転生したら蜥蜴人族の友人と邪仙の恋人ができた件 作:乃出一樹
ポケモンSVも発売が迫ってきましたね・・・・・・申し訳ありませんが、発売直後は流石にポケモンにのめり込んでしまうと思うので、来週以降は投稿頻度が下がると思います。ご了承ください。
上位魔人ケーニッヒを撃退し、襲われていた青髪の男を助け出した俺。しかし、人間だと思っていたその男の額には一本の角があった。本来、人間には有る筈の無い角が。
「・・・・・・なんだ。
「え、あ・・・・・・いや、そういう訳じゃないけどよ・・・・・・」
どうやら俺の視線が気になったらしく、訝しげな目で男・・・・・・いや、オーガが俺を見上げる。彼の視線に内心どきりとしながら俺は慌ててそう答えた。
まさか助けた相手が人間ではなくオーガだったとは・・・・・・違う個体ではあるが、どうしてもあの時のことを思い出してしまう。この世界に転生した日、二人のオーガに殺されかけたことを。
今の俺ならあのオーガたちを纏めて倒せるし、目の前にいる青髪のオーガに至っては重傷を負っていてまともに戦える状態ではない。それでもこうして心がざわついてしまうということは、自分で思っている以上にあの日のことがトラウマになっているのだろうか。
「・・・・・・まぁいい。一応、礼だけは言っておく・・・助けられた形になったからな」
やや間を置いた後で、地面に這いつくばったまま青髪はそう言った。それだけ言い終えた青髪は傷だらけの体を動かし、俺に背を向けるようにして移動を始める。
「お、おいおい・・・・・・どこ行くんだよ、そんな体で」
「・・・・・・お前には関係ないことだ」
俺の問いに対し、こちらを見ることなく青髪は言い捨てる。ゆっくりと向こうへ這って行く青髪の姿を俺はただ眺めていた。
・・・・・・確かにこの青髪の言うとおりだ。俺とこいつは本来何の関わりも無い。先程、俺がケーニッヒから助ける必要も無かった筈。
恐らくだが、青髪は怪我を治療する為に自分たちの住処に・・・・・・仲間たちの所へ戻るのだろう。そうなると、俺のことがあの時の銀髪と黒髪のオーガに知られてしまうかもしれない。あの二人は俺とガビルに一泡吹かされ、さらに逃げられたことから俺たちに殺意を抱いている筈だ。話を聞くなり奴らが俺を探しに来る可能性はある。最悪の場合、同じような性格の仲間たちを引き連れてくる可能性だってある。
それを考えれば、青髪をこのまま帰してしまうと自分だけでなくガビルたちにまで迷惑が掛かるかもしれない。俺はガビルに連れられて逃げた。ならば俺がガビルたちと一緒にいると向こうが考え、シス湖までやって来てもおかしくは無い。連中もリザードマンたちの住処がシス湖だとは知っているだろうし。寧ろ今まで何の動きも無かったことが不思議なくらいだ。
まさか直接攻めてくるとは思わないが、近くまでやってきた時に警備の為にシス湖周囲を巡回しているリザードマンたちと鉢会えば、八つ当たりで彼等を襲ったりする可能性も捨てきれない。
徐々に遠ざかっていく青髪を見つめながらそんなことを考えていた。俺がこいつを助けるメリットなんて無い。寧ろここで始末した方がいいのかもしれない。最もあの傷だ、俺が手を下すまでもなく帰る途中で他の魔物に襲われて死ぬだろう。ここからクシャ山脈まではそれなりに距離があるので、恐らく道中で他の魔物に襲われる筈だ。オーガはBランクの強力な魔物だが、あれだけ弱っていれば格下相手にも負けるだろう。
そう、こいつを助ける必要なんてない。リスクを考えれば尚更だ。
・・・・・・・・・けれど。
「・・・・・・・・・あ~・・・・・・!ったく、どうなろうと関係ねぇよ!」
「っ!?おい、貴様何を・・・・・・!」
「悪い、ちょっと大人しくしててくれ!」
俺は頭を乱暴に掻きながら吐き捨てると、青髪に駆け寄りその体を掴んだ。俺の行動に困惑しながらも抵抗する青髪を無理矢理抑え付けながら、俺は懐から一本の瓶を取り出し、中の液体を青髪の体に振り掛けた。
「くっ、何をした!?」
「大丈夫だ!ほら、落ち着いて怪我の具合を見てみろ!」
「なんだと・・・・・・っ・・・?」
声を荒らげる青髪だったが、俺の言葉を聞くとぴたりと動きを止める。何かに気付いたらしく、どこか困惑した顔をしながら青髪は上体を起こした。
「これは、傷が・・・・・・!?」
「良かった・・・・・・ちゃんと効いたみたいだな、ハイポーション」
驚きながら自分の体の各部を確認する青髪の姿に、俺はほっと息を吐いた。
瓶の中に入っていたのはハイポーション。この世界では傷を癒す薬とされるポーション・・・それの一つ上のランクのアイテムだ。こんな物をどこで手に入れたのかと言うと・・・・・・自分で作ったのである。
実は昨日、封印の洞窟に潜った際にヒポクテ草をいくつか見つけ採取していたのだ。リムルがほとんど取り尽くしたと思っていたが、取り漏らしていたのか、新たに生えたのだろう。それを素材に『道具作成』で作ったのである。
ポーションについては製造法を含め青娥さんから説明を受けただけだったが、『道具作成』で簡単に作ることが出来た。誰目線の基準なのかは分からないが、恐らく簡単なアイテム等はただスキルを使用するだけで作成可能なのだろう。とは言え、リムルのようにフルポーションを作ることは出来なかったが。
「ハイポーションだと?それを、俺に・・・・・・?」
「あぁ。どうだ?見たところちゃんと回復して──」
「・・・・・・・・・何故だ」
「あ?」
俺の言葉を遮るように青髪が呟いた。間の抜けた声を漏らした俺は、続く青髪の言葉を待つ。
「何故助けた。俺と貴様は何ら関わりの無い他人の筈・・・・・・そもそも、俺が悪党だと思わなかったのか?助けられた後で、貴様に牙を剥くとは思わなかったのか?」
静かに俺を見据え、青髪はそう訊ねた。青髪の言うとおり、俺とこいつは他人だ。お互いのことを何も知らない。善人なのか悪人なのかも。万が一のことを考えれば、俺はこいつを見捨てた方が良かったのかもしれない。
それでも。
「──あの時、俺は助けて貰ったからな」
そうだ。ガビルは見ず知らずの俺を助けてくれた。危険を省みず。自分の心に従って、正しいと思うことをただ為したのだ。相手が善人か悪人かなど関係無く。
・・・・・・最も。俺の場合は目の前の青髪から銀髪たちのように悪辣な雰囲気を感じなかったから、というのもあるけれど。結局のところ、俺の勘だが。
「なに・・・・・・?」
「別になにかを期待していた訳じゃないよ。ただ、助けたかったから助けただけだ。薬を使ったことも、あのケーニッヒって奴を倒したのも、俺がそうしたかったからだ。自分勝手なんだよ、俺はな」
「・・・・・・・・・・・・」
俺の答えを聞いた青髪は、まるで信じられないようなものを見る目で俺を見た。とは言えそれは一瞬で、すぐに青髪は何かを考え込むように目を伏せてしまう。互いに沈黙してから少しして、俺は頭を掻きながら踵を返した。
「・・・・・・それじゃ、俺はもう行くからよ。気を付けて帰りな」
「・・・・・・・・・待ってくれ」
そう言って立ち去ろうとしたその時だった。青髪に呼び止められそちらを振り向いた俺は、彼が取った意外な行動に目を見開いた。
「──先程の無礼、どうか許して欲しい・・・・・・済まなかった、名も知らぬ上位魔人よ。そして・・・・・・傷を癒してくれたこと、心より感謝する」
振り返ると、青髪が跪いたまま頭を下げていた。まだ警戒はしているようだが、それでも先程までの刺々しい雰囲気はほぼ消えている。その変わり様に俺は一瞬呆気に取られたが、やがて口元を緩ませ青髪に声を掛けた。
「・・・・・・顔を上げてくれ。俺が勝手にやったことだから気にしなくていいよ」
「しかし・・・・・・」
「いいっていいって。そう言ってくれるだけで嬉しいよ」
食い下がる青髪にそう告げる。青髪はやや悩んでいたが、やがて顔を上げると静かに立ち上がり俺と向き合った。
・・・・・・やっぱり、そんなに悪い奴じゃなさそうだ。心の中でそう安堵し、俺は小さく微笑んだ。
しかし・・・・・・・・・顔が良いな、このオーガ。
イケメン大好きです。