転生したら蜥蜴人族の友人と邪仙の恋人ができた件   作:乃出一樹

64 / 127
お待たせしました、第64話となります。

ティアキン滅茶苦茶楽しいですね・・・・・・もしかするとそちらが一段落するまで投稿頻度が落ちるかもしれません。どうか御容赦ください・・・


刺激

アルビスとの戦いに勝利した俺は、遅れてやってきた全身の痛みと頭の疲労感に耐えながら急いで地上へ降りた。戦闘中は興奮していたからアドレナリンが出ていてそこまで気にならなかったのかもしれない。そんなことより、アルビスの容態が心配だ。手加減なんて出来る相手じゃなかったので、つい全力で攻撃してしまったし。

 

 

 

「アルビス!」

 

「ふふ、大丈夫ですよ。アクトくん」

 

 

 

着陸し、彼女の元へ駆け寄るといつの間にか青娥さんやカリオン様たちがそこに集まっていた。どうやら青娥さんがアルビスの治療をしているらしい。恐らく神聖魔法だと思うが、血塗れになっているアルビスの傷口に青娥さんが淡く光る両手をかざしている。

 

 

 

「・・・・・・・・・っ、つ・・・・・・ここ、は・・・・・・」

 

「おう、目が覚めたかアルビス」

 

「か、カリオン様っ!?うぐっ!?」

 

 

 

青娥さんの治療が効いたようで、地面に横たわっていたアルビスが目を覚ました。目の前に主であるカリオン様がいたことで一気に意識が覚醒したのか慌てた様子でアルビスは起き上がろうするが、身体が痛むのか呻き声を上げ動きを止める。

 

 

 

「良い、動くな。すぐに青娥が回復してくれる」

 

「はーい、もう終わりますよー」

 

 

 

無理に起き上がろうとするアルビスをカリオン様が制していると、どこか呑気な声で青娥さんがそう答えた。同時にかざしていた両手を下げその場から数歩下がる。見ると、まだ血塗れではあるものの、アルビスの傷が塞がっていた。

 

 

 

 

「これは、傷が完全に癒えている・・・・・・!それに体力も・・・・・・」

 

「身体の傷を治す為に『傷病治癒(リカバリー)』を、消耗した体力を回復させる為に『体力回復(ヒーリング)』を使いました。もう大丈夫な筈ですよ」

 

 

 

ゆっくりと起き上がり、回復した自分の身体を見てアルビスは静かに驚く。そんなアルビスに青娥さんはそう説明した。しかし、さらっと言っているが、この人は何気に凄いことをやっている。

 

基本的に、魔法を発動させる為には魔法それぞれに存在する『詠唱』が必要なのだが、青娥さんはそれを唱えていない。以前、青娥さんに聞いたことがあるのだが、なんでも青娥さんは『詠唱破棄』というスキルを持っているらしく、そのスキルを所持していれば魔法を発動する際に詠唱を唱えなくても良いのだとか。魔法使いには滅茶苦茶便利なスキルだな、なんてその時は思ったものである。

 

最も、扱う魔法の難易度にもよるが、一流の魔法使いなら詠唱無しでも魔法を操れるそうだが。魔法を発動するには想像力が大切で、頭の中で魔法が発動する様を十分イメージ出来ていれば、わざわざ詠唱する必要が無いらしい。『詠唱破棄』の凄いところは、難易度に関わらずほぼ全ての魔法を詠唱無しで操れるところなのだと、青娥さんは言っていた。

 

そして凄いことがもう一つ。言うまでも無いが二つの魔法を同時に行使していたことだ。見たところ、右手と左手でそれぞれ別の魔法を使っていたようだが・・・・・・詠唱を省略したり同じ魔法を連発することは可能でも、全く別の二つの魔法を同時に発動することは本来出来ない筈。魔法に疎い俺でも、修行の合間に青娥さんと爺さんから色々教わったのでそれくらいは分かる。

 

 

 

「・・・・・・・・・やっぱり青娥さん凄いな」

 

「そうでしょう、そうでしょーう♪まぁ疲れるのでちょっと手を抜きましたけど」

 

「おい」

 

 

 

驚きながら思わずそう呟いた俺の様子を見て嬉しそうに青娥さんが微笑む。続けた言葉を聞いたカリオン様がジト目で青娥さんを見つめていたが、それについては特に気にしていないようだった。

 

 

 

「と、とりあえず・・・・・・治療してくださり感謝します、青娥殿」

 

「ん・・・・・・そうだな。部下を助けてくれたことに関しては素直に礼を言うぜ」

 

「いえいえ、お気になさらず。私が手を貸さずとも、アルビスさんなら時間は掛かってもその内回復してたでしょうし」

 

 

 

笑みを浮かべたまま、青娥さんはアルビスとカリオン様に答える。二人にそう言い終えると、青娥さんは俺の方に振り返った。

 

 

 

「お疲れ様でしたアクトくん。カリオン様の側近に勝つなんて凄いじゃないですか」

 

「はは、ありがとうございます。これも全部、青娥さんが鍛えてくれたお陰です」

 

「ふふふ、アクトくんが頑張った成果ですよ♪さて、それじゃあ・・・・・・はい♪」

 

 

 

俺が感謝を伝えると青娥さんは口元に手を当て優しく微笑む。すると彼女は突然こちらに両手を向けた。瞬間、青娥さんの両手が先程のように淡く輝き、俺は全身が優しい熱に包まれ、そして痛みが消えていくのを感じた。

 

 

 

「うおっ、これって・・・・・・」

 

「『傷病治癒(リカバリー)』と『体力回復(ヒーリング)』です。後回しにしちゃってごめんなさいね?」

 

「そんな、謝ることなんてないでしょう?怪我が酷かったアルビスを優先するのは当然だし・・・・・・けど。ありがとうございます、青娥さん」

 

「アクト殿!」

 

 

 

青娥さんに神聖魔法を掛けてもらい、そして一瞬で回復が終わったその時、ガビルとシーザーが近付いて来た。フォビオとの戦いでかなりのダメージを受けていた二人だが、目の前で元気そうに歩く姿を見て俺は安堵した。

 

 

 

「ガビル、シーザー!もう大丈夫なのか?」

 

「うむ、アクト殿が作ってくれたポーションのお陰でな。青娥殿から聞いたぞ、助かったのである」

 

「ガァウ!」

 

 

 

俺とアルビスの戦闘中に青娥さんから教えてもらったらしい。ポーションの礼をガビルが言った後でシーザーが短く吠える。ガビルのように礼を言っているのだろうか。どことなく嬉しそうな顔をしているシーザーの顔を俺は優しく撫でた。

 

 

 

「それよりも、流石であるな!あれ程の戦士に勝ってしまうとは・・・・・・」

 

「・・・・・・全くだ」

 

 

 

ガビルと会話していると横から声が聞こえ、そちらへ振り向く。見ると、そこには三獣士のフォビオとスフィアが立っていた。

 

 

 

「まさか、アルビスを倒しちまうとはな・・・・・・」

 

「アクトだったか?やるじゃねえかよお前!」

 

 

 

信じられないと言った様子で呟くフォビオの隣で、スフィアはどこか楽しそうに俺の健闘を称えてくれた。そしてからからと笑いながらこちらに近付き、肩をばしばしと叩いてくる。け、結構痛いぞ・・・・・・

 

 

 

「ちょ、ちょっ・・・・・・スフィアさん?痛い、痛いです」

 

「す、スフィア殿?アクト殿は戦い終わったばかりなのでな・・・・・・」

 

「おー、ガビルだっけ?お前も意外と強かったぜ。フォビオに負けたけどな!」

 

「おぉ、そう言って頂けると嬉し・・・・・・おうふっ!?」

 

 

 

困っている俺を見かねて助け船を出そうとしたガビルだが、今度は自分がスフィアの標的になってしまったらしい。スフィアはそう言いながらガビルに近付くと、その背中をばしーんと叩いた。間違いなく俺の肩を叩いた時よりも強い力で。

 

 

 

「ったく・・・・・・・・・まぁ、なんだ。確かにお前たちは強い。そんなお前たちを鍛えた邪仙も・・・・・・カリオン様程ではないにしろ、凄い奴ではあるんだろう。それは認めてやる」

 

「・・・・・・ははは、ありがとなフォビオ」

 

 

 

ガビルに絡むスフィアを呆れたように見ていたフォビオだったが、ふとこちらをちらりと見る。俺と目が合うとすぐに視線を戻してしまったが。友人であるガビルとシーザー、そして大切な師である青娥さんも認めてくれたらしい。それが嬉しくて、俺は思わず口元を緩めた。

 

 

 

「フォビオにこうまで言わせるとはな・・・・・・感謝するぜアクト、ガビル。良い刺激になった」

 

「カリオン様!」

 

「えっと、刺激とは?」

 

 

 

その時、カリオン様が俺たちに声を掛けてきた。カリオン様を見てフォビオは慌てて姿勢を正す。俺も彼と同じように失礼の無いよう気を付けながら、その言葉の意味を訊ねた。

 

 

 

「あぁ。俺様の部下である以上当然だが、獣王戦士団に所属する連中はどいつも相当強い。フォビオたち三獣士は全員上位魔人だから特にな。だが・・・・・・その強さ故か、獣人族(ライカンスロープ)という種族の性質故か、どうも他の種族を舐めてる奴らが多いんだよ」

 

 

 

はぁ、と息を吐き、頭を掻きながらカリオン様はそう語る。そう言えば青娥さんから聞いたライカンスロープという種族は基本的に好戦的で弱肉強食。強さこそが全てと言うような魔物だった。

実際、初対面のフォビオとスフィアは少しこちらを見下しているようだったし。それに闘技場まで来る際も、他のライカンスロープたちからの視線がどこか冷ややかだったのを覚えている。勿論全員がそうではないが。フォスのように優しい子もいたし。

 

 

 

「お前らも薄々感付いてはいただろうが、このフォビオは特にそういう傾向があってな。俺への忠誠心から来てるところもあるんだが、そこらの魔物だけでなく他勢力の奴らにも喧嘩腰なんだよ」

 

「も、申し訳ありません・・・・・・」

 

 

 

フォビオについてはカリオン様も分かっていたらしい。咎められていると思ったのかフォビオはカリオン様に頭を下げる。だが、カリオン様は口元を緩めて小さく笑った。

 

 

 

「はははっ、顔を上げろフォビオ。それについては先の戦いに免じて不問とする。それによ、こいつらと出逢ってお前の考えも少しは変わったようだからな」

 

「・・・・・・はい。我等ライカンスロープ以外の種族にも、敬意を払うに値する者がいると、思い知りました」

 

 

 

顔を上げ、フォビオは真っ直ぐカリオン様を見つめる。その瞳から何か感じるものがあったのか、カリオン様は笑みを強めるとこの場にいるライカンスロープたち全員を見渡し声を上げた。

 

 

 

「お前たちもこいつらの戦いを見て分かっただろう!この世界にはまだ見ぬ強敵がいくらでもいると!確かにお前たちは俺様と同じ、最強にして誇り高きライカンスロープだ。だが、その座に胡座をかき、他者を見下し自身の鍛練を怠るような愚か者にはなるなよ!いいな!」

 

『はっ!!!』

 

 

 

カリオン様の渇にその場に集いしライカンスロープたちが答えた。カリオン様はもう一度全員を見渡すと満足したかのように小さく頷き、再び俺たちへ振り返る。

 

 

 

「これであいつらも考えを改め、今後は一層鍛練に励むだろう。お前らという丁度良い目標が出来たからな」

 

 

 

その言葉と周囲で沸き立つライカンスロープたちの姿を見て、俺は先程カリオン様が言った『刺激』とはなんなのか理解した。確かに元々それなりに強くて戦う相手がいないとなると、腑抜けてくる奴らが出て来てもおかしくないのかもしれない。しかも魔王の配下である彼等に喧嘩を売る奴なんてそうそういない筈だ。そんな彼等にとって俺たちは確かに丁度良かったのだろう。

 

 

 

「アクトくんも、これからの修行により身が入りますね」

 

「えっ?」

 

「だって、フォビオさんやアルビスさんたちはアクトくんを目標とし追って来る訳ですよね?。追う側は当然勝ちたいと考え、必死に努力します。そして彼等が力を付けて迫ってくるのならば、追われる側も負けたくないと思うでしょう?」

 

「・・・・・・はい、勿論!」

 

 

 

口元を緩めながら、俺は青娥さんを見据え強く頷いた。確かにその通りだ。今回は俺たちが挑戦者だったが、次はアルビスたちがこちらに挑む側になるだろう。フォビオはガビルに勝っていたが、彼の様子からするに今回の勝利に納得していないようだし、間違い無く彼も必死に修行する筈だ。次こそ、胸を張ってガビルに勝ったと言えるように。

 

 

 

「『相手より強いと吠えるのではなく、相手を上回るのだと牙を剥け』・・・・・・であるな」

 

「ガビル・・・・・・今の言葉はなんだ?」

 

 

 

その時、スフィアに絡まれていた筈のガビルがこちらに近付きつつそう呟いた。ガビルの言葉が気になったのか、フォビオが首を傾げる。

 

 

 

「ふっ、アクト殿に賜った言葉である。我輩も以前は自身の力に自惚れた間抜けであったが、アクト殿と出逢ってからはこの言葉を胸に努力して来たのだよ。自信は持つが、自惚れない・・・・・・そうすれば、理想の自分になれる筈だとな」

 

「そうか・・・・・・不思議と、耳に残る言葉だ。俺もその言葉を胸に、一から鍛え直してみるか・・・!」

 

 

 

決意に満ちた表情でフォビオは左手を握り締めた。なんか李書文先生の言葉が妙に異世界でウケてるんだけど・・・・・・そのことに俺は一人苦笑していた。

 

 

 

「・・・・・・ところでカリオン様。こうしてアクトくんたちを認め、受け入れてくれたことですし、歓迎会とかそういったものを行ってくれたりは?」

 

「お前本当図々しいな!?仮にも俺魔王だぞ!」

 

「えぇ、理解しておりますとも。私より弱い、ね♪」

 

「ぜ、絶対いつかぶっ飛ばしてやるからな・・・・・・!」

 

 

 

と、俺たちの後ろの方ではそんなやり取りが行われていた。青娥さんの無茶振りとその態度にカリオン様は額にビキビキと青筋を浮かべる。口元こそ弧を描いているが、怒りによって全身から漏れ出すカリオン様の妖気を受け、俺たちは静かに二人から距離を取り出した。

 

 

 

「何故あんな煽るような言い方しか出来んのだ青娥殿は!?」

 

「ごめん・・・・・・ごめんなフォビオ、俺たちの師匠が・・・!」

 

「・・・・・・苦労してんだな、お前らも」

 

 

 

慌てるガビルと謝る俺の姿に同情したのか、フォビオは眉を下げながら呟いた。そして、僅かではあるが微笑みを見せる。初めて見た彼の優しい笑顔に、俺も思わず口元を緩めた。

 

 

 

「なぁアルビス。邪仙じゃねえけどさ、こいつらの為に軽い宴会でもいいから何かやろうぜ!」

 

「スフィア・・・・・・貴女はただ食べて呑みたいだけでしょう?」

 

 

 

俺たちと一緒に避難を始めたスフィアがアルビスにそう提案する。それを聞いたアルビスは呆れたようにくすり笑い、スフィアもそれにつられるようにからからと笑った。

 

 

 

「いいんじゃねえか?俺も動いたら腹減ったしよ。それにこいつらにユーラザニアがどれほど豊かな国なのか見せてやりてえしな」

 

「いいのか?そういやここって果物が特産品なんだっけ・・・・・・食べてみたいな」

 

「そうそう!アクトにガビル、次は俺と戦えよな!絶対だぞ!」

 

「きゅ、休憩してからね・・・・・・」

 

 

 

俺たちの戦いを見て戦意が高まっているのか、興奮した様子でスフィアが俺に詰め寄る。そんな彼女に苦笑しながら答えつつ、俺たちは闘技場を後にしたのだった。




一応、自分の中で現時点での登場人物たち(青娥や魔王除く)の強さを順にすると、

アクト>アルビス(フルパワー)>リムル≧イフリート>アルビス(獣身化一段階目)≧スフィア≧フォビオ>ガビル≧ケーニッヒ

・・・・・・こんな感じでしょうか。リムルに関しては『熱変動耐性』が無ければイフリートに勝てなかった、という話をどこかで聞いたことがあったのでこの位置とさせて頂きました。まぁイフリートとシズさん吸収後は一気に伸びるんでしょうけども。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。