転生したら蜥蜴人族の友人と邪仙の恋人ができた件 作:乃出一樹
仕事が忙しかったり、行きたくもない職場の飲み会とかに付き合ったり、FGOやったり、グラブルやったり、ポケモンやったりしてました。
そうですね、先週と同じです。
俺たちの前に颯爽と現れた声の主も、オーガたちと同じく人外の者だった。
二足歩行している緑色のトカゲのようなそいつ・・・『ガビル』は槍を手にし、俺を殺そうとしていたオーガたちと向かい合う。
「
「
どうやらあのガビルという奴は『リザードマン』という種族らしい。二人のオーガはガビルが現れたことに・・・いや、どちらかというとガビルに名前があることに驚いているようだった。
(なにを驚いてるんだ、こいつら・・・もしかして、名前を持ってる奴って珍しいのか・・・?)
「そこの人間よ、安心するが良い!我輩が来たからにはもう何も怖れることなどないのである!」
場違いなことをぼんやりと考えていると、ガビルがこちらを向きそう声を掛ける。突然声を掛けられたことに驚き、マトモな返事ができなかった俺を見てガビルは目付きを鋭くした。
「なんと酷いことを・・・!か弱い人間を二人がかりで、声も出せぬ程に痛めつけるとは・・・・・・これが森の覇者とも呼ばれるオーガのすることであるか!?」
少し勘違いしながらも、ガビルは怒りを露にしオーガたちに怒鳴る。オーガたちは顔を見合せると、やがて嫌な笑みを浮かべガビルへと向き直った。
「はっはっはっ!おいおい、なんだよ。正義の味方気取りだぜこのリザードマン!」
「なにがおかしい!悪しき者に虐げられている者を救おうとすることは当然であろう!」
「悪しき、だと?・・・・・・くっくっくっ・・・リザードマン、一つ教えてやろう」
ガビルの言葉に笑い出す黒髪。その反応を見て黒髪を強く睨むガビルに、銀髪はやや呆れた様子を見せながら笑って答えた。
「俺たち『魔物』は力こそ全てだ。善も悪も関係ないんだよ」
(魔物・・・!やっぱり、ここは異世界なのか・・・!?)
なんとなくそうなのではないかと考えていたことだが、改めてその事実を突き付けられると言いようもない不安感に襲われた。呆然とする俺を他所に、ガビルたちの間に言葉が続く。
「なんと・・・!では、強き者は何をしても許されると!?」
「そうだ!俺たちオーガは強い!そしてそこの人間は弱い!俺に言わせれば、弱いことこそ悪なんだよ!」
「おのれ、オーガ・・・!貴様らには強者の誇りはないのであるか!」
嘲笑うオーガたちにガビルはより一層怒気を強めた。手にしていた槍を奴らに構え、臨戦態勢に入る。そのガビルの姿を眺め、俺は思わず拳を握りしめていた。
彼らは魔物で人間とは違う。もしかしたら、この世界ではオーガたちの方が正しくて、ガビルが間違っているのかもしれない。
それでも、仮にそうだとしても。
俺には・・・・・・理不尽に消えようとしていた命に手を差し伸べようとした、このガビルという魔物がとても輝かしく見えたのだ。
そう、ずっと憧れていた・・・画面の向こうにいる英雄たちのように──
「えぇい、もう我慢ならん!話し合いで済むのであれば見逃そうと思っていたが・・・・・・貴様らはこのジュラの大森林の恥よ!次期リザードマン首領である、このガビルが成敗してくれる!」
「はっ、くだらねぇ!リザードマン一人でオーガに敵うと思ったか?」
「いくら
「・・・・・・・・・!」
一触即発、というのだろうか。先程よりも強い緊張感が辺りに走る。そんな状況で俺は、今にも飛び掛かりそうなガビルをなんとかして彼を止めようと考えていた。
何故かって、どう考えてもガビルがオーガたちに勝てるとは思えないからだ。いや、助けてくれようとしている人に対して滅茶苦茶失礼なのは百も承知だが・・・
相手が二人だというのもあるが、鬼とトカゲではどう見たって鬼の方が強そうだし。最初は名前があることに驚いていたようだが、今は大したことないとでも言うように黒髪は笑っている。多分、少し珍しいくらいで強さにはそう関係ないんだと思う。次期首領とか言ってたし、きっと気位の高い証とかそんなところだろう。
(とにかく・・・ガビルに戦うのを止めさせて、俺を連れてここから逃げてもらわないと・・・!)
僅かではあるが、折角見つけた光明なのだ。逃したくはない。それになにより、見ず知らずの俺を助けようとしてくれる優しい奴に死んで欲しくなかった。
「が・・・ガビ、ル・・・・・・!」
「む、どうしたのであるか人間よ!」
「に・・・げほっ!戦う、な・・・俺、ぉ・・・・・・逃げ、て・・・ぐっ!」
奴らと戦わないで、俺を連れて一緒に逃げてくれ。そう言いたかった。だが、予想以上にダメージを受けていたらしく思うように言葉を紡げない。痛みを堪え、咳き込みながらも何かを伝えようする俺を見てガビルは首を傾げる。
(くそっ!うまく喋れねぇ・・・さっき喉を捕まれてたからか、声が掠れちまう・・・!)
「お主、何を・・・・・・・・・っ!わ、分かったぞ・・・お主の言おうとしていることが・・・!」
(おぉっ!?やった、全然言葉にならなかったけどちゃんと伝わった!あとはどうにかしてここから二人で・・・)
「──『俺を置いて逃げてくれ』、そう言いたいのであるな!?」
(違ーーーーーうっ!!!)
思わせ振りな反応に一瞬喜んだ俺だが、全くこちらの意図に気付かないガビルに内心ずっこける。なんとか勘違いを解こうと痛みに耐えながら声を出そうとした時、俺の声に被さるようにガビルが口を開いた。
「おぉおお・・・!自分が死の危機にあるというのに、我輩を心配してくれるとは、なんと心優しい人間であろうか!」
「ふはははっ!泣かせてくれるじゃねぇかよ、人間風情が!」
「くくく・・・そこの人間の言うとおりだぞリザードマン。こんな奴など置いてさっさと逃げた方がいいんじゃないか?逃げ切れるかは別としてだがな」
何故かガビルの言葉を素直に信じ、俺の覚悟(誤解)を笑うオーガたち。改めて訂正しようとするが、またしても俺の言葉をガビルが遮った。
「黙れ、卑劣なオーガ共!・・・・・・人間よ、お主の優しさは受け取ろう。だがしかぁし!お主のような気高き心を持つ者を見殺しにするなど、誇り高きリザードマンである我輩は絶対にしないのである!」
「え、あ・・・いや、だから・・・」
「安心するがいい・・・そして我輩を信じろ!必ずお主を助けてみせるのである!」
勘違いに勘違いを重ね、どこから出てくるのか全く分からない自信を漲らせながらガビルは俺を真っ直ぐ見据えそう言い放った。もう何と言えば分からず、俺は少しの間ぽかんとしていたが・・・・・・
「・・・・・・・・・く、ふふふ・・・ははははは・・・・・・!」
「えっ。どうして笑うのである?」
突然笑いだした。俺を見て今度はガビルがぽかんと間抜けな表情を見せる。
・・・・・・駄目だ、つい堪えきれず吹き出してしまった。ガビルの勘違いもそうだし、今の間抜け面にも笑ってしまう。
・・・・・・けど、助かった。未だ危機的状況なのは間違いないが、少し精神的に余裕ができた。このガビルという男、場の空気を和ませられる雰囲気があるというか・・・ムードメーカーなのかもしれない。
「・・・・・・いや、悪い。なんでもないんだ・・・あぁ、頼むよ。俺を助けて・・・ぐっ・・・!」
「う、うむ!任せるのである!しかし、改めて見ると酷い傷だ・・・・・・これでは・・・いや、待て・・・むむむ・・・」
「・・・・・・いつまでごちゃごちゃと抜かしてやがる」
怪我による痛みのせいで言葉を詰まらせる俺を見て、ガビルは何やらぶつぶつ呟き出した。顎を擦り何かを考えているような仕草をするガビルに、銀髪のオーガは苛立ちを隠さず一歩近付いた。
「俺たちオーガを前にして、随分舐めた真似してくれるじゃねぇかよ。お前らのくだらねぇ茶番はもう沢山だ・・・・・・!」
そう吐き捨てた銀髪の手に再び冷気が宿る。俺に二度撃った、
「が、ガビル・・・!」
「・・・・・・・・・!」
銀髪の手から溢れる冷気が俺の素肌に刺さる。不安から俺はガビルを呼ぶが、ガビルは言葉も無く槍を構え直し、真っ直ぐ銀髪を見据えた。その様子が気に入らないのか、銀髪の顔が怒りで歪む。
「どうやら本気でこの俺に勝てると思っているらしいな・・・・・・いいだろう、ならばオーガの恐ろしさをその身に刻みつけてやる!食らえ──
咆哮と同時に銀髪は腕をガビルに向け突き出し吹雪を巻き起こす。銀髪の手から放たれた吹雪は俺が「避けろ」と叫んだのとほぼ同時に、正面にいたガビルを飲み込んだ。
「やったな銀髪、直撃だぜ!」
「あ、ぁ・・・・・・ガビル・・・!」
「ははははっ!ざまぁ見ろリザードマン!名付きといえど我らオーガに敵う訳が──」
『ブンッ!』
「な──!?」
勝利を確信し高笑いしていた銀髪へ吹雪の中から何かが飛んできた。銀髪は体を守る為、咄嗟に胸の前で腕を交差させる。次の瞬間、銀髪の腕から血が吹き出たのと同時に、俺は飛んできた物が何なのか理解した。
「槍・・・!?」
「ぐおおおおおおおっ!?」
それはガビルが持っていた槍だった。吹雪に飲まれながらガビルの手から放たれたそれは銀髪に突き刺さり、声を上げながら銀髪は膝を付く。急所には届かなかったものの運良く腕の交差している箇所に刺さり、銀髪はまるで両腕を縫い合わせられたかのようになっていた。
「銀髪!?おい、大丈夫か!」
「んな訳ねぇだろ馬鹿!いいからさっさとコレ抜けよ!」
「わ、分かった・・・!」
「させぬのであぁあああああああるッ!!!」
銀髪を助けようと黒髪が武器を地面に突き刺しそちらへ歩き出した時だった。銀髪が攻撃を中断したことにより、消えかけている吹雪の中からガビルが咆哮と共に飛び出した。反応が遅れた黒髪は突撃してくるガビルに何も出来ず、タックルをモロに喰らい地面を転がるように飛んで行く。
「ごはっ!?」
「黒髪!くそっ、テメェ・・・!」
「ふははははっ!手遅れになる前にどうやって人間を連れ離脱しようか悩んだが・・・・・・これならなんとかなりそうであるな!」
吹雪の中から現れたガビルは腰に手を当てからからと笑う。どうやら俺の様子を見て、『時間をかけてオーガたちを倒してから俺を救う』より『オーガたちを無視して早く俺を救う』ことにしてくれたらしい。
「人間よ、今の内である!──我輩の手を!」
「──!」
一瞬でオーガたちを行動不能にしたガビルの強さに呆然としていた俺にガビルは駆け寄る。そしてその言葉と共に伸ばされた手を、俺は残った力を振り絞って掴んだ。
「あ、と・・・!ガビル・・・・・・」
「もう安心である!
ガビルの呼び声に先程乗ってきた恐竜のような生き物(おそらく魔物だろう)がこちらに駆け寄って来る。どうやら『ホバーリザード』と言うらしいそいつは俺たちの側に寄ると、まるで乗れと言っているかのようにその場で身を低くした。
「人間よ、こいつに乗るのだ!心配要らぬ、噛んだりなどせんよ!」
「わ、分かった・・・!」
ガビルに手伝ってもらいながらホバーリザードに跨がった。その後、まるで抱き抱えるように俺の後ろにガビルが乗り、ホバーリザードの手綱を握る。その時、吹っ飛ばされていた黒髪の声が響いた。
「この、クソリザードマンがぁあああ!もう許さねぇ、ぶっ殺してやる!」
「ふん、貴様らを許さないのはこちらとて同じ!・・・だが、今はこの人間の治療が最優先である。故に、この場は見逃してやろう!・・・行け、ホバーリザード!」
黒髪にそう言い捨て、ガビルはホバーリザードを走らせた。
このホバーリザード、人間よりもずっと速い上に中々力強いらしく、俺とガビルを乗せているにも関わらずかなりのスピードでその場から離脱する。始めは黒髪の怒声が聞こえていたがやがてそれもなくなり、ホバーリザードが地を駆ける音のみが辺りに響く。
やがてもう安全だと判断したのか、ガビルはホバーリザードの速度を緩めた。
「・・・・・・ふむ、ここまで来ればもう大丈夫であろう。よく頑張ったぞ、人間よ!」
「はぁ・・・・・・は、はは・・・・・・そうか、助かっ・・・た、のか・・・良かっ・・・た・・・っ・・・」
「む、どうしたのである?人間よ・・・・・・人間!?えっ、ちょっ・・・・・・おーい!?」
ガビルの言葉を聞き、安堵から息を吐く。瞬間、緊張の糸が途切れたのか体の力が抜け落ちた。
もう限界だったのだろう。ガビルの慌てた声を聞きながら、俺はホバーリザードの上で意識を手放した。
ちなみにホバーリザードの存在は友人から教えてもらいました。てっきりトリニティの方に出てた『手長蜥蜴』かと思ってましたよね。