転生したら蜥蜴人族の友人と邪仙の恋人ができた件   作:乃出一樹

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お待たせしました、第5話となります。

職場の飲み会を断れる強い心が欲しいです。


リザードマンの首領

「・・・・・・・・・息子よ。この少年が、お前が連れ帰って来たという人間か」

 

「・・・・・・はい」

 

 

 

その部屋に置かれた玉座に、一人のリザードマンが腰掛けていた。おそらく、このリザードマンが首領なのだろう。そして今の会話から、ガビルの父親でもあるらしい。

 

玉座から少し離れた位置でガビルが跪く。慌てて俺もそれに倣おうとしたところ、玉座の首領が手で制した。リザードマンではない俺はしなくても良いということなのだろうか。少し気まずいものの、首領の意に従いそのままで向かい合うことにした。

 

 

 

あの後・・・部屋で食事を済ませた俺は、ガビルが用意してくれた服に着替え、玉座の間へ行き首領に挨拶をすることになった。

 

ガビルが履いているものと似たズボンと適当なシャツ。それと足首よりやや上まですっぽり隠れる靴・・・というかブーツ?ファッションに疎い自分ではどう説明すればいいのか分からないが・・・・・・・・・あ、アレだ。ドラゴンボールのベジータが履いてる靴に似てるんだ。とにかく、それらを貰ったのである。

 

ガビルや多くのリザードマンは靴をあまり履かないそうだが、履いている一部のリザードマンから譲ってもらったらしい。人間である俺の為にわざわざ靴を探してくれたガビルには本当に頭が上がらない。正直裸足のランドルなんて解釈違いだからな・・・・・・いや、室内ではそれでも構わないけども。

 

とにかく、着替えを済ませた俺はガビルと共に首領のいる部屋へと向かうことになった。途中ガビルから聞いたところ、リザードマンたちはシス湖という場所付近に存在する地下の大洞窟を住処としているらしい。

 

内部は一部手が加えられ彼らが住みやすくしてあるものの、ほとんどが天然の迷路のようになっており侵入者を迷わせるそうだ。あと、無数に入り組んだ構造となっていて、住んでいるリザードマンたちもその全てを把握できていない程なのだとか。

 

 

 

(通りで洞窟っぽいと思った・・・それにかなり広そうだぜ。ガビルから地図を貰ったし、迷わないように後で確認しておかないとな)

 

 

 

そんなこんなで。入り組んだ洞窟をガビルの案内の元進み、現在リザードマンたちの首領の間にいる訳である。

俺は緊張を解す為に小さく深呼吸した後、隣のガビルと俺について話している首領を眺めた。

 

窓が無い洞窟内部の為、部屋は薄暗くなっているが、玉座の近くに備えられた燭台に灯る火が周囲を照らしている。そのおかげで首領の姿をよく見ることができた。

ガビルよりやや黒ずんだ緑色の肌に、やや皺のある顔付き。そして沢山生えてはいるが白髪であることからそれなりに年老いているのだろう。リザードマンの寿命など分からないが。

 

ふと、玉座の隣に納められた槍が目に止まる。フォークのような三又の槍だ。随分綺麗に手入れされているが、首領専用の武器なのだろうか。

 

 

 

「・・・・・・・・・と、このような事情がありまして。しばらくこの人間を此処に住まわせてやりたいのです」

 

「ふむ・・・・・・少年よ。記憶が無いというのは本当か?」

 

「えっ?・・・あ、はい。その、信じて貰えないかもしれませんが・・・・・・」

 

 

 

首領に突然声を掛けられたことに少し驚きながらも、視線を槍から二人に戻し返答する。俺の言葉を聞いた首領は短く唸りじっとこちらを見つめていたが、やがて小さく息を吐くと再びガビルに向き直った。

 

 

 

「・・・・・・よかろう。素性の知れぬ輩を我等が領地に留まらせるのは不本意ではあるが・・・少なくともこの少年は悪意ある存在ではないらしい。ならば、そのような者を見捨てるのは寝覚めが悪いというものだ」

 

「おぉ!では・・・」

 

「ただし・・・息子よ、お前が責任を持って面倒を見るのだぞ!それと、何かトラブルが起きぬよう他の仲間たちにもこのことをしっかり伝えておけ」

 

「はっ!感謝します、親父殿!」

 

 

 

首領に勢いよく頭を下げるガビル。いまだ怪しまれてはいるようだが、とりあえず俺はしばらくここにいてもいいらしい。

 

それにしても、なんだかペット扱いされてるみたいだと一人苦笑していると、ふとここまでの会話に違和感を覚えた。一体なにに引っ掛かっているのだろうと自問自答していると、ガビルがその違和感の答えをくれた。

 

 

 

「・・・・・・・・・しかし親父殿。その呼び方は些か無粋ではありませぬか?我輩には『ガビル』という、『ゲルミュッド様』から頂いた名前があるのですから」

 

「・・・・・・呼び方などどうでもよかろう」

 

 

 

その場の空気が冷えたような感覚に、思わず俺は息を飲む。二人のそのやり取りを横目で見つつ、俺は先程の会話の中で感じた違和感の正体を掴んだ。

 

そう、首領はガビルの名前を呼ばなかったのだ。そして、ガビルの口から出た『ゲルミュッド』という名前・・・どうやらガビルの名前は首領である父親に付けてもらったものではないらしい。

 

 

 

「・・・・・・話は終わりだ。下がれ」

 

「・・・・・・はい。行こう、人間よ」

 

「あ、あぁ・・・っと・・・・・・失礼します・・・」

 

 

 

首領の言葉にガビルは立ち上がり部屋を出ていく。慌てて俺はガビルに付いて行こうとし・・・その前に、振り返って首領に頭を下げてからその場を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「全く、親父殿ときたら・・・・・・何故我輩の名前を呼んでくれぬのか!」

 

 

 

首領の間から出て少し経って。俺は洞窟内をガビルと共に歩いていた。そのガビルはというと、先程の父親との会話に怒っているらしく、不機嫌そうな顔をしながらそう呟いた。

 

 

 

「あー・・・・・・大丈夫か?ガビル」

 

「む?おっと・・・・・・いやいや、みっともないところを見せてしまったな。済まないのである」

 

 

 

俺に声を掛けられ、慌ててガビルは笑みを浮かべそう返す。どうやら本気では怒っていないらしい。その事に内心ほっとしながら、俺はガビルに訊ねた。

 

 

 

「なぁガビル、その・・・お前の名前についてなんだけどさ」

 

「む、我輩の『ガビル』という名前であるか?この素晴らしい名前は『ゲルミュッド様』に付けて頂いたのである!」

 

「ゲルミュッド・・・様。誰なんだそいつ。リザードマンの偉い奴か?」

 

「いやいや、ゲルミュッド様は上位魔人なのだよ」

 

「上位魔人・・・?」

 

「うむ。そして魔王軍の幹部なのである!」

 

 

 

 

凄いだろう、とガビルは自慢気にゲルミュッドという者のことを話す。どうやらかなり尊敬しているらしい。

 

しかし、次から次へと気になる単語が出てくる。上位魔人だとか魔王だとか。それと、何故父親ではない者がガビルに名前をつけたのかも気になる。丁度いいタイミングかと思い、色々聞いてみようとした時だった。

 

 

 

「なぁガビル。教えてほし──」

 

「おっと!?名前で思い出したぞ!お主の呼び名だ!」

 

「は?」

 

 

 

ガビルの声で俺の質問は遮られた。思わず間抜けな声が出て呆気に取られる俺に構わずガビルは言葉を続ける。

 

 

 

「いや、いつまでも「人間」などと言う呼び方は如何なモノかと思ってな。名前がないのであれば、せめて記憶を思い出すまでの仮の名前でも決めた方がいいと思ったのである」

 

「あー・・・・・・成程?」

 

 

 

確かに一理ある。いつまでここにいるかは分からないが、流石にその間ずっと「人間」と呼ばれるのはあまり嬉しくない。しかし、仮の名前か・・・・・・

 

 

 

「お主は魔物ではないから問題なく名付けが出来るぞ!さて、どんな名前にしようか・・・・・・うーむ、こういうのは・・・いやいや、それとも・・・」

 

「名前ねぇ・・・ガビル、別に俺は・・・・・」

 

 

 

 

 

「ガビル様ーっ!」

 

 

 

顎に手を当て俺の仮の名前を考えるガビル。その時、彼を呼ぶ声が響いた。声のした方を見ると、三人のリザードマンがこちらに駆け寄って来ていた。

 

 

 

「ガビル様、このあと・・・・・・あれ?ねぇガビル様、この人間誰?」

 

「もしかして、噂の人間じゃねえか?ほら、ガビル様がオーガたちから助けたっていう」

 

「恐らく」

 

 

 

言葉を話した順に、少し口調が幼いイメージのある、ガビルよりやや明るい緑色のリザードマン。目付きが鋭い、暗いというか・・・確かモスグリーン?そのような色をしたリザードマン。そして忍者のような格好をした水色のリザードマンだ。

 

 

 

「おぉ、お前たちか!」

 

「えっと、知り合い?」

 

「うむ、我輩の部下である。いつも我輩を支えてくれていてな、とても頼りになるのだぞ!」

 

「おいおい、止してくれよガビル様!照れるじゃねえか!」

 

 

 

ガビルから自慢気に紹介され、三人のリザードマンたちは照れながらも喜んだ。どうやら部下たちからもガビルは慕われているらしい。

 

 

 

 

「あー・・・初めまして。ガビルに助けられた人間だ。よろしく」

 

「うん、よろしくー!」

 

 

 

気さくに挨拶も返してくれる。ガビルだけじゃなく、リザードマン自体が優しい種族なのだろうか。安心しながら俺は三人のリザードマンに気になったことを訊ねる。

 

 

 

「えっと、お前たちの名前は・・・?」

 

「名前?俺たちにはないよ。リザードマンの中で名持ち(ネームド)なのはガビル様だけだよね!」

 

「然り」

 

 

 

俺の問いに緑色のリザードマン(長いから今後は緑と呼ぶことにする)が答え、忍者のような格好をしたリザードマン(同じく長いので今後は忍者と呼ぶ)が頷く。ガビルだけ、ということは首領も名前が無いのか。

 

 

 

「しかし、アンタも相当勇気があるよな。人間の癖にたった一人でこの『ジュラの大森林』にやってくるなんてよ。まぁ、ガビル様程じゃねえがな」

 

「こらこら、止すのである」

 

 

 

そんなことを考えていると、モスグリーン色のリザードマン(こっちはモスとする)がやや呆れた様子で俺に笑いかける。『ジュラの大森林』・・・・・・そう言えばオーガたちもそんなことを言ってたっけ。恐らくシス湖もその『ジュラの大森林』の中にある湖なのだろう。

 

 

 

「もしかして、人間さんは『冒険者』?それとも1人で旅でもしてた?」

 

「いや、それなんだけどよ・・・・・・・・・あっ」

 

「む?どうしたのであるか?」

 

 

 

俺のことが気になるのか、緑がそう訊ねてきた。とりあえず記憶が無いことを伝えようとした時、ふとあることを思い付いた。

 

 

 

「なぁガビル、さっきの名前の件だけどよ。俺のことはとりあえず『旅人』って呼んでくれないか?」

 

「え?『旅人』・・・であるか?な、何故そのような味気ない呼び名を・・・」

 

「あ、あぁ・・・その、だな・・・・・・お前にこれ以上手間を掛けさせるのは悪いし・・・それに、本当の名前を思い出した時に、お前が付けてくれた名前の方に愛着が湧いてたら、俺の親に申し訳ないなー・・・なんて・・・」

 

 

 

何とか笑みを浮かべ、ガビルにそう返す。

 

今言ったことは嘘ではない。嘘ではない、が・・・・・・ここで名前が決まってしまうと今後はずっとその名前でやっていくことになるかもしれない。なにせ自分は記憶喪失なのだから。

 

なにより今の自分の姿は『ランドル』。だからと言って『ランドル』を名乗るかどうかはまだ決めていないが、あまりこの姿と合わない名前を付けられるのは困る。助けてもらっておいて何様なのかとは自分でも思うが・・・・・・

 

 

 

「ふむ・・・・・・手間などと気にすることはないが・・・親か・・・・・・そうであるな。良し、お主がそこまで言うのであれば、とりあえずここではお主を『旅人』と呼ぶことにしよう!」

 

 

 

なにやら少し考える仕草をしたガビルだったが、やがて笑顔で頷いた。良かった、誤魔化せるか不安だったがなんとかなった。

 

とりあえず、名前に関しては後でじっくり考えよう。もし『ランドル』を名乗る場合は覚悟がいるからな・・・色々と。

 

 

 

「おいおいガビル様、何の話だよ?」

 

「うむ、後で説明しよう・・・・・・それで、お前たちは何か我輩に用でもあったのか?」

 

「あーっ!そうだった!ねぇガビル様、少し訓練を手伝ってよ!ガビル様に見てもらいたいんだ!」

 

 

 

一人で決意を固めている俺を余所に、ガビルは三人のリザードマンたちに問い掛ける。すると要件を思い出したのか、緑が声を上げてガビルに詰め寄った。

 

 

 

「おぉ、そうであったか。こんな時間まで訓練とは感心である!よし、では少し付き合おう」

 

「やったー!それじゃ早く訓練場に行こうよー!」

 

「ははは、分かった分かった・・・・・・おっと、そうだ。お主はどうする・・・旅人殿?」

 

 

 

ガビルの返事に緑は嬉しそうに両手を上げ、そのまま駆け出した。緑に続こうとしたガビルだが、ふと立ち止まってこちらを振り返る。

 

そして優しく微笑みながら俺の『名前』を呼んだガビルに、俺も同じように微笑みを返すのだった。

 

 

 

「・・・・・・そうだな。お供させて頂きますよ、ガビル様?」

 

「む、む・・・・・・別にお主までそのように呼ばなくても良いのだぞ?」




主人公もとい旅人(仮)が履いてる靴に関してはまたしても友人からのアドバイスです。公式設定資料集にベジータの靴みたいなのを履いてるリザードマンがいるとのことで、見せてもらったら確かに似てました
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