転生したら蜥蜴人族の友人と邪仙の恋人ができた件   作:乃出一樹

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お待たせしました、第42話となります。

段々と涼しくなってきて過ごしやすくなりましたね。


完成

夜も更け、人通りの無くなったセントラルの裏路地。カイドウさんたちの計らいによって騒ぎの場から抜け出した俺は今そこを歩いていた。

 

ガビルの武器を作るためにカイドウさんの工房を目指しているのだが、俺の足取りは重い。先程は了承したが、やはりリムルたちだけ置いてきてしまったことを心苦しく思っているからだろう。

 

 

 

「はぁ・・・・・・リムルたち、本当に大丈夫かな」

 

 

 

溜め息を吐き一人ごちる。とはいえ、もう済んだことだ。今更あの場所に戻ってもどうしようもない。とにかく今はカイジンさんの工房まで行こう。

 

そんなことを考えながら歩き続け、やがてカイジンさんの家が見えてきたその時だった。

 

 

 

「──アクトくん」

 

「えっ?・・・・・・って、青娥さん!?」

 

 

 

突然背後から声を掛けられ振り返ると、そこには青娥さんが立っていた。彼女は俺の顔を見るといつもの笑顔を浮かべひらひらと片手を振る。

 

 

 

「はーい、青娥さんですよー♪」

 

「・・・・・・はは、なんですかそれ。揶揄ってます?」

 

 

 

別れてから一日も経っていないというのに、随分久しぶりに会ったかのような感覚がある。今日は色々あったこともあり、青娥さんの笑顔を見たら少し安心してしまった。

 

 

 

「いえいえ・・・・・・おや、なんだかホッとした顔してますね。もしかして一人で不安でした?そんなに私に会いたかったんですか?」

 

「なっ、いや、そんなんじゃ・・・・・・・・・あー・・・・・・そう、ですね。かもしれません」

 

 

 

俺の表情から内心を読み取ったのか、青娥さんは口元に手を当てにやにや笑いながらそう揶揄う。青娥さんの顔を見て安心したのは事実なので、少し恥ずかしいが肯定した。目は合わせられなかったが。

 

予想していた反応と違ったのか、青娥さんは一瞬目をぱちくりさせる。しかし、すぐにいつもの悪戯な笑みを浮かべるとからからと笑い出した。

 

 

 

「やーん、アクトくんの癖に生意気ー!・・・・・・ところで、こんなところで何してるんです?というか抱えてるそれは・・・?」

 

「あぁ、これですか。見てくださいよ青娥さん、魔鋼塊です。しかも二つ!今日知り合った友達から貰って・・・・・・って、そうだ!青娥さん、ちょっと話があるんですけど・・・・・・」

 

 

 

くすくす笑う青娥さんだったが、俺が抱えている魔鋼塊に気付き少し驚く。恐らくカイジンさんのようにこれがどれだけ凄い物なのか分かるのだろう。

 

魔鋼塊を手に入れた経緯を話そうとしたその時、青娥さんならベスターをなんとか出来るのではないかと俺は思い付いた。本当かどうかは分からないが、ここの偉い人と知り合いみたいなこと言ってたし。そう考えた俺は、彼女に先程起きた出来事を説明した。

 

 

 

「・・・・・・・・・・・・・・・そうですか、そんなことがあったんですね。それにしても、ベスター大臣ですか」

 

「あいつのこと知ってるんですか?」

 

「まぁ一応。あんな人ですけど大臣ですし、色々ありますから」

 

 

 

俺の話を聴き終わった青娥さんはそう呟く。色々とはなんなのかと訊ねると、彼女はカイジンさんとベスターについて教えてくれた。

 

なんでもカイジンさんは以前、ドワルゴンに七つある王宮騎士団・・・・・・その内の一つの団長を務めていたらしい。ベスターはその時の部下だったそうだ。侯爵の出であるベスターは庶民の出であるカイジンさんの下にいることが気に入らなかったようで、当時の二人はしょっちゅう衝突していたんだとか。

 

そんなある日、功を焦ったベスターが進めていた『魔装兵計画』が研究中に大きな事故を起こし失敗。ベスターはその失敗全てをカイジンさんに押し付けたのだという。軍の幹部を抱き込み、偽の証言までも用意して。

 

そのような経緯があり、カイジンさんは団長の座を追われ鍛冶師に。ベスターは大臣にまで登り詰めたという訳だ。

 

 

 

「・・・・・・・・・あの二人にそんな過去が・・・けど青娥さん。それならこのままだとマズイんじゃ・・・?」

 

 

 

青娥さんから二人の過去を聞いた俺は益々不安になった。ベスターは自身のミスを隠蔽し、カイジンさんにそれを押し付けた・・・・・・ならば、今回も同じようなことをしてくる可能性は高い。しかし青娥さんは慌てる俺とは対照的に、至って冷静なままくすりと笑った。

 

 

 

「大丈夫ですよアクトくん。心配要りませんわ」

 

「な、なんでそんなこと言えるんですか!もしベスターが前みたいなことをしてきたらリムルやカイジンさんたちは──」

 

「大丈夫。だって、ガゼル王は全てを見抜いておられますもの」

 

 

 

俺を落ち着かせるかのような優しい声色で青娥さんはそう告げる。彼女の言葉と表情の前に言葉を詰まらせた俺は、落ち着く為に一息吐いてから今上がった人物について訊ねた。

 

 

 

「ガゼル王、ってのは・・・・・・」

 

「あぁ、アクトくんは知りませんでしたね。ここドワルゴンの王様ですよ。国を公平に統治する賢王として評価が高く、また『剣聖』と呼ばれる程の卓越した剣術の腕前も併せ持つ色々とヤバいお方ですわ」

 

 

 

仮にも国の王を冗談交じりに笑いながら説明する青娥さんに俺は苦笑する。しかし青娥さんにヤバいと言われる程の実力なのか・・・・・・青娥さんとどっちが強いのだろう?

 

・・・・・・いや、多分青娥さんの方が強いんだろうな。なんとなくだけど。

 

 

 

「そんなガゼル王ですけど、素晴らしい御慧眼もお持ちでしてね。実はベスター大臣の過去のやらかしに気付いてるんですよ」

 

「えっ!?」

 

「ですから、例え嘘の証言や証人を用意したとしても、ガゼル王ならば真実を見抜いてくださります。だからアクトくんのお友達は心配要りませんわ」

 

 

 

驚いていた俺を見て小さく笑ってから青娥さんはそう続けた。確かに青娥さんの言う通りであるならリムルたちの身は安全だろう。だが、俺はどうしても気になることが出来た。

 

 

 

「・・・・・・けど、それならなんでガゼル王は今までベスターのことを見逃してたんだ・・・・・・?」

 

「さぁ?賢王様のお考えなど庶民の私にはとてもとても・・・・・・けれど──」

 

 

 

肩を竦めながらおどけるかのように青娥さんはそう答える。流石の青娥さんでもそこまでは分からないかと俺がそう思った時だった。

 

 

 

「──もしかすると、信じたかったのかもしれませんね」

 

 

 

どこか遠くを見つめ、青娥さんはぽつりとそうこぼした。その表情はまるで誰かを憐れんでいるかのようで。その誰かが信じられていた者なのか、信じたかった者なのか──一体どちらだったのか、俺には分からなかった。

 

 

 

「・・・・・・・・・さて、と。それでアクトくんはこれからどうするんです?」

 

「えっ?あ、あー・・・・・・とりあえず貰った魔鋼塊を使ってガビルの武器を作ろうかと。鍛冶のやり方は教えてもらったし、場所も・・・ほら、あそこのカイジンさん家を借りられたんで」

 

 

 

あまり見ない青娥さんの表情に見とれていた俺は慌ててそう答える。青娥さんは俺の反応に少し首を傾げていたが、特に追及しては来なかった。良かった、また弄られるところだった・・・・・・

 

 

 

「ふーん・・・・・・それでは、私もご一緒しても?」

 

「別に構いませんけど、見てたってつまらないと思いますよ」

 

「そんなことありませんよ。私ね、頑張ってるアクトくんの姿を見るの・・・・・・結構好きなんですから」

 

 

 

彼女の言葉に嬉しいような恥ずかしいような、何とも言えない気持ちになりながら、俺は小さく笑いながら頬を掻いた。

 

 

 

「あー・・・・・・それじゃ、その・・・・・・よろしくお願いします・・・?」

 

「ふふ、お願いされました♪そうですね、どうやら今日は大変な一日だったようですし・・・・・・頑張った御褒美に少し私も手を貸してあげちゃいましょーう!」

 

 

 

なんと言えば分からず、とりあえずそう返した俺を見て青娥さんはどこか楽しげにそう言った。御褒美・・・・・・何をしてくれるのか少し不安だが、多分悪いことにはならないだろう。

 

そして俺と青娥さんの二人はカイジンさんの工房でガビルの武器作成に取り掛かり始めた。ついでに俺用の装備も。折角魔鋼塊を二つ貰ったのだし、余った分だけでもいいから使わせてもらうとする。

 

しかし、いくら鍛冶について教えて貰ったとは言っても、それはたったの数時間。カイジンさんたちが不在の中、俺一人で武器を作れるかとても不安だったのだが・・・・・・『脱獄者』の『道具作成』は優秀だった。カイジンさんが持つ道具や設備が良かったというのもあるかもしれないが、スキルを発動した途端にまるで自分に鍛冶の達人が乗り移ったかのような働きをしたのである。

 

そして、魔鋼塊を打ち始めてから数時間。

 

 

 

「───・・・・・・出来た!」

 

「おぉー」

 

 

 

仕上がったそれを手に取り眺め、俺は汗を拭いつつそう叫んだ。青娥さんはそんな俺を見てぱちぱちと手を叩く。慣れないながらも必死に魔鋼塊を打ち続け、俺はなんとかガビルの武器を完成させることが出来たのだ。

 

 

 

「おめでとうございますアクトくん!大変な作業でしたけど、無事に武器が完成して何よりです♪」

 

「そうですね・・・・・・大変でしたね・・・・・・青娥さんが」

 

 

 

笑顔を浮かべる青娥さんに俺はジト目を送ってやる。何が大変だったかというと、それは青娥さんの妨害である。

 

火を入れた炉の存在により、武器を作り始めてから割りとすぐに工房内の温度は高くなったのだが・・・・・・この人ときたら「はー、暑~い♪」だとか「脱いじゃおっかな~♪」などと抜かしながら胸元を広げてきたり、スカートをばさばさと翻すなどというとんでもないことをしてきやがったのである。この仙人、スケベすぎる・・・・・・

 

 

 

「あらあら?どうしたんですアクトくん。そんなに顔を赤くして・・・・・・暑さにやられちゃいましたか?」

 

「分かってて言ってんでしょアンタ!?」

 

「あははははっ!」

 

 

 

俺のツッコミを受けてふわふわ空中を漂いながら青娥さんは笑う。というか、よく見たらこの人全然汗かいてないじゃん。冷静に考えたらこんなに強い人が暑さで参る訳が無かった。恐らく、耐性かなんらかの魔法を使って暑さをなんとかしているのだろう。

 

 

 

「ったく、もう・・・・・・けど、ありがとうございます青娥さん。青娥さんがくれた素材のおかげで、より強力な武器が出来ました」

 

「ふふふ、どういたしまして。ガビルさんの為・・・・・・というのは面白くありませんが、アクトくんが喜んでくれたのならまぁ良いでしょう」

 

 

 

相変わらずガビルには冷たい彼女に苦笑する。それはさておき、青娥さんもただ邪魔ばかりしていた訳ではない。武器の作成中に「これもどうぞ」と、とある素材を譲ってくれたのだ。それには少しばかり青娥さんが手を加えており、それと魔鋼塊を使用することで予想していた以上の性能を持った武器となったのである。

 

 

 

「しかしまぁ、よくこれだけの物を作れたものです。間違いなく特質級ですよ、これ」

 

「マジですか・・・・・・きっとカイジンさんやガルムさんたちの教え方が良かったんですよ。それと、リムルと青娥さんのくれた素材のおかげかな」

 

「アクトくんが持つスキルと、アクトくんの努力の結果ですよ♪」

 

 

 

笑顔でそう褒めてくれる青娥さんの言葉に思わず照れ、俺は頭をかきながら口元を緩めた。しかし、まさか特質級の武器が出来るとは・・・・・・そりゃ少しでも良い武器になるよう頑張りはしたけども。

 

ともかく、これで当初の目的は果たせた。果たしてガビルはこの武器を見て喜んでくれるだろうか。俺は少しだけ不安になりながら、手に取った武器を眺めていた。

 

 

 

「・・・・・・さて・・・・・・魔鋼塊は余ってるし、あとは自分用の装備も使っておくとするか。もう少しだけ待っててくださいね、青娥さん」

 

「えぇ~?こんな暑いところでこれ以上待てませーん。という訳で脱ぎます♪」

 

「脱ぐな脱ぐな脱ぐな!これくらいの暑さ何ともねえだろアンタ!」




どんな武器が出来たのかは次回明らかに・・・・・・
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