転生したら蜥蜴人族の友人と邪仙の恋人ができた件   作:乃出一樹

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お待たせしました、第52話となります。

お久しぶりです。ポケモンに夢中になっておりました。もうしばらく更新ペースはのんびりのままだと思いますが、暖かい目で見守って頂けると幸いです。


オーガの忠告

先程までは落ち着いて顔を見るような状況では無かった為、こうして改めて青髪を観察しているのだが、目の前に立っている青髪は中々のイケメンだった。

 

暗い青色の髪に、やや不健康そうな褐色の肌。背は俺より少し高いくらいで、ややがっしりとしている細マッチョとでも呼ぶべき体格。そしてやや目付きが鋭い気がするが、整った顔立ちをしており、声も中々イケボである。とは言え最も目を引くのは、額から生える一本の角ではあるが。

 

 

 

「・・・・・・?・・・なにか?」

 

「えっ?・・・・・・・・・あ、あー・・・・・・いや、そのー・・・・・・ど、どうだ?体の調子は」

 

「・・・・・・あなたのお陰でほぼ傷は癒えた。完全に回復した訳ではないが、十分動ける」

 

 

 

青髪が中々のイケメンだったので思わず見つめてしまっていたが、あまり長々と見つめていると不審がられる・・・・・・というか、気持ち悪がられるので気を付けよう。とりあえず、誤魔化す為に慌ててそう訊ねると、青髪は自分の体をちらりと見ながら答えた。

 

 

 

「そうか、まぁフルポーションじゃねえし仕方ねえけど・・・・・・とにかく良かった。初めて作った物だからちゃんと効くか少し不安でさ」

 

「あの薬は、あなたが作ったのか・・・・・・」

 

 

 

青髪は僅かに驚く様子を見せた。ガビルにハイポーションのことを教えた時は声を上げて滅茶苦茶驚いていたっけ。彼の反応を思い出し、つい笑いそうになるのをなんとか我慢した。

 

 

 

「あなた、ってのはくすぐったいからやめてくれ。もっと気軽に話してくれていいよ」

 

「そうか、済まない。では・・・・・・名を教えてくれないだろうか」

 

 

 

名前を訊ねられた俺は少し悩む。こいつから銀髪たちに俺の名前が知られることも有り得るが・・・・・・それについては誰にも言わないように頼めばいいだろう。多分だが、青髪は約束を守ってくれそうだし。

 

 

 

「・・・・・・アクト。それが俺の名前だ」

 

「アクト・・・・・・アクトだな。俺は名無しだ。同族たちからは、青髪と呼ばれることが多いが」

 

 

 

オーガたちの間でもそう呼ばれてるのか。やっぱり名前が無いというのは不便だと改めて思う。とは言え、流石にこいつにまで名前を付けようとは思わないが。

 

 

 

「そっか、じゃあ俺も青髪って呼ばせてもらうよ。よろしくな・・・・・・しかし、災難だったな。上位魔人に襲われるなんて」

 

「あぁ・・・・・・だが、あのような奴がこの森にいるなど聞いたことが無い。素材を探しにきた、などと言っていたが・・・」

 

 

 

そう言えばそんなことをケーニッヒは言っていた。依頼された素材だとかなんとか。どういうことなのか詳しく聞くことは出来なかったが、間違いなく良いことではないだろう。

 

 

 

「どこか、森の外からやって来たのだろう・・・・・・負傷さえしていなければ、逃げ切れたかもしれんが・・・・・・」

 

「ん?さっきの傷ってケーニッヒにやられたんじゃないのか?」

 

「・・・・・・・・・奴からも攻撃を受けたが・・・・・・その以前に少しあってな・・・・・・」

 

 

 

青髪が呟いた内容が気になり、俺はそれについて訊ねる。てっきりケーニッヒ一人にあれだけ痛め付けられたのだと思っていたが、どうやら違うらしい。だが、青髪は俺にそう答えると何故か口ごもってしまった。何か言いたくない事情でもあるのだろうか。

 

 

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

「・・・・・・言い辛いことなら無理に言わなくてもいいぜ。少し気になっただけだからな」

 

「済まない・・・・・・・・・ところでアクト。先程のハイポーションはまだ余っているのか?」

 

「ハイポーション?あぁ、まだあるけど・・・・・・」

 

 

 

俺がそう言うと青髪は軽く頭を下げた。その後で、顔を上げた青髪からの問いにそう答えながら俺は懐を確認する。ハイポーションはあと二つ残っていた。

 

 

 

「・・・・・・助けて貰っておいて、これ以上何かを頼むのは図々しいとは思っている。それでも頼みたい。それを譲ってはくれないか」

 

「なんでだ?まだ回復し足りなかったり?」

 

「いや、俺にはもう必要無い。だが・・・・・・仲間が数人負傷しているんだ」

 

 

 

悲しげに、そして悔しげに青髪は言った。彼の様子が気になったが、それには触れず俺は質問を続ける。

 

 

 

「仲間・・・・・・近くにいるのか?」

 

「いや、ここから少し離れた場所で体を休めている。幸い命に別状は無いのだが・・・・・・俺たちには治療できる術が無い」

 

「もしかして、一人でこんなところにいたのは仲間たちを助ける為に?」

 

「・・・・・・怪我を治せる、とまでは考えていなかったがな。せめて体力だけでもと思い、食糧を調達しに来ていた」

 

 

 

目を伏せ青髪は答える。話を聞く限り、自分だって怪我をしていた筈なのに青髪は仲間の為に危険を省みずここまでやって来たのか。

 

 

 

「・・・・・・頼む、アクト。今は何も出来ないが、いつか必ず礼はする・・・・・・お前の僕にでもなんでもなろう。だから──」

 

「分かった、ほらよ」

 

「・・・・・・!・・・・・・いいのか?」

 

 

 

青髪の言葉を遮るように俺はハイポーションを二つ差し出した。まさかこんなにあっさりと貰えるとは思っていなかったのか、青髪は目を見開きハイポーションと俺を交互に見る。

 

 

 

「あぁ。大体の傷ならこれで治る筈だぜ。そうそう、使う時は怪我の具合を見て薄めてもいいかもな」

 

「・・・・・・俺が、嘘を吐いているとは思わないのか?」

 

「思わねぇよ。もし嘘だったとしたら、その時は俺が馬鹿だったってことだし。まぁ・・・・・・お前はそういうことをする奴じゃない・・・・・・俺はそう思ってる」

 

 

 

俺の答えを聞いた青髪はぽかんとした顔で俺を見つめる。甘い奴だと嗤われるだろうかと俺は思ったが、そんなことはなく、青髪は僅かに口元を緩まると静かに手を伸ばした。

 

 

 

「・・・・・・・・・ありがとうアクト。この恩は、いつか必ず返す」

 

「そんな大袈裟に考えなくていいって。別に何も・・・・・・・・・あー、待ってくれ。悪い、やっぱり二つだけいいか?」

 

「あぁ、俺に出来ることであれば」

 

 

 

ハイポーションを受け取り青髪は頭を下げる。礼をしたいという彼の気持ちを一度は遠慮しようとしたが、あることを思い付いた俺はそう言い直して訊ねた。

 

 

 

「じゃあまず一つ目なんだが、俺のことは誰にも言わないでくれ」

 

「誰にも・・・・・・?分かった、理由は聞かん」

 

 

 

青髪は疑問に思ったようだが、特に詮索されずに済んだ。見たところ青髪は義理堅い男のようだし、俺のことは仲間たちにも上手く誤魔化してくれるだろう。これで銀髪たちに俺のことは知られずに済む筈だ。

 

 

 

「それで、二つ目の頼みはなんだ?」

 

「あぁ、その・・・・・・頼みって程でも無いんだけどさ・・・・・・・・・俺と、友達になってくれ」

 

「・・・・・・・・・なに?」

 

 

 

呆気に取られたのか、再びぽかんとした顔をする青髪。確かに突然こんなことを言われれば困惑するのも無理はないかもしれない。

 

だが、俺はこの青髪のオーガを気に入ったのだ。仲間の為なら無茶をしてしまう、クールな表情の下に優しい心を隠しているこの男を。それに折角魔物なんて生き物がいる世界に来たのだ。それなら色んな種族と仲良くなりたいし。あとイケメンだしな、青髪。

 

そんなことを考えていると青髪が未だに沈黙していることに気付く。まさか引かれたのかと内心で焦り出したその時、青髪が小さく吹き出すようにして笑い出した。

 

 

 

「・・・・・・・・・く、くく・・・・・・そんな頼みをされたのは初めてだ」

 

「わ、笑うなよ!それに、頼みって訳じゃ無いって・・・・・・」

 

「ふっ、済まないな。それと・・・・・・」

 

 

 

気恥ずかしさからやや声を荒らげてしまう俺を見て青髪は謝罪する。そして青髪は、優しく微笑みながら片手をこちらに差し出した。

 

 

 

「・・・・・・・・・断る理由もない。よろしく頼む、アクト」

 

「・・・・・・あぁ。改めて、よろしくな!」

 

 

 

差し出された青髪の手を取り、俺たちは握手を交わした。同じ魔物だが、ガビルとは違う掌。しかし青娥さんとも違う、人間の男のような手だった。

 

 

 

「・・・・・・・・・あ、そうだ。青髪、お前って食糧も探しに来たんだよな?」

 

「そうだが・・・・・・」

 

「じゃあこれも持ってけよ、ほら」

 

 

 

握手を止めた俺は、背負っていた荷物の中からバスケットを取り出す。そのバスケットを開けると、中にはおにぎりが六個入っていた。出発する前に自分で作った今日の昼食である。腹が減ったらどこか良い場所で食べるつもりだったのだ。

 

 

 

「これは・・・・・・米か?真っ白だが・・・・・・」

 

「ん?あー、そうか。こっちの米は黒いんだっけ」

 

 

 

中に詰められたおにぎりを見て青髪は不思議そうに呟いた。

 

実はこの世界の米は真っ黒なのだ。ガビルたちリザードマンはシス湖周辺の土地を使って野菜だけでなく稲や麦などの穀物も栽培している。それを聞いた時はこの世界でも米が食べられると密かに喜んだのだが・・・・・・現物を見て肩を落とすことになった。

 

さらに味も大して良くは無いそうで、リザードマンたちも米に関しては少ししか作っていないらしい。以上のことから、この世界で白米を食べることは出来ないのかと俺は半ば諦めていたのだが、なんと青娥さんがその白米を持ってきてくれたのだ。

 

青娥さんが言うには、知り合いの転生者がどうしても白米を食べたかったので、ある友人と数年かけて色々と手を尽くし交配させ続けて生み出した品種らしいが・・・・・・まぁ、その転生者は青娥さんだよな、きっと。友人というのが誰なのか気になるけれど。

 

 

 

「えっと、知り合いから貰った米でさ・・・・・・普通の色とは違うけど中々美味いぜ?一つ食べてみろよ」

 

「・・・・・・では、頂こう」

 

 

 

俺がそう促すと、青髪は手を伸ばしおにぎりを一つ手に取る。そしてそれを少し見つめた後、やや躊躇いつつ口にした。

 

 

 

「・・・・・・・」

 

「ど、どうだ・・・・・・?」

 

「・・・・・・・・・美味い・・・!」

 

 

 

飲み込んで青髪は静かに驚く。リザードマンたちが育てていた黒米とは違い、青娥さんが持ってきたこの白米はとても美味しい。元の世界で食べていたそれよりもだ。

 

 

 

「そうか!口に合って何よりだぜ・・・・・・」

 

 

 

感想を聞いて俺は安堵し息を吐く。腹が減っていたのか、青髪はおにぎりをすぐに食べ終えた。

 

 

 

「・・・・・・美味かった。だが、これも貰ってしまっていいのか?」

 

「勿論。仲間たちに食わせてやりな。大した物じゃないし、量も少なくて悪いけどよ」

 

「そんなことは無い。感謝する」

 

 

 

バスケットも受け取り青髪は小さく微笑みながら礼を言った。青娥さんが持ってきてくれた米なので、無断で他人にあげてしまうのは彼女に少し申し訳なく思うが、困っている青髪を助けたいと思ってしまったので仕方ない。怒られてしまったら土下座でもして必死に謝ろう。

 

・・・・・・きっと許してもらえる、なんて少し思ってしまっている辺り、青娥さんに甘えているんだろうなぁと苦笑した。

 

 

 

「では、そろそろ俺は行こう。アクト、お前には世話になりっぱなしだったな・・・・・・改めて誓おう。この恩は必ず返すと」

 

「はは、楽しみに待ってる・・・・・・・・・って、そうだ青髪!その・・・・・・なるべくシス湖には近付かない方がいいぞ!」

 

「シス湖に?何故だ」

 

「あー・・・・・・実は、最近あそこに滅茶苦茶強い上位魔人が住み着いてな。さっきのケーニッヒよりも強い奴で、下手に縄張りに近付くと襲われるんだよ」

 

 

 

この場を去ろうとする青髪を慌てて引き留めそう伝えた。何故こんなことを言ったかというと、ガビルの為だ。ガビルは銀髪たちと青娥さんの嘘によりオーガたちに対して強い敵対心を持ってしまっている。しかもリザードマン全体に銀髪たちのことが知られているので、もし青髪たちがシス湖にやってきた場合、トラブルになりかねない。

 

ガビルにちゃんと説明すればいいだけではあるのだが、青娥さんの言ったことは嘘だと俺が勝手にばらしてしまって良いのか気になるし、なにより銀髪たち以外にも悪いオーガがいるかもしれない。青髪には悪いが、正直俺も青髪以外のオーガを信用しきれていないのである。なので、とりあえずオーガたちは警戒していく方向で様子見したいと思う。俺とガビル、あとシーザー以外の奴らではオーガに勝てないからな。

 

 

 

「先程の奴より・・・・・・その上位魔人は、お前より強いのか?」

 

「ん、んん・・・・・・そうだな。大体互角くらいかな・・・?」

 

 

 

本当は俺の方が強いけど、実力がどの程度かまで詳しく説明すると面倒だしこう言っておこう。

 

 

 

「お前と互角・・・・・・そんな奴がいるとは。分かった、仲間たちにもシス湖には近付かないよう伝えておく」

 

 

 

どうやら青髪は信じてくれたようで、俺の話を聞くとそう了承した。これで余計なトラブルは避けられるだろう。ガビルの互角が解け、色々と落ち着いたら俺からオーガの里に出向いてシス湖はもう大丈夫だと青髪に伝えれば良い。

 

 

 

「頼んだぜ。それじゃ、今度こそお別れだな。気を付けて行けよ」

 

「あぁ・・・・・・・・・」

 

 

 

片手を上げ俺は青髪に別れを告げる。青髪はそう応えこちらに背を向け歩き出し・・・・・・ふと足を止めた。

 

 

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

「・・・・・・ん、どうかしたか?」

 

「・・・・・・・・・アクト、俺からも一つ忠告だ。豚共・・・オーク共の動向には気を付けておけ」

 

「オーク?」

 

 

 

オークは確かジュラの大森林の南の土地で暮らしている魔物だったか。ランクはD、オーガどころかリザードマンよりも弱い魔物である。

 

 

 

「オークって、お前らオーガからすれば大したことの無い奴らじゃねえか。何かあったのか?」

 

「・・・・・・ッ・・・」

 

「・・・・・・青髪?」

 

 

 

その時、青髪の雰囲気がどこか変わった。うまく説明出来ないのだが、怒っているというか、悲しんでいるというか・・・・・・そんな感じだ。そして俺の気のせいでなければ、ぎり、と歯を噛み締める音がした。

 

 

 

 

「・・・・・・・・・何でもない。それと・・・・・・オーク以外にも、だ」

 

「は?オーク以外にも?」

 

「・・・・・・お前には、死んで欲しくない・・・・・・また会おう、アクト。さらばだ」

 

「あっ、おい!」

 

 

 

詳しく聞く前に、それだけ言い残し青髪は走り去って行った。その気になればすぐに追い付けるが、最後の青髪の様子からあまり話したくないことなのだろう。ならば無理に聞く必要はないと自分に言い聞かせ、俺はその場に留まった。

 

 

 

「行っちまったか・・・・・・」

 

 

 

一人呟き、頭を掻く。誰もいなくなったその場所で、俺は青髪の言葉を思い出していた。

 

『オーク共の動向には気を付けておけ』、それと『オーク以外にも』・・・・・・オークたちや他の種族が何か企んでいる、ということなのだろうか?他の種族はともかくとして・・・・・・こう言ってはなんだが、オークって頭の良いイメージは無いし、強さだってリザードマン以下だからそう恐れることは無いと思う。

 

だが、青髪のあの様子が気になる。ここは俺一人で判断せずに、首領や青娥さんにもこの件を相談するとしよう。

 

 

 

「・・・・・・不安は残ったけど、悪くない成果だったな」

 

 

 

口元を緩め、踵を返す。こうして新たな友人を得た俺は、ガビルたちの待つシス湖へ帰るのだった。




リムルより先に白米を作ってしまっていた青娥さんとその友人さんでした。
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