転生したら蜥蜴人族の友人と邪仙の恋人ができた件   作:乃出一樹

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お待たせしました、第32話となります。

夏アニメは風都探偵が楽しみです。


ドワルゴンへ

ジュラの大森林にあるシス湖から、アメルド大河を北上し二ヶ月程歩くとカナート山脈がある。そこの地下大空洞を利用し作られているのが武装国家ドワルゴンだ。

 

そのドワルゴンに、俺と青娥さんは封印の洞窟から一瞬で到着した。正確には、ドワルゴンがあるカナート山脈の麓にある牧草地にだが。

 

 

 

「あれがドワルゴン・・・って、ここからじゃ山しか見えねえな」

 

「それはそうですよ。ドワルゴンの首都『セントラル』はあの内部にあるのですから」

 

 

 

聳え立つ山を見てそう呟く俺に、隣に立つ青娥さんが答える。青娥さんがカバルさんたちをブルムンドまで送り届けた後、俺と青娥さんはそのままここへ『空間転移』で移動してきた。何故直接首都に行かず外に来たのかと言うと、ドワルゴンの色んなところを見たいという俺の願いを青娥さんが叶えてくれたからである。

 

 

 

「ありがとうございます青娥さん。折角来たんだし、中だけじゃなく外もどうなってるのか気になって・・・」

 

「構いませんよ、アクトくんにとってはこちらの世界に来てから初めての人間の町ですからね。んー・・・あぁ、アクトくん。あそこ見えます?あれがドワルゴンへの入り口です」

 

 

 

そう言って青娥さんがある所を指差す。青娥さんが示した牧草地にある道の先には門があった。山脈内部のドワルゴンへと続く大洞窟を塞ぐように作られた大門。青娥さんから聞くところによると、この大門が開くのは軍が出入りする際のみであり、それ以外の一般の旅人や商人は隣にある小さな扉で出入りするそうだ。よく見るとその扉の前に行列が出来ている。

 

 

 

「うわー、結構並んでんな・・・・・・しかも人間だけじゃなく、魔物とかもいるぜ」

 

 

 

行列の中には、人間のように二足歩行している犬の魔物や、一見は人に見えるが耳の長い女性、さらには背は低いが力強そうな体の男など様々な種族がいた。勿論普通の人間も並んでいる。あそこにいる連中皆が街に入れるのか・・・流石、自由貿易都市。

 

 

 

「まぁ、私たちは並ぶことなく中に入れるんですけどねー♪」

 

「本当にいいんですか?ドワルゴンの偉い人に怒られたりしません?」

 

「かもですねぇ・・・・・・それじゃ、中に入ったら少し挨拶してきましょうか」

 

 

 

俺が冗談半分で言うと、青娥さんは考えるような仕草をしてそう呟いた。まさかこの人、この国のお偉いさんと知り合いなのか・・・?

 

 

 

「・・・・・・さて、そろそろ中に入りましょうか。アクトくん、捕まって」

 

「あっ、はい・・・!」

 

 

 

そんなことを考えていると、青娥さんはそう言ってこちらに手を差し出す。慌ててその手を取った俺はあの行列に加わることなく、青娥さんと共にドワルゴンの首都、セントラルへ転移するのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おぉ・・・・・・ここがドワルゴン・・・!」

 

 

 

目の前に広がる街並みに、俺は思わず感嘆の声をこぼした。

 

岩壁に囲われる様に居並ぶ建造物。それらの多くがレンガや石造りで、さらには街の所々にパイプが通っており蒸気が吹き出している。なんというか、ファンタジーとスチームパンクを混ぜたような空間となっている。

 

そこそこ広い道に武器や防具の店に飲食店がいくつか建ち並び、そこを行き交う人々で活気溢れる光景となっていた。

 

あと、洞窟の中だが全然息苦しさを感じない。さらに気温も快適でとても過ごしやすいのだ。なんでも魔法で空調管理もしているのだとか。それに、天井の一部に切れ目があり外の光が射し込んでいるのも一因だろう。

 

 

 

「どうです、驚きました?」

 

「とても・・・!なんつーか、異世界に来たっていう実感が今までより沸いてきてて・・・でも、少し落ち着くっつーか・・・とにかくここに来られて嬉しいです!」

 

「ふふふ、それは良かった。アクトくんが喜んでくれて何よりですわ」

 

 

 

少し興奮しながら言った俺の言葉に青娥さんはにこりと微笑む。ガビルたちリザードマンが嫌いな訳じゃないし、寧ろ好きではあるが、それでも人間が近くにいる方が落ち着くのは俺が元々人間だからなのだろう。

 

 

 

「・・・・・・あ、そうそう。アクトくんに渡しておきたいものがあるんですよ」

 

 

 

その時、青娥さんはどこからともなく丸められた紙とガマ口の袋を取り出した。恐らくまた空間魔法を使ったのだろう。それはさておき、俺は青娥さんが取り出したそれらを受けとる。

 

 

 

「これは・・・・・・地図と、財布?」

 

 

 

紙を開くとそれは地図のようだった。おそらくここドワルゴンのものだろう。そして中からじゃらじゃらと音がするガマ口を開くと中には硬貨が入っていた。見た目からしてなんとなく予想は付いていたが財布である。

 

 

 

「はい。えっと・・・地図のここが今いる場所ですね。で、魔鉱石が採れるかもしれない鉱山が、こことここと・・・まぁ、近いところでいいでしょう」

 

「成程・・・・・・で、この財布は・・・」

 

「アクトくんのお小遣いですよ♪折角こんなに大きな街へ来たのに無一文じゃ何も出来ないでしょう?そこそこ入ってるので色々買えると思いますよ」

 

 

 

改めてガマ口の中を見ると、確かに銀貨や銅貨が沢山入っていた。一応、この一ヶ月の修行の合間に青娥さんと爺さんから金の価値や物価をある程度教わってはいたので買い物は問題なく出来る・・・筈だ。

 

その時。地図はあるけど迷いそうだとか、ちゃんと金を使えるかとか考えて少し不安になっていた俺を、さらに不安するようなことを青娥さんは言い放った。

 

 

 

「それじゃ、ここから一旦別行動しましょうか」

 

「はっ?」

 

 

 

予想していなかった言葉に俺は間の抜けた声で返す。その声を聞いて青娥さんはくすくすと笑いながら俺に謝った。

 

 

 

「ふふ、ごめんなさいアクトくん。実は私、この国に会っておきたい人がいまして・・・・・・」

 

「もしかして、さっき挨拶しておくって言ってた?」

 

「えぇ。偉ーい人ですよ」

 

 

 

冗談っぽく笑いながら青娥さんはそう言った。ふざけてるように見えるが、もしかして本当に偉い人と知り合いなのか?まぁ青娥さんは凄い人だし、そうだとしても不思議ではないけれども。

 

 

 

「私の用事にアクトくんを付き合わせるのは悪いですし、どれくらい時間がかかるかも分かりませんので。ですから、アクトくんは先に魔鉱石を集めてきてください」

 

「んー・・・正直不安だけど、分かりました。けど、用事が済んだらどうやって合流します?」

 

 

 

この世界にスマホなんてないしな。魔素やオーラを放出していれば『魔力感知』でお互いの場所も分かるだろうが、そんなことをしたら周囲の人や魔物が怯えてしまうかもしれないからやめた方がいいだろう。

 

 

 

「安心してください、ちゃんと考えてありますよ。今渡した財布には少し細工がしてありまして。私にはそれのある場所が分かるんです。なので、それをアクトくんが持っていてくれれば私が探しに行けますよ」

 

 

 

財布を見ながら青娥さんが説明する。成程、GPS代わりという訳か。そんな効果があれば落とした時にも便利そうだ。

 

 

 

「アクトくんが『思念伝達』のスキルを使えれば話が早かったんですけどねー」

 

「あー・・・確か修行中に聞いたような・・・テレパシーみたいなことができるスキルでしたっけ・・・・・・あれ?それなら『念話』でいいんじゃ・・・」

 

「それは無理です。『念話』はどちらかが使えれば会話が可能ですが、範囲が狭いんですよ。それと違って『思念伝達』はお互いがスキルを持ってなければ使えませんが、遠く離れていても会話ができるんです」

 

 

 

俺の疑問に青娥さんは丁寧に答えてくれる。『思念伝達』か・・・・・・連絡手段が少なそうなこの世界ではかなり便利そうなスキルではある。今度青娥さんに教えて貰った方がいいかもしれない。

 

 

 

「・・・・・・さて、それではそろそろ挨拶に向かいましょうか。不法入国してる訳ですし、一応謝っておかないと」

 

「一応って・・・・・・まぁ、とりあえず分かりました。それじゃ青娥さん、また後で」

 

「えぇ。素材集め、頑張ってくださいねアクトくん♪」

 

 

 

苦笑しつつ了承すると、青娥さんは微笑みながら『空間転移』でどこかへ転移してしまった。突然青娥さんが消えたことに周囲の人たちが驚いていたので、少し居心地が悪くなりその場から早足で俺も移動する。

 

 

 

「そりゃ目の前で人が消えたら驚くよな・・・・・・」

 

 

 

歩きながらそう呟く。青娥さん、基本自由だからな・・・・・・回りのことをそんなに考えてない節がある・・・って思ったけど、そんな人ならわざわざここの偉い人に挨拶なんてしないか。それとも、挨拶ってのは建前で他に何か用があったり・・・?

 

 

 

「・・・・・・考えたところで分かる訳もねぇか。さて、んじゃ俺も目的の物を探しに行くとするかね」

 

 

 

俺は青娥さんから受け取った地図を開き、一番近くにある鉱石の場所を確認する。歩いていくと到着まで少し時間がかかりそうだが、飛んで行けば割りと早く着きそうだ。

 

 

 

「観光は後回しだ。見つかるといいな、魔鉱石・・・」

 

 

 

のんびりとドワルゴンを見て回りたい気持ちもあるが、それは青娥さんが戻ってきてからでも出来る。なので、先に用事を済ませる為に、俺は近くの鉱山を目指し飛行を開始したのだった。




最近暑すぎるので、もし投稿が止まったら暑さでダウンしたのだと思ってください。

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