転生したら蜥蜴人族の友人と邪仙の恋人ができた件 作:乃出一樹
ようやく原作主人公と対面です。
「・・・・・・・・・成程。そんなことがあったんですか」
鉱山での騒動の後、俺はカイドウさん・・・それとガルムさんたちの五人でドワルゴンの街中を歩いていた。
どうしてこのメンバーでこんな状況になっているかというと、発端は俺がカイドウさんにスライムについて訊ねたからである。カイドウさんがポーションを使った際に呟いた「スライム」について訊ねたところ、やはりそのスライムがあのポーションをくれたらしい。あんなに凄いポーションを持つスライムとは一体何者なのか、当然興味を抱いた俺はそれからさらにカイドウさんに質問を続けた。
残念ながらカイドウさんもそのスライムについて詳しいことは分からないそうだ。なんでもそのスライムは連れのゴブリンと共にドワルゴンへ入国する為に順番待ちをしていたところ、チンピラ崩れの冒険者に襲われていたそうなのだが、なんと巨体な狼の魔物──カイドウさんが言うには恐らく『牙狼族』という魔物らしい──に変身し、威嚇で咆哮を上げて気絶させたらしい。しかしその際にスキルかなにかを使ったらしく、入国待ちをしていた二百人近い人たちが錯乱したり失神したり失禁したりしたという。
それだけの騒ぎが起きればカイドウさんたち警備隊が出動しない訳にはいかず、とりあえず詰所に連行したそうだ。意識を取り戻した人たちから話を聞いたところ、そのスライムたちは被害者で正当防衛みたいなものだし、それに連行する際に全く抵抗せず大人しくしていたので、適当に調書を取ったら一日だけ勾留して釈放するつもりだったらしい。
そして、事情聴取の最中に先程のアーマーサウルスの事件が起きた。
アーマーサウルスが出現した鉱山にガルムさんたちが居り、更に怪我人も出ていると連絡を受けたカイドウさんは国全体で不足している中、なんとかポーションを探そうとしたのだという。その時、件のスライムが声を掛けてきたそうだ。彼はどこに隠し持っていたのか分からないが、大量のポーションを樽に入れてタダで譲ってくれたのだという。
正直カイドウさんもそのスライムを信じていいのか不安だったそうだが、他に手が無い以上それにすがるしかなく、ポーションの入った樽を担ぎ、急いであの鉱山まで駆け付けた・・・・・・と、彼からそのような説明を受け、俺は先程の言葉を呟いたという訳だ。
ちなみに、ガルムさんたち三人はそのスライムにポーションの礼を言いたいからと一緒に着いてきた。あ、さらにちなむと三人は兄弟なのだそうだ。ドワルゴンのドワーフ三兄弟と呼ばれる優秀な鍛冶師らしい。
「しかしカイドウさん。牙狼族に変身したり、あんなに効能が良いポーションを大量に持ってるスライムがいるなんて信じられないよ」
「俺だってそうさ。だが、本当なんだから仕方ねえよ・・・・・・っと、着いたぜアクト。あそこが警備隊の詰所だ」
カイドウさんを疑っている訳では無いだろうが、やはり信じきれていないガルムさんにカイドウさんが苦笑しつつ返す。そんなやり取りをしていると、どうやら目指していた詰所に着いたらしい。道中で見掛けた他の建物よりも少し大きいそこの近くには他の警備隊の姿がちらほら見えた。
「こっちだ、着いてきてくれ」
そう言って手招きするカイドウさんに続いて詰所へ入る。途中、他の警備隊の人たちに何度か声を掛けられたが、カイドウさんの連れということもあり特に揉めたりすることはなかった。今更だけど、これ職権乱用じゃないのか?
そんなことを考えていると、やがてカイドウさんはある部屋に入って行く。後に続いて中へ足を踏み入れるといくつかの牢が目に入った。恐らくここが留置場なのだろう。
牢屋なんて初めて見るので少し回りを見回していると、カイドウさんが小走りで駆け出す。そしてある牢の前で立ち止まると慣れた手付きでそこを開いた。
「助かった!ありがとう!」
牢の中にいる誰かにカイドウさんは礼を言う。カイドウさんはその誰かと少し話したあと、こちらを振り返り手招きする。彼に従いガルムさんたちと共にカイドウさんの元まで移動しその牢の中を見ると、そこには本当にスライムがいた。
前世で慣れ親しんだ名作ゲーム『ドラゴンクエスト』こと『ドラクエ』に登場する同名の魔物と比べると、はっきりとした目や口が付いてなかったり、頭(?)の部分がつんと尖ってないなど多少の違いはあるが、ぷるぷるとした水色の体は間違いなくスライムと呼べるものだろう。
・・・・・・それと、何故か糸のような物でぐるぐる巻きにされた状態で宙吊りにされた魔物がいた。背丈は小さく、肌は緑色。おそらくこいつが連れのゴブリンなのだろうが・・・どうしてこんなことになっているのだろう。
「あんたが薬をくれたんだってな?ありがとよ!」
「腕が千切れ掛けてて、生き残れても仕事が無くなるとこだった・・・・・・ありがとう・・・!」
「ウッ!ウッ!」
「いえいえ、どう致しまして!」
と、俺がゴブリンに気を取られている間に話が進んでいたらしい。ガルムさんたちがそれぞれポーションの礼をスライムに告げていた。ミルドさんだけ何を言っているのか分からないので、彼の時だけスライムはどこか困惑していた様子だったが。
それからガルムさんたちは少しだけスライムと会話をしたあと、仕事があるからと帰って行った。帰り際に俺は三人に話し掛け、彼らの仕事が終わってからまた会うことを改めて約束する。留置場を後にするガルムさんたちの背中を眺めていると、スライムがカイドウさんに声を掛けた。
「えっと・・・・・・釈放っすか?」
「勿論だ!それにしても、あんなすげえ薬は初めて見たぜ。礼と言っちゃなんだが・・・俺に出来ることなら何でも言ってくれ!」
「それなら・・・服と武具を見繕って欲しい。それと出来れば、ウチの村で技術指導してくれる鍛冶屋も紹介してもらえたら嬉しいんだが・・・」
カイドウさんの言葉にスライムはやや遠慮した様子で答える。ウチの村って・・・この世界のスライムは村を作って暮らしているのだろうか?しかしスライムに服や武具が必要だとは思えない。ゲームではシリーズによって武器や防具を装備出来たりもしたけども。もしかすると、このスライムはゴブリンたちと共に生活していて、服などは彼らが必要としているのかもしれない。
「そういうことなら、腕の良い鍛冶師を紹介しよう!」
「それは助かります!」
「礼なんぞ不要だ、任せとけ!」
笑いながらカイドウさんは自分の胸を叩く。俺の時もそうだったが、義理堅く、また面倒見の良い人なのだろう。
その時、スライムが俺の存在に気付きカイドウさんに問い掛けた。
「・・・・・・ん?そういや、そっちの奴も旦那の知り合い?さっきまでいた連中を含めると一番若く見えるけど」
「あぁ・・・こいつとはさっき知り合ったんだ。アーマーサウルスを倒してガルムたちを助けてくれたんだよ」
「ほぉ、アーマーサウルスを!ってことは、結構強いんだな」
体全体を使って驚く素振りを見せるスライム。まぁ人間では無いのだが、それは今はいいだろう。俺は牢の中に入ると、なるべくスライムの目線に近くなるようにしゃがんだ。
「あー・・・・・・初めまして、俺はアクトって言うんだ。よろしくな、スライムさん」
「アクトか、よろしく!俺の名前はリムル・・・・・・・・・悪いスライムじゃないよ?」
しゃがみながら俺が名乗るとスライムも名乗り返してきた。するとリムルというそのスライムは少しの間の後、『ドラクエ』に登場するスライムの台詞を言い放つ。まさかこちらの世界で、しかもスライム本人からこの台詞を聞けるとは思わず、俺は少し驚きながら笑ってしまった。
「ははっ、本当にそんなこと言うスライムがいるんだな!」
「えっ?」
「んっ?」
笑った俺を見てリムルは目を(体の一部を目の形にしているだけ)ぱちくりさせる。目の前のそいつが見せた妙な反応に俺が少し戸惑っていると、リムルがそろりとこちらに近付き小さな声で訊ねてきた。
「・・・・・・・・・なぁ、お前・・・もしかして、転生者か・・・?」
「・・・・・・は?待て、その言い方からするに・・・まさかお前も・・・?」
リムルの予想外過ぎる言葉に俺は思わず間の抜けた声を漏らす。なんとか平静を装いつつ、静かな声で確認を取るとリムルは声もなく体全体で頷いた。
俺たち二人の間に沈黙が流れる。どうしたのかと後ろでカイドウさんが戸惑う中、我に帰った俺たちは顔を見合せ僅かに震えた声で叫ぶのだった。
『───マジで!!!?』
やっとリムルを出せました・・・