転生したら蜥蜴人族の友人と邪仙の恋人ができた件 作:乃出一樹
明けましておめでとうございます。相変わらずのんびりとやっていくことになりますが、今年もよろしくお願いします。
1月はどうやら忙しくなりそうなので更新が少なくなるかもしれません。
「てやぁーーーっ!」
「甘いッ!」
威勢の良い声と共に緑がガビルへ向け穂先の無い訓練用の槍(ただの長い棒とも言う)を突き出す。だがそれをガビルはいとも簡単に打ち払った。負けじと緑は連続で突きを繰り出すが、ガビルには全て届かない。
「さっすがガビル様だぜ!俺たち三人がかりだったとしても勝てねぇな!」
「うむ。あの槍捌き・・・右に出る者無し」
二人の訓練の様子を見守りながら、モスと忍者がそう話す。同じく訓練を眺めている俺もガビルの強さにおぉ、と声が漏れた。
「確かに強いよなぁ、ガビルって」
「当たり前だろ!俺たちの大将だし、何より──」
「
モスがそこまで言い掛けた時、背後から女性らしき声がした。振り返ると、二人のリザードマンがこちらに近寄って来ている。一人はガビルとほぼ同じ色をしているが、他のリザードマンと比べると細くて柔らかそうというか・・・・・・どこか女性らしさを感じる。そしてもう一人は首領に似た色をしていて、より年老いているように見えた。
「親衛隊長!それに爺さん!」
「親衛隊長・・・?」
恐らく、女性っぽいリザードマンの方だろう。そのリザードマンは『爺さん』らしきリザードマンと共に俺の目の前までやってきた。
「あなたが・・・・・・ガビル殿が助けたという人間ですね?」
「あ、あぁ・・・・・・あなたは・・・?」
「親衛隊長だよ。首領の側近で、ガビル様の次に強いんだ!」
「ちなみに、ガビル様の妹な」
突然話し掛けられ困惑している俺に、緑とモスがそう教えてくれた。妹なのか・・・あまり似てないような・・・・・・いや、人間の俺からじゃそう見えるだけで、リザードマンたちからすると似てたりするのかもしれない。
「・・・・・・はい、彼らの言うとおりです。初めまして、リザードマン一族の首領の親衛隊長を務めている者です」
「御丁寧にどうも。よろしくな・・・えっと、名前は・・・・・・ガビル以外無いんだっけ」
「えぇ。ですので、私のことは親衛隊長と呼んで頂ければ」
そう言って親衛隊長は頭を下げた。どうやら礼儀正しい性格らしい。同族には厳しい、というか威厳のある口調であったが。
と、そんなことを考えていた時。親衛隊長の隣に立つ『爺さん』と呼ばれていたリザードマンが口を開いた。
「ホッホッホッ・・・・・・どうやら怪我の方は心配無いようですね。安心しましたよ」
「・・・・・・!?」
爺さんは親衛隊長と話す俺を静かに見つめていたが、やがてにこりと笑いながらそう呟いた。しかし、爺さんの表情とは裏腹に、俺はその呟きに・・・いや、その声を聞いて思わずびくりと体を震わせた。
何故ならば、爺さんの声が某宇宙の帝王とそっくりだったからだ。笑い声も同じだから凄く驚いた。
「おや、どうかしましたか?」
「い、いや・・・・・・気にしないでくれ・・・あー、あなたは?」
「おっと、失礼・・・・・・私はガビル様と妹様の世話役、のような者です。まぁ、お二人とも立派になられたので、今は専ら医療班を纏める立場といったところですかね」
そう言って再び笑う爺さん。成程、ガビルと親衛隊長の執事的な人なのだろうか。あと、医療班を纏める立場ということはこの人も結構偉い立場なのだろう。
「・・・・・・・・・ん?医療班・・・って、もしかして俺の治療をしてくれた・・・?」
「はい。もう歩ける程に回復したようで良かったですよ」
「やっぱり!助けてくれてありがとうございました!ガビルには言いましたけど、医療班の人にも礼を言いたいって思ってたんです!」
「いえいえ、礼には及びませんよ。怪我人を治すのが私たちの仕事ですからねぇ・・・ホッホッホッ」
頭を下げる俺に優しく微笑む爺さん。声を聞いた時は少し身構えてしまったが、この人も良い人のようで安心した。少なくとも誰かを木端微塵にするような性格ではない。そんなことが出来る力はないだろうが。
「けど・・・あれだけの怪我を短時間でどうやって治したんですか?もしかして、回復魔法とか・・・」
「回復・・・『神聖魔法』のことですか?ホホホ、御冗談を。神聖魔法は神を信仰する人間のみに許されたモノでしょう?」
「お爺さまが使える魔法は、『元素魔法』の
疑問に思っていたことを訊ねると、爺さんはそう返した。『神聖魔法』に『元素魔法』・・・・・・また新しい単語が出てきたな・・・今の説明からするに『神聖魔法』は特別な魔法の分類なのだろうか。
「あなたには『ポーション』を使いました。ここには『ローポーション』しかありませんが、それでもいくつか使ったらほとんど回復しましたよ。あとはあなた自身の回復力ですね」
「俺自身の、ですか。しかし、『ポーション』ね・・・」
「おや、なにか?」
「恐らく、知らぬのかと。この者、記憶を失っておる故」
「記憶を・・・!?」
話を戻し、俺に施した処置について爺さんは説明する。それに対する俺の反応が気に掛かった爺さんへ、忍者は俺が記憶喪失であることを伝えた。まぁポーションについては元の世界で遊んだゲームなどで馴染みがあったので今のような反応をしてしまっただけだが。
ちなみに、忍者たちにはここへ移動するまでの間に俺のことを教えておいてある。
「なんと・・・それは本当ですか?」
「は、はぁ・・・・・・信じて貰えるか分かりませんが、気が付いたら・・・えっと、『ジュラの大森林』って言うんでしたっけ?ここにいたんです」
「で、オーガたちに襲われてたところをガビル様に助けられたんだよな!」
驚く親衛隊長と爺さんに事情を説明していると、隣にいたモスがそう補足する。今更だが、恩人たちに嘘を吐いていると思うと少し胸が痛む。だがガビルを騙した以上、もうこれは仕方がないことだと諦めた。
「そうでしたか・・・・・・それは大変でしたね。ガビル殿が偶然近くにいて良かったです」
「本当、ガビルには感謝しかないよ・・・・・・あ、そうだ。えっと・・・お爺さん?」
「『爺さん』、で構いませんよ。それと、話し方も砕けた感じで結構です」
「そう・・・か。それじゃ爺さん、少し聞きたいことがあるんだけど。どうしてここにいる奴らはガビル以外名前がないんだ?」
爺さんに声を掛けると、笑顔でそう返される。しかし、親衛隊長はガビルのことを「兄」と言わないな・・・仲が悪いのだろうか。
それはさておき。気さくに接してくれる爺さんに感謝しながら、俺は気になっていた名前について訊ねることにした。
「・・・・・・・・・」
「名前ですか・・・確かに、生まれた時に親から名前を貰う人間からすると、我々普通の魔物に名前が無いことは不思議かもしれませんねぇ」
「まぁ、俺も今は名前無いんだけどな・・・・・・あ、でも仮の名前は決まったんだ。『旅人』って言うんだ、遅くなったけどよろしく」
「えぇ。よろしくお願いしますね、旅人さん」
遅くなったが自己紹介を済ませる。俺が質問した際に見せた親衛隊長の反応が少し気になったが、爺さんが再び話し出したのでそちらに意識を向けた。
「そうですね・・・・・・では、我々魔物にとって『名前』とは、『名付け』とはどのような意味があるのか説明を・・・する前に。旅人さん、『魔素』については記憶にありますか?」
爺さんの問いに俺は首を横に振る。また新しい単語が出てきたが、『魔素』か・・・確かドラクエにも最近の作品にそんな用語があった気がする。
「ふむ、では『魔素』から簡単に説明しましょう。『魔素』とは、この世界に存在する不思議なエネルギーであり、魔法やスキルなどの行使に密接に関わっています・・・・・・えぇと、魔法とスキルについても知りたいですか?」
人差し指を立てながら優しい口調で説明してくれる爺さん。途中で確認するようにそう訊ねてきたので、俺は無言で頷く。
「ホホホ、分かりました。そちらはまた後に・・・・・・さて、続きですが。魔素は魔物など魔力を有する生き物の生命力の源と考えられております」
「しかし、未だ不明な点も多い謎の物質・・・でしたね」
「その通り」
爺さんの言葉に付け足すように隣の親衛隊長がそう言った。爺さんは微笑みながら親衛隊長に頷くと、視線を俺に戻し再び口を開く。
「強大な魔物である程、濃度が高い魔素を出します。魔素を持たない普通の人間など、魔力耐性の低い生き物にとっては高密度の魔素は毒となる・・・・・・例えば、ここジュラの大森林にはとある『邪竜』が封じられている『封印の洞窟』という場所がありまして。
そこはその邪竜から漏れ出した高密度の魔素が溢れているため、弱い魔物などは中に入ることすら出来ないのです」
邪竜なんているのかこの森。オーガたちといい、大分恐ろしい場所なのかもしれない。
「しかし、何故か五日程前に邪竜がいなくなったようで・・・・・・おっと、話が逸れてしまいましたか・・・まぁ、ざっくり言ってしまうと魔素の量は一つの強さの目安といったところですね」
爺さんの説明に成程、と俺は頷く。なんだかとんでもないことをさらっと言ってたような気もするが、ひとまずそれは置いておこう。
「では、魔素については一旦ここまでに・・・次はいよいよ名前についてです。我々魔物は通常名前を持ちません。それは『名付け』という行為を気軽に行えないからに他ありません。
何故ならば、この世界において『名付け』とは力を分け与える行為だからです。基本的に『名付け』とは力のある魔人や魔物が目下の魔物に行うものでして。名前を付けられた魔物は名付けた者から魔素を授かりパワーアップします。
なので名前を持つ魔物は
「ガビル様も、名付けによって通常のリザードマンを上回る力を手に入れたのだ」
「元々ガビル様は強かったけどな!多分名付け前でも『C+』はあった筈だぜ。ま、親衛隊長も同じくらいだけどよ」
成程、名付けにはそういう意味があったのか。あと魔物にもランクがあることが今の忍者とモスのやり取りで判明した。こっちも後で聞くとして・・・・・・それよりだ。今の話からするに、首領が部下のリザードマンたちに名前を付けない理由が見当たらない。味方が強くなるというのは上に立つ者としては願ってもないことだろう。
そんな俺の考えを察したのか、爺さんは小さく笑ったあと説明を続けた。
「しかしデメリット・・・というよりはリスクがありまして。『名付け』を行う時に相手の強さによって名付ける者の魔素が消費されるのですが、その際に消費した魔素は回復しないことがあるのですよ」
「へぇ・・・・・・ん?待ってくれ、さっき魔素は強さの目安って言ってたけど、その魔素が元に戻らないってことは・・・」
「はい、弱くなるということです。なので、魔物への名付けという行為は安易にはできないのですよ」
そう言ってどこか残念そうな表情を浮かべる爺さん。確かにそんなリスクがあったら気軽に名前なんて付けられないな。皆を纏める立場の魔物が弱かったら色々と問題が起こりそうだし。どうも魔物は人間と違って弱肉強食の傾向があるようだしな・・・・・・もしかしたら、この世界だと人間もそんな感じなのかもしれないけど。
「しかし、そうなるとガビルに名前を付けた・・・ゲルなんとかって魔人?は凄いんだな。リスクも恐れずにそんなことするなんてさ」
「ゲルミュッド様だ。ちなみに、ガビル様が言うには名付けの後、弱体化などはしていなかったそうな」
「ふむ・・・それほど圧倒的な力を持った魔人なのか、あるいは何かカラクリが・・・・・・」
名前を思い出させてくれた忍者に感謝しつつ、改めてゲルミュッドという魔人の凄さを認識する。なにやら爺さんは考え出してしまったが、一先ず名前について説明してくれた礼を言っておこう。
「・・・・・・っと。名前について教えてくれてありがとな、爺さん。それで、悪いんだけど他のことも色々と教えてくれると助かるんだけど・・・」
「ホッホッホッ、構いませんよ。私で良ければいくらでも・・・・・・・・・しかし、あなたは何者なのでしょうねぇ」
「やはり、お爺様も気付いておりましたか・・・」
「えぇ、『魔力感知』がありますからね」
俺の頼みに爺さんは笑顔で頷いてくれた。しかし、その後難しい顔をして首を傾げる。なにやら親衛隊長も思うところがあるらしく、二人は顔を見合せた。
「えっと・・・・・・それはどういう・・・?」
「・・・私とお爺様は『魔力感知』というスキルを持っている。ガビル殿に父上、他一部のリザードマンも持っているが・・・・・・このスキルは文字通り周囲の魔素を感知できるスキルなのだ」
スキル・・・さっき言ってたモノか。スキルというモノが何かはよく分からないが、恐らく俺が元の世界で楽しんでいたゲームなどに出てくるそれと似たようなモノだろう。しかし、『魔力感知』か・・・ドラゴンボールで言うところの気を感じる能力みたいなものだろうか。
「そして、そのスキルで貴方を視た結果・・・通常、人間は持たない筈の魔素を持っていることが分かったのです。それもかなりの量を」
「俺に魔素が?一体なんで・・・・・・えっと、爺さん。どういうことか分かるか?」
「いえ、私にはなんとも・・・・・・しかし、この魔素量は驚きですね・・・我等通常のリザードマンを越えています。ランクで言えば『B』相当・・・恐らく並のオーガに匹敵するかと」
俺にそれだけの魔素が?そんなバカな・・・と、一蹴しかけたが、ふと昨日のことを思い出した。確か銀髪のオーガに捕まった際、がむしゃらに蹴りを入れたら結構効いていたような気がする。もしかするとその魔素量が関係していたのか・・・?
「おいおい、『B』相当って、ガビル様と同じくらい強いってことじゃねえか!いくらなんでもそりゃ有り得ねぇって!」
「むぅ・・・では翁よ、旅人殿は人間ではなく魔物ということか?」
「そこまではなんとも・・・・・・ですが外見だけ見れば間違いなく人間・・・
忍者の問いに爺さんは目を伏せ考え込んでしまった。
しかし、一つ謎が解けたと思ったらまた新たな謎が出てくるとは・・・・・・まさか自分が人間ではない可能性があるなんて、流石に驚くよ・・・あとエルフとかもいるんだなこの世界。
「・・・・・・よし、一旦休憩にするぞ!旅人殿、如何だったかな?我等の・・・む?おぉ、我が妹に爺!来ていたのであるか!」
その時、訓練をしていたガビルがこちらへやって来た。汗を拭きながら近付いてきた彼は親衛隊長と爺さんの姿を見つけると笑顔で声を掛ける。
「・・・・・・お疲れ様です、ガビル殿」
「ホッホッホッ・・・ガビル様、お疲れ様でございます。えぇ、少し噂の人間が気になりましてね。ガビル様が訓練している間、お話させて頂きました」
にこりと微笑みながら応対する爺さんと違って、親衛隊長はどこか気まずそうにぺこりと頭を下げる。やはり関係は良くないのだろうか。ガビルはあまり気にしていないように見えるけど。
「そうであったか。ふふ、良き人間であろう?」
「・・・・・・同じく『魔力感知』を持っているのに、何故違和感を覚えないのか・・・」
「む?何か言ったか妹よ?」
「いえ何も」
ぼそりと呟いたその言葉はガビルに届かなかったらしく、親衛隊長は適当に誤魔化した。ガビルも『魔力感知』を持っているのか。そう思いながら苦笑を浮かべていた俺は、その場の空気を変えるべくガビルに声を掛けた。
「あー・・・・・・そうだ。なぁガビル、もう少し爺さんと話しててもいいか?色々と教えて欲しくてさ」
「おぉ、それはいい。爺はシス湖で最も博識なリザードマンであるからな!」
「おやおや、買い被りですよ」
「時間だって心配いらねーぜ?今から俺たちもガビル様に相手してもらうからな!」
「然り。存分に話すが良い」
ガビルの言葉に爺さんはこそばゆそうに髭を撫でる。モスと忍者もガビルと訓練をするようで、爺さんと話す時間はもう少しありそうだ。爺さんには申し訳ないが、もっと沢山のことを教えて貰おう。
「・・・・・・そうだ!旅人殿。お主、怪我の方はもう何ともないのだったか?」
「え?あぁ・・・・・・そうだな。少し痛むけどこうして動き回ることくらいは問題ないよ。なんなら走ったりも出来そうだ」
その時、思い出したかのようにガビルが俺の怪我の具合について訊ねる。その問いにそう答えながら、俺はその場で腕を回したり走る動作をして見せた。
「良し良し、それなら問題なさそうであるな。勿論お主の意思を尊重するが」
「あの・・・・・・ガビル殿。それは一体どういうことなのでしょう・・・?」
嬉しそうに笑みを浮かべるガビルとは対照的に、どことなく不安げな表情の親衛隊長。彼女のそんな表情には気付かず、ガビルは腰に手を当てながら声高々に宣言した。
「明日、旅人殿さえ良ければ・・・・・・我輩とジュラの大森林を冒険しようではないか!」
ガビルと妹がこの時点で『魔力感知』を持っていたかは不明ですが、アニメだと斥候らしきリザードマンの兵士が「『魔力感知』でオークの数を確認した」と言っていたので、じゃあガビル辺りにも持たせようと決めました。勿論『熱源感知』も持っています。部下三人組は『熱源感知』のみです。
それとオリキャラも登場しました。この爺さんも後に名前を得る予定です