転生したら蜥蜴人族の友人と邪仙の恋人ができた件 作:乃出一樹
今回はあの三人が登場します。
封印の洞窟内部は、爺さんの言うとおり危険な場所だった。足を踏み入れてから三十分もすると、ここに生息している魔物たちに襲われ始めたのである。
とは言っても、C+ランクの
ちなみに、名前とランクは全て青娥さんに教えて貰った。今のところ遭遇した魔物の中で一番弱いのはジャイアントバットだが、それでも並みのリザードマンよりも強い。しかもそれらが何匹も生息している洞窟なら爺さんも恐れるだろう。
そんな感じで、ちょくちょく襲ってくる魔物は俺が倒していたのだが、全員に必ず止めを刺せと青娥さんに言われた。そこまでしなくても良いとは思ったのだが、なにか考えがあるのだろうと言われたままにしていたところ、闘気弾によって貫かれた一匹のブラックスパイダーが、腹から小さな石のような物を落とした。
なんでもそれは『魔石』と呼ばれるもので、魔物を倒すと希に手に入る魔素の塊らしい。なんでもこれはマジックアイテムの素材になったり、なにかの燃料になったりもするそうで高値で取引されるんだとか。上位の魔物になるほど、より豊富なエネルギーを保有した魔石を落とすそうだ。
金になるのならばとより張り切って魔物たちを倒し始めた俺だが、流石に時間を食い過ぎたとあって青娥さんの指示の下一時中断。そこからは魔鉱石を探すことを優勢し、魔物たちを無視しより深くへ急いで向かう為に『飛空法』で移動することに。
そんなことがあり、覚えたての『飛空法』の練度を上げる良い機会だと思い、青娥さんの後に続く形で洞窟内を全速力で飛行していた・・・・・・のだが。
「・・・・・・・・・・・・・・・あの、青娥さん」
「ふふっ。魔物を沢山殺して色々手に入りましたし、あとは魔鉱石を見付けてこんな洞窟からはさっさと脱出しましょー!」
「いや色々って、魔石しかなかったですよね?しかも少しだけだし・・・」
「あぁ、こちらの話ですのでアクトくんはお気になさらず~」
俺の問いにそう返事して誤魔化す青娥さん。そういえばさっき、俺が倒した魔物の死体をちらちら見ていたような気がするが・・・・・・いや、そんなことは今どうでもいい。それよりも、現在進行形で──
「見えてるんですよ青娥さん・・・!パンツ!」
そう、俺の前を飛ぶ青娥さんのスカートの中が丸見えなのである。水色のスカートの中から覗く、アダルトな黒の下着と白く柔らかそうな双丘、そして程好く肉付いた太ももが・・・・・・って、何考えてんだ俺!
「やーん!アクトくんのエッチ♪そんなに熱い視線を送られたら、私どうにかなっちゃうかも~♪」
「変なこと言うのやめてくれますぅ!?」
前方でけらけら笑いながらスカートを抑える青娥さん。しかし、それは抑えるフリで、スカートの中を隠すのにあまり意味が無い。つまり相変わらず大公開されていた。思春期の男子高校生にはあまりにも厳しすぎる状況である。
せめて隣に並ぶことが出来ればいいが、地力が違い過ぎるのか青娥さんに追い付けないでいる。ちなみに『加速』はもう使い切った。それを使えば追い抜かせると思っていたのだが、なんと青娥さんは俺に合わせて速度を上げてきたのだ。
一応、『加速』の効果中は青娥さんの隣に並ぶことができたのだが、ちらりと横を見ると青娥さんはにこにこと微笑んでいた。多分、まだスピードを上げようと思えば上げられるんだろう。本当に底が知れない人だ。
「ほらほら、ちゃんと付いて来てくださいねアクトくん?私とはぐれたら迷子になっちゃいますよ~?」
そもそも青娥さんの後を追うように飛んでいるのは、青娥さんがどんどん奥へ進んで行ってしまうからなのだ。それなりに奥へ潜ってきていて、もう俺には帰り道が分からなくなりかけている。そんな状況で頼りになる青娥さんとはぐれることだけは阻止しなければならない。青娥さんは『空間転移』が使えるし、他にもなにか便利なスキルや魔法を持ってそうだから、仮に迷っても一緒にいればなんとかなりそうだし。
「あぁあああああったく!目を瞑って飛ぶのは流石に危ないだろうし・・・・・・・・・ん?」
洞窟内は入り組んでいるし魔物もいる。こんな場所で目を瞑ったらなにかにぶつかるかもしれないし、青娥さんを見失ってしまうかもしれない。どうしたものかと考えていたその時、『魔力感知』のスキルがあることを思い出した。
(そうだ、これを使えば・・・・・・おぉっ!)
早速『魔力感知』を使用し目を閉じてみると、何も見えていないにも関わらず前方を飛ぶ青娥さんや周囲にいる魔物の存在を感知出来た。なんとも不思議な感じだが、これなら青娥さんの策略(?)に惑わされることは無い。
(いいぞいいぞ・・・!このまま『魔力感知』を使って魔物を避けつつ青娥さんの後をくっついて行けばいい!岩とかの位置は分からないけど、それも青娥さんの後に続けば自然と避けられるから問題ない!この勝負、俺の勝ちだ!)
何の勝負なのか全く分からないが、心の中で無駄に勝ち誇りながら俺はほくそ笑む。途中から前を向いていた青娥さんは俺の状態にまだ気付いていない。いずれバレるとは思うが、少しの間は心を乱されずに落ち着いて飛行が出来る筈・・・・・・と思っていたのだが。
「・・・・・・・・・・・・あら」
「えっ」
前方を飛んでいた青娥さんが突然その場で停止した。なにかトラブルでもあったのかもしれないが、目を閉じている俺には何も分からない。しまったと思いつつ急停止しようとした時、俺は大変なことに気付いてしまった。
「う、おおおっ・・・・・・!止まらねぇ・・・!?」
そう。全力で飛んでいたせいか勢いが止まらず、すぐに止まれないのである。もっと俺の地力が増して『飛空法』を完全に極めればなんとかなるのかもしれないが、今の俺では難しいらしい。『思考加速』を使い何か良い手はないかと考えるが策は何も浮かばず、必死にブレーキを掛けても勢いを殺し切れない。元々そう距離が離れていなかったのもあり、青娥さんはすぐ目の前まで迫っていた。なんとか直前で止まれるかどうかといったところで、ぶつかりそうになった俺は咄嗟に手を前に出した──瞬間。
『むにっ』
「はっ?」
突如、柔らかい感触が手の平いっぱいに広がる。どうやらその柔らかい何かがクッションになり俺の勢いを止めたらしい。予想外の展開に思わず間の抜けた声が漏れるが、目の前にいた人が誰だったか思い出し冷や汗が流れる。どうか間違いであってくれと祈りながら、恐る恐る目を開けると、その祈りも虚しく俺の右手が青娥さんの尻を鷲掴みしていた。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・あ、あの・・・・・・これは・・・・・・」
「・・・・・・・・・あー・・・・・・♡アクトくんってば、本当にエッチですねぇ・・・♡」
狼狽えながらゆっくりと顔を上げると、後ろを向いた青娥さんと目が合う。自分の尻に触れている手と俺の顔を見た青娥さんは、今まで見たことのないような蠱惑的な笑みを浮かべた。そんな青娥さんを見た俺は顔が一気に熱くなり、混乱しながらも声を上げた。
「すっ───すすすすみませんすみませんすみません!!!今のは事故でわざとじゃなくて・・・・・・・・・本当にごめんなさい!!!」
俺は慌てて謝罪の言葉を口にしながら地面に降り立つ。そのまま土下座し、手に残った熱と感触、そしてたったいま青娥さんが見せた表情を忘れようと必死に頭を地面に叩き付けた。
「ちょっ・・・やめてくださいアクトくん。大丈夫ですよ、私怒ってませんから」
そう言いながら青娥さんが俺の前に降り立つ。その顔を見ると困ったような笑みを浮かべているだけで、確かに怒ってはいないようだ。
「ほ、本当に許してくれるんですか・・・?俺みたいな男に体を触られたんですよ?しかも二回目だし・・・」
「だから平気ですって。アクトくんのことはこう見えて気に入ってますし、わざとじゃないのも分かってますから。ガビルさんだったらわざとじゃなくても去勢しますけども」
震える声で訊ねる俺の頬に触れながら青娥さんはそう答えた。相変わらずガビルにだけ厳しいところに少し苦笑した後、こちらに優しく微笑む青娥を見て、俺は少し落ち着きを取り戻した。
「ほらほら、ですから早く立ってくださいな。服が汚れちゃいますよー」
「そう、ですね・・・・・・ありがとうございます、青娥さん」
「それはもしや私のお尻を触ったことへの感謝の言葉ですか・・・!」
「違ぇーーーよ!!!」
思わず突っ込んだ俺に青娥さんはけらけらと笑い出した。互いにいつもの調子に戻って安心したが、相変わらず青娥さんに振り回される自分の姿に溜め息を吐き頭を掻く。
「ったく・・・・・・それより青娥さん。さっき急に止まったのは何でです?」
「え?あぁ、アレですよ」
アレ、と言いながら青娥さんが前方を向く。そこには巨大な鉄の扉があった。人間の倍以上もあるサイズの扉に俺は少し驚きながらも、それが開いていることに気付いた。
「あ?青娥さん、あの扉開いてますよ」
「みたいですね。多分外から誰かが開けたんでしょう。確か『ブルムンド』のギルマスがここの調査をすると言ってましたし、依頼を受けた冒険者が奥にいるのかも」
頬に指を当て、考えるような仕草をしながら青娥さんが答える。『ブルムンド』とは、ジュラの大森林に隣接する国の一つ。王政の小国で、目立った産業は無いのどかな辺境の国らしい。以前、修行の合間に青娥さんから聞いたことがある。
ちなみに、ギルマスというのはブルムンドは勿論、各国に存在する
「そういや、青娥さんはブルムンドに住んでるんでしたっけ」
「えぇ。寝るのとギルドに顔を出す為にですが、一応そうですよ。人間の冒険者としてあそこでは暮らしてます」
青娥さんならもっと大きな、都会のような所に住んでそうだが・・・・・・仮にも仙人キャラ(?)だから田舎で暮らしているのか?いや、それで通すなら山奥にでも籠るよな。
「あの、青娥さん。どうして青娥さんはブルムンドに──」
『ぎゃああああああああああああああっ!!!』
「んっ?」
何故ブルムンドに住んでいるのか、そう訊ねようとした時だった。巨大な扉の向こう側から複数の人間の悲鳴が響いた。何事かと青娥さんと一瞬顔を見合せた後に声のした方を見る。すると、扉の向こうに三つの人影が見えた。
「ギドさぁん!どうして『隠密』解除しちゃったんですかぁ!?」
「勘弁してくださいよお嬢!いくらなんでもアーツをずっとは使い続けられませんぜ!というかカバルの旦那!あっしの休憩中にどうしてちゃんと見張りしといてくれなかったんですかい!?」
「してたっつーの!してたけど仕方ねぇだろ!まさか天井から『エビルムカデ』が襲ってくるなんて思わなかったんだよ!」
なにやら言い争いをしながらこちらに向かって必死に駆けて来る三人。その内の一人、大剣を背負った男が叫んだ内容が気になり三人の後方を『魔力感知』で見てみると、洞窟の天井と地面を高速で這うように移動する何かが二体確認できた。恐らくその二体が『エビルムカデ』とかいう存在なのだろう。
「あら、エレンさんたちじゃないですか」
「知り合いなんですか?」
「えぇ。ブルムンドの自由組合に所属する冒険者の三人です。成程、この洞窟に調査しに来たのは彼女たちだったんですねぇ」
悲鳴を上げながら逃げている三人を眺めながら青娥さんは呑気に呟いた。その様子に少し呆れながらさらに訊ねる。
「あの・・・・・・助けないんです?」
「んー・・・・・・エレンさんたちの冒険者ランクは『B』なのに対しエビルムカデの魔物ランクは『B+』・・・しかも二匹。勝ち目はほぼ無いでしょうけど、あの三人なら逃げきれますね。あの扉もありますし」
エビルムカデとかいう魔物、オーガより強いのかよ・・・・・・そんな魔物がうようよいるこの森ホント怖いわ。
と、それはさておき。青娥さんの知り合い三人の逃げ足は中々だ。それによく見ると少女(恐らく彼女がエレンだろう)が魔法で攻撃をして足止めの役割を果たしている。そしてもうすぐ到達するであろう扉も、人間なら十分に通れるだけ開いているが、うっすらと確認できるエビルムカデの巨体では通過するのに手間取りそうに見える。まぁ体当たりで破壊されるかもしれないが・・・成程、確かに青娥さんの言うとおり逃げ切れそうではある。あるのだが・・・・・・
「・・・・・・やっぱ、見てみぬフリはしたくねぇな。青娥さんの知り合いだし」
「あら♪ふふふ・・・・・・それじゃ、よろしくお願いしますね。アクトくん?」
青娥さんより前に出て前方を見据える。どこか嬉しそうな青娥さんの声に頷くと、俺は右手に闘気を集中させた。
「うぉおおおおおっ!早く来いお前らーっ!」
「ひぃいいいいいいっ!?」
そんな青娥さんとのやり取りの後、すぐに三人が扉まで到達する。その三人が扉を通ってこちら側に来たことを確認した俺は、扉の向こう側にいるエビルムカデに狙いを定め攻撃を行った。
「行くぜ──『操気弾』!」
「なっ!?」
俺の放った『操気弾』は三人の間を縫うようにして飛んで行く。突然飛んできた物体に驚く三人の視線を集めながら、丁度扉を通ろうとしていたエビルムカデの頭部を『操気弾』は撃ち抜いた。その勢いのまま、『操気弾』は軌道を変えもう一匹のエビルムカデへと向かう。仲間がやられたところを見て警戒した様子のエビルムカデだったが、俺の『操気弾』の速度と動きに対応出来ず胴体を貫かれ、動きの鈍ったところにもう一度直撃した『操気弾』の爆発により絶命した。
「よし、一丁上がりっと」
「す、すげぇ・・・・・・あのエビルムカデを・・・しかも二体纏めてあんなにアッサリ・・・」
「カバルの旦那。どうやらあそこの兄さんが助けてくれたみたいでやす・・・・・・って、ありゃ!?青娥の姉さん!?」
「えーっ!?どうして青娥さんがここにいるんですかぁ!?」
カバルと呼ばれた男が目の前でエビルムカデを倒した俺に驚いていると、残りの二人が青娥さんの姿を見て驚く。その声に青娥さんはいつもの笑みを浮かべながら手を振って答えた。
・・・・・・そう言えば、この世界に来て初めて会う人間たちだな、この三人。青娥さんの知り合いらしいし、洞窟攻略の休憩も兼ねて少し話してみるとするか。
という訳で、カバルたちとの出逢いでした。