転生したら蜥蜴人族の友人と邪仙の恋人ができた件   作:乃出一樹

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お待たせしました、第41話となります。

転スラ劇場版、楽しみではあるんですが・・・・・・ガビルの出番ってあるんですかね・・・・・・


ベスター大臣

突然現れた男の声に店内が静まり返る。護衛らしき連中を数人引き連れたそいつはまるで見下すような目付きでこちらをじろりと見た。俺とヴェルドラさんは一旦話を止め、外の様子を眺めることにした。

 

 

 

「ふむ、どうやらドワーフのようだな」

 

「えっ?カイジンさんたちと全然体型違うけど・・・・・・そうか、あぁいうタイプもいるのか」

 

 

 

てっきりドワーフは皆カイジンさんたちのようにずんぐりむっくりしているのかと思ったが、そうではないらしい。ベスターと呼ばれた男はすらりとした普通の人間のような体格をしている。身なりの良い、チョビヒゲとアゴヒゲを生やしたおっさんだ。

 

 

 

『・・・・・・大臣のベスターだ』

 

『あれが噂の・・・・・・』

 

 

 

相手に聞こえないようにしているのか、小声でリムルとカイジンさんはやり取りする。あぁ、こいつが例の大臣か。そう言えばカイジンさんの工房でちらっと名前は出ていたっけ。

 

 

 

『遊んでいる場合なのですかな?確か、ロングソードの納品期限は──・・・』

 

『さっき納めてきた』

 

『期限に間に合わなければ・・・・・・・・・えっ?納めてきた!?』

 

『あぁ。きっちり二十本』

 

 

 

視線を合わせることなく静かにカイジンさんはそう告げる。彼の言葉にベスターは信じられないといった表情を浮かべていた。まぁ、驚くのも無理はないだろう。二週間かかると思われる仕事がこんなに早く終わったのだから。

 

 

 

『そ、そんな・・・・・・』

 

『納品書を確認するか?』

 

『・・・・・・ゴホン、そうですか・・・・・・まぁ?受けた仕事を期日内に納品するのは当たり前のことですからな。えぇ、そうですとも』

 

 

 

カイジンさんの態度から納品したという言葉が本当なのだと察したベスターはわざとらしく咳払いをしそう呟く。しかしこの態度・・・・・・もしかしたらと思っていたが、やはり嫌がらせとしてこんな無茶な仕事を依頼してたっぽいな。

 

 

 

『それよりも・・・・・・それよりも、ですよ?それ!』

 

『・・・・・・えっ、俺!?』

 

 

 

その時、ベスターはリムルをじろりと睨み付け指を指す。急に標的となり驚くリムルを無視し、ベスターはつかつかとこちら(リムルたち)へ歩いてきた。

 

 

 

『いけませんなぁ、この上品な店に下等な魔物などを連れ込んでな・・・・・・気分が悪くなる』

 

 

 

ハンカチで口元を抑えながら嫌味っぽくベスターは吐き捨てる。いや、この街って魔物も入国OKなんだろ?なら店に入ったって問題無いだろうに。そりゃ魔物の立ち入りを禁止している場所もあるだろうが、いくらなんでもそんな場所にリムルを連れてくるほどカイジンは非常識ではない筈だ。

 

 

 

『おい、この店は魔物の連れ込みを許すのか?』

 

『魔物と言いましても、無害そうなスライムですし・・・・・・』

 

『はぁ?魔物だろうが。違うのか?スライムは魔物じゃないとでも抜かすか!』

 

『いえ、そのような訳では決して・・・・・・まぁまぁ大臣様、一杯いかがですか?さっ、どうぞ・・・』

 

 

 

因縁を付けるベスターに一人のエルフが対応する。恐らくこの店の責任者・・・ママ的な人なのだろう。彼女はベスターを宥める為か酒の入ったジョッキをベスターへ差し出した。ベスターは少し何かを考えていたが、やがてそれを受け取りエルフの膝の上にいるリムルを見る。

 

 

 

『──ふん。魔物にはこうするのがお似合いよ』

 

 

 

するとベスターはにやりと笑うと、受け取ったジョッキに口を付けることなく、エルフの膝の上にいたリムルの上でそれを逆さにした。当然ジョッキの中身は重力に従い落下し、びちゃびちゃと音を立てながらリムルの体を濡らしていく。

 

 

 

『ひゃっ!?スライムさん・・・・・・』

 

『大丈夫だよお姉さん。ドレス、濡れてない?』

 

『あ、はい・・・・・・』

 

 

 

心配して声を掛けたエルフに、リムルは逆に気遣うようにそう返す。酷いことをされたのに落ち着いた様子のリムルを見て、逆にエルフの方が驚いているくらいだ。

 

 

 

「おのれ、あのドワーフめ・・・・・・!リムルよ、何故反撃しないのだ!お前ならばあのような雑魚、一捻りであろう!?」

 

「落ち着いてくださいヴェルドラさん。確かにリムルならあんなヤツ、護衛たちと纏めてぶっ飛ばせるけど、それじゃ皆に迷惑がかかるからあいつは我慢してるんですよ」

 

 

 

いくらリムルが優しくても、あんなことをされて怒らない訳がない。しかし、リムルは大人だ。大臣を相手にここで騒ぎを起こせば、きっとカイジンさんたちや店のエルフたちに迷惑がかかる。そう思っているのだろう。だからあいつはあんなことをされても我慢して──・・・

 

 

 

『ふんっ!』

 

『ぶべぁっ!?』

 

「えっ!?」

 

 

 

・・・・・・我慢、してたんだけど。どうやら怒りを抑えられなかったらしい。リムルではなく、カイジンさんが。

 

ゴッ、と良い音を立てカイジンさんはベスターを殴り付ける。その場にいる全員がカイジンさんのまさかの行動に驚いていた。

 

 

 

『俺の客に舐めた真似してくれやがって・・・・・・ベスター!覚悟は出来てるんだろうな!?』

 

『き、貴様・・・私に対してそのような口を・・・・・・!』

 

 

 

殴られた頬を手で抑えながらベスターはカイジンさんを睨むが、その声は震えており威圧感などは皆無である。カイジンさんはそんなベスターの言葉を無視しさらに拳を振るった。

 

 

 

『黙れっ!』

 

『ぐほっ!?』

 

 

 

そう言い捨て、カイジンさんはベスターの顔やボディに次々と拳を打ち込んで行く。ベスターは抵抗もできずにサンドバックと化していた。ちなみに護衛らしき男はなにもしない。店内いる全員がカイジンさんの行動に言葉を失くす中、ヴェルドラさんだけはカイジンさんの暴れっぷりにテンションを上げていた。

 

 

 

「クァーハハハッ!良いぞカイジンとやら!やれやれぇい!」

 

「なに楽しんでんですかヴェルドラさん!おいおい・・・・・・大丈夫なのかよカイジンさん・・・」

 

 

 

折角リムルが耐えてたってのに、これじゃ意味がないじゃないか。とはいえ、カイジンさんの気持ちは理解できるし、リムルの為に怒ってくれた彼の優しさを嬉しく思う自分もいるのだが。

 

 

 

『あ、あの・・・・・・カイジンさん?そ、そいつ大臣なんだろ・・・?いいの・・・?』

 

 

 

キレたカイジンさんを見たからか、それとも大臣に手を上げたという事実に怯えているのか、リムルは不安そうな声でカイジンさんに訊ねる。数発殴り満足したのか、カイジンさんは大きく息を吐くとリムルに向き直った。

 

 

 

『・・・・・・そうだなぁ、面倒なことになるかもな・・・・・・なぁ、リムルの旦那。腕の良い職人、探してたよな?』

 

『え?』

 

『・・・・・・俺じゃ、駄目かい?』

 

 

 

カイジンさんの問いの意味が分からず、リムルは間の抜けた声を漏らす。しかし続くカイジンさんの言葉に彼の意図を理解し、表情をぱぁっと明るくした。

 

 

 

『・・・・・・いいの!?大歓迎だよ!こちらこそよろしく頼む!』

 

『そうかい、そりゃ良かった。行くアテが出来たな』

 

 

 

カイジンさんという新たな仲間の加入に、嬉しさからかリムルはぽよぽよと体を弾ませる。静まり返った店内で、カイジンさんはそんなリムルの姿を見て顔を綻ばせるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『──悪く思うなよ?決まりだからな・・・・・・兄貴たちの身柄は、裁判まで一旦拘束させてもらう』

 

 

 

・・・・・・と、まぁ。あのまま良い感じに騒ぎが収まる筈もなく。

 

店の前に警備隊を引き連れ現れたカイドウさんが呆れたような、それでいてどこか申し訳無さそう顔でそう言った。本当は兄弟であるカイジンさんを捕まえたくは無いのだろうが、仮にも大臣に手を出してしまった以上こうするしかないのだろう。しかし随分到着が早かったな。優秀だね、この国の警備隊。

 

 

 

『ふん・・・・・・』

 

『なぁ兄貴、何やってんだよ。相手は大臣だぞ?』

 

『そこの馬鹿が俺の恩人に失礼なことをしやがるから、ちょいとお灸を据えてやったのよ』

 

 

 

呆れながら訊ねてきたカイドウさんに、若干苛立った声色でカイジンさんは返す。とは言ってもその苛立ちはカイドウさんに対するものではなく、ベスターに対するものだ。

 

 

 

『ちょいとって・・・・・・』

 

 

 

そう言いながらカイドウさんはちらりと横を見る。視線の先にはベスターがおり、護衛や警備隊たちに手当てをされていた。カイジンさんはあぁ言ったが、明らかに「ちょいと」どころではないくらいボコボコにされているベスターの姿を見て少し引いていた。

 

 

 

『はぁ・・・・・・まぁ、やっちまったもんは仕方ねぇか。リムルさんよ、悪いがアンタも一緒に来てもらうぜ』

 

『あ、うん・・・・・・別にいいけど・・・・・・・・・あ、ちょっと待って!』

 

 

 

溜め息を吐いたカイドウさんは視線を下げリムルを見る。カイドウさんの言葉に頷きそう答えたリムルだが、何かを思い出したようにそう声を上げた。

 

 

 

『ん?どうした』

 

『いやー、その・・・・・・実はもう一人いるっていうか・・・・・・』

 

「・・・・・・・・・あー」

 

 

 

歯切れの悪いリムルを見てカイドウさんは首を傾げる。二人のやり取りをリムルの中から見ていた俺はすぐにリムルの言葉の意味が分かった。

 

 

 

「ふむ、どうやらリムルはお前のことを言っているようだが・・・・・・どうするのだ、アクト?」

 

「そうですね・・・・・・いつまでもここに隠れてる訳にはいかないし、すぐにでも出ますよ」

 

「そうか・・・・・・行ってしまうのか」

 

 

 

分かりやすく寂しそうにヴェルドラさんはしゅんとする。こう言ったら怒られるだろうが、どこか可愛げすら覚えるその姿に俺は口元を緩めた。

 

 

 

「はは、大丈夫ですよヴェルドラさん。またすぐに会いに来ますから。それよりも、『無限牢獄』を破れるか試せなくてすみません」

 

「む・・・・・・いや、そう気にしなくても良い。そんなことより、またここに来るのだぞ?いいな?約束だぞ!?」

 

 

 

ぐいっと顔を近付けてヴェルドラさんは何度も念を押す。その必死な様子に若干押されつつ俺は頷いた。

 

 

 

「勿論ですよ。それじゃ、また近いうちに・・・・・・よし、『脱獄者』!」

 

 

 

俺は片手を軽く上げヴェルドラさんに別れを告げる。そしてスキルを発動させると、空間を突き抜け外の世界へ飛び出して行くのだった。

 

 

 

 

 

 

 

「────リムル!」

 

「うわっ!?」

 

「おぉっ!?」

 

 

 

リムルから飛び出すようにして胃袋から脱出した俺は上手く地面に着地しリムルを呼んだ。突然その場に現れた俺にリムルとカイドウさんたちは驚く。よし、少し不安だったがちゃんとスキルが成功して良かった。

 

 

 

「アクトじゃねえか!お前今どこから・・・・・・!?」

 

「あー、その・・・・・・ちょっとリムルに丸呑みされてまして」

 

「丸呑み!?」

 

 

 

何と答えれば良いか少し悩んだ俺はとりあえずそう返す。しかしその返事があまりにも予想外過ぎたのか、カイドウさんは再び驚いていた。そんなカイドウさんを無視し、安心した様子でリムルが話し掛けて来る。

 

 

 

「良かった、出て来られたんだなアクト。まあ最悪俺が吐き出せばそれで済んだけど・・・・・・それより、実は今大変なことになっちゃって・・・」

 

「大丈夫だリムル。状況は分かってるから」

 

「えっ?」

 

 

 

現在の状況を説明しようとするリムルだったが、俺の言葉を聞いて間の抜けた声を漏らす。どういうことかとリムルが俺に確認する前にカイジンさんがこちらに近付き話し掛けて来た。

 

 

 

「何があったのか知ってんなら話は早い・・・・・・今すぐ逃げろ、アクト」

 

「はっ!?」

 

 

 

カイジンさんから告げられた言葉に思わず声を上げる。いやいや、何を言っているんだこの人は。いくらカイドウさんが実の兄弟だからって仮にも警備隊の前でそんなこと言ったらマズイだろ。

 

そんな俺の不安を表情から読み取ったのか、カイジンさんは小さく笑った後でカイドウさんに訊ねた。

 

 

 

「さっき、あの店にいたのは俺たちだけだ。アクトはいなかった・・・・・・だろ?カイドウ 」

 

「・・・・・・・・・ったく、本当にしょうがねえなぁ・・・・・・そうだな。アクトはこの件と無関係だ。だから行っていいぜ」

 

「い、いや!でもそれは・・・」

 

 

 

苦笑して、それから諦めたようにカイドウさんはそう言った。しかし二人の言葉に納得出来ない俺を見てリムルが声を掛ける。

 

 

 

「アクト、ここはカイジンの言う通りに・・・・・・いや、カイドウの厚意に甘えとけ」

 

「けどリムル、俺だけ逃げるなんてそんな・・・・・・!」

 

「気持ちは分かるよ。けどさ、こう言う言い方はアレだけど、お前がいたって事態はどうにもならないだろ?」

 

「リムルの旦那の言う通りだ。それに、これ以上俺の短気に巻き込まれるヤツを増やしたくないからな・・・・・・頼むアクト。お前だけでも逃げてくれ」

 

 

 

そう言ってカイジンさんは頭を下げた。俺は食い下がろうとしたがリムルの言葉を思い出し、言い掛けた言葉を飲み込んでカイジンさんに訊ねた。

 

 

 

「・・・・・・・・・カイジンさんたちは、大丈夫なんですか?」

 

「なぁに、心配要らねぇさ。そう悪いことにはならねぇよ。多分罰金くらいで済む・・・・・・まぁ、大臣を敵に回しちまったからこの国には居辛くなるだろうがな」

 

 

 

 

顔を上げたカイジンさんはそう呟くとベスターを一瞥した。俺もつられてそちらを見ると、護衛らしき男に支えられベスターはどこかへ行ってしまった。病院にでも行くのだろうか。

 

 

 

「・・・・・・けど、それも問題ねぇ。これからリムルの旦那のとこで世話になるからよ」

 

 

 

そう言って笑いながらカイジンさんはリムルを見た。彼の視線を受け、リムルは体全体を使って頷く。

 

 

 

「俺もカイジンたちも大丈夫だから心配すんな。だからお前は早くここから離れろ」

 

「・・・・・・・・・分かった。何て言えばいいのか分からねえけど、気を付けろよ」

 

「おう!・・・・・・あ、そうだ。アクト、これ!」

 

 

 

カイジンさんたちの案に渋々了承し立ち去ろうとした時だった。リムルは俺を呼ぶと体から何かを吐き出す。見ると、それはカイジンさん家でも見た魔鋼塊だった。ただし数は一つではなく二つ。

 

 

 

「やるよ!探してたんだろ?」

 

「えっ、そうだけどよ・・・・・・こんなにいいのか?」

 

「あぁ、まだ数に余裕はあるし。アクト、お前に会えて良かったよ。色々と面倒事が片付いたらまた会おうな!」

 

 

 

そう言ってリムルはにこりと微笑む。俺は少し戸惑っていたが、リムルの笑顔を見つめている内に自然と口元が緩み、やがて地面に置かれた魔鋼塊を拾い上げた。

 

 

 

「・・・・・・あぁ、そうだな。ありがとうリムル、大切に使わせてもらうよ」

 

「おぉそうだ。アクト、俺らは多分今日明日は帰れねぇ。だからウチの工房使っていいぞ。武器でも防具でもなんでも好きに作りな」

 

「納得の行く物が作れるといいな。頑張れよ、アクトくん!」

 

 

 

リムルにそう返した時、カイジンさんが俺の肩に手を置きそう言った。彼の隣にはガルムさんがいて、笑顔で俺を応援してくれる。この人たちには随分とお世話になった。事態が落ち着いたら必ずお礼をしよう。

 

 

 

「ありがとうございますカイジンさん。リムルも、本当にありがとな・・・・・・それじゃ皆、また近い内に!」

 

 

 

俺はカイジンさんたちに、そしてリムルに改めて礼を言うと軽く頭を下げる。そして彼らに別れを告げると、リムルから譲ってもらった魔鋼塊を抱えてその場を後にするのだった。




素材をゲットしたアクトくんでした。
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