転生したら蜥蜴人族の友人と邪仙の恋人ができた件   作:乃出一樹

60 / 127
お待たせしました、第60話となります。

漸く決着です。


ガビル&シーザーVSフォビオ④

「惜しかったなフォビオ殿。アーツを囮に目眩ましをするとは少し驚いたが、我輩には『魔力感知』がある。見えずとも対処は可能なのだよ・・・・・・とはいえ、反撃出来たのはギリギリだったがな」

 

「・・・・・・いや、計算通りだ。反撃されることも含めて。不意討ちや目眩ましくらいでお前をどうにか出来るとは思っちゃいねえ」

 

「なんだと?」

 

 

 

にやりと笑うガビルにフォビオは静かにそう返す。どういうことかと訝しげな視線を向けるガビルに、今度はフォビオが笑みを浮かべた。

 

 

 

「右手はくれてやる!いや・・・・・・お前のと交換だ!」

 

 

 

その言葉と同時にフォビオは貫かれた右手でバーニングランスをぐっと掴み、それを自身の方へ引っ張った。俺が初めてガビルと戦った際に取った手段である。

 

ガビルがそれを覚えていたのかは分からないが、あの時と違いガビルは咄嗟に両手でバーニングランスを掴み全力で抵抗していた。それによって俺の時とは違い大きく体勢は崩れない。だが、フォビオにとってはそれで十分だったのだろう。ガビルの意識がバーニングランスに向いた瞬間、フォビオは全力の蹴りをガビルの腕へ繰り出した。

 

 

 

「がっ・・・・・・!?」

 

「まだだァッ!!!」

 

「ごぶぅうううっ!!!」

 

 

 

右腕に受けたダメージにガビルは堪らず顔を歪める。しかしフォビオの手は、いや足はそこで止まらない。ガビルがダメージで動きを止めた一瞬を突き、バーニングランスから手を引き抜くとその場で体勢を変え、今度はガビルの腹目掛け蹴りを叩き込んだのだ。凄まじい衝撃を受け、声を上げながらガビルは地面を転がるように吹っ飛ばされて行く。

 

 

 

「ガビル、大した奴だぜお前は!タフさだけなら俺たち三獣士にも負けてねぇ!それでも・・・・・・こいつだけは耐えられまい!」

 

 

 

ガビルへ追撃する為にフォビオは駆け出す。よく見るとフォビオの左手には妖気が溜められていた。それを見て俺は漸く悟った。右手の『豹牙爆炎掌(ひょうがばくえんしょう)』による目眩ましからの奇襲すら囮だったのだと。

 

フォビオは恐らく、ガビルに背を向けたその瞬間から右手だけでなく左手にも妖気を溜めていたのだ。ガビルに悟られぬように密かに。右手からの『豹牙爆炎掌(ひょうがばくえんしょう)』を囮に、左手から放つ全力の『豹牙爆炎掌(ひょうがばくえんしょう)』をガビルへ喰らわせる為に。

 

 

 

「ぐ、ぬ・・・・・・ッ!?」

 

 

 

地面を転がっていたガビルは槍を地面に突き刺し勢いを止めようとする。しかし勢いを殺し切る寸前でバーニングランスから右手を離してしまった。どうやら先程フォビオから食らった蹴りでかなりのダメージを受けたのだろう。『物理攻撃耐性』があってもこれ程のダメージだ、『自己再生』で回復するにも時間が足りない。フォビオを迎撃するまでに間に合わない。

 

 

 

「はははははっ!その腕では槍は振るえまい!終わりだッ、豹牙爆──!」

 

 

 

「グルゥオオオアアアアアアアッ!!!」

 

「ッ!?」

 

 

 

フォビオが勝利を確信し、ガビルに飛び掛かろうとしたその時だった。それまで倒れていたシーザーが立ち上がっていたのである。何事かとガビルへ距離を詰めつつそちらを振り向いたフォビオが見たものは、シーザーから放たれた炎の渦だった。

 

 

 

「あら、『火炎吐息(フレイムブレス)』?この土壇場で獲得したようですね」

 

「シーザー・・・・・・!いや、けど炎じゃフォビオに・・・・・・」

 

 

 

青娥さんの解説を聞いた俺はシーザーの成長に口元を緩めるが、すぐに表情は戻った。フォビオは『炎熱耐性』を持っている為、炎では効果は薄い筈。そんな俺の予想通り、フォビオはシーザーを見て余裕そうに笑った。

 

 

 

「は、ははははっ!まだ動けたことには驚いたが、隠し玉がそれではな!ガビルの『火炎大魔嵐(ファイアストーム)』ならまだしも、お前程度の炎では──」

 

「かぁああああああああああッ!!!」

 

 

 

自身に迫る炎を見ながら勝ち誇ったようにフォビオは笑う。しかし、シーザーのブレスに意識が向いたほんの一瞬でガビルが大口を開け咆哮する。何事かと慌てて前を向いたフォビオは視界に入ったそれを見て驚愕した。

 

 

 

「なっ、お前もブレスを──がはぁあああっ!?」

 

「ぬぅうううううっ!」

 

 

 

フォビオがすぐ目の前まで迫ったその時、ガビルはシーザーのようにブレスを・・・・・・ではなく、闘気の弾を口から放ったのである。シーザーに気を取られていたフォビオはガビルの闘気弾に反応が遅れてしまい、それの直撃を受けた。

 

ガビルの闘気弾はフォビオに着弾した瞬間に爆発を起こし、フォビオだけでなく至近距離でそれを放ったガビル自身をも吹き飛ばした。フォビオが飛ばされた先にはシーザーが放った炎が迫っており、爆発の勢いでフォビオはそこへ飲み込まれて行く。

 

 

 

「く、そっ・・・・・・炎じゃねぇ!あいつ、まさか闘気を・・・・・・・・・っ!?」

 

「グルルルルァアアアアアアアアアッ!!!」

 

「うぐっ!?」

 

 

 

炎に飲まれながらガビルが何をしたのか把握しようとしていたフォビオだったが、突然体に大きな衝撃を受け苦悶の声を上げた。何が起きたのかと衝撃を受けた方向を見ると、そこにはシーザーがいた。ブレスを吐きながら接近し、フォビオに向かって突進し突き飛ばしたのである。

 

 

 

「ギィ・・・ガァアアア・・・・・・ッ・・・!」

 

「チィッ!この、くたばり損ないがッ・・・・・・!?」

 

 

 

炎から飛び出し宙を舞うフォビオは舌打ちしながらシーザーを睨む。その時、フォビオは何かに気付き視線をそちらへ動かした。

 

 

 

 

「はぁああああああ・・・・・・!」

 

「ガビル・・・・・・!?」

 

 

 

フォビオの視線の先には、先程自身の闘気弾による爆発に巻き込まれたガビルの姿があった。これまでの戦いとその爆発で全身傷だらけだが、何とか両の脚で立っている。しかしフォビオはガビルがそこにいたことにではなく、彼の左手を見て動揺していた。

 

ガビルの左手には、先程右手から離れ落ちたバーニングランスがあったのだ。いつの間にか回収していたらしい。そしてそれを持った左手でアーツを撃つ体勢に入っていた。

 

 

 

「きっと負傷している右手ではアーツを撃てないと判断したんでしょう。さて、利き腕では無い腕とあのダメージでどれだけ威力を出せるか・・・・・・」

 

「大丈夫、ガビルなら・・・・・・!ガビル──やっちまぇええーーーーッ!!!」

 

「おぉおおおおおおおおおッ!超龍槍撃(ドラゴンクラッシュ)───!!!」

 

 

 

観客席にいる俺の声が届いていたのかは分からない。それでも、俺の声に反応したかのように、ガビルは咆哮と共にバーニングランスから闘気のドラゴンを撃ち出した。ガビルのアーツは凄まじい速度でフォビオが丁度落下するであろう地点へ突き進んで行く。自身に迫る闘気の塊を前に、フォビオは鬼気迫る表情を浮かべつつ左手に妖気を込めた。

 

 

 

「だぁああああああっ!豹牙爆炎掌(ひょうがばくえんしょう)ッ!!!」

 

 

 

回避は無理と悟ったフォビオは、地面に着地すると同時に自身のアーツで『超龍槍撃(ドラゴンクラッシュ)』に立ち向かった。ガビルの闘気弾やシーザーの妨害はあったが、まだ十分な妖気が左手に残っていたのだろう。炎を纏った魔手が闘気のドラゴンと激突し、それを受け止めていた。

 

 

 

「ぐ、ぎぃ・・・・・・っ!こんなもの・・・・・・こんな、こんなものぉおお・・・・・・ッ!」

 

 

 

フォビオは歯を食い縛り、左手で必死にガビルのアーツに抵抗する。闘気と妖気の凄まじいぶつかり合いの余波で、フォビオが立つ周囲の地面は削れ、爆炎が巻き散らされていた。

 

 

 

「おぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおッ!!!」

 

「がぁああああああああああああああああああああッ!!!」

 

 

 

二つのアーツが拮抗する中で、ガビルとフォビオ、両者の咆哮が闘技場に響き渡った。瞬間、ぶつかり合っていた『超龍槍撃(ドラゴンクラッシュ)』と『豹牙爆炎掌(ひょうがばくえんしょう)』が大爆発を起こした。どちらかのアーツが相手を上回ったのか、それとも意図的にそうさせたのかは分からない。

 

しかし確かなことは、二つのアーツの爆発地点にいたフォビオはそれに巻き込まれ、間違いなく大ダメージを負ったということだ。

 

 

 

「ふぁああっ!?す、すごい衝撃です!こっちにまで余波が・・・・・・」

 

「やーん♪アクトくん、こっち見ちゃ駄目ですよぉ♪」

 

「やってる場合か!それよりどうなったんだ?ガビルは、フォビオは・・・・・・!?」

 

 

 

爆発によって生じた強風に驚くフォスと、わざとらしくスカートをはためかせる青娥さんを尻目に、俺は強風から目を腕で庇いつつ闘技場の様子を伺う。爆発が起きた場所には先程フォビオが起こした以上の煙と炎が巻き起こっていて、フォビオの姿を確認することが出来なかった。

 

フォビオがどうなったのか、俺やフォスたちが息を飲んで闘技場を見つめていると、煙の中に揺らめく影が浮かび上がる。誰かがあっと声を上げるの同時に、その影はゆっくりと煙の中から現れた。

 

 

 

「フォビオ様ですっ!」

 

「あいつ、まだ動けるのかよ!けど、あれだけのダメージを受けてるんなら・・・!」

 

 

 

フォスの指差した先に立っているフォビオを見て俺は思わず目を見開くが、彼の状態を確認し口元を緩める。爆発を間近で受けたフォビオは予想通り大きなダメージを受けたようで、身に付けた鎧はほぼ壊れ、全身から血を流し正しく満身創痍といった様子だった。

 

 

 

「はっ・・・はっ・・・はぁっ・・・・・・!まさか、俺がこんな・・・・・・ッ!『自己再生』が・・・追い付かねぇ・・・・・・!」

 

 

 

荒い呼吸を繰り返しながらフォビオは煙の中からふらふらと歩いてくる。ガビルのアーツによって受けたダメージは『自己再生』でもすぐには回復出来ないようで、特に『豹牙爆炎掌(ひょうがばくえんしょう)』を放った左手は完全に言うことを聞かなくなっているらしく、だらりと垂らしている。最早立っているだけでもやっとだろうに、それでもその鋭い目から戦意が消えていないのは流石と言えた。

 

 

 

「フォ、フォビオ様が負けちゃうです・・・・・・!?」

 

「はははっ、フォスには悪いが・・・・・・これならいけるぜ!よーし、決めてやれガビル!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「──いえ。もうガビルさんは戦えませんよ」

 

 

 

不安そうな顔をするフォスとは対照的に俺は笑っていた。これならガビルが勝てると。しかし、次に青娥さんが静かに告げた言葉に俺は自分の顔から笑みが消えていくのを感じた。

 

 

 

「・・・・・・・・・ガビル?」

 

 

 

思わず青娥さんに振り返り、どういうことか俺は訊ねようとした。しかしその直前で嫌な予感がして、俺は再び闘技場に視線を戻しガビルを探す。

 

結果、ガビルはすぐに見つかった。だが、彼の姿を見て俺は言葉を失っていた。

 

 

 

「見た目では分からなかったかもしれませんが・・・・・・ガビルさん、かなり消耗してたんですよ。それがフォビオさんの猛攻と、最後に撃った『超龍槍撃(ドラゴンクラッシュ)』で限界を迎えてしまったようですね」

 

 

 

青娥さんの言う通り、ガビルはもう戦える状態ではなかった。フォビオと同じくらい身体は傷だらけで血塗れ。左手からバーニングランスを落とし、その場で座り込むようにしてガビルは気絶していた。そしてシーザーも、先程のブレスと突進攻撃で限界を迎えたらしく地面に倒れ込んでいる。遅れてフォビオも場の状況に気付いたのか、ガビルとシーザーをぽかんとした表情で交互に見ていた。

 

 

 

「『自己再生』は身体の損傷は治せても、体力や魔素は回復できません。最後の最後に、地力の差が出てしまったようですね」

 

「ガビル・・・・・・っ・・・・・・・・・青娥さん」

 

「えぇ、大丈夫。分かってますよ、アクトくん」

 

 

 

優しい声で答えた青娥さんは、ふわりと一瞬俺の頭を撫でた。少しだけ俺は驚き、そんな俺を見て青娥さんはくすりと微笑む。それから青娥さんはカリオン様に向き直ると、静かに頭を下げこう続けた。

 

 

 

「カリオン様。ガビルさんの代わりに私から言わせて頂きます・・・・・・降参ですわ。この勝負、フォビオさんの勝利です」




ステータス
名前:シーザー
種族:下位龍族(レッサードラゴン)
称号:なし
魔法:なし

固有スキル:『火炎吐息(フレイムブレス)

耐性:物理攻撃耐性、炎熱耐性
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。