転生したら蜥蜴人族の友人と邪仙の恋人ができた件 作:乃出一樹
投稿が遅れて申し訳ありませんでした。ティアキンが楽し過ぎて……
闘技場での戦いを経て互いを認め合った俺たちは、ユーラザニアの首都であるラウラのとある広場に集まっていた。というのも、青娥さんがふざけて言ったであろう俺たちの歓迎会をフォビオたちが本当に開いてくれたからである。
ユーラザニアで採れた様々な果実や野菜、それと周辺で狩ってきた動物や魔物の肉。それらを獣王戦士団お抱えの料理人たちに調理してもらった。料理人たちも皆ライカンスロープだ。
そこでふと青娥さんから聞いた話を思い出す。ユーラザニアにはライカンスロープだけでなく人間や亜人もいるとのことだったが、ここまで来る途中でそれらの種族は一度も見掛けなかった。それについてフォスに訊ねたところ、どうやら首都であるラウラには種族問わず弱い奴は入れないらしい。なんというか、やはりライカンスロープらしい国である。
フォスが言うには、弱い魔物や人間でも税を納めていれば首都の近くに住めて、獣王戦士団に守ってもらえるそうだが・・・・・・それを聞くと青娥さんの言った通り、彼等に受け入れてもらえるよう力を示せたのは丁度良かったのかもしれない。
で、フォス以外とも色々な話をしつつ、最初は皆と楽しくユーラザニアの料理を味わっていたのだが・・・・・・
「くっそー!負けたぁ~・・・・・・!」
ボロボロのスフィアが地面に大の字に倒れ、悔しそうに声を上げる。そのスフィアと戦っていた俺はふうと息を吐いて、額に浮かんだ汗を拭った。
「流石だなアクト殿!これで三獣士に全勝である!」
「ケッ、大した野郎だぜ」
離れたところから俺たちの戦いを見守っていたガビルとフォビオがそう声を掛けてくる。二人に振り返り、俺は軽く手を振って答えた。
何故俺とスフィアが戦っていたのか・・・・・・それは至ってシンプルな理由で、スフィアが戦いを申し込んで来たからである。彼女曰く、闘技場にいた時からすぐにでも挑みたかったそうだが、俺が「休憩してから」と言ったことを覚えていたようで、連戦させるのは気が引けたとのこと。あと青娥さんとカリオン様が揉め(?)始めたからヤバいとも思ったそうだが。ちなみに青娥さんとカリオン様だけこの場にいない。まさか本当に戦ったりしてないだろうな・・・・・・
青娥さんたちのことはさておき、こんなところで戦闘を始めていいのかと気になったが、話を聞いた他のライカンスロープたちが囃し立ててきたのと、フォビオも相手に名乗り出て来たことでそれについて考えるのはやめた。そもそもここの最高幹部である三獣士が構わないと言っているんだし別にいいのだろう。
とはいえ、流石に闘技場でもないこんな広場で本気でやり合う訳にもいかない。アルビスから一言注意を受けたこともあり、周囲への被害を考えて、闘気弾など遠距離攻撃のアーツや魔法の使用は無しというルールでの模擬戦となった。
スフィアの要望でガビルも加わることとなり、じゃんけんでそれぞれの戦う順番を決める。その結果、まずガビルとスフィアが。次に俺とフォビオ、最後に俺とスフィアの順で戦うことに。俺はフォビオにも勝ったが、ガビルは奮闘空しくもスフィアに敗れてしまった。
「しかし、我輩だけ負けっぱなしとは情けない・・・・・・」
「そう落ち込むことは無いだろ。お前だって全力で戦った訳じゃねぇんだ。バーニングランスだったか?それで魔法を撃ったりアーツを絡めてりゃスフィアになんか負けなかっただろうぜ、お前なら」
「ンだとコラァ!?」
一人落ち込むガビルをフォビオが慰める。フォビオの言う通り、ガビルはバーニングランスを使ってはいたが、ルール通り『
「やれやれ・・・・・・元気な方たちですね」
「グルルッ、ガァウ!」
同じく三獣士の一人であるアルビスだけは模擬戦に参加せず、離れたところで酒を飲んでいた。シーザーもその近くに座っている。俺たちの戦いには興味を示さず食事に夢中のようだ。果物も肉も好き嫌い無く食べている・・・・・・ドラゴンって雑食なんだろうか。
「アクトさーん!これどうぞです!」
「ん?あぁ、悪いな」
その時、フォスがこちらに駆け寄って来た。どうしたのかと振り返れば、彼女はにこにこと微笑みながら俺にタオルを渡してきた。俺はそれを受け取り軽く汗を拭く。
「凄いです!まさか三獣士の皆様全員に勝ってしまうなんて!こんなに強い人、カリオン様以外で初めて見たです!」
「はは、ありがとよ」
フォスはそう言ってくれたが、俺は今の戦いで少し悔しい思いをしていた。確かに俺はフォビオとスフィアにも勝ったし、それは勿論とても嬉しい。だが、戦闘技術というのだろうか。それに関して俺は完全に二人に劣っている思う。二人とは闘気弾無しの肉弾戦で戦ったのだが、途中何度も攻撃を読まれたり、相手のフェイント等に引っ掛かり手痛い反撃を受けた。正直なところ、魔素量とスキルでゴリ押ししなんとか勝てたようなものである。
「俺もまだまだってことか・・・・・・」
ユーラザニアでの戦いを経て、俺とガビルはもっと強くなるだろう・・・・・・いや、なってみせる。手強いライバルたちも現れたことだしな。
「私も頑張るです!今よりもっと強くなって・・・・・・その時は、私とも戦って欲しいです!」
「俺で良ければ勿論。その時を楽しみに待ってるぜ」
むんっと可愛らしく意気込むフォスに和みつつ、俺は笑ってそう答えた。ぴこぴこと動く耳と左右に揺れる尻尾がとても愛らしい・・・・・・青娥さんがいたらまたロリコンだとか言われそうだと、俺は一人苦笑した。
「ほう、フォビオとスフィアにも勝ちやがったか」
「ふぁっ!?か、カリオン様!」
その時、広場にカリオン様が現れた。カリオン様はそう呟くとこちらに歩み寄って来る。フォスやフォビオたちが慌てて姿勢を正すのを見て、俺も彼等に倣った。
「本当に大した奴だ。青娥のとこに置いておくのが惜しいくらいだぜ」
「あ、ありがとうございます・・・・・・!カリオン様からお褒め頂けるとは、この身に余る光栄でございます」
カリオン様は腕組みしながら俺にそう告げた。魔王であるカリオン様の言葉に緊張しつつも、評価されたことに対して俺は素直に礼を言う。それを聞いてカリオン様は静かに頷くと、今度はガビルの方へ向き直った。
「ガビルと言ったか。負けたとはいえその実力は確からしいな。お前も立派な戦士だ、誇ると良い」
「は、ははーっ!有り難き幸せ!」
「・・・・・・あら。カリオン様、青娥殿はどちらに?」
その場に跪き、ガビルは深々と頭を下げた。魔王に認められたのだ、その喜びは計り知れないだろう。目の前で友人が褒められたことに俺も内心喜んでいると、ふと辺りを見回しながらアルビスがカリオン様に訊ねた。そう言えば一緒にいた筈の青娥さんの姿がどこにもない。
「あぁ・・・・・・あいつなら野暮用で少し出かけるってよ」
「えっ?そうなんですか」
カリオン様から返ってきたまさかの答えに俺は少し驚いた。俺たちに何も言わずにどこか行ってしまったのか・・・・・・青娥さんらしいと言うか、なんと言うか。
「全く、青娥殿の奔放さには困ったものである・・・・・・しかしそうなると、青娥殿が戻ってくるまで我輩たちはユーラザニアで待機ということになるのか?」
「んー・・・・・・観光でもする?」
「それなんだがな、ちとお前たちに頼みがある。青娥にも許可・・・・・・つーか、あいつからお前たちにやらせろって言われたんだがな」
呆れながら首を傾げるガビルに苦笑しつつ俺はそう提案する。するとカリオン様が頭を掻きながらそう告げた。
「青娥さんから?一体何でしょう」
「おう。その頼みってのはな、最近ユーラザニア国内で見掛けるようになった妙な『穴』のことだ」
「『穴』と言うと、あの・・・・・・?」
フォビオの問いにカリオン様は静かに頷く。何のことだか全く分からない俺とガビルが顔を見合わせていると、隣にいたフォスがちょいちょいと俺の服を引っ張った。
「あのですね、実は数ヶ月前からユーラザニアで妙な穴を見掛けるようになったです。その『穴』は結構深くて、中には魔物までいるんですよ」
「ふむ?聞く限りそこまで妙なものでは無いように思えるが・・・・・・ただの魔物の巣穴では?」
「確かにそれだけだと大したことは無さそうだがな。しかし、その『穴』が突然・・・・・・しかも複数出現したと言ったら、どうだ?」
「ふ、複数が突然?」
フォスの説明にガビルが眉を顰めていると、フォビオが彼女の代わりに補足してくれた。それを聞いたガビルは益々困惑した様子を見せる。俺も同じようなものだが。
「いきなりいくつもその『穴』が出来たってのか?」
「あぁ。全ての場所がそうだと断定出来る訳じゃねえが・・・・・・前日にその近辺を見回っていた獣王戦士団や通った旅人らの話を聞く限り、その時はそんな『穴』なんて無かったらしい。突然出来たと説明する他無いんだ」
「一日で掘ったにしては大きな穴なのです。そして何より妙な点が、その穴の内部が変化するということ」
フォビオが俺の疑問に答えていると、アルビスがこちらに近寄りつつそう告げた。彼女の声を聞き、俺はそちらに振り返る。
「内部が変化って、『穴』の中の道が変わるってことか?」
「はい。『穴』を確認した当初、我々も調査隊を複数編成しそれぞれ『穴』に潜ったのですが、それなりの深さだったのと内部にいた魔物との戦闘で消耗したのもあり、ある程度マッピングして一時撤退したのです」
「俺様の部下に『
どこか困ったようにカリオン様は溜め息を吐く。『
「・・・・・・しかし、その際に記した内部の地図が次に潜った時にまるで役に立たなかったのです」
「どうも全ての『穴』がそうらしい。お陰でえらい目に合ったぜ・・・・・・」
「あぁ、そういやお前んとこは遭難しかけたんだったか?くく、ドジな野郎だ」
嘆くスフィアの言葉を聞き、フォビオが小さく笑う。瞬間スフィアがぎろりとフォビオを睨み一触即発な空気になるが、俺は見ないフリをした。
「突然発生して、それなりに大きくて、中には魔物がいて、しかもどのタイミングかは分からないけど内部の道が変化する・・・・・・まるで不思議のダンジョンだな」
「ははは、不思議のダンジョンか。確かにそうであるな!」
「不思議のダンジョン・・・・・・確かにあれは迷宮で、内部も不思議と言っていい場所だ。よし、今後はあの穴を『不思議のダンジョン』、または略して『ダンジョン』と呼ぶとしよう」
俺は何気無く呟いたつもりだったが、何故かカリオン様にその単語が気に入られてしまったらしい。ちなみに『不思議のダンジョン』とは俺が作った言葉ではなく、元居た世界でよく遊んでいたゲームに登場する言葉だ。『ドラクエ』のスピンオフ作品である『トルネコの大冒険』から始まり、そこから『風来のシレン』や『ポケモン』のスピンオフ作品等でも冒険の舞台となっている。中に魔物がいて、入る度にダンジョンの構造が毎回変化するなど特徴もほぼ合致しているし、呼び名としては確かにピッタリではある。こちらの『不思議のダンジョン』の内部が変化するタイミングは不明だが。
「あ、あー・・・・・・ではカリオン様。俺とガビルにその、不思議のダンジョンを調査しろと仰られるのですね?」
「おう、早い話がそうだ。可能ならば攻略し消してもらいたい」
「消して、って・・・・・・まさか埋めろってことですか?」
「はっ、そうじゃねえ。そのダンジョンの最奥には『核』があるんだ。そいつを壊すなり外に持ち出すなりすりゃ、ダンジョンはその内自然に消滅する」
カリオン様は軽く笑ってそう答えた。無茶なことを命じられず俺は内心ほっとしつつ、『核』という存在が気になりそれについて訊ねる。
「調査の結果、不思議のダンジョンには『核』と呼ぶべきモノが必ずあることが分かってな。ダンジョンを作った奴が置いているのかどうかは分からんが、これまで潜ったダンジョンには最奥に巨大な魔鋼塊かそこそこ強力な魔物が陣取っていた」
「魔物の種族はダンジョンによってバラバラだが、とにかくそいつらを倒すか魔鋼塊を持ち出しゃ、後は勝手にそこは消える。ちなみに俺の時は一番奥に
「私の潜ったダンジョンには
「俺だけ魔鋼塊だったんだよな・・・・・・ったく、ツイてなかったぜ」
スフィアとアルビスの後で、フォビオが残念そうに吐き捨てた。どうやらこの三人も調査隊に加わっていたらしい。まぁ三獣士と呼ばれる最高戦力なのだからおかしくはないが。
それと、
「何故そのような形になっているのであろうな?最奥の魔物が他の魔物たちを従えている・・・・・・いや、魔鋼塊の場合もあるのだったか」
「ある程度大きな魔素が無いと不思議のダンジョンを維持出来ないのかもしれん。まぁ憶測に過ぎんが・・・・・・」
「成程・・・・・・貴重な情報をありがとうございます、カリオン様。それでは準備を整えたらガビルとすぐにでも──」
「あぁ、待て待て。実はもう一つ頼みがあってな」
情報提供に感謝し、ダンジョンへと向かう準備をしようとした時だった。カリオン様は俺を呼び止めるとそう告げる。
「こっちの頼みは青娥とは関係無い、俺様個人のモンだが・・・・・・ウチの奴を一人お前たちと同行させて欲しい」
「それは、獣王戦士団のライカンスロープとパーティを組んで、ダンジョン調査に向かえ、と?」
「おう。一応青娥から許可は取ってあるぜ・・・・・・いや、こっちも半分あいつの我儘ではあるんだがな・・・・・・」
そこまで言ってカリオン様は先程のように困った様子で頭を掻く。また青娥さんが我儘を言ったのか・・・・・・少しではあるが、流石にこちらまで申し訳無くなってくる。
「何か、俺の師匠が本当にすみません・・・・・・あ、あー・・・それで、その一人とは?」
「ん、あぁ。そこにいるフォスだ」
「ふぁっ!?わ、私です!?」
まさかの指名にフォスは声を上げて驚いた。いや、驚いたのはフォスだけでなく俺とガビル、それにフォビオたちもだが。そんな俺たちの反応には触れず、カリオン様は俺を見据えて続ける。
「もしかしたら既に聞いているかもしれんが、そいつはまだ獣王戦士団の見習いみたいなもんでな。だが成り上がりでここまで来ただけあって中々見込みがある」
言いながらカリオン様はフォスの傍まで歩き、彼女の頭に手をやった。そのまま乱暴に頭を撫でられるフォスだが、嫌そうな顔は全くしていない。
「そこで、ここだけじゃ得られない経験を積ませ更に成長させる為にお前らと一緒に行かせようって訳だ。ダンジョンで何か起きたとしても、お前らがいるなら安心だしよ」
「カリオン様・・・・・・!」
「ちっこいが、こいつだって仮にもライカンスロープだ。守られっぱなしにはならねぇ・・・・・・どうだ?」
「ふむ、我輩は別に構わぬが・・・・・・どうする、アクト殿」
ガビルが俺を見てそう訊ねる。俺は短く唸りつつフォスの同行について思案した。
彼女の戦闘力は不明だが、カリオン様がこう言っていることだしそれなりに強いのだろう。打算的に考えれば、魔王であるカリオン様から俺たちへの覚えも良くなりそうだし、青娥さんなら引き受けようとする筈だ。
だが、それ以上に。ダンジョン探索なんて正しくファンタジーな体験だ。それを友人であるガビルや他の仲間たちと共に行えるとなれば、正直興奮を隠せない。フォスとも仲良くなれるだろうし、俺とガビルにとってはいい修行になる。お宝なんかも手に入れられたりするかもしれない。
・・・・・・悩むことなんて無かったなと、俺は口元を緩めつつフォスに向き直って答えを告げた。
「・・・・・・・・・分かりました。それじゃあフォス、一緒に頑張ろうな」
「はっ、はいです!ありがとうございますアクトさん!私、頑張るです!」
俺の言葉を聞いたフォスはぱぁっと表情を明るくさせてこちらに駆け寄って来た。耳をぴこぴこと動かし、尻尾もぱたぱたと振ってまるで犬のように喜んでいる。
「ははは、元気なことよ!我輩もよろしく頼むぞ」
「ふぁっ!はいです!よろしくですガビルさん!」
「ではカリオン様、フォスを連れて早速──」
「ちょっと待った!」
ガビルとフォスが話している隣で俺がカリオン様に出発を告げようとした時だった。一緒に話を聞いていたスフィアが声を上げ俺の言葉を遮ったのである。
「アクト、ガビル。俺も一緒に付いてくぜ」
「えっ?スフィアも?」
「構いませんよねカリオン様?俺だけ本気でこいつらとやり合って無いから不完全燃焼なんですよ」
予想外なことを言い出したスフィアはカリオン様に向き直ると、俺たちと同行する許しを願う。カリオン様は短く唸り何か考えていたようだが、やがて笑みを浮かべ口を開いた。
「・・・・・・いいだろう。フォスの面倒を見つつ、こいつらの力になってやれ」
「よっしゃ!ありがとうございますカリオン様!」
許しを得たスフィアは喜びながらカリオン様に頭を下げる。それからスフィアはこちらに振り返ると、俺たちを見てにっと口端をつり上げた。
「そういう訳だ。よろしく頼むぜ?」
「あぁ、よろしくな」
「うむ!共に頑張ろうぞ!」
「おーっ!です!」
こうして、まさかの即席のPTを組むこととなった俺たち。俺は頼もしい仲間たちの姿を眺めながら、これから挑む『不思議のダンジョン』に胸を踊らせるのだった。
今更な話ですが、この作品では一部勢力にオリジナルキャラクターが加わっていたり、原作キャラクターが強化されたりしております。
その、そうでもしないとリムル陣営とアクト陣営が無双してしまうので・・・・・・