転生したら蜥蜴人族の友人と邪仙の恋人ができた件   作:乃出一樹

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お待たせしました、第55話となります。

明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いいたします。

そして誤字報告ありがとうございます。気を付けているつもりなのですが、やはりと言いますか自分では気付かないものですね・・・


魔王カリオン

青娥さんの『空間移動』によって、彼女と共に獣王国ユーラザニアへやってきた俺とガビル、それとシーザー。

 

俺たちが転移した先はなんとユーラザニアの玉座の間。そしていきなりこの地を支配する魔王カリオンと遭遇してしまったのだが・・・・・・その魔王は青娥さんを見るなり驚愕し硬直している。対する青娥さんはいつも通りの余裕そうな笑みを浮かべていた。

 

 

 

『アクト殿・・・・・・あの魔王、青娥殿を恐れてないか?』

 

『そう見えるよな・・・・・・』

 

 

 

『思念伝達』を使い、誰にも聞かれないようにガビルとそうやり取りする。なんだか拍子抜けしてしまったが、俺はすぐに警戒心を取り戻した。目の前の魔王が青娥さんより弱いのだとしても、俺よりずっと強いことは確かなのだから。間違いなく、俺とガビルとシーザーの三人掛かりでも勝てないだろう。

 

 

 

「カリオン様!」

 

「カリオン様、何事ですか!?」

 

 

 

その時、背後の扉が乱暴に開けられいくつかの声が響く。咄嗟にそちらへ振り向くと、扉から三人の魔物がこちらに飛び込んで来ていた。

 

まず先頭に立っているのは知的な印象を覚える美女だ。所々に黄金色が混ざった美しい黒髪を肩辺りまで伸ばしている。豊かな胸元を大胆に開かせ、太ももをすらりと覗かせる丈の短い白い着物のような衣装を纏い、手には金色に耀く錫杖が握られていた。

 

二人目は銀色に近い白髪の女。こちらも容姿は整っており、白のチューブトップに黒のミニスカ、白ニーソと可愛らしい服装をしているが、黒髪の女と違ってどこかワイルドな雰囲気を漂わせている。そして目を引くのが頭部にある猫のような耳と腰から生える尻尾だろう。正しくファンタジーの世界にいるような獣人といった姿だ。

 

最後はやや紫掛かった黒い髪色で、前髪の片側だけ垂らし、後はオールバックにしたような髪型の男だ。上半身と足に黒い鎧を着けており、腰から黒猫のような尻尾を生やしているが、獣っぽい耳は見当たらない。人間と同じ位置に耳はあるが、少しだけ先端が尖った形をしている。ちなみに中々イケメンである。ランドルには劣るけど。

 

恐らく全員が獣人族(ライカンスロープ)なのだろう。先頭の女だけに関してはどこに獣要素があるのか全く分からないが。

 

 

 

「お、おぉ・・・・・・お前たちか。何でもねぇ、下がってろ」

 

「しかし先程の声は・・・・・・っ!?貴女は、『邪仙』青娥!」

 

 

 

青娥さんの存在に気付いた黒髪の女が手にした錫杖を向ける。『邪仙』とは青娥さんの異名なのだろう。原作と同じ呼び名を付けられているのか・・・・・・誰がそう言い出したのか少し気になる。

 

 

 

「『邪仙』だと!?おいアルビス、確かそいつっていつかカリオン様を倒したっていう女だよな!」

 

「馬鹿な!こんな女がカリオン様より強いなんて有り得ねぇ!」

 

 

 

アルビスと言うらしい黒髪の女の言葉に他の二人が動揺する。どうやら青娥さんが言っていた、魔王カリオンを倒したことがあるという話は本当だったらしい。まぁ、先程からのカリオンの様子を見れば十分信じられるが。

 

 

 

「やーん♪私ったら案外有名なんですね!カリオン様、彼女たちは?」

 

「俺様の部下だ。先頭に立っているのがアルビス。後ろの男はフォビオで、その隣がスフィアと言う。ユーラザニア三獣士と呼ばれる、俺様の最強の部下だ」

 

 

 

おどけた反応を見せながら青娥さんがカリオンに訊ねる。そして三人の、三獣士と呼ばれる彼女らの名前も明らかとなった。それぞれアルビス、フォビオ、スフィアというらしい。魔王であるカリオンが最強の部下と言うだけあって全員凄まじい魔素量だ。三人共、ガビルのそれを越えている。

 

 

 

「とにかくお前たちは口を挟むな・・・・・・こいつを敵に回したらどうなるか分かったもんじゃねぇ」

 

「カリオン様・・・・・・畏まりました」

 

「チッ・・・・・・!」

 

 

 

そう言ってカリオンは片手でアルビスたちを制する。アルビスは少し逡巡していたが、すぐにカリオンの言葉に従い頭を下げた。しかしフォビオと呼ばれた男は苛立ちを隠そうともせず、青娥さんを睨み付けると舌打ちした。どうやらカリオンの指示が不満らしい。カリオンに文句がある、というよりは単純に自分の主の前でデカい顔をしている青娥さんが気に入らないのだろう。

 

 

 

「・・・・・・それで?一体今日は何の用だ。初めて見る連中も一緒のようだが」

 

 

 

三獣士たちに指示を出したカリオンは再び俺たちに視線を戻す。その鋭い視線に内心怯える俺だが、それをなんとか隠しつつその場で静かに跪いた。

 

 

 

「・・・・・・御初に御目にかかります。偉大なる魔王カリオン様。私の名はアクト。『邪仙』青娥様に名を与えられ、この方の元で修行を続けるドラゴニュートでございます」

 

「わっ、我輩はガビルと申す者!アクト殿と同じく、青娥殿に教えを乞うドラゴニュートでございまする!」

 

 

 

俺に習い、慌ててガビルも同じように跪く。咄嗟だったのでうまく出来ていたかは分からないが、とりあえず相手を敬うように言葉を述べた。こんなことになるんならもっと国語の勉強でもしとくんだったな・・・・・・

 

するとカリオン・・・様は俺とガビルの言葉を聞き、何故か口を閉ざしてしまった。

 

 

 

「・・・・・・・・・・・・・・・」

 

「あ、あの・・・・・・なにか・・・?」

 

「お前ら・・・・・・青娥の連れの癖に滅茶苦茶マトモだな・・・・・・」

 

 

 

何故沈黙しているのかと思えば、魔王は妙なところに驚いていた。思わずずっこけそうになるがそれを抑え、俺は愛想笑いを浮かべ誤魔化した。

 

 

 

「は、はは・・・・・・ありがとうございます・・・・・・青娥さん、アンタ一体ここで何したんですか・・・?」

 

「えー?大したことは別になにもー?」

 

 

 

小声で隣にいる青娥さんに訊ねると、彼女は目線を逸らししらばっくれた。なんだこの人、ばっくれ顔の完成度が鬼掛かってやがる・・・・・・くそう、若干イラッとするが可愛い。

 

 

 

「別にってお前・・・・・・・・・まぁ良い。で?何しにここへ来たんだよ」

 

 

 

何か言いたげなカリオン様だったが、それを飲み込み改めて青娥さんに訊ねた。問われた青娥さんは表情を戻し、あぁと思い出したかのような素振りを見せてからそれに答える。

 

 

 

「えぇ、大した用事ではないんですけど・・・・・・少し確認を」

 

「確認だぁ?」

 

「はい。実は私、ジュラの大森林でこの子たちに修行を付けているんですけれど。どうも最近森の様子がおかしいんですよね」

 

「森の様子?そいつは暴風竜ヴェルドラが消えちまったから森の魔物共が騒いでるだけじゃねえのか?」

 

 

 

そう言ってカリオン様は眉を顰めた。やはりヴェルドラさんがいなくなったことは各地で話題になっていたらしい。

 

 

 

「勿論それもありますが・・・・・・どうにもどこかの勢力が手を出しているみたいなんですよ。森で見かけない上位魔人がなにやら動いていたようですし、少し前に足を運んだ封印の洞窟では怪しい存在を確認しました」

 

 

 

青娥さんは困ったような表情でカリオン様にそう答えた。上位魔人とは昨日俺が遭遇したケーニッヒのことだ。青娥さんと爺さんに確認したところ、どうやらそんな上位魔人はジュラの大森林にいないらしい。

 

そして封印の洞窟で確認した怪しい存在とは、一瞬だけ『魔力感知』に引っ掛かり、通常の個体とは違う嵐蛇(テンペストサーペント)と入れ替わるかのように何処かへ消えた、あの時の奴だろう。

 

 

 

「上位魔人・・・・・・怪しい存在・・・・・・」

 

「御存知の通り、ジュラの大森林には不可侵条約があります。まぁ、それは暗黙の了解のようなものですし、暴風竜がいなくなった今となっては意味など無いに等しいのですが・・・・・・」

 

 

 

青娥さんから聞かされた内容が気になったのか、カリオン様は小さくそう呟く。そんなカリオン様は気にせず青娥さんは話し続けていたが、そこで一旦言葉を区切ると。

 

 

 

「───私とアクトくんがいる時に、ふざけた真似されるのは不愉快なんですよね」

 

「っ・・・・・・!」

 

 

 

ぞわりと、妖気を滲ませながら冷たく言い放った。隣にいる俺やガビルですら底冷えするような声色と、見つめられたら身体がすくんでしまうのではないかと思うような冷酷な瞳。それらと妖気を正面から受け、身動きせず冷や汗一つで耐えているカリオン様はやはり只者では無いのだろう。

 

 

 

「・・・・・・悪いが、俺様は何も知らん。ジュラの大森林に興味は無い・・・とは言わんが、本当に何もしてねえよ」

 

「そっ、そうだ!カリオン様がこそこそとふざけた真似する訳無ぇだろ!」

 

 

 

自身を落ち着かせる為か、小さく息を吐いてからカリオン様は答えた。それを後押しするかのように俺たちの後ろにいるフォビオがカリオン様に続いて叫ぶ。その声に反応して振り向いた青娥さんにフォビオは一瞬たじろぐが、青娥さんは特に気にせずにこりと笑みを浮かべた。

 

 

 

「・・・・・・・・・ですよね♪えぇえぇ、分かっていますとも。カリオン様に限ってそのようなことしませんよね」

 

「な、なんだよ・・・・・・分かってんじゃねえか」

 

「そんなこと考えるくらいならゴリ押ししてどうにかするタイプですもの。ねっ、カリオン様♪」

 

「おう・・・・・・って、お前それ馬鹿にしてんだろ!」

 

 

 

思わず身構えたフォビオだったが、青娥さんの反応を見てそう呟きながら警戒を緩める。その後、正面に向き直りながら言った青娥さんの言葉にカリオン様はノリツッコミした。

 

 

 

「あはははっ!嫌ですわ、そんな訳無いでしょうカリオン様。偉大なる魔王、ビーストマスターである貴方を馬鹿にする者などどこにもいませんよ?」

 

「こ、ンのッ・・・・・・!」

 

 

 

けらけらと笑う青娥さんにカリオン様は明らかに苛立っていた。口元は緩やかな弧を描いてはいるが、額には青筋が浮かんでいるし、目は全く笑っていない。青娥さんに敗れたことがあるからか怒りに身を任せ襲い掛かっては来ないようだが、こちらとしては恐ろしくて仕方が無い。ちらりと後ろを見ると、三獣士たちもカリオンの形相に怯えているようだった。

 

 

 

「・・・・・・・・・はぁああ・・・・・・もういい。マトモに相手できる女じゃないしな、お前・・・・・・色んな意味で。それで、聞きたいことはそれだけか?それならもう帰れよ」

 

「あっ、お待ちくださいませカリオン様。実はもう一つ用事・・・・・・というか、お願いがございまして」

 

「お願いだぁ?・・・・・・どうせ断れやしねえんだ、とりあえず言ってみろ」

 

 

 

やがて表情を戻し、大きく溜め息を吐いたカリオン様は頭を掻きながら青娥さんに帰るよう促すが、そこで彼女はそう口にした。カリオン様はあからさまに嫌そうな顔をしながらも、渋々と言った様子でお願いとやらの詳細を求める。

 

 

 

「ありがとうございます♪先程こちらのアクトくんが言ったように、最近私はこの二人を育てておりまして」

 

「ほう、一匹狼のお前がか。なんだ、遂に配下を集め始めたのか?」

 

 

 

一匹狼か。そう言えば青娥さんも一応魔物らしいが、仲間らしき存在と一緒にいるところは見たことが無い。封印の洞窟で出会ったエレンにカバルさんとギドさんなど、人間の友人はいるようではあるが。

 

 

 

「いえいえ、そういう訳では。それで、私のお願いというのはですね・・・・・・」

 

「おう」

 

「アクトくんたちのここまでの修行の成果を見たいので、カリオン様御自慢の三獣士の皆さんとこの二人を戦わせてくださいな♪」

 

「えっ」

 

 

 

・・・・・・・・・聞いてないんですけど?




三獣士は全員好きです。
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