転生したら蜥蜴人族の友人と邪仙の恋人ができた件   作:乃出一樹

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お待たせしました、第61話となります。

今年のエイプリルフールも楽しかったですね。


戦士

青娥さんがガビルの降参を告げた後すぐに、俺たちは闘技場内に降りた。理由は当然ガビルたちを治療する為である。

 

俺は途中でシーザーを拾い担ぎながらガビルの元へ駆け付けると、彼らをその場で横に寝かせる。とりあえず息をしていることを確認してからどうしたものかと不安になっていたところへ、青娥さんが近付き俺の隣にしゃがみこんだ。

 

 

 

「アクトくん、これどうぞ」

 

「えっ?これは・・・・・・ヒポクテ草?」

 

「それでハイポーションを作ってあげてください。数には余裕がありますから、フォビオさんの分もお願いしますね」

 

 

 

そう言って青娥さんはヒポクテ草をいくつか俺に手渡した。恐らく空間魔法で取り出したと思われるそれを受け取り、俺は青娥さんに礼を言ってからスキルを発動する。『脱獄者(ヌケダスモノ)』に備わっている『道具作成』だ。

 

『道具作成』を発動させ、俺は一瞬でヒポクテ草からハイポーションを作成し、ガビルたちに振り掛ける・・・・・・と言うか、彼らの真上で作成したので、そのまま降りかかったと言った方が正しいか。

 

 

 

「ふぁっ!ヒポクテ草が一瞬でポーションになったです!?」

 

「へぇ、便利なスキル持ってんなお前。戦闘員じゃねえのか?」

 

「いや、一応戦闘がメインだよ。このスキルはオマケみたいなもんだ。確かに便利だけどよ」

 

 

 

俺のスキルを見て、一緒にここまで付いてきたフォスは驚き、いつの間にか近くに来ていたスフィアは感心したようにそう言った。スフィアの方を向いて答えてから、俺はもう一度ガビルたちの様子を見る。

 

 

 

「・・・・・・よし、傷はほとんど治ったな」

 

「これならもう大丈夫でしょう。ポーションでは消耗した体力までは回復できませんが、すぐに目を覚ますと思います」

 

 

 

傷の具合を確認した俺は安堵し一息吐く。俺は意識を失っているガビルの頬を静かに撫でると、心の中で健闘を称えてからフォビオを呼んだ。

 

 

 

「こっち来いよフォビオ。ほら、ハイポーションあるからさ」

 

「なんだと・・・・・・?いや、俺は・・・・・・」

 

「はーい、ハイポーション入りまーす♪アクトくん、作ってくださる?」

 

「え?あ、はぁ・・・・・・」

 

 

 

何故かフォビオはその場に立ったままハイポーションを拒む。毒でも混ざってるのではないかと疑われているのだろうか?

 

その時、笑みを浮かべた青娥さんにそう言われ、俺は続けてハイポーションを作成した。しかし、このままでは地面にこぼれてしまうのでは、と遅れて気付く。どうするかと慌てながら、とりあえず自分の手で受け止めようとした瞬間、ハイポーションは空中にふわふわと漂い始めた。見ると、青娥さんが人差し指をハイポーションに向けている。またスキルか魔法でなんとかしてくれたのだろう。

 

 

 

「はい、どーん♪」

 

「わっぷっ!?テメ、いきなり何しや・・・・・・!?傷が・・・・・・!」

 

 

 

青娥さんが指をフォビオへ向けると、宙に浮かんでいたハイポーションがフォビオの全身にぶちまけられる。突然のことにフォビオは怒りを露にするが、自分の怪我が治っていることに気付くと青娥さんへの怒りを忘れて目を丸くした。

 

 

 

「具合はどうだ?」

 

「・・・・・・・・・あぁ、傷はほぼ癒えた。残ったダメージはその内治る・・・・・・何故俺にハイポーションを?」

 

「ん?」

 

「何故俺にハイポーションを使った。俺は敵だぞ?しかも、お前の仲間をここまで痛め付けた、な」

 

 

 

眉を顰め、信じられないと言った表情でフォビオは俺を見た。何故そんなことを言うのか、不思議に思い俺は思わず首を傾げる。

 

 

 

「・・・・・・いや、別に敵じゃねえだろ」

 

「それは、俺などでは相手にならないという意味か?」

 

「違う違う違う!どうしてそうなるんだ!」

 

 

 

さらに目付きを鋭くするフォビオに俺は必死に首を横に振って否定する。なんか急に卑屈になったなこいつ・・・・・・とりあえず、彼に何と言うべきか『思考加速』を使って俺は必死に考え、そして何とか言葉にして告げた。

 

 

 

「あー、フォビオ?確かにお前とガビルは戦ったよ、こうしてお互いボロボロになるまでな。けど、殺し合いじゃなかった。この戦いはきっと、互いを認め、高め合えるような尊いものだったと思う」

 

「認め・・・・・・?尊いだと?」

 

「少なくとも、俺はそう思ったよ。互いに全力を出してぶつかって・・・・・・負けたガビルは悔しいだろうけど、でも勝負に勝ったお前を恨んだりはしてない筈だ」

 

 

 

戦いとなった原因は青娥さんだし、互いに初めの印象は良くなかったかもしれない。

 

けれど。俺の勘違いかもしれないが、戦いの途中からはガビルは勿論、フォビオもガビルに対しては見下したりするような言動はしなくなった。殺意だって感じなかったし、何よりどちらもとても良い顔をしていた。フォビオの言葉を借りるなら、あれがきっと戦士の顔なのだろう。

 

 

 

「だから俺はお前を憎んだりはしてない。寧ろ感謝してるし尊敬もしてる。ガビルを戦士と認めて、全力で戦ってくれてありがとな」

 

「・・・・・・!」

 

 

 

口元を緩め、なるべく優しい声色で俺はフォビオに告げた。それを聞いてフォビオはまた驚いたように目を見開く。すると、カリオン様がフォビオの後ろからこちらにやって来た。

 

 

 

「・・・・・・お前、青娥の連れの癖に本当に良い奴だな」

 

「カリオン様!」

 

 

 

カリオン様の声に驚いてフォビオは慌ててそちらに振り向く。俺もしゃがんだままではマズイかと思い、すぐに立ち上がった。

 

 

 

「さて、フォビオ。今の戦いだが・・・・・・」

 

「もっ・・・・・・申し訳ありません!獣王戦士団、三獣士の一人ともあろう者が、あのような・・・・・・」

 

「──良くやった」

 

「───はっ?」

 

 

 

カリオン様にじろりと見つめられたフォビオは勢い良く頭を下げた。謝罪したことから察するに、ガビルとの戦いについて叱責されると思ったのだろう。だが、続くカリオン様の一言に、間の抜けた声を漏らしながらフォビオは顔を上げた。

 

 

 

「アクトと言ったか。そいつの言う通り、今の戦いは正に互いに互いを高め合う素晴らしいものだった。恥じることなどあるまい」

 

「し、しかし・・・・・・俺は小細工を使って・・・!」

 

 

 

どうやらフォビオはガビルに目眩まししたことを恥じていたらしい。割りと面倒臭い奴・・・・・・そして良い奴なのかもしれない、俺は内心そう思いつつ苦笑する。

 

 

 

「・・・・・・機転を利かせただけだろ?自分の技を相手にどう当てるか考えて立てた作戦だ。あれくらいで小細工とか卑怯だなんて言わねえよ」

 

 

 

僅かに顔を俯かせたフォビオに俺はそう告げ否定した。同じ考えだったらしいカリオン様は俺の言葉に頷くと、まだ信じられないと言ったような表情のフォビオを真っ直ぐ見据える。そしてにっと口元を吊り上げた。

 

 

 

「そういうことだ・・・・・・・・・見事だったぞフォビオ。流石、俺様の部下だ」

 

「ッ・・・・・・!勿体無き御言葉・・・・・・ありがとうございます!」

 

 

 

カリオン様の告げた言葉を聞き、フォビオは再び勢い良く頭を下げた。今度は、喜びに顔を綻ばせながら。

 

 

 

「ったく、カリオン様がそこまで言うんじゃケチ付ける訳にもいかねーか」

 

「フォビオ様ーっ!」

 

 

 

腕を頭の後ろで組みながら、スフィアが嫌味っぽく呟く。それが言い終わるかどうかのところで猿のようなライカンスロープが先頭になって、フォビオの部下らしき連中が彼に向かって押し寄せて来た。ここにいたら邪魔になるかと思い、地面に寝かせていたガビルとシーザーを引っ張ってそこから少し離れようとしたところ、カリオン様に声を掛けられた。

 

 

 

「次はお前の番だな。引き続き、見応えのある戦いを期待しているぜ?」

 

「は、はいっ!御期待に添えるよう、精一杯頑張ります・・・・・・!」

 

「カリオン様ー?アクトくんのこと怖がらせないでくださりますぅ?」

 

「えっ、いや別に俺様なにも・・・・・・」

 

 

 

カリオン様に声を掛けられびくびくしていると、隣から青娥さんがぬっと現れた。どこか怖い笑顔を浮かべる彼女にカリオン様は思わずたじろいでいる。もしかすると、相当な実力差があるのだろうか?

 

 

 

「・・・・・・さて。カリオン様も仰ってましたが、次はアクトくんの番ですね。頑張ってください?応援してますから♪」

 

「はは・・・・・・ありがとうございます、青娥さん」

 

「・・・・・・・・・・・・おい」

 

 

 

こちらに振り返った青娥さんはカリオン様に向けていたものとは違う、優しい笑顔を俺に見せる。青娥さんの笑顔に少し照れつつ礼を言ったその時、部下たちに囲まれていたフォビオがこちらに少し近付いてきた。

 

 

 

「フォビオ?俺になんか用か?」

 

「・・・・・・アルビスと戦うんだったな。あいつは三獣士最強の女だ。俺よりもずっと強い」

 

 

 

どうしたのかと訊ねると、フォビオは静かにそう語り出す。何が言いたいのかよく分からず首を傾げていると、フォビオは指先で頬を掻き顔を背けつつ続けた。

 

 

 

「勝てるとは到底思えんが・・・・・・まぁ、なんだ。やれるだけやってみろ」

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・あっ、もしかして応援してくれてる?」

 

「だっ、誰が邪仙の手下なんか応援するか!くだらねえこと抜かしてないでさっさと戦いの準備をしやがれ!そんでアルビスにボコボコにされてこい!」

 

 

 

図星だったのか、フォビオは少し顔を赤らめつつ声を荒らげた。ガビルとの戦いを通して少しは俺たちのことを認めてくれたのだろうか。そう思うと嬉しくなり、つい口元が緩んだ。

 

 

 

「はははっ、分かった分かった。それじゃ、行ってくるよフォビオ」

 

「フンッ!」

 

「それじゃあアクトくん、また後程。健闘を祈ってますよ・・・・・・頑張れ♪頑張れ♪」

 

 

 

そっぽを向くフォビオにそう言いながら軽く手を振ると、彼は鼻を鳴らして踵を返した。部下たちを連れて観客席に移動するらしい。そんなフォビオの背中を眺めていると、青娥さんがふわりと隣へ降り立つ。そして俺の耳元に顔を寄せ悩ましげな声色でそう囁くと、俺が何か言う前に観客席へ飛んで行ってしまった。

 

 

 

「ちょ、青娥さっ・・・・・・ったく、もうあの人は・・・・・・」

 

 

 

抗議する前に逃げられてしまい、俺は溜め息を吐いて苦笑する。色々と困った人ではあるが、ちゃんとガビルとシーザーも連れて行ってくれている辺り、やはり悪い人ではないのだ。青娥さんがどう思っているかは知らないが、俺個人としては信用しているし、ガビルたちと同じく大切な仲間、友人と思っている。友人は少し馴れ馴れしいだろうか。

 

ぼんやりそんなことを考えていると、闘技場には俺以外・・・・・・いや、俺ともう一人を除いて誰もいなくなっていた。あまり待たせるのも良くないだろうと思い、青娥さんのことは一旦忘れて、俺は対戦相手と向き合うのだった。




次回からアクトくんVSアルビスです
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