転生したら蜥蜴人族の友人と邪仙の恋人ができた件   作:乃出一樹

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お待たせしました、第49話となります。

段々と寒くなってきましたね。私は布団を一枚増やしました。


接触禁止

槍脚鎧蜘蛛(ナイトスパイダー)を討伐に向かったガビルを見送り、彼と爺さんたちの昼食を作ることにした俺。

 

それを済ませて色々な準備を終えた後、俺は『飛空法』を使用し一人でジュラの大森林を飛び回っていた。

 

 

 

「・・・・・・この辺は特に何もないか」

 

 

 

周囲を見回しそう呟く。シス湖を越えて森の中に入った俺は散歩のついでに、他になにか異変がないか様子を見に来たのだ。青娥さんの修行もないことだし。

 

一人で修行していても良かったのだが、ガビルがナイトスパイダーの討伐に向かったことと、ここ最近の森の様子が気になったのでこうして足を運んだという訳だ。

 

 

 

「まぁ・・・・・・ヴェルドラさんがいなくなったことが異変の原因だから、俺じゃどうしようも無いんだが」

 

 

 

苦笑しつつ、再び移動を始める。ジュラの大森林で起きている異変は、暴風竜と呼ばれ恐れられるヴェルドラさんが消えたことが原因らしい。あの人・・・・・・いや、あの竜をまた洞窟に封印する訳にもいかないので、しばらくはジュラの大森林は荒れたままなのだろう。

 

 

 

「・・・・・・そういや、この森には管理者がいるって青娥さんからちらっと聞いたっけ」

 

 

 

一ヶ月間の修行の合間、青娥さんとは色々な会話をした。その中に、ジュラの大森林には妖精の末裔である樹妖精(ドライアド)という種族の管理者がいるという内容があった。

 

ドライアドは三人居り、普段は聖域と呼ばれる場所で樹人族(トレント)という魔物を守護しながら暮らしているらしい。なんでもこの森で起きることは全て把握出来る・・・・・・とのことだが、それなら何故今起きている異変を解決しないのだろうか。

 

 

 

「森の管理者でもどうにもならねぇってことか・・・・・・」

 

 

 

ドライアドたちは皆Aランクオーバーの強さらしいが、彼等をもってしてもヴェルドラさんが抜けた穴を埋めるには足りないのだろう。いや、あのヴェルドラさんの代わりを務めるなんていくらなんでも無理か。竜種というのはとんでもない力を持っているらしいし。

 

 

 

「・・・・・・ま、俺とガビルと青娥さんがいればシス湖の方は大丈夫だろうけどな」

 

 

 

俺とガビルだってドライアドと同じくAランクオーバーの魔素量だし、青娥さんに至っては俺たちを遥かに上回る力を持っている。本気の彼女を見たことはないが、俺はそれをなんとなく感じ取っていた。

 

と、そこで俺は青娥さんから借りている時計をちらりと見た。俺がシス湖を出発して一時間以上経っている。どの辺りで戦っているのかは分からないが、ガビルたちもそろそろ帰って来る頃の筈だ。何も連絡が無いということは特に問題も無いのだろう。

 

 

 

「さーてと・・・・・・ガビルたちのことは置いといて・・・・・・」

 

 

 

時計をしまい、今度は爺さんから借りた森の地図を広げる。木にぶつからないよう注意して飛びながら俺は現在地を確認した。

 

 

 

「今は・・・・・・この辺りか」

 

 

 

シス湖から見て西・・・・・・ガビルと初めて出会ったあの池よりは手前側くらいか。ここジュラの大森林はとても広く、辺り一面木や植物ばかりで迷いやすい。だが、シス湖周辺はリザードマンたちの手によって少しではあるが整備されており、簡単な道や看板等が作られているので、それらを確認すれば自分が大体どの辺りにいるか分かるのだ。

 

 

 

「確か、ゴブリンたちの村の場所も書いてあるんだっけ」

 

 

 

地図の数ヶ所に付けられた丸を見ながらそう呟く。その丸のところにゴブリンたちの村があると爺さんが言っていた。ちなみにオーガたちの済むクシャ山脈も記されている。誰が作ったのかは知らないが、結構詳細な地図のようだ。

 

それよりも、俺はゴブリンという言葉からある人物・・・・・・いや、魔物のことを思い出していた。

 

 

 

「・・・・・・リムルはゴブリンの村で暮らしてるって言ってたよな。どこの村なのか聞いとけば良かったぜ・・・」

 

 

 

地図を睨みながら頭を掻く。リムルたちと別れて二日。村の位置によっては分からないが、恐らくまだリムルが帰ってきていないにしても、あいつのいる村の場所は一応把握しておきたい。

 

・・・・・・最も、把握したところで直ぐには会えそうにないのだが。

 

 

 

「ドワルゴンの諜報部隊ねぇ・・・・・・」

 

 

 

俺は昨夜の出来事を思い出す。首領にシーザーのことを謝罪し終え、ガビルの進化祝いとしてささやかなパーティーをしていた時のことだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「リムルに会うな?」

 

「はい」

 

 

 

大切な話があると無駄に色っぽく耳元で囁かれ、赤面しつつ何事か訊ねると青娥さんはそう言った。最初はいつものように揶揄うつもりなのかと思ったが、どうやらそういうことでは無いらしい。

 

 

 

「実はアクトくんが封印の洞窟に潜っている間、お酒を調達するついでにドワルゴンに寄ってみたんですよ」

 

「ついでで行ける距離じゃないと思いますけど・・・・・・『空間移動』って便利ですね」

 

 

 

俺も『空間移動』は獲得しておきたいな。歩いて移動するのは嫌いじゃないし、空を飛ぶのは爽快で気持ち良くて好きだが、ここからドワルゴン辺りまでは流石に移動が大変だし・・・・・・っと、今はそのことよりリムルのことだ。

 

 

 

「ふふ、アクトくんがそのスライム・・・・・・リムルさんでしたっけ?彼のことが気になってると思いまして。それで、ガゼル王に直接話を聞きに行ったんです」

 

「一国の王に直接話を聞きに行ったんです!?」

 

 

 

驚いて思わず聞き返してしまった。酒を用意するついでに王様に会いに行くってなんなんだこの人は。フットワーク軽すぎるだろ。

 

 

 

「はい♪あの国って大きな裁判には王が立ち会うんですよ。仮にも大臣に手を出したのなら王が顔を出すかなー、と。そしたら見事に予想的中で、色々なことを聞けました」

 

 

 

俺の反応が面白かったのか、にこにこと笑みを浮かべながら青娥さんが告げる。何故ガゼル王は青娥さんにそれを話してくれたのだろう。前に知り合いのようなことを言っていたが、そんなに親しい仲なのだろうか・・・・・・まさか脅してたりしてないよな・・・・・・?

 

 

 

「そ、それで・・・・・・裁判の結果はどうなりました?」

 

「鍛冶師カイジンたちは国外追放。リムルさんと共にどこかへ行ったようです・・・・・・あ、そうそう。ベスター大臣は失脚してました」

 

「失脚?カイジンさんたちが国外追放ってことは、ベスターの思惑通りになったってことじゃ・・・・・・」

 

 

 

どういうことなのかと俺は首を傾げる。そんな姿を見て青娥さんはくすりと笑うと、それについて詳しく説明してくれた。

 

なんでもベスターはリムルたち側の弁護人を買収しまともな裁判を出来ないようにしていたらしい。その弁護人はリムルたちが不利になるような証言をしたが、それをガゼル王は見抜いていたそうだ。

 

弁護人の言葉を無視し、ガゼル王はカイジンさんに王宮へ戻ってくる気はないかと訊ねたが、カイジンさんは主を得たと答え断ったという。王の命令であれど、この契りを手放す気はないと。それを聞いたガゼル王は、カイジンさんたちに国外追放を言い渡したのだ。

 

そして判決の後。ガゼル王はベスターにリムルが作ったフルポーションを見せたという。恐らくカイドウさんだと思うが、警備隊からリムルのフルポーションについて報告があり、余ったものが提出されたそうだ。

 

なんでもドワルゴンの技術力でもフルポーションは製造出来ないそうで、それを作り出せるリムルとの繋がりを個人の身勝手な感情で断ち切ってしまうとは何事かとベスターを叱責。さらに今回の件や、かつてカイジンさんへ擦り付けたという計画失敗の件を突き付け、ベスターを王宮から追放したという。

 

 

 

「・・・・・・カイジンさんたちの国外追放に関しては、彼等の思いをガゼル王が汲んだような形ですかね。それにベスター大臣は国外追放以上の厳罰を求刑してましたし、ガゼル王に救われたと言って良いでしょう」

 

「何発か殴っちまったのは事実だしな・・・・・・牢屋にぶちこまれることなく、さっさとリムルと一緒に行けたって考えれば、確かにガゼル王のお陰か」

 

 

 

正直、無罪放免にして欲しくはあったが・・・・・・罪は罪なのでそういう訳にもいかなかったのだろう。たとえベスターに非があるとしても。あとは、ドワルゴンに縛られないように背中を押したつもりなのかもしれない。青娥さんの話を聞く限り、カイジンさんはガゼル王と良好な関係だったようだし。

 

 

 

「一夜にして二人も大切な臣下を失い、少し寂しそうでしたよ。いつもあぁならまだ可愛げがあるんですけどねー」

 

 

 

揶揄うように青娥さんがそう続けた。カイジンさんなら分かるが、ベスターに対しても情があったのか。それ程優秀だったのか、或いは・・・・・・いや、これ以上はやめておこう。ガゼル王はともかく、ベスターとはもう二度と会うことは無い筈だからな。

 

 

 

「・・・・・・それで、ここからが本題なんですけれど。ガゼル王はベスター大臣を追放した後で、部下の諜報部隊にリムルさんを監視するよう命じたようです。なんでも暴風竜のような恐ろしさをあのスライムから感じた、そんな魔物を放置する訳にはいかない、とのことですよ?」

 

 

 

笑顔で青娥さんはそう告げるが、俺は思わず口元を引きつらせる。なんて勘してるんだガゼル王・・・・・・とは言え、まさかスライムの中にその暴風竜が入っているとは夢にも思わないだろうが。

 

 

 

「私の見立てでは、リムルさんとアクトくんの強さ・・・・・・戦った時にどちらが勝つかまでは分かりませんが、少なくとも魔素量に限ればアクトくんが上回っています。そんな魔物がいると知られれば厄介なことになるでしょうね」

 

「マジですか。俺がリムルより・・・・・・・・・ん?見立てって、どうしてそこまで分かるんですか?リムルについては、封印の洞窟で生まれたユニークモンスターの転生者ってことくらいしか分かってないのに」

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・ウフフ♪」

 

 

 

俺がそう訊ねると、青娥さんは一瞬硬直する。すると笑顔を浮かべたまま青娥さんは俺の視線から顔を逸らした。さてはこの人、こっそりリムルを見に行ったな・・・・・・

 

問い質すようにジト目で見つめ続けていると、無言の圧力に負けたのか青娥さんは苦笑しつつ弁明した。

 

 

 

「えっとぉ~・・・・・・私としましても、あの暴風竜に気に入られたというスライムが気になっちゃいましてぇ・・・・・・なんと言いますか・・・・・・・・・ごめんなさい?」

 

「んっ・・・・・・!」

 

 

 

困ったような笑みを浮かべ言葉を濁していた青娥さんは少し考え込んだ後、頭を下げつつ上目遣いで俺を見つめてきた。この邪仙、絶対自分が可愛いって自覚してるだろ・・・・・・こんなの可愛い女しか許されないヤツだぞ・・・・・・

 

 

 

「・・・・・・・・・あー・・・・・・まぁ、気持ちは分かるんで謝らなくても・・・・・・」

 

「良かったぁ、アクトくんに嫌われちゃったかと!」

 

 

 

照れてるのがバレないように平静を装いつつ俺がそう答えると、青娥さんはぱっと表情を変えていつもの笑顔に戻った。全く調子の良い人だ、俺なんかに嫌われたところで痛くも痒くもない癖に。

 

・・・・・・けど、この人のこういう性格は嫌いじゃないんだよな。

 

 

 

「それで、話を戻しますけど・・・・・・ガゼル王のことですし、諜報部隊の中でも特に優秀な方たちを常時リムルさんに張り付けさせると思います。なのでこちらから会いに行ってアクトくんの存在を知られないようにしたいんですよ」

 

「そうですね・・・・・・俺のせいでガビルたちリザードマンの皆に迷惑かけたくないし」

 

 

 

そういう理由ならば仕方ない。リムルに会いに行くのは暫く我慢するとしよう。俺のことがガゼル王に知られたせいで、ガビルのことが向こうに知られるとまたややこしくなるかもしれないし。なにせ今のガビルはAランクオーバーの魔物なのだ。リムルや俺以外にもそんな魔物がいると知れば、ガゼル王の警戒がシス湖にまで及ぶかもしれない。

 

・・・・・・有り得ないだろうが、討伐に来たら大変だしな。

 

 

 

「リムルさんの方から会いに来た場合は仕方ないでしょうけど、こちらから動くのはなるべく控えてくださいね?ガゼル王にも『頼むから邪魔はするな』って言われちゃいましたし」

 

「そう言われたのに見に行ったのかよ・・・・・・」

 

 

 

本当に自由な人だと俺は小さく笑う。青娥さんと知り合ってしまったガゼル王も大変そうだと、俺は心の中で彼に同情したのだった。




地図のくだりですが、転スラ日記で結構前に地図の話が出ていたので、迷わないように目印などがあったのではないかと。
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