転生したら蜥蜴人族の友人と邪仙の恋人ができた件 作:乃出一樹
今回からポケモンは大分育成が楽になりましたね。剣盾の頃でも十分楽になったと感じてましたけども。
青髪と別れ、シス湖に戻った俺はまず首領の元へと足を運んだ。青髪が告げたオークとそれ以外の何者かの件、ついでにケーニッヒという上位魔人がいたことを伝える為である。
首領の間には丁度親衛隊長も居たので、彼女と首領の二人にそのことを伝えると二人は眉を顰めた。
「オークの動向に気を付けろ、か・・・・・・」
「どう思います?首領」
ふむ、と首領は顎を撫でる。やはり首領たちからしてもオーク程度どうということはないと侮っているのだろうか。そんなことを俺が考えていると、首領が口を開いた。
「オーク程度、我等リザードマンの敵では無いが・・・・・・現在ジュラの大森林で起きている異変のこともある。それ以外についても気掛かりなことがあるし、ここは一度調べてみるとしよう」
「分かりました。では、直ちに調査隊を編成し向かわせます」
首領の言葉にそう答えると、親衛隊長は急ぎ足でその場を後にする。オークを侮っているだなんて、どうやら俺の思い過ごしだったらしい。的確な判断をした首領は去っていく親衛隊長の背中を見つめていたが、やがてこちらに向き直った。
「アクト殿、情報感謝する。オークの件は勿論、上位魔人についても警戒するよう部下たちに伝えておこう」
「ありがとうございます。というかすみません、部外者の俺が余計なことを・・・・・・」
「ふっふっふっ、なにを言うか。種族も生まれも違えど、アクト殿はもう我々の仲間だ・・・・・・これからもよろしく頼むぞ」
小さく微笑む首領の顔を見て、俺もつられて口元を緩める。どうやら俺は思いの外、彼に信用されているようだった。
そして首領の間を出た俺はなんだかんだで昼食を食べ損ねたことを思い出し、外で昼食を取っているガビルや爺さんたちに混ざろうと考えた。ガビルは思ったよりも早く帰ってきたし、俺も青髪からの情報を早く首領に伝える為にすぐ戻ってきたので、俺がシス湖に帰って来た時、ガビルたちは丁度昼食を食べ始めようとしていたところだったのだ。
そういう訳で彼等と食卓を囲み、ついでに自分が食べる分の料理を追加してから皆と昼食を食べ始めたのだが・・・・・・
「───オーガと遭遇したぁあああああ!?だだだ、大丈夫であるかアクト殿!怪我はないか?なにかされなかったかぁあーーー!?」
「だっ、だだだだ大丈夫大丈夫だぞガビルぅうううっ!?」
オーガと出逢ったことを口にした瞬間、ガビルは声を上げながら驚愕し、俺の肩を掴むと激しく前後に揺さぶる。そのあまりの力に目を回しそうになりながらもなんとか俺はそう答えた。
「すげー!アクトさん分身してるみたーい!」
「・・・・・・ガビル殿、落ち着いてください。それではアクト殿が食事を出来ないではありませんか」
「それ以前にとても苦しそうですよ?」
「はっ!?す、済まぬアクト殿!」
いつの間にか食卓混ざっていた親衛隊長が呆れながらガビルを宥める。もう調査隊は編成し終えたのだろうか。あとどうしてそんなに楽しそうな顔をしているんだ緑。見てないで止めてくれ。
「ふぅ・・・・・・あー、気にすんな。少し驚いただけだよ」
「そ、そうであるか。本当に済まぬ、つい・・・・・・だが、オーガに出逢ったなどと聞いては落ち着いてなど要られぬぞ!」
ガビルの腕から解放され一息吐く。そんな俺に謝罪するも、まだ興奮しているようでガビルは声を荒らげた。
「ガ、ガビル?そんなに心配することないって。良い奴だったんだぞ、そのオーガ」
「ふん、どうであるかな・・・・・・卑劣で野蛮なオーガ共のことだ。どうせ優しいアクト殿を油断させ、不意を突くつもりだったのだろう。最も、アクト殿程の戦士にはそんな小細工など通用しないと悟り逃げ出したのだろうが」
不味い。何時のまにやらガビルの中でオーガの印象が最悪になっている。まぁ、原因は分かっているのだが。間違いなく俺と初めて会った時の事件と、青娥さんがガビルを気絶させた際に吐いた嘘のせいだろう。これまでそんなに気にせずにいたが、どこかで誤解を解いておいた方が良かっただろうか。
「まぁまぁガビル様。なにはともあれアクトさんが無事だったのですし良かったではないですか」
「そうだぜガビル様。とりあえず今は飯にしようぜ!」
「ガァウッ!」
「む・・・・・・そうであるな。折角アクト殿が作ってくれたことだし」
今度は爺さんとモス、あと何と言ったのか分からないがシーザーたちに宥められ、ガビルは座って食事を再開した。オーガに対するガビルの偏見については、後で青娥さんや爺さんたちに相談した方がいいかもしれない。
ちなみに今日の昼食はおにぎりと豚汁、それと漬物というシンプルなものだ。漬物含め全部俺が作ったのだが、米や味噌などほとんどの材料は青娥さんが用意してくれていたものである。可哀想だがシーザーはそれらを食べられないので、代わりに牛鹿の丸焼きとシス湖で取れた魚を与えている。
「しかし、まさか米がこんなに美味しいとは・・・・・・」
「ホッホッホッ、この豚汁というスープも素晴らしいですよ。優しくて暖かい味がしますねぇ・・・・・・」
「目立たぬが、漬物も美味」
料理を食べて親衛隊長や爺さんたちがそれぞれ見せた反応に俺は思わず口元を緩める。やはり自分の作った料理を食べて喜んでもらえると嬉しいものだ。
「うむ、うむ!本当に美味い!なんだが以前よりも更に美味く感じるのである!アクト殿、腕を上げたな?」
「はは、そうだといいんだけど」
青娥さんから聞いたのだが、ドラゴニュートという種族は外見に関わらず味覚が人とほぼ同じなんだとか。ガビルがそう感じているのは恐らく進化したお陰なのだろう。ともかく、喜んでくれているのなら良かった。
「・・・・・・ところで、ずっと気になってたんだけどよ・・・・・・あれ何?」
俺はそう言ってある方を指差す。そこには黒みがかった灰色の何かの・・・・・・いや、虫だろうか。それの脚や体らしき物が置いてあった。かなり巨体な生き物のようで、脚だけでも自分の背丈を軽く越している程である。
「あぁ、あれは我輩とシーザーが倒した
「なんで蜘蛛の死骸を持ち帰ってきたんだ・・・・・・」
「え?食べる為だが?」
「食えんのぉ!?蜘蛛だろ!?」
きょとんとした顔で答えたガビルに思わず驚く。リザードマンって蜘蛛食べるのか?いや、でも封印の洞窟にいるブラックスパイダーについては何も言ってなかったし・・・・・・じゃあナイトスパイダーだけ美味いのか?しかし、蜘蛛と聞くとどうにも食欲が湧かない。甲殻の色も相まってとても食べようとは思えない。しかもあれだけの巨体だし。
と、その時だった。
「意外とイケるんですよ、ナイトスパイダー。蟹みたいな味がして。茹でると甲殻も赤くなってそれっぽいですし」
「おわっ!?青娥さん!?」
突然耳元で声をがしたことに俺は驚く。慌てて横に飛び上がるようにして椅子から立ち上がると、そこにはいつもの笑みを浮かべた青娥さんが立っていた。
「はーい、青娥さんですよ~。こんにちわ、アクトくん♪」
俺の反応を見てくすりと笑うと、青娥さんはこちらに向けひらひらと手を振った。どこかおどけたその姿に俺は溜め息を吐きつつも口元を緩ませる。
「おぉ青娥殿、よく来てくれた!丁度昼食の時間である、共にアクト殿の手料理を食べようではないか」
「あら、いいんですか?それじゃ御一緒させてもらっちゃお~っと♪」
「ったく・・・・・・それじゃよそいますね。今日は豚汁とおにぎりですよ」
「えーっ!豚汁大好きー!」
ガビルに誘われ俺の隣に座った青娥さんに苦笑しつつ、俺は青娥さんの分の豚汁をよそい始める。豚汁と聞いて青娥さんは目を輝かせ、俺が豚汁の入った器を差し出すとふぅふぅ息を吐き冷ましつつそれを口にした。
「ん~・・・・・・美味しい♪それにおにぎりも。やっぱり良いですね、白米♪」
「そりゃ良かった」
豚汁とおにぎりを食べて青娥さんは機嫌が良さそうだ。本人は認めないけどやっぱり転生者、そして日本人だろうからこういう食事が嬉しいんだろう。ドワルゴンで少し街中を見た時、和食っぽいものは全然見かけなかったし、食べる機会が少ないのかもしれない。他のところにはあるのかもしれないが。
「しかし・・・・・・食えるのか、ナイトスパイダー」
「うむ。我輩も食べたことはないのだが、爺から非常に美味だと聞いたことがあってな。それにナイトスパイダーの肉ならシーザーも食べられると思ったのだよ」
「グルル・・・・・・ガァッ!」
湿地帯に転がる巨大蜘蛛の体を眺めながら呟く。それに答えるガビルの声を聞きながら視線を動かすと、いつの間にか牛鹿や魚を平らげていたシーザーがナイトスパイダーの脚の甲殻を割ってその中身を食べていた。どうやら本当に美味いらしい。
「それにシーザーだけの分ではない。爺や妹に親父殿・・・・・・そしてここにいる部下や他の同族にも分けてやりたくてな」
「やったー!流石ガビル様ー!」
「よぉし、今夜は宴だぁーっ!」
「やはり首領の器・・・!」
声を上げて喜ぶ三人を見てガビルが嬉しそうに微笑む。しかしいくらナイトスパイダーがこれだけの巨体と言っても、一万人以上いるリザードマン全員に食べさせるとなったら一瞬で無くなりそうだ。下手すると一口も食べられない奴も出てくるかもしれない。
「ははは、落ち着くのだお前たち。おっと・・・・・・済まぬがアクト殿、その際は皆の前だが調理を頼んでも良いか?仲間の料理人を信用していない訳ではないが、すっかりアクト殿の味に胃袋を掴まれてしまったのである」
「ホッホッホッ、実は私もなんです。他の方たちにアクトさんの料理の腕前が知られてしまい、少し面倒なことになるかもしれませんが・・・・・・折角良い素材が手に入りましたからね、最大限活かしたいのですよ」
頭を掻くガビルに続いて、髭を撫でながら爺さんはそう言った。もしここに住むリザードマンたちが人間の料理を気に入って、皆が俺に料理を作るよう迫ってきたら大変ではあるが・・・・・・ガビルと爺さんにここまで言われたら頷く他無い。その時はその時だ。
「いいよ、それくらい御安い御用だ。さて、こいつで何作ろうかね・・・・・・」
「鍋でいいんじゃありません?簡単だし美味しいですし」
「あ、いいですね。んじゃ青娥さんのアイデア採用」
メニューをどうするか考え始めた時に、青娥さんの提案を聞き俺は即決した。ここに住むリザードマンの数を考えるとあまり手の込んだ料理は作れないだろうし。それに鍋なら大人数で囲んで食べられるから食事も楽しくなるだろうと思ったのだ。
「ふふ、アクトくんの役に立てて良かったです♪あぁ、鍋の材料とかは私が調達してきますので、必要な物を教えてくださいな」
「すみません、いつも・・・・・・本当、青娥さんには頭が上がらないな」
「ははは、今夜が楽しみである!・・・・・・ところで青娥殿。何か用事でもあるのであるか?今日の修行は休みだった筈だが」
「あっ、そうでしたわ。アクトくんとガビルさんにお願いがあったんです」
ガビルがそう訊ねると、青娥さんは何かを思い出したように手をぱん、と合わせる。どこかわざとらしいその動作を見て口元を緩めた俺だが・・・・・・次の瞬間、青娥さんが笑顔で告げた言葉の内容に、ガビルと共に驚愕することとなった。
「───明日。魔王に会いに行きますので、付いて来てくださります?」
『──────はぁああああああああああッ!!?!?』
豚汁美味しいですよね。