちている為に強い魔物が多く生まれて、それらの巣のようになっていることから危険なんだとか。
しかし、俺がAランクの魔物である馬頭族の族長を倒したこと。そして俺とガビルを鍛えてくれている青娥さんは俺たちよりも遥かに強いこと。それらを青娥さんに指摘された爺さんは「あ、じゃあ心配要りませんね」とあっさり主張を変えたのである。
そのようなやり取りの後、ガビルにこのことをうまく誤魔化すよう爺さんに頼み、ここ封印の洞窟へやって来たのだった。
「・・・・・・ところで、ここに良い素材があるって本当ですか?」
「えぇ。ここならきっと『魔鉱石』が採れる筈ですので」
「『魔鉱石』?」
青娥さんの口から出た単語が気になり、聞き返すように訊ねる。その俺の問いに青娥さんはいつもの笑みを浮かべながら答えてくれた。
『魔鉱石』とは、魔素を含むことにより突然変異した鉱石のこと。ただし並みの魔素では意味がなく、最低でもBランク以上である上位の魔物が生息している魔素の濃度が濃い場所でしか発生しないらしい。ここ封印の洞窟に封印された暴風竜は並みの魔王以上の力を持っている・・・つまり、魔素も非常に濃く膨大な筈。なのでこの場所は魔鉱石が生成される条件としては十分過ぎるんだとか。
鉄鋼より硬度があり、かつ柔軟な金属素材である魔鉱石。需要が高く、入手には危険が伴う為、金に匹敵する価値があるそうだ。
「その魔鉱石に僅かに含有されている『魔鋼』という物がありまして。なんとそれを素材として造られた武器は成長するんですよ」
「武器が、成長・・・?」
再び訊ねる俺に青娥さんは説明を続ける。
『魔鋼』は魔力の誘導と非常に相性が良く、それを用いて造った武器の性能が良いのは勿論のこと、さらに使い続けていると使用者のイメージに沿って変化・・・成長するかもしれない武器を造れるらしい。戦闘中に自由自在に形状を変化させることも可能だとか。流石ファンタジー、成長する武器とは驚いた。
戦闘中に形状を変える武器というと、個人的には『BLEACH』の斬魂刀や『冒険王ビィト』の才牙を思い出す。ん?才牙か・・・・・・
「まぁ、ガビルさんにそこまでの武器は宝の持ち腐れのように思えますけどもね」
「そんなことないですよ青娥さん。確かに今のガビルは俺より弱いけど、いつか俺と同じくらい・・・・・・いや、俺より強くなるかもしれませんよ?」
「・・・・・・アクトくんのガビルさんへの謎の信頼はどこから来るのか不思議ですよ、本当に」
どこか呆れたように呟く青娥さん。彼女からするとガビルの評価は低いのかもしれないが、俺からすればガビルは仲間思いで努力家な良い友人なのだ。少し調子に乗りやすくはあるが、そこだって誰かが抑えてやれば問題ないし。
とにかく、魔鉱石ならば素材としては十分だろう。それを使って、最低でも
「・・・・・・さて、と。お喋りはこのくらいにして」
長々と会話していた俺たちだが、青娥さんがそう言って洞窟の入り口へ向き直ったことでそれを中断する。暴風竜ヴェルドラが封じられていた、強力な魔物が多く生息する洞窟・・・・・・俺はともかく青娥さんに勝てる魔物なんていないだろうが、油断は禁物だ。青娥さんに頼りきりというのも格好悪いし。
「よし・・・・・・それじゃ、行きますか」
「うふふ・・・私のこと、しっかり守ってくださいね。アクトくん?」
「が、頑張ります・・・」
悪戯な笑みを浮かべながらそう告げる青娥さんに苦笑する。なにかあった時に守られる側になるのは俺だろうからな・・・・・・
少しばかり不安はあったが、まるでダンジョンに挑む冒険者のようで、かなり興奮している自分もいる。
そんな浮わつく気持ちを抑えながら、俺と青娥さんは封印の洞窟の中へ一歩踏み出したのだった。
子供の頃、冒険王ビィトが大好きでした。連載再開が決まった時は本当に嬉しかったですね。