転生したら蜥蜴人族の友人と邪仙の恋人ができた件   作:乃出一樹

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お待たせしました、第50話となります。

サブタイトルから分かる通り、今回はあの最強魔人が登場します。


最強魔人ケーニッヒ

青娥さんからの忠告を思い出しつつ、俺はさらに森の中を飛び続けていた。とりあえず、一番近くにあるゴブリンの村を目指している。最近、付近で何か異変はないかゴブリンたちから聞いて調べる為でもあるが・・・・・・リムルについて聞いてみようと思ったのだ。

 

なにも青娥さんの言葉を忘れた訳ではない。ただリムルが身を寄せているという村の場所だけ知っておきたかったのである。そうすればリムルになるべく会わないように立ち回ることも出来るからな。もしゴブリンたちが知らなかったとしても、その場合はその村周辺なら安心して行動出来るということだし。

 

それにドワルゴンを出た時間的に、恐らくリムルたちはまだ森の北側・・・・・・ドワルゴン側にいる筈だ。本人と鉢合わせることはまず無いだろう。牙狼族に乗って来たと言っていたから青娥さんのように『空間移動』などのスキルは持っていないと思うし。

 

と、そんなことを考えていた時だった。

 

 

 

『──アクト殿!』

 

「おっ?」

 

 

 

突然脳内に響いたガビルの声に僅かに驚く。思わず辺りを見回してしまうが、すぐに自分が持つユニークスキル『魔物師者(モンスターマスター)』の『思念伝達』だと理解し念話に応じた。

 

 

 

『あー、ガビルか。悪い悪い、初めての『思念伝達』だったから戸惑っちまってさ』

 

『うむ、実のところ我輩も少し不安だったぞ。しかし案外すんなり出来るものだな』

 

 

 

そう言ってガビルは笑う。ちなみに『念話』自体は青娥さんとしたことがあるのだが・・・・・・まぁ言わなくていいだろう。

 

 

 

『おっと、そうであった。アクト殿、こちらは無事槍脚鎧蜘蛛(ナイトスパイダー)を倒したところである!』

 

『本当か?やったなガビル!』

 

『わははははっ!なに、我輩とシーザーの手に掛かればあのような蜘蛛一匹に後れは取らぬよ!』

 

 

 

俺の称賛を受けてガビルが嬉しそうに笑った。念話越しだが、彼の喜んでいる様子が簡単に予想できる。それが少し面白くて、俺は口元を緩めた。

 

 

 

『ふっふっふっ・・・・・・我輩たちの勇姿、是非アクト殿にも見て欲しかったのである・・・・・・ところで、アクト殿は今なにを?』

 

『あぁ、今日は青娥さんも来ないし暇だったからさ。一人で森の見回りしてる』

 

『なぬ!?』

 

 

 

自慢気にそう続けていたガビルだったが、ふと気になったのか俺へそう訊ねる。別に隠すようなことでもないので軽く返事をしたところ、予想外の答えだったのかガビルは驚いた様子で声を上げた。

 

 

 

『だ、大丈夫なのであるかアクト殿!今のジュラの大森林を一人で彷徨くなど!また野蛮なオーガ共に襲われでもしたら・・・・・・!』

 

『あー?平気だって、ちゃんと警戒はしてるよ。時折『魔力感知』も使ってるし。それに、今の俺なら油断さえしなければあの時のオーガたちくらい倒せるしな』

 

『む・・・・・・それはそうであるが・・・・・・』

 

 

 

そう言われたガビルは考え込むように言い淀む。そんなガビルに少し過保護じゃないかと思わず苦笑した。心配してくれるのは素直に嬉しいけれど。

 

 

 

『大丈夫だって。いざとなったら『魔物師者』でお前を頼れるんだし。それにそんなに遅くならない内に帰るからさ』

 

『・・・・・・・・・分かった。そもそも我輩よりアクト殿の方が強いのだ、余計な心配であったな・・・・・・しかしアクト殿。万が一の時は必ず我輩を呼ぶのだぞ!良いな!?』

 

『勿論。心配してくれてありがとな、ガビル』

 

 

 

なんとか納得してくれたガビルは最後に念を押す。俺は彼に礼を言うと、そこで『思念伝達』を切った。そして再び探索に戻る。

 

 

 

「やっぱ面倒見良いよなぁ、ガビルって・・・・・・さて・・・・・・」

 

 

 

小さく笑いながら呟き、再び地図に視線をやる。とりあえずこのまま進めば地図に記してあるゴブリン村に着く。そこで少し話を聞いたらすぐに帰るとしよう。ガビルとシーザーをこれ以上不安にされるのも悪いし。

 

そう考え、速度を上げて目的地へ移動を開始してから数分後。

 

 

 

「・・・・・・・・・んっ?」

 

 

 

常に発動したままというのは疲れるので、ある程度移動したら『魔力感知』を使って周囲の様子を探りながら俺は飛行を続けていた。すると、前方に魔素を感知し空中で停止した。

 

 

 

「魔物か・・・・・・けど、随分魔素量が多いぞ・・・?」

 

 

 

『魔力感知』に引っ掛かった対象の魔素量は、大体今のガビルと同じくらいである。つまりAランクオーバーの魔物ということだ。

 

 

 

「そんな強いヤツがまだいるのかよ・・・・・・本当どうなってんだこの森」

 

 

 

ややげんなりしながら頭を掻く。ちなみに、そいつとの距離はそう離れていない。飛ばずに歩いて移動してもすぐにそこまで着くだろう。俺はどうするか少し悩んだが、とりあえずそこへ行ってみることにした。俺は『飛空法』を解除して地面に降り立つと、念の為に気配を殺しながら少しずつそこへ向かって歩き出し・・・・・・そして、あることに気付いたのだ。

 

 

 

「・・・・・・・・・待て・・・・・・これ、もう一人いる・・・・・・?」

 

 

 

最初は分からなかったが、少しずつ近付きながら再び『魔力感知』を行った結果、その場所には他にも何かがいるらしい。何故そのことがすぐに分からなかったのか。それはその何かの魔素量が少なかったから・・・・・・だけではない。

 

その何かをすぐに探知出来なかったのは、そいつがAランクオーバーの何者かのすぐ傍・・・・・・いや、恐らくだが、足元に倒れていたからだ。

 

 

 

「・・・・・・!まさか・・・」

 

 

 

嫌な予感がした俺は慌てて駆け出しその場所へ向かう。大した距離では無かった為、すぐにAランクオーバーの何者かがいるそこへ辿り着いた。そして、『魔力感知』に引っ掛かった二つの存在の姿が明らかになる。

 

 

 

 

 

 

 

「ケーーーッケケケケッ!素材ゲットォ!」

 

「・・・・・・・・・ぐ、ぅッ・・・・・・!」

 

 

 

開けた場所になっているそこには二人の人物がいた。まず一人目は、全身が緑色の羽毛に覆われていて顔には嘴の付いた鳥人とでも言うべき魔物。胸当てと前面に布の付いた腰当てを身に付け、手にはまるで巨大なフォークのような槍を持っている。

 

二人目は、なんだか和装のように見える服装をした、やや黒みがかった青髪の人物。その格好と聞こえた呻き声からして男だろう。こちらに背中を向ける形で横向きに倒れている為、顔は見えない。

 

どういう意味かは分からないが、鳥人はそう言って嬉しそうに笑っていた。足元にいる、傷付いた男を踏みつけにして。

 

 

 

「────おい・・・!」

 

「ん?」

 

 

 

その光景を目にした瞬間、俺の口から低い声が溢れた。その声が聞こえたようで、鳥人はゆっくりとこちらに振り向く。そのまま向き直った際に倒れている男から足が離れた。

 

その瞬間、俺は『思考加速』を発動し、倒れている男の様子を確認した。その体には大きなものも含め複数の傷があり、辺りにはその男のものと思われる血が飛び散っている。魔素量が少なく感じたのは酷いダメージを負っているからなのだろうか。それでも今のところ男は息をしている。とりあえずではあるが、倒れている男が生きていることを確認した俺は内心ほっとしつつ、『思考加速』を解除し目の前の鳥人を見据えた。

 

 

 

「・・・・・・これは、お前がやったのか?」

 

「あぁん?なんだクソガキ・・・・・・」

 

 

 

俺の問いに対し鳥人は鋭い視線で返す。この二人がどういう関係で、それぞれどんな奴なのかは分からない。もしかしたら青髪の方が悪人で、鳥人の方が良い奴なのかもしれないが・・・・・・さっき鳥人が口にした『素材』という言葉・・・・・・そして奴から発せられる雰囲気からして、なんとなくこの鳥人が悪人のように俺は思えた。

 

もし俺の勘が正しいのだとすれば、あの青髪の男をこのまま放って置く訳にはいかない。

 

 

 

「おいクソガキ!どうやら知らねえようだから教えてやる・・・・・・俺様は最強魔人ケーニッヒ!いずれ魔王になる上位魔人だ!」

 

「ケーニッヒ・・・・・・上位魔人・・・・・・」

 

 

 

凄みながらその鳥人、ケーニッヒはそう告げた。上位魔人・・・・・・Aランクオーバーの力を持つ魔物をそう呼ぶらしい。どの種族でもそれだけの力があればそう呼ばれるそうだが、基本的にはそれなりの知性がある人型の魔物のことを指すと以前青娥さんから聞いたことがある。

 

その理屈でいくと、俺とガビルも一応上位魔人のカテゴリに含まれているな。

 

 

 

「ケケケケッ、どうやらビビってるらしいなァ!まぁ無理も無ぇ・・・・・・俺様程の実力者にはそう出会えるもんじゃねえからな!」

 

 

 

俺が黙っているのを見て恐れていると勘違いしたケーニッヒはにやにやと笑う。なんだろう・・・・・・確かに強い魔物ではあるのだろうけども、どことなく小物感があるなこいつ。

 

 

 

「ケッケッケッ・・・・・・本来であればお前みてぇなクソガキ、出逢った瞬間にぶっ殺してるところだが・・・・・・今の俺様は機嫌が良い!跪いて命乞いするんなら見逃してやらぁ!」

 

「・・・・・・・・・その人のことは、見逃してくれないのか?」

 

「はっ?」

 

 

 

機嫌良く笑っていたケーニッヒだったが、俺の問いに間の抜けた声を漏らす。少々固まった後、ちらりと足元の男を見てから答えた。

 

 

 

「・・・・・・まさか、ここに転がってる奴のことを言ってんのか?ダメだダメだ、こいつは依頼された素材なんだよ!」

 

「依頼された素材・・・・・・さっきも言ってたが、どういうことだ?」

 

「はぁ!?なんでそんなことまでお前に話さなきゃならねぇんだクソガキィ!?」

 

 

 

男を見逃してくれる気は無いらしく、ケーニッヒは首を振りながらそう言った。再び口にした『素材』という言葉が気になり、それについても訊ねたが、流石にそこまでは教えてくれないらしい。少し残念に思っていると、ケーニッヒは顔を俯かせ頭を乱暴に掻き始めた。

 

 

 

「・・・・・・楽な仕事だと思ったのによぉ・・・・・・こいつを見つけるのにも割りと時間食ったし、しかもこんなクソガキにも絡まれて・・・・・・あぁ~、段々腹立ってきたぜぇ!」

 

 

 

苛立ちを隠すことなく、ケーニッヒは俺を睨み付けながら声を上げる。同時に発せられた殺意を感じ取った俺は静かに臨戦態勢を取った。

 

 

 

「気が変わった!この素材をあいつのとこに連れてく前に、まずお前を八つ裂きにしてやるぜぇクソガキィ!」

 

「俺としては出来れば話し合いで済ませたかったが・・・・・・まぁ、こっちの方が手っ取り早いか」

 

「・・・・・・・・・ぐっ・・・・・・止せ・・・上位魔人に、勝てる訳が・・・・・・!」

 

 

 

槍をこちらに向け叫ぶケーニッヒの姿に俺はそう呟きつつ口元を緩ませた。その時、ケーニッヒの足元に倒れている青髪の男が痛みに堪えながら俺にそう告げる。なんとか起き上がろうとしているようだが、相当なダメージを受けている体ではまともに動くことが出来ないようだ。

 

 

 

「・・・・・・心配してくれてありがとな。けど大丈夫だ、問題ねぇ。すぐに助けるから待っててくれよ」

 

「・・・・・・!」

 

「なっ・・・・・・なんだとぉおおお!?クソガキがぁ、どこまで俺様を馬鹿にすりゃ気が済むんだ!?」

 

 

 

相変わらず顔を見ることは出来ないが、青髪の男に向け俺はなるべく優しい声色でそう告げる。それを聞いていたケーニッヒはさらに怒りを爆発させ、全身から魔素・・・・・・いや、『妖気(オーラ)』を解放した。

 

 

 

「トサカに来たぜ!もう絶対に許さねぇ・・・・・・ぶっ殺してやらぁああああああッ!」

 

 

 

咆哮し、怒りを滲ませた表情でケーニッヒは真っ直ぐ突進してきた。その速度や発せられているオーラからして、以前戦った族長メズよりも間違いなく強い。腕を大きく引いて俺に槍を突き刺そうとしているが、それを喰らえば俺やガビルだってダメージは免れないだろう。

 

最も──。

 

 

 

 

 

「当たれば、だけどな!」

 

「ケッ!?」

 

 

 

真っ直ぐ放たれた刺突攻撃を、横に動くことで俺は回避した。恐らく『気闘法』を使用していない状態のガビルよりは素早いが、こんな単調な攻撃なら簡単に避けられる。

 

 

 

「こっ、このガキ・・・マグレとは言えこの俺様の攻撃を避けるとは・・・・・・!」

 

「悪いけどよ、今はゆっくり遊んでる時間は無いんだ・・・・・・つー訳でッ!」

 

「グゲェッ!?」

 

 

 

俺はそう言いながら接近すると、慌ててこちらへ向き直ったケーニッヒの腹へ蹴りを叩き込んだ。『復讐者』の『身体強化』までは使ってないが、素の状態で出せる全力を発揮してやった。上位魔人といえど耐えきれるものではなかったらしく、ケーニッヒは呻きながら宙へ浮く。

 

 

 

「こいつはオマケだ!あばよっ!」

 

「ぎょえぇええええ~~~~っ!?」

 

 

 

そして続けざまに俺は『繰気弾』を空中のケーニッヒ目掛け放った。蹴りを喰らった腹部に今度は『繰気弾』を受け、ケーニッヒは情けない悲鳴を上げる。そして『繰気弾』を操りケーニッヒをこの場所から押し出すように遠ざけたところで、俺は『繰気弾』を爆発させた。

 

 

 

「よし、と・・・・・・なんとかなったな」

 

 

 

ケーニッヒが飛んでいった方向を眺めそう呟く。仮にも上位魔人、流石に死んではないだろうが、相当のダメージは与えられた筈だ。これでどこかへ逃げ帰るか、その場で大人しくしてくれると良いのだが。

 

 

 

「くっ・・・・・・今の、音は・・・・・・?」

 

「あぁ、俺のアーツだ。あいつなら倒したからよ、もう安心──・・・・・・!」

 

 

 

『繰気弾』が炸裂した音を聞いた男が上体を起こしながら訊ねてきた。それに答えながら男の方を振り向いた俺だったが、そこで思わず言葉を失ってしまった。

 

 

 

青髪の男の、額から生えている角を目にして。




角の生えている青髪・・・・・・まぁ、皆さんが想像しているであろう通りの人物です。この頃はまだ名無しですけど。
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