転生したら蜥蜴人族の友人と邪仙の恋人ができた件   作:乃出一樹

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お待たせしました、第31話となります。

暑すぎませんか・・・?


少しの謎

頭部の上半分を吹き飛ばされ、俺によって倒された嵐蛇。

 

絶命した嵐蛇は体を支えていた力を失くし、その巨体が音を立てて地面に倒れる。小さく息を吐き地面に着地した俺は、こちらを見ていた青娥さんと視線を合わせ答えた。

 

 

 

「終わりましたよ、青娥さん」

 

「えぇ、見ていましたよアクトくん。お疲れ様でした」

 

 

 

そう言って青娥さんはにこりと微笑む。彼女の優しい表情につられてこちらも笑顔になる。その時、離れて俺の戦いを見守っていたカバルさんたち三人がこちらへ駆け寄って来た。

 

 

 

「アクトぉーーーっ!」

 

「ん?カバルさん」

 

「おま・・・・・・お前スゲーな!滅茶苦茶強いじゃねえかよ!」

 

「まさか、嵐蛇を倒しちゃうなんてぇ・・・」

 

 

 

興奮した様子で話すカバルさんと、信じられないといった表情のエレン。どちらかと言えばエレンのような表情をしたギドさんも傍にやってきて、俺は青娥さんの元へ辿り着く前に三人に囲まれてしまった。

 

 

 

「いやぁ、流石に驚きやしたね・・・エビルムカデだけでなく、まさか嵐蛇まで倒しちまうとは」

 

「青娥さんの弟子なだけあるわよねぇ」

 

「ふふふ・・・凄いでしょう?私のアクトくんは」

 

 

 

どこか自慢気に言う青娥さんに俺は少し気恥ずかしくなり頬を掻く。カバルさんたちも俺の力に驚いたり称賛したりで尚更だ。その空気に耐えられなくなった俺は、話題を変えようと気になっていたことを口にした。

 

 

 

「・・・・・・しかし、嵐蛇と入れ替わるようにして消えた、あの最初に現れた奴は一体なんだったんだ?」

 

「んー、そうですね・・・・・もし嵐蛇を使役していたんだとしたら、相当の──・・・!?」

 

 

 

俺の呟きに青娥さんが反応し、そこまで言い掛けた時だった。ふと嵐蛇の死体がある方を見た青娥さんが口を閉ざす。どうしたのかと彼女の視線の先を見た俺は、目の前の光景に目を見開いた。

 

 

 

「嵐蛇の体が、消えていく・・・!?」

 

 

 

なんと、嵐蛇の体がボロボロと崩れ始めていたのである。崩れた部分はまるで溶けるかのようにその場から消えていき、やがて嵐蛇だったモノは完全に消滅してしまった。目の前で起こった事態に俺たちはただ困惑するしかなかった。

 

 

 

「き、消えちゃいましたよ・・・?」

 

「で、やすね・・・」

 

「一体なにがどうなってやがんだ?アクト、お前がなにかした訳じゃねえよな?」

 

「いくらなんでも消滅させるようなスキルは持ってないし、そもそもそこまでしねぇよ・・・・・・あ、青娥さんなら何か分かるかも」

 

 

 

訳が分からないといった様子で頭を掻くカバルさん。彼の問いにそう返した俺は頼りの青娥さんの方へ振り向く。その時、青娥さんは何も言わず嵐蛇が存在していた場所に数歩近付いていく。そしてその場で虚空を掌で掬うような動作をすると、消え入りそうなものではあったが、確かに驚いている声色で呟いたのだ。

 

 

 

「・・・・・・・・・なんてこと。これは・・・」

 

「青娥さん?」

 

「あぁ、いえ・・・・・・なんでもありませんわ」

 

 

 

様子がおかしい青娥さんに声を掛けると、彼女はこちらに振り返っていつもの笑顔を浮かべた。しかし、そうは言っても何かあったのだと、それくらいのことは俺にも理解できる。

 

 

 

「・・・・・・本当に、なんでもないんですか?」

 

「・・・・・・・・・流石に誤魔化しきれませんよねぇ・・・でも、今ここでどうにかできることではないんです」

 

 

 

彼女の顔を真っ直ぐ見つめ俺は問い質す。そんな俺に青娥さんは一瞬困惑し、やがて眉を下げ困ったような笑みを浮かべそう答えた。

 

 

 

「少なくとも、今この場でこれ以上被害に遭うことはないと思います。だから安心して・・・と、言うのはまた違うかもですが・・・アクトくんが心配するようなことでは本当に無いのです。それでも気になるのでしたら、何か分かれば必ずアクトくんにも教えます。ですので、今日のところはこれで納得してはもらえませんか?」

 

 

 

困ったような笑顔のまま、青娥さんはそう言った。正直なところ、納得はしきれない。ゲームとか漫画でたまに居る、確証がないからと言って気付いたことや知っていることを教えないキャラクターにはイラッとすることもあるしな、俺。

 

けれど。

 

 

 

「・・・・・・ん、分かりました。青娥さんがそう言うなら」

 

「あら。自分で言っておいてなんですけど、本当にいいんです?」

 

「はい。青娥さんのことは信じてるし・・・・・・それに、困らせたくないんで」

 

「・・・・・・・・・もう。そんなことを言われたら、逆に困ってしまうじゃないですか」

 

 

青娥さんはまたしても困ったような・・・しかし、俺の見間違いだろうか。どこか少しだけ、嬉しそうに笑った気がする。と、俺たちの会話に区切りが付いたところで、近くで見ていたカバルさんが口を開いた。

 

 

 

「よく分からねえが・・・・・・とりあえず、全員無事で何よりだったな!洞窟の調査も完了したし、そろそろブルムンドに帰ろうぜ」

 

「さんせ~い・・・・・・もうクタクタよぉ・・・」

 

「けど、ここから帰るのもまた大変でやすよね・・・」

 

 

 

ギドさんの言うとおり、ここからブルムンドまで帰るのは大変だろう。道中は長いし、なによりジュラの大森林には魔物が沢山いる。青娥さんのように空を飛ぶことが出来ればまだマシだろうが・・・・・・

 

 

 

「カバルさんたちは空飛べないのか?」

 

「飛べる訳ねぇだろ!お前や青娥がおかしいんだよ!」

 

 

 

そういうことらしい。冒険者についてはまだ詳しくないが、Bランクというのは多分、最低でも中堅クラスの実力があるんだと思う。そのBランクであるカバルさんたちでも空を飛べないということは、青娥さんは彼ら以上の実力者なのだろう。分かってはいたが。

 

 

 

「そういえば、青娥さんってカバルさんたちと同じ冒険者なのか?」

 

「あん?知らなかったのかよ。あいつ、Aランクの冒険者だぜ」

 

 

 

親指で青娥さんを差しながらカバルさんはそう答えた。Aランクなのか青娥さん。確か前に自分は魔物だって言ってたけど、普通に人間たちに溶け込んでるな・・・・・・案外バレないものなのか?それとも青娥さんだからバレずにやっていけてるのか・・・・・・多分後者だろう。

 

 

 

「私のことはともかく・・・・・・エレンさんたちはブルムンドに帰るのでしょう?でしたら送って行ってあげましょうか?」

 

「えぇーっ!いいんですかぁ!?」

 

「そりゃあ助かりやす!すんません姉さん!」

 

「悪いな青娥!今度一杯奢るぜ!」

 

 

 

青娥さんについてもう少しカバルさんに訊ねようとしていた時だった。話を変えようとしたのか、青娥さんはカバルさんたちにそう持ちかける。すると彼女のその言葉で三人の疲れ果てた顔にぱぁっと光が戻った。青娥さんの『空間転移』なら一瞬で移動できるし、この反応も当然だろう。

 

 

 

「そうだ、アクトさんも一緒にブルムンドまで来る?特に特徴はないけど、のんびりしてていい所よぉ」

 

「あー・・・・・・誘ってくれて嬉しいけど、それはまた今度にするよ。今はやりたいことがあってな」

 

 

 

こちらへ振り向いたエレンの誘いを俺はやんわりと断った。誘いは本当に嬉しいし、ブルムンドにも興味はあるが・・・・・・とりあえず今の目的はガビルの新しい武器を手に入れることだからな。

 

 

 

「そっかぁ、残念・・・・・・でも、今度絶対来てね!」

 

「いつでも来れるだろ。青娥と一緒にいるんならな」

 

「そうでさぁ。アクトくん、ブルムンドに来たら案内しやすよ」

 

 

 

残念そうな顔をしたエレンだったが、すぐに笑顔を浮かべそう言った。カバルさんとギドさんも俺がブルムンドへ来ることを歓迎してくれるらしい。魔物の俺が行っても大丈夫なのかは不安だが、いつかは足を運んでみたいものだ。

 

 

 

「さぁ皆さん、まずはここから出るとしましょう。エレンさんたちをブルムンドへ送る間、アクトくんは洞窟の入り口で待っててくださいます?」

 

「いいですよ。つっても、大して待たないと思いますけどね。青娥さんなら一瞬でしょ?」

 

「ふふ・・・それもそうですね」

 

 

 

にこりと微笑む青娥さんにつられるように俺も口元を緩める。

 

こうして、魔鉱石を求めてやって来た封印の洞窟での冒険は、少しの謎と新たな友人を三人増やして終わりを告げたのだった。




次回から舞台はドワルゴンに移ります。
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